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つくしの住んでいたアパートを出て向かったのは都内でも高級住宅地で知られている場所だった。

道明寺家や花沢家のような大邸宅ではないが華やかな造りの建物が建ち並び、緑も多く街全体に漂うハイグレード感が夜間でも判るほどだ。
アパート前の防犯灯は素っ気ないものだが、ここのはお洒落なランプばかり・・・傘を差して歩いて帰る人など居ないのだろうか、人通りは少なかった。


そんな通りを過ぎて見えてきたマンション、類の車はそこの地下駐車場に入っていった。

当然つくしはそんなマンションは知らない。
不安そうに身体を縮こませて、明々とした駐車場に並ぶ高級車を見ていた。そしてM-1と書かれた場所に車を停めるとエンジンを切り運転席から降りた。

後部座席に詰まれた荷物を降ろす類をつくしはまだ呆然と見てるだけ・・・ここまで来ても頭が真っ白で何も考えられない。自分もしなくちゃ、と思うのに身体が動かなくて力が入らない。
類はそんなつくしの様子を見ても手伝えと催促もしない。両手両肩に荷物を抱えると流石にドアが開けられないから「牧野、降りな」と声だけ掛けた。


「・・・ご、ごめん!半分持つよ」
「大丈夫、重くないし」

「でもそんなに荷物持ったこと無いでしょ?」
「あんたより軽いからいいって」

「・・・・・・もぅっ!」


類の笑顔で漸くホッとしたつくしは、車から降りると抱えていた大学用の鞄だけを持って彼の横に立った。
確かにこんな大荷物を持った類を見たことがない・・・今度はその格好が可笑しくてクスクス笑うと、「置いてくぞ?」と拗ねた顔の類がスタスタと歩き出した。

・・・軽い訳がない。
大学の資料にファイルに教科書類・・・それを持つ類の手が筋張ってるのを見て申し訳ないと思いつつ、その好意に甘えて少し後ろをついて行った。


「ここ、類の?」
「いや、あきらの。花沢のじゃない方がいいと思って」

「美作さんの?いいの?」
「あいつ名義だし、使ってない部屋の中で1番小さいし」

「小さい・・・これで?」
「25階が最上階だけど2世帯あるんだ。あんたが住むのは2501の方ね」


25階・・・充分高層マンションだ、とつくしは「はぁ・・・」と溜息をついた。
それに乗ろうとしたエレベーターは二基あるうちの「TopFloor」と書かれた方・・・つまり直通のエレベーターがあるという事。
それはエントランスに1度止まるが、それから先は最上階まで止まらない特別仕様のものだ。

類はそれに乗ると、軽いと言ったわりには壁に縋りホッとする。つくしが荷物を取ろうと手を出すと、それには首を振って「その代わりジーンズのポケットからカードキー出して」と頼んだ。

ヒョイッと身体を捻られたのはいいが、ジーンズのポケットに手を入れようとしても中々入らない。勿論類が着ているジーンズに余裕が無い訳ではないが、男性の服に手を突っ込んだ事なんて無いから緊張していた。
何故か類の身体を直接触ってる気がする・・・と、耳まで赤くして眉をひん曲げカードキーを取り出した。


そんな事をしているうちにエレベーターは最上階に着いて、類が顎で「こっち」と示した方に歩いて行った。
2世帯しかないと言っても繋がっている訳じゃない。
真ん中には人工の庭があってもう一つの部屋とは完全分離している。しかも2501室の手前にはセンサー付きの門があって、そこもパスコードを入れないと開かない。


「パスコードは0228だって。馬鹿だよね、誕生日にしてるなんて。後で0330変えよう」
「ぷっ!それも誕生日だってば!」

「あっ、そうか・・・じゃあ1228だ」
「それもだよ?いいよ、0330にしよ?」

「ん、後で変えとく」


手が塞がっている類に代わってつくしが「0228」を入力すると門は開き、それをまだ奥に進むと漸く玄関が見えてきた。
これもセキュリティーなのか、結局エレベーターを降りてぐるっと回った反対側が玄関・・・急ぐ時には不便だと苦笑いした。

あきら名義だと納得するようなエレガントなドアを開け、つくしが大慌てで全開すると類が一気に荷物を降ろし「はぁ!」と大きく息を吐いた。
使ってないと言われただけあって生活臭は一切ない。寧ろひんやりとした空気で不気味なほどだ。


「・・・・・・ホントにここに住むの?私・・・」
「本当だって。24時間監視されてるから安心だし、ここまで来てもあんたが入れない限りあの門は開けられないからね」

「こんな所まで来ないよ・・・」
「それは判んないだろ?兎に角、飯にしよう」

「うん、お腹空いた!」
「さっき見たときマンションの横にパスタの店があった」

「ほんと?!凄い、よく見てたねぇ~!」
「あんたが居るからね。食事は抜けないでしょ?」

「・・・・・・もぉ!」
「くす、行こうか。傘は1つでいいよね」


靴を脱ぐまでもなく2人揃って向きを変え、今歩いた通路をエレベーターまで向かった。
その途中、アパートでの出来事を忘れようとしているかのようにはしゃぐつくしを黙って見守る類・・・繋がれた指先が冷たく震えているのを感じながらこの後の事を考えていた。


あんな事があったばかりだから一緒に居てやりたい・・・でも頻繁な外泊は聖司に要らぬ憶測と余計な手回しをさせるようなもの。
極力自分の変化を悟られないようにしなくては・・・そう考えると自宅に戻るしかなかった。


つくしの話に相槌を打ち、その笑顔に見惚れながら、まだ何処か不自由な感覚にイラついていた。




食事が終わり部屋に戻ると簡単な片付けが始まった。
と言ってもたった4個の荷物なのだからこの広いマンションのひと部屋の隅っこだけで事足りる。
後はガランとしたままだが、家具や電化製品は完備されていたから暮らすのには困らない。住む予定も無かったクセにキッチンにも調理用具は準備されてて、ベッドルームに新しいシーツと布団が置かれていた。

僅かだけど食材もある。
それはつくしが普段買わないような高級品だったから逆に調理方法がさっぱりだった。

カーテンは美作邸とは違ってシンプル、シャンデリアではなくエレガントではあるが普通の照明器具、派手な装飾品も薔薇もないのには助かる・・・そう言って2人で笑った。


でも類にはすぐに判った。
あきらが同棲するのだと勘違いして急いで揃えさせたのだと・・・そう思うならそれでもいいと敢えて否定はしない。
泊まる日だってあるんだから・・・と。


「牧野、明日も迎えに来る。エントランスから出ないで地下駐車場で待ってな」
「・・・うん。でも毎日そうする訳にはいかないよ?私、1人でもバスで行けるから」

「いや、まだあいつの事がはっきりしないから1人にさせられない。あいつの情報は集めるし、再就職したって判ったら安心だけどね」


玄関で靴を履きながら背中越しに言われた言葉・・・やっぱり帰るのだと思うと、淋しさから自然と鼻の頭が熱くなる。ただでさえ初めての部屋で1人きり・・・広すぎる空間が余計に自分を小さく感じさせるから嫌だった。


靴を履き終えて振り向くと同時に大きな腕で抱き締められた。
耳元で「大丈夫だから」と囁かれ、つくしは我慢出来なくなって一粒だけ涙を溢した。


「明日なんてすぐだよ」・・・その言葉が逆に恨めしかった。






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2020/01/31 (Fri) 09:30 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

不気味ですね~💦雨の日の足跡・・・これからは大丈夫、と言いたいところですが(笑)
あきら君にや類君には狭くてもつくしちゃんにはめっちゃ広いですよね!

25階にしてみたけど、私は8階の部屋でも高所恐怖症でベランダに出られませんでした。
どんな世界だろう・・・多分どれだけ観光コースに入っていてもスカイツリーには行かないと思います、私💦

2020/01/31 (Fri) 22:45 | EDIT | REPLY |   

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