FC2ブログ

plumeria

plumeria

それから数日間、何事もなく過ぎていった。

類が調べた限り、仙道は印刷会社を辞めた後に住んでいたマンションを引き払っていたが行き先は不明。移転先は実家の北海道になっていたが戻ったかどうかは確認出来なかった。
ただ、つくしの話から仙道が両親の前で恥をかいたのなら戻るとは思えない。

まだ何処かに潜んでいる・・・そんな気がしていた。


類は総二郎とあきらに仙道との間に起きた事を話し、情報収集の協力を頼んだ。
花沢とて情報機関やマンションの類いはあるが、それを使わないのは仙道を窮地に追い込んだのが総て自分の行動によるものだから。
それと父、聖司が勘繰っている事を付け加え、如何にもそれらしい理由にした。


「花沢のおじさんも厳しいからな・・・で、どうするんだ?説得出来るのかよ」
「司のお袋さんに比べたら楽かもしれないけど花沢もお前だけだからな・・・当然牧野の調査は入るよな?」

「だから時間をかけたいだけ。牧野の心の準備もあるし、俺ももう少し歩み寄らなきゃとは思ってるけど・・・」

「そうかぁ?お前と親父さん、ホントに親子か?ってぐらいに見えるしな~!」
「本気でぶつかった事なんてないだろ?まぁ、俺もあんまりないけどさ」

「・・・ないね。あの人の前に出ると息苦しくなるから」

「重症だな・・・」


本当の親子か・・・そう言われると1番判らないのは類自身だった。
仲が悪いだけならいい。そこにすら辿り着かない違和感があることなど幼馴染みに言えない。

兎に角何か判れば教えて欲しいと話していた時に、カフェの入り口で小さく手招きをするつくしを見つけた。
途端に柔らかい笑顔に変わる類に2人は呆れ顔で目を合わせ、でもあの類をここまで変えてしまうつくしの方に感心してしまう。暫くしたらカフェの外通路を仲良く並んで歩く後ろ姿が見え、それが遠離っていくまで黙って見ていた。


「焦れったかったもんな・・・牧野が変な男に捕まるからさ」
「捕まったって言うか、牧野が逃げたんだろ?全く・・・自分の事なのに気が付くのが遅いっての!」

「それにしても類のヤツ、なんか雰囲気変わったよな」
「ん?男になったからじゃねぇの?牧野も災難だな~、類は束縛しそうだし」

「・・・そんなんじゃなくてさ」
「あきら?」

「・・・凄く自由になったって言うか・・・何か取り払ったような感じ?」
「難しいこと言うな、お前・・・」


総二郎もどうでもいいような返事をしたが、あきら同様感じていた。

ただそれは口に出してはいけないような気がしていた。
漠然とだが類が重大な決断をしたんじゃないかと・・・それはつくしとの事をきっかけに動き始めたのではないかと。


幼い頃からの友人の勘・・・総二郎もあきらも校舎の陰に消えて行く類の姿を見つめた。





「今日もアパートに行く?」
「うん、今日はレジンの道具を取りに行かなきゃ。類のヒメルリガイも置いたままなの・・・早く作りたいしね」

「俺のは急がないよ?でも他のも造りたんだろ?」
「えへへ・・・うん、気分転換だし作ってると幸せな気分になるから」


不審な足跡が現れたあの日から、類に付き添われて少しずつ自分の荷物は持ち出していた。
日用品の類いは揃えてあったが着替えは毎日必要だし、類に甘えるもの嫌だった。類にしてみれば有り余るほど与えることも可能だけど、それを良しとしない性格であることは承知している。
だから強引に買うことはしなかった。

ただ胸の中では一緒に買い物に行き、つくしの欲しいもの、似合うものを選んでやりたいと思うのは当然。
もう少し甘えて欲しい気持ちもあるが、この先の自分にそれが可能なのかどうかを考えると言葉には出せなかった。


アパートに着くと必ず類が先に降りてつくしをガードする。
お互いの身体を密着させ、同時に階段を上がりドアを開ける時も類は細心の注意を払った。
中に入っても言葉は出さずにジェスチャーだけの会話で、つくしは用意した鞄に必要なものを詰めていった。

その間に類は部屋のテレビをつけてボリュームを上げた。
それは盗聴器を調べるため・・・盗聴器発見器を使い、このテレビの音が受信機で拾えれば仕掛けられている可能性がある。
勿論ステルス盗聴器などは発見出来ないから100%安心は出来ないが、仙道がそこまでするかどうかは判らない。

つくしはチョンチョンと類の背中を突き、「終わった」のサインをする。
取り敢えず今日も盗聴器の発見などはなく、部屋を出ようとした時につくしの足が止まった。


類が振り向くとつくしの目線の先には硝子製のオルゴールがあった。
それを悲しそうな目で見ている。

もしかしたら、と持ち上げて底を見ると北海道の文字があり、類はこれが仙道の贈り物だと気がついた。
『・・・必要?』と、極小さな声で聞くと静かに首を横に振る・・・それを見て類はこのオルゴールをキッチンのゴミ箱に捨てた。


どうせ引き払う時には処分するのだ・・・商品に罪はないがつくしが辛くなるのなら、と何も入っていないゴミ箱の底に転がったオルゴールに背中を向けた。


今日も車に戻れば会話は弾む。
やっと持ち出せたレジンの道具を膝に抱え、4月に類の頭から取った桜の花びらのアクセサリーも手に持った。


「嬉しそうだね」
「うん、ヒメルリガイが心配だったから」

「割れたらまた取りに行けばいいんだから気にしないでいいのに」
「ううん、これはあの日に見つけた宝物だもん。他のものでは代わりになれないの・・・この桜の花びらと同じ」

「桜の花びら?」
「うん。類の髪と私の髪・・・それに触れたのはこれだけだから。だからこれも宝物なの」


他のものでは代わりになれない。
誰かの代わりにはなれない・・・・・・でも、故意に代えられたとしたら?



次の週、類は静岡の滝川邸に行く事を決めていた。
唯一生存している祖父に会うために。


     


にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村
応援、宜しくお願い致します♡
関連記事
Posted by

Comments 2

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2020/02/01 (Sat) 09:03 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

はい、これから色々探しに出掛けます。
でも1人じゃないので淋しくはないと思います♥

この一緒に居るって言うのがMarionetteとは違うので書きやすい(笑)


あぁ!朝知りました・・・。
関東は多いので怖いですよね。作家様達も関東の方は多いのでよくお話しされていますよ。
震度3ぐらいは慣れるって言われてました。

私の所はほぼ揺れないので、3ぐらいでも凄く怖いです。
でも数年に1度ぐらいですけど。
雨の被害は結構発生しますが、自分の家は高台なのでそれもないんです。
強いていえば・・・風かな?

何にしても自然災害は怖いですよね。

2020/02/01 (Sat) 20:47 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply