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桜の大寄せの前日、家元夫人に呼ばれてお部屋に向かった。
そこには志乃さんが居て、衣桁には綺麗な着物が掛けてあった。薄い緑色からクリーム色にぼかしてあって、そこに桜の花が描かれてる上品なもの。


「牧野さん、当ててみて?私の若い頃の着物なんだけど」
「え?家元夫人の?そんなっ・・・いや、いいです!」

「あら、この色はお嫌い?」
「いや、そうじゃなくて・・・私には勿体なくて!」

いやいやいや、アメリカに持って行った家元夫人の大事な思い出の振袖もぐちゃぐちゃにして(総二郎がだけど)お返しする不始末を起こしたのに、今度はこんな上品な着物なんて冗談じゃない!
絶対にこれもすっごいお値段の着物だろうし、何が起るか判らないんだから激安な着物でいいのに!

って言うのに志乃さんが無理矢理私の服を剥ぎ取って、その着物を着せてくれた。


「・・・綺麗」
「でしょう~♥これ、家元が大昔、作ってくれた着物なのよ」

「・・・・・・ぬ、脱ぎますっ!そんな大事なもの!」
「いいのよ~、明日これを着ましょう?」

「えっ!そんなっ・・・私はもっと地味なのでいいんですが?」


ひえ~~~~~!!家元が家元夫人に贈った着物なんて、軽く数千万いくんじゃないの?!そんなのを今私が袖通してるの?

怖いからーーーっ!って腰紐を解こうとする手が震える・・・もしも爪を引っ掛けたらと思うとっ!
志乃さんに「解いてください~」って頼んだらクスクス笑ってるけど、家元夫人は超真面目な顔だった。


「牧野さん?」
「は、はいっ!!」

「そのお着物ね・・・私が初めて桜の大寄せでお客様の前に出た時のものなの。まだ婚約中でお嫁には来てなかったんだけど、先代のお言葉で家元の横に並ぶことになってね・・・それで作っていただいたの」

「それって明日の私と同じ・・・いえ!全然家柄が違うけどっ!」

「家柄なんてどうでもいいけど、確かに明日の牧野さんと同じ状況の時に私が着た着物よ。
それで家元の手伝いをしたの。結果は・・・そうねぇ、既に婚約していたから合格も何もないんだけど、お客様にはそこで覚えていただいたわ。
これを覚えている人も居るかもしれないし、とても縁起の良い着物なの。家元が苦手だった講演の時もこれを着ていくと成功するし、気難しいと評判の役員さんにも褒められて仲良くなったしね・・・だからこれを着ると良いことあるわよ?」

「・・・家元夫人」
「それに丁度ピッタリですわ。ふふふ、まるで牧野さんに誂えたようですわね、家元夫人?」

「・・・いやぁね、志乃さんったら!」

「・・・・・・?」


どうやら大事なこの着物を私の体型に合わせて仕立て直してくれたみたい・・・それを聞いたら目頭が熱くなって、気が付いたら涙が溢れてた。
「どうして泣くの?」なんて笑いながら肩を抱いてくれて、私は家元夫人に縋り付いて泣いてしまった。


30年近く前の家元夫人の着物・・・私に勇気をくれるだろうか。



最後の稽古は1回だけで、流れを復習して終わった。
後は明日の総二郎の動きを見ながら付いて行くだけ。

総二郎に着物の事を話すと、その着物は彼が着付けてくれることになった。


「ホントは俺も作るって言ったんだ。でもお袋が縁起担ぎって言うから・・・」
「そうなの?うふふ、みんなして優しいなぁ~」

「そりゃ親父とお袋・・・いや宗家全体が本気だからだろ。息子の嫁と仲良くするのが楽しみだったらしいから、他のヤツなんて考えられなくなったんじゃね?」
「そりゃ責任重大だね・・・よし・・・頑張る前に落ち着かなきゃ!」

「くくっ、その程度でいいって。お前は気持ちを楽にして俺の横に居ろ。それでいいから」
「・・・うん・・・」




********************




朝早く・・・何故か布団が冷たくて目を覚ました。
腕を伸ばしてもいつもの柔らかい感触に辿り着かない・・・少し目を開けて見れば、ベッドは俺1人だった。


「・・・つくし?何処だ?」

小さい声で呼んでみたが返事がない・・・布団を剥いで起き上がると、部屋の真ん中のローソファーで踞ってるつくしを見つけた。
3月って言ってもまだ寒いのに!と急いで近寄ると、そのテーブルには俺の茶道教本が広げられていた。

手に取るとそこに書いてあるのはつくしにはまだ教えてない事ばかり・・・釣り釜なんて小難しいページに折ったような跡があった。


「こんなの読んでたのか?馬鹿だな・・・文字で覚えられるようなもんじゃねぇのに・・・」

頬を触るとヒヤッと冷たい。
逆に俺の手の感触に気が付いたのか、ブルッと震えて肩を竦めた。
薄いブランケット1枚で何してんだか・・・つくしを抱き上げると、流石に目を開けた。


「・・・あっ、総二郎・・・うわ、寒っ!」
「当たり前だ!まだ6時前なのに何してんだ?治ったばかりなのに、また風邪引くぞ?」

「ごめん・・・ちょっと落ち着かなかったの・・・」
「お前が点てるわけじゃねぇんだから緊張するなって。少しぐらいのミスは俺がカバーするから」

「・・・んっ」


仔猫みたいに俺の腕の中で丸くなって少しだけ笑ってやがる。
もう1回布団に入って冷たくなった身体を抱き締め、俺の熱を分けてやった。そうしたら「あったか~い!」なんて上擦った声出して、それに反応して・・・でも必死で抑えた。

今日は無理・・・いくら何でも朝からはヤバい。
せめてキスぐらいならってんでこいつの唇を塞ぎ、まるで羽交い締めにするみたいに抱きついた。


そのままもう少し明るくなるまで・・・
つくしの冷たい指先が温かくなるまでこうしていよう。





**




それから少しだけ寝て、7時過ぎに2人同時に目覚めた。
つくしは風邪も引かなかったみたいで体温も上昇、指先はすっかり熱くなってた。

「こら、少しこっち向け」
「ひゃあっ!なに?!」

「いいから。熱測るだけ」
「・・・・・・これが?」

額をコツンと合わせ、それで熱なんて判りゃしないのに態と顔を寄せた。
つくしはそれだけで顔が真っ赤になり、耳まで染めて茹で蛸状態。そのまま触れるだけのキスをして「熱はなしだな」って言うと、背中を叩かれた。


まぁ、このぐらい出来れば大丈夫か?と、今度は揃って飯を食いに行った。

そこでも両親と極普通に話し、朝飯は完食。
志乃さんにも「大丈夫そうですわね」と耳打ちされた。


それも終われば着物に着替える。
お袋の着物を俺の部屋に持って来させ、そこでつくしに着せてやった。

手触りが良くしっとりとした丹後ちりめんの地布。お袋の実家の染匠が白生地から拘って作らせたもので、絹本来の艶感が伝わってくる極上のものだ。
そいつを落ち着いた淡いグリーンに染め、桜のピンク色を邪魔しないようにしている。
それでもクリーム色にぼかし染めしてある所にはちゃんと桜の花が描かれていて美しい。効果的に施された金駒刺繍がそれに輝きを与え、上品に煌めいていた。

つくしもこの着物に負けないほど凜とした表情をしている。
茶事だから飾り物は一切しないんだけど、それでも振袖の時とは違う大人の色気が備わっていた。


「最高だな、お前」
「ほんと?隣に居ても大丈夫?」

「あぁ、今日はつくしに全部持って行かれそうだな」
「そぉ?ふふっ、頑張る・・・総二郎の背中見ながら頑張るね」





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2020/02/14 (Fri) 16:45 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

コメントありがとうございます。


この家元夫人、面白い訳じゃないけどいい人でしょ♥
今回は穏やかな西門家(笑)

うんうん、このお布団で・・・ってのはいいよね~♥
おでこ、コツンも好きだよね~♥
(総ちゃんには似合わないけどね・・・舌で熱を計りそうだし)

マッサージしたり体温分け合ったり、激甘ですな(笑)


いよいよラストステージ♥
はぁ~~~~やっと終われる~~~~(笑)

2020/02/14 (Fri) 23:00 | EDIT | REPLY |   

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