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plumeria

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「社長、こちらが大学からの報告書です」
「・・・あぁ、すまんな」


この頃、聖司は類の行動がこれまでと違う事に疑念を抱き、密かに調査させていた。
昔はほぼなかった外泊が増えたこと、帰宅時間が遅いこと・・・それは息子に女性の存在を感じさせるには充分だった。

でも類は恋愛に興味が無さそうに見えて逆に心配していたぐらいだ。
1人の女性に熱を上げるほど情熱的な男には思えなかった。どちらかと言うと周りが相手を用意し、それに黙って従い義務的に跡取りを儲けるのだろう、その程度に感じていた。

それでも後継者が出来れば問題はない。
そう言う行為が出来るのであれば・・・と、他人は話せない思いを抱えていた。


報告書を捲って深い溜息を付く・・・相変わらずの出席率だ。
特にこの最近は講義など殆ど受けていない。でも執事に聞けば大学にはきちんと通っていると言う・・・それなのに何処で何をしているのだろうか。
残り僅かを残して、もう見たくも無いとばかりに報告書を閉じた。


「・・・困ったものだな」
「でも成績に問題はないのでしょう。類様は優秀でいらっしゃいますから」

「まぁな・・・小さな時から頭は良かったからな」
「社長に似ておられるのですよ。それは宜しいことじゃないですか。ただ、友人関係の報告もあります」

「友人?」


類の友人と言えばメンバーなど昔から変わらない。
例の3人・・・それ以外に増えたことも減ったことも無い。その家柄に問題もなく、今後も付き合いが続く事は花沢にとっても有益だったから、今更の報告に少し驚いた。

それとも新しい「友人」なのか・・・聖司は続きを話すように指図した。


「はい。道明寺司様のお相手だった牧野つくし、彼女と親しくしておいでだそうですが」

「司君の?」
「はい。でもこの女性は西門総二郎様も美作あきら様も同様に特別な関係を続けています。類様がどのように関わっているかまではまだ調べておりませんが、如何いたしましょう?」


聖司の前には類と並んで笑っているつくしの写真が出された。
それを見て聖司の眉が大きく歪んだ。類のこんな笑顔を見たことがないからだ。

そこには目を細めて幸せそうに笑う息子と、生き生きとした少女が写っていた。飾り気も化粧っ気もない素朴な子・・・一目見て上流家庭の娘ではないと判った。
確かに道明寺の時にそんな噂を聞いたことがある・・・あまりにも掛け離れた世界の娘だった故に認められなかったと。

それが今度は自分の・・・花沢に関係していることに不快感を露わにした。


「そうだな・・・牧野つくしの調査を頼む。出来るだけ詳しくな」
「畏まりました。あぁ、それともう一つ」

「なんだ?」
「これは多分間違いだとは思いますが、類様が最近タチの悪い店に妙な男達と連れ立って出入りしていると報告がありました。社長は黙認されているのですか?」

「なに?類が・・・いや、それは人違いだろう。
あの子は交友関係の広いヤツじゃない。行くとしたら今は西門か美作の倅だろうから行く店は厳選されるはずだ。おかしな店には入らないだろう、お互いにそれなりの家庭なのだから」

「そうですよね?まぁ、私もこれはおかしいと思いましたよ。他人の空似ですね。では、失礼します。


他人の空似・・・聖司は再び溜息を漏らした。








「・・・よし、こんなもんかな?」

つくしが完成したアクセサリーをテーブルに並べ、専用のケースを準備した。
そのケースに飾って店頭に置いてもらう為・・・その並べ方にも工夫を凝らして、どうすれば見栄えがいいかと何度もやり直していた。
これからやって来る夏に似合うカラフルで元気が出そうな色使い。
モチーフも向日葵や太陽を模ったものが多く、自分でも気に入って手放せないものもあったりするぐらいだ。

その横では類が講義に出なかった為に溜まったレポートの作成中で、つくしは自分の作業が終わったら類に珈琲を淹れた。


「・・・はい、どうぞ」
「ん、ありがと・・・休憩しようかな」

「そう言って休憩3回目だよ?類、どれだけ溜めたのよ・・・」
「あははっ!殆どの講義に出て無かったから、流石に教授に怒られた。本当はやらなくても卒業に関係ないんだけどね」

「・・・花沢物産に入るのならって事だよね?」
「まぁね。今のところそうなってるから。夏が終わったら少し会社にも顔を出せって言われてるよ。内定者とは違うプログラムが用意されてるんだって」

「そうなんだ・・・」
「大丈夫、だからって夢は捨てないから。牧野は?新しいの、出来た?」

「うん!見て?」


つくしが大学を辞めた次の日、これまで頑張ったご褒美だと言って類が買ってきたものは、つくしがこれからアクセサリーを作るのに必要な材料一式だった。
しかも類本人にはさっぱりだから業者に「製作に困らない程度」と注文した結果、驚くべき量が届けられたのだ。


レジン液と着色液が大量に、それと上質なライト、各種パーツに色々なシリコン型、中に入れるためのドライフラワーやビーズにパール、ピンセットにキリにコラージュペーパー等々・・・
欲しくても買えなかったものが段ボールで届けられ、逆につくしはこんがらがって作れなくなるほどだった。


『どーすんの、これ?!どれだけ作れるんだろう?!』
『少なかった?もう少し頼む?』

『違うよ、多いんだよ!でも凄い~・・・うわっ、このパーツ、初めて見る。どうやって使うのかしら』
『ネックレスのチェーンもある。こっちはピアス?あっ、これ何?』

『・・・類、判らずに頼んでくれたの?』
『ん、判んないから全部って言った』


大学に行かなくなった時間を淋しくないように・・・しかも仙道の事が判らないからこれまでのバイトも辞める事にしたつくしに、夢に向かうための違う勉強をさせてやりたくて。


「あ、これいいね。あんたに似合いそう・・・向日葵のピアス」
「えへへ!確かにそれ、お気に入りなの。これとセットだよ?」

「ふぅ~ん・・・あ、このブルー・・・」
「あぁ、深海の色だね。ネックレスはこの色にしようか?」

「・・・うん、これがいい」


デルフト・ブルーの中に沈む白い星の砂のピアスを手に取った類が嬉しそうに呟いた。

5月に2人で取って来たヒメルリガイはまだローボードの上で眠っている。






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