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桜の茶会が始まった。

俺達が出ていく前に招待客達は庭に通され、咲き始めた桜の下で開始を待っている状態だ。
そこに親父を先頭にして宗家の俺達が登場する、それは毎年の事だった。

親父のすぐ後ろにはお袋、その後ろに俺が続き孝三郎もこの時は出席する。ただ今回は俺の後ろにつくしが続き、それは30年前のお袋以来のことだった。
瞬間ザワッと声があがる・・・この時俺はつくしを振り返ることが出来ない。
だが堂々と顔をあげてるだろうと信じていた。

招待客達も総立ちして俺達を迎えてくれて、そこには間島の企みを教えてくれた町田支部長の顔もあって、俺は軽く頭を下げた。そして後援会会長の目の前に行くと俺達と客は向かい合う。


「・・・・・・あれ?」
「・・・どうした?いや、後にしろ」

「は、はい・・・」


急に隣に並んだつくしが声を出したから顔を見合わせたが、この状態でそんな事すると不味い。今は騒がず慌てず気を抜かず・・・
穏やかな笑顔で全行程を終わらせることが大事だ。
でもまだつくしは首を傾げている・・・気付かれねぇように肘打ちすると「痛っ!」と声を出して逆に目だってしまった・・・。


「皆様、本日はようこそおいで下さいました。桜の花も咲き始めではございますが、是非茶と共にお楽しみいただけたらと思います。
本日は私の他に息子、総二郎と孝三郎の茶席を設けております。どうぞ宜しく・・・また、総二郎には傍に控えております牧野つくしさんがお手伝いさせていただきます。併せて宜しくお願い申しあげます」


親父の言葉は婚約を匂わせる、所謂これが暗黙の紹介みたいなもの。
大寄せが終われば役員達に正式に紹介され、形式的な承認をして婚約が成立。

勿論これまでに断わられたことはない。家柄に問題などなかったし、後援会が進める縁組みが多かったからだ。


だけどつくしだけは違う。
西門に迎えるのに極普通の家庭の子なんて初めてだ。それを承認してもらおうと思えばそれなりの腕前は勿論のこと、立ち居振る舞いは細かくチェックされるだろう。
そして俺の茶が不味ければ・・・いや、そんな事はないはずだが、出来が悪ければつくしの存在が邪魔だと判断されかねない。

故に、この大寄せで失敗する事は許されない。
あれだけ「自然に」とか「カバーしてやる」とか言いながら、本当は俺が一番緊張していた。




親父の挨拶が終わり、それぞれの持ち場に向かう時につくしに声を掛けようとしたら・・・・・・居ない?!


「あれ、つくし?おい、何処に・・・」

って辺りを見回したら、淡緑の着物が堂本後援会長の目の前にあった!


何してんだっ?!つくしーーーっ!!




************************




家元が挨拶してる目の前でニコニコしてるお爺ちゃん・・・何処かで見たことあると思ったら、病院で見掛けた大福餅詰まらせた食いしん坊のお爺ちゃんだった。
それに驚いて声を出したら総二郎に怒られ、慌てて口を噤んだけど・・・この人、西門の後援会の方だったのかしら?

随分元気そうだけど病気は治ったのかな?
それが気になって、挨拶が終わったら総二郎の所じゃなくてお爺ちゃんの傍に駆け寄った。
周りの人がザワザワしたけど、それよりもお爺ちゃんには忠告しておかなきゃ!そう思って誰にも聞こえないような声でヒソヒソ話をした。


「お爺ちゃん、どうしてここに来てるの?西門とお付き合いあったの?あっ、私のこと、覚えてる?ほら、病院で・・・」
「おぉ、あの時のお嬢さんかい?うんうん、覚えてるよ~。世話になったねぇ」

「そりゃいいんだけど、もう病気は治ったの?大丈夫?」
「すっかり良くなっての。あの後数日後には退院したよ。お前さんの見舞客は治ったのかい?」

「それがね、お爺ちゃんとお話してる間にお見舞い終わってたの。だから私は会わなかったわ」
「そうなのかい?儂のせいかな?悪かったねぇ~」

「ううん!いいのいいの、偏屈爺さんって聞いてたから。お爺ちゃん、今日は桜餅が出るけど頬張っちゃダメよ?また詰まらせたらいけないからね?」
「はいはい、判りましたよ」

「それじゃあね!お爺ちゃん」


話が終わったら思わず手を振りかけたのを止めて、身体に叩き込んだ立礼で挨拶・・・その後ろに雪乃さんの姿があって驚いた!
今日も凄く派手な着物・・・誰よりも目立つと思ったらすぐ近くには真凜さん?!この人も負けじと豪華絢爛な着物で、私に・・・というよりはお互いに牽制してるみたい。

あまりに怖かったからすぐにその場を離れた。


でも色々な人が私を見てる・・・少しビビったけど、ここで怖じ気づいたら負けだ。
だからにっこり笑って総二郎が待ってる茶席に向かった。



「ごめんなさい、お待たせしました」
「・・・何してたんだ?あの方、知ってるのか?(紹介したっけ?)」

「はい?あぁ、大福餅のお爺ちゃん?桜餅は焦って食べちゃだめよって話しただけです」
「大福餅の爺さん?」

「あっ、水屋に行って参ります。お茶菓子の準備ですよね?」
「あぁ、頼む・・・(なんだ?大福餅の爺さんって・・・)」



私の仕事は亭主・総二郎の補佐。
お点前中は通常亭主の斜め後ろに座って、総二郎に困った事が起きたらそれを助ける・・・って言っても総二郎が茶巾や柄杓を落としたりするとは思えないけど。
それにお客様全体に気を配って、そっちに困った事があったら解消する為の行動をとる・・・って言っても私にして欲しくないかもしれないぐらいお嬢様がズラッと並んでるけど。

いやいや、弱気になってどうするの?
そこはお嬢様相手でもニコッと愛想良く笑って、無理矢理でも私が手助けするのよ!


一番の仕事は総二郎のお茶をお客様に取り次ぐこと。
慌てず丁寧に心を込めて運ぶ・・・そして絶対に転けないこと!その為に草履の鼻緒、志乃さんに柔らかくしてもらったんだもん。

お菓子器は正面をお客様の方に向けて持ち、正面に置いた後で一膝下がってお辞儀する。
お茶をお客様に取り次ぐ時は、お茶碗の正面を自分の方に向けて持ち、左手に乗せて右手で横を支え、お客様の正面に座って正面が向くように茶碗を回してから置き、一膝下がってお辞儀をする。


必要以上に笑わないこと。
常にこの場の空気を壊さないように馴染むこと。
お嬢様達に睨まれても下を向かないこと・・・堂々と前を向くこと。


「すみません、お道具の拝見をしたいのですが」
「畏まりました。それでは若宗匠にお取り次ぎ致します。どのお道具をご覧になりたいのか教えていただけますか?」

「あの、もう1度お茶をいただきたいのですが」
「はい。少々お待ち下さいませ」

「お嬢さん、この庭の桜の銘柄を教えていただけますか?」
「はい。お客様の真上の桜は染井吉野ですわ。少し向こうの白い桜は支那実桜(シナミザクラ)と申します」

「よくご存じなのですね~」
「若宗匠に教えていただきました。まだまだ勉強中でございます」



・・・頑張れ、私!!





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Comments 4

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2020/02/15 (Sat) 22:37 | EDIT | REPLY |   
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2020/02/15 (Sat) 23:51 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

あはは!この段階で本当に偏屈爺さんが出てきたら話が終わらないよね?💦
いかんいかん!

まぁ、この爺さんとどうなるかは予想出来るとは思いますが(笑)
きっと味方になってくれるのでしょう!
どっちにしても総ちゃんは大混乱の茶会になること間違いなし!

頑張れ、つくし!

よりも

落ち着け!総二郎ーーーっ!!って感じかな?(笑)

2020/02/16 (Sun) 00:16 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

生粋娘様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

うふふ、覚えてくれてました?
大福餅の爺ちゃん、再登場です♥いい仕事してくれそうですね♥

えっ?!それは・・・もうないと思いますが(笑)
結構書いたと思うんだけどな💦

アレは1Story1Rで許されるはず・・・でももう何回も書いたし💦
大人しくラストに向かわせて下さいっ!!

2020/02/16 (Sun) 00:19 | EDIT | REPLY |   

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