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牧野が堂本後援会長に・・・茶を点てるだと?
俺の聞き間違いか?いや、確かにそんな事を言われたような・・・?

答える前に親父を見れば口を開けて固まってるし、お袋に至っては俺に背中を向けている・・・その向こうで一体どんな顔してんだ?
いや、それよりつくしだ・・・って横を見たらこっちも放心状態。


「堂本会長。どうしても茶室が宜しければ私がおもてなし致します。ですから・・・」
「儂は牧野さんにお願いしておるのだが?それとも若宗匠の半東さんまでするのに茶は点てられんと仰るのかな?」

「いえ、そうではなくてまだ未熟故、お客様にお出しするのは早いかと思いますので」
「未熟でも結構ですわい。人間誰しも初めは出来ぬもの、今の状態で良いので牧野さんにお願い致します。宜しいですかな?若宗匠」

「・・・・・・もしや、何か別のお考えでも?」
「別に何も?」


まさか、このクソジジィ・・・こいつに点てさせて、その出来が悪いといちゃもんつける気か?!そしてつくしが西門には相応しくないと言い掛かりをつけるのか?!
でも雪乃の事は叱りつけたぞ?だからいつの間にか雪乃は隅っこで小さくなってんのに。


・・・仕方ないか。

アメリカでもド根性で点てたし、あの時よりは上達してる。
まだ未熟なのは本当だし、それでもいいと言うなら・・・・・・やらせるか。


「判りました。それでは茶室の準備をさせますので暫くお待ち下さいませ。他のお客様には申し訳ありませんが少し離席致します。お待ちの間は弟子の井上がおもてなし致しますので宜しくお願い致します。
牧野、こちらに来なさい」

「わ、若宗匠?!」
「茶室の準備も牧野の仕事だ。いいから来なさい」


動揺しまくりのつくしを呼び寄せ、水屋に控えていた井上と上田を呼んだ。
井上に引き継ぎをしてから上田には会長を待合に案内するように伝え、俺の茶席の客に一礼して退席・・・つくしを連れて本邸に戻った。



「そ、総二郎!どうしよう・・・!私があんな事言ったから!」
「今更どうにも出来ねぇって。それよりも会長は1度言いだしたら聞かねぇからやるしかない。まず茶席の準備からだ」

「何をしたらいいの?私には出来ないよ!」
「大丈夫だ、俺が教えてるんだから。お前はすぐそこにある藪椿を一枝採ってこい。俺はすぐに部屋を暖めてから掛物と道具を出す。時間がねぇから悩むな!」

「は、はいっ!」


つくしが庭に行ってる間に炭を用意していた炉に釜を掛け、春の掛物を床の間に出した。
『花開萬国春』(はなひらいてばんこくのはる)・・・一輪の花が天下に春の訪れを知らせると言う意味だ。

それが済んだら羽箒で畳を掃き清め、道具を並べた。すぐ横の水屋に置いてある女物の帛紗を用意して、茶碗は高取焼・・・絶対に割れるなよ?と茶碗に念を入れてそこに置いた。


暫くしたら息を切らして戻って来たつくしの手には藪椿が有り、そいつを花器に生けた。
これで何とか形にはなった・・・って事で、ゼイゼイ言ってるつくしを引き寄せ抱き締めてやった。


「総二郎・・・?」
「いいから。こうすると落ち着くだろ?」

「・・・・・・ごめんね、毎回ドジって・・・」
「ははっ、もう慣れたからいいって。でもここからはお前しか闘えない・・・だから俺の力を分けてやる」

「・・・総?」
「大丈夫、きっと出来るから」


そう言った後につくしにキスしてやった・・・茶室でなんてどうかと思うけど。




************************




総二郎から手渡された女性物の帛紗を帯に差し込んで、1度大きく息を吸った。
会長さんが茶室に入ってから私が初めて茶道口から入る・・・その襖の開け方を水屋で練習した。
総二郎が同席するかどうかは会長のお言葉次第・・・もしも、私だけと言われたらそれこそ本当に初めてだ。だからドキドキしながら上田さんが案内してくるのを待った。


「こちらでございます」、その声が聞こえて私の緊張が一気に高まる。
数秒間待ってから会長が座ったのを空気で感じ、水屋から小さく声を掛けた。

「失礼致します」

そう言って両手で茶道口を開け、一礼してから頭を上げた。
堂本会長はニコニコして座っていたけど、私の後ろに総二郎が居るのが見えたら「牧野さん、お一人で」と言われた。


・・・やっぱりね。そうだと思った。
これも仕方の無いことで、ここで総二郎は一礼して茶室に入らずに大寄せに戻って行った。


こうなったらやるしかない・・・総二郎の足音が完全に消えた後、私はお稽古通りに挨拶から始めた。


「本日はようこそお出で下さいました。ささやかな茶席ではございますが,ごゆっくりお過ごしください」
「ありがとう。楽しませていただきますよ」

ここで正式ならば時候の挨拶、掛け物,道具について尋ねられる。
でも今日は掛物の説明だけで終わり、せっかく採ってきた藪椿には触れてくれなかった・・・って、私の方が床の間を見たら、会長がクスッと笑った。

「この花は藪椿ですな?牧野さんが?」
「は、はい!最近少しずつ覚えるようになりました。本日も総・・・若宗匠が自分でやるようにと」

「ほう?それは大切なことです。それに丁度良い咲き具合の花を生けておられる・・・良いと思いますよ」
「ありがとうございます(1番手前のを採っただけですが・・・)」


この後は会長の前に生菓子を食篭と呼ぶ器に入れ、蓋の上に黒文字という箸の一膳を乗せて運んだ。
今日は緑色と桜色の二色に染めた「きんとん」を「小田巻」と言う手法で仕上げたお菓子。続いて干菓子も持ってきて、同じように会長の前に差し出した。

これでやっと薄茶点前・・・気合いを入れすぎて「よし!」と呟いたらまた「クスッ」と笑われた。


表千家では男手前と女手前があって、帛紗の使い方とか茶杓の置き方とかに微妙な違いがある。それに男性は身体の向きを変える時に畳に手をつかないけど女性は畳に手をついて変える。
釜の蓋だって男性は素手で、女性は帛紗を使う。この時に毎回手が滑って蓋を落として総二郎に叱られたっけ・・・。

そんな事を考えながら薄茶点前は進んで行き、何とか一碗、会長の前にお出しした。


それをゆっくり手に取って、やっぱりゆっくり口に運んでいく・・・もう心臓がバクバクしちゃって気絶しそうだった。


「・・・うん、想像通りですな」
「えっ!やっぱりまだダメですか?!」

「ははっ、腕前はまだまだです。でもとても優しい味です。最近の若宗匠のお茶に似た味・・・美味しゅうございました」
「・・・あ、ありがとうございます・・・」

「と、言うことでお菓子を一緒に食べませんか?」
「は?!私も・・・ですか?」

「はい。一人で全部食うと喉に詰まらせますのでな」
「・・・・・・プッ!あっはは!」

「ははは、いや、今日はお茶があるので大丈夫でしょうがね?」
「はい!ではもう一碗、ご用意致しますね!」


この後話が弾んで、気が付いたら2人並んで縁側でお湯のみを抱えていた。
勿論私達の間にはお茶菓子が並び、目の前の5分咲きの桜を眺めながらの世間話。
調子にのってここに来た経緯からアメリカの話、宗家での生活、京都での珍事件、色々喋った。勿論危ない話はしていないけど。


「ははは!牧野さんのご両親は面白いのですな~」
「面白いって言うか無茶苦茶なんです。青森、本当に寒かったんですよ?大風邪引いて何日間寝込んだか!」

「若宗匠の慌てるところも見てみたいものです。あの方は普段はなかなか本性を現しませんのでな」
「うふふ!意外とドジな部分もあるんですよ?」



その時、桜の木の向こう側から現れた総二郎・・・すっごい目で私達を見ていた。


「なに・・・してるんだ?」







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Comments 2

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2020/02/18 (Tue) 13:08 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんにちは。

コメントありがとうございます。

そうそう!男点前、女点前ってあるんだって。
ホントはもっと沢山あったけど、とても書けない(笑)
でも確かに総ちゃんが帛紗使って蓋取ってたら笑うよね💦

うふふ、茶室のイチャイチャね♥
本格的に書いたら怖いけど・・・・・・掛け軸にカメラ、花器に盗聴器・・・ヤバいよね(笑)

そして最後は縁側で・・・まぁ、こういうオチだよね(笑)


カウントダウン、開始です!!やっとだ~~~~!!

2020/02/18 (Tue) 20:52 | EDIT | REPLY |   

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