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plumeria

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赤坂にあるあきらの馴染みの店、そこに総二郎も居合わせて3人で飲んでいた。
勿論誰も入って来ないVIPルームで、完全隔離の部屋だ。

そこでこれまでの事を話した類は椅子の上に丸くなって座っていた。膝を抱きかかえ、まるで子供のように・・・それをあきらと総二郎は表情も無く見ていた。


もう1人では手に負えない・・・静岡から帰ってそう感じた類は幼馴染みに助けを求めた。
話してしまえば友人を続けられるかどうかも判らない、そのぐらいの恐怖を抱えて自分の考えとこれまでに判った事を伝えた。
話している最中の2人は驚きのあまり言葉も失い、狭い部屋に響くのは類の声だけ・・・しかも内容が「自分は何処の誰か」なのだから唖然とするのも無理はない。

同時にあきらは類がそんな疑問を抱えていた事に気付かなかったことを悔やむ素振りも見せた。
逆に総二郎は「何故相談しなかった!」と責める・・・類はそれに軽く笑って応えた。


「誰もそんな事は思いもしないだろ?俺だって本当言えばそうだった・・・漠然としたものではっきりしなかったんだ。
ただ自宅の居心地が悪いだけかなって・・・でもやっぱり違うんだ。俺の居場所はここじゃないって思う気持ちが強くなっていくんだ・・・だから、調べてみようと思った」

「そうしたらおかしな情報が出てきたって?」
「偶然じゃないのか?その居なくなった使用人も火事になった産婦人科も」

「偶然かもしれない。でも、それにしては多すぎない?父さんの女性関係、俺に似た男・・・そいつも静岡で産まれてる」

「馬鹿馬鹿しい!確かにお前の親父さんはモテそうだし、女の1人ぐらい居てもおかしかねぇよ!だからってどうしてお前がお袋さんの子供じゃないって思うんだ?」
「総二郎、お前が興奮するな!で、類はどうしたいんだ?」


頭に血が上りやすい総二郎をあきらが窘め、類は膝を抱えたまま黙っていた。
どうしたいのか・・・そう言われると何処から手をつけたらいいのかが判らない。佐藤由美子を探すのか、森田博美を探すのか・・・それとも山本医師を探すのか。
松島誠二郎・・・その男の素性から調べるのか。

どれも手掛かりが少なすぎる上に、森田と松島は東京に住んでいるしか情報がない。森田の親に聞くのは簡単だが、教えてくれるような時代じゃない。
しかも面倒な事に仙道の事もある・・・こっちは引っ越しの時に説明済みだったが、つくしが絡んでいるために2人の関心は一気に高まった。


「諦めの悪い男だな・・・それで俺のマンションだったのか?てっきり・・・」
「そうそう、アパートだと気になるからだと思ったのに」

「牧野にそんな言い方しないでよ?確かにそれもあるけど」

「「あるんだ・・・」」

「凄く急いで引っ越そうなんて思わなかったけどね。あんな足跡見たら誰だってその部屋に住めって言わないと思う・・・そのぐらい気味悪かったんだ」

「で、トドメにオルゴールの回収か・・・」
「贈り物を捨てられたのを見たらそりゃキレるよな。何だってそんな事したんだ?そこに住まないんだから動かさなきゃ良かったのに」


確かにそうだが、その時は仙道に関係したものを見たくもなかっただけ、そう言うと拗ねたように顔を逸らせた。
だからつくしの部屋のベッドも見たくなかった・・・そのひと言は幼馴染み達には言えなかった。セキュリティーが整ってないと言う理由以前に、自分よりも先に仙道が出入りしていた部屋に居たくない。
それがつくしを引っ越しさせる一番の理由だなんて子供染みた部分を見せたくなかったが、それはとっくに2人には見透かされていた。
「可愛いな、類」と揶揄われ、誤魔化すように酒を喉に流し込んだ。


「牧野の荷物のことは助かったよ。西門なら安心だし」

「外からじゃ判んねぇだろうけど最新の防犯設備が整ってるからな」
「国宝級のお宝が眠ってるんだから当然だ。それに蔵には電波妨害装置もつけたんだろ?」

「あぁ、全部の蔵につけたんだ。この前親父が迂闊に買った掛け軸に妙な小細工がしてあったの見つけてさ、それ以来神経質だから」

「・・・でもどうやって彼奴を見つけられるかな・・・・・・ね、あきら?」


類があきらをチラッと見ると、あきらは「わざとらしいな・・・」と鼻で笑った。
助けを求めたのは美作の情報システムを利用するため、そんな事はこの話をされた時点であきらには判っている。すぐに仙道の求職状況を含め、佐藤由美子、森田博美、松島誠二郎と言うキーワードで調査を開始する事になった。

もう1人、松島良子・・・この人物についても調べなくてはならない。


「親父さんと恋人だったと仮定して、お前が産まれる前だったら22年前って事だろ?東京の企業で就職・・・一番考えられるのは花沢じゃね?」
「・・・だよね。でも今の俺が花沢本社に出向いて人事関係を調べるには無理がある。保存期間だってとっくに過ぎてるし、そんな昔のものなら電子化してるかどうかも疑問だよね」

「それじゃその頃から勤務してる連中に直に聞くしかないよな?」
「それ、余計に俺じゃ無理じゃない?」

「んじゃ俺がやるわ。確か花沢に勤めてるおばちゃんが茶道教室に来てるから。情報が引き出せるかどうかは判んねぇけどな」



もしかしたら仲間から外れるかもしれないのに、そんな事を微塵も感じさせない幼馴染みは頼もしかった。
店を出て帰る時にはいつものように「またな!」と手をあげる・・・それはこの先、自分の立場がどうなろうが変わらないと信じることも出来た。

普段なら照れ臭くて言えない言葉・・・類は2人の背中に向かって真面目な声で礼を言った。


「あきら、総二郎・・・ホントにありがと」

「あぁ?何だよ、改まって言うな、ばーか!」
「万が一お前が無一文になったら美作で雇ってやるわ。俺の部下で扱き使ってやるから覚悟しとけ!」

「・・・くす、その時は宜しく」


「でも牧野だけはちゃんと守れよ?それだけはお前にしか出来ねぇから」

「勿論。それは誰にも譲れないから」




類が乗ったタクシーは自宅ではなくつくしの居るマンションに向かった。
そこで珍しく酔っ払ったまま部屋に行き、類も持っているルームキーで中に入った。
そうやって入って来るのは類だけだと判っているが、いつもはちゃんとインターホンを鳴らして知らせてくる男だ。それも無しに玄関でコロンと寝ている姿に驚いて、すっかり寝支度に入っていたつくしが慌てて水を持って来た。


「どうしたの?そんなに酔っちゃって、なにかあったの?」
「ん?何でもないよ・・・ちょっと久しぶりにね」

「美作さん達に飲まされちゃったの?もう~~!仕方ないなぁ、ほら、起きて?ここ玄関だから」
「・・・あはっ、牧野、奥さんみたい」

「はぁ?!何言ってんの!ば、馬鹿じゃないの?誰だってこの姿見たら言うでしょ!類、起きなさい!」
「あっ、今度は母さんになった・・・」

「はぁ、ダメだわ、こりゃ・・・」



大柄な類を担ぐことなど出来ないから、腕を引っ張りフラフラする腰を支えてベッドまで運んだ。

こんな姿は初めて見る。
楽しいお酒ならいいけれど、そうじゃないなら・・・とつくしは酔って寝てしまった類の髪を撫でていた。


「今日はここで寝るのかな?それなら明日の朝ご飯の支度、しなきゃね・・・」


いつもは見せない無防備な類の寝顔・・・こんな表情を見せてくれるのは自分だけだと思うと愛おしい。

顔を近づけると少しだけ酒の匂いがする。
その頬にキスしてから布団を掛け、つくしはキッチンに向かった。


「お酒飲んだ次の日の朝ご飯かぁ・・・何にしようかな~」


それを悩むのも幸せだと思うつくしだった。






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