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plumeria

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「うわぁーーーっ!!」
「お客様、お止めください!け、警察呼びますよ!」

歌舞伎町の雑居ビルの地下・・・そこにある店で1人の男が気に入らない客を殴り、その客が倒れて店内に悲鳴があがった。
従業員が必死に助け起こし、殴った男に目を向けるが、その男の方は罪悪感すら感じさせない冷酷な目で倒れている客を見下ろして笑っている。


「・・・警察?呼べばいいだろ?その男が俺を睨んだから悪いんだよ」
「睨んだって・・・目が合っただけじゃないか!」

「そう言うの、俺に言わせりゃ睨んだと同じなわけ。で、お前の面が気に入らなかったんだよ!」
「お客様、もうお止めください!他のお客様のご迷惑ですから!!」

「は?俺も客の1人だろうが!!」


今度は従業員の襟元を掴み上げ、その首を絞める。
苦しがって藻掻いているのに手を緩めようとせず、それどころか足でそこら辺にあった椅子を蹴り飛ばして再び悲鳴があがった。この男の後ろには数人の連れが居て、其奴らが出入り口を塞いで笑っている・・・だから、客は誰も外に出られなかった。
奥から出てきたのは支配人と思われる男性で、この様子を見てスマホを取り出した。


「お客様、少々行き過ぎた行動ですので通報させていただきますよ!」
「いいけど?花沢を敵に回す気ならサツを呼べよ」

「は、花沢?花沢って・・・」
「知らねぇの?そっか・・・この程度の店じゃ花沢物産を知らなくても無理ないか。じゃあ仕方ねぇな」

「・・・・・・あなた、花沢の?」
「だったらどうする?いいから電話しろよ」


ニヤリと笑った顔が店内の客に向けられ、全員がシーンとして声も出さない。
支配人が「もうお代は結構ですからお帰り下さい!」、そう言うと男は従業員を倒れている客の上に放り投げるようにして手放し、そのまま高笑いしながら出ていった。

薄暗い階段を上がるとそこで待っていたのは仙道・・・今、暴れていたのは松島誠二郎だ。



「・・・花沢の名前を出したか?」
「あぁ、出しといた。これでいいのか?あんた、そんなに花沢ってのに恨みがあんのか?」

「お前には関係ない。言われたとおりに暴れてくれたらいい。これが今日の分だ」
「はっ!酒飲んで暴れて小遣いか・・・中々良いバイトだな」

「・・・お前にもう少し品があったら別の仕事を頼みたいけどな。また連絡する・・・」



仙道は松島誠二郎を見掛けた日から夜になるとその界隈を歩き回り、再び接触することが出来た。
松島の方は仙道を覚えてはいなかったが、金をチラつかせて仕事を依頼・・・それが類に成り済まして悪態・醜態・愚行を晒すというものだった。

その目的は話してはいない。
ただ「花沢」という名前を出して暴れろ、それだけだった。


本当はもう少し高度な罠を仕掛けたいところだがこの男には品格というものはない。それに類はまだ学生だから企業内で騒がせるには無理かある。
最終的には松島を使ってつくしにも復讐しようと言う思いはあるが、手始めに類のスキャンダルを狙ったのだ。


まだ表舞台には顔を出していない類はその日常をあまり知られてはいない。
華々しい起業家デビューなどさせてなるものか・・・つくしに裏切られたことも類に奪われたことも、今ではその憎悪が快感にも感じられる。
・・・仙道の目が暗闇で光った。






あきらに助けを求めたのは間違っていなかった。
類は数日後美作に呼ばれ、その華やかな洋館の地下にあるメインシステムルームに入った。

そこはセキュリティーが厳重で、あきらでさえ入るためには数回の本人認証が必要だった。当然類にもそれは実施され、静脈、光彩、脈波等その度に足止めされる事に苛つきを覚えるほどだ。


「ホント、相変わらずだね・・・ここ」
「そう言うな。それだけ極秘情報があるって事だしな」

「あるって言うか盗ってるって事でしょ?」
「まぁな。でもそれで助かるだろ?そのうちイギリスで開発中の行動的生体認証を取り入れるらしいぞ。ここの廊下を歩いて来る最中に、その運動情報をネットワーク処理するんだってさ」

「運動情報?」
「歩き方で個体を識別するんだと」

「・・・・・・怖っ・・・」
「だろ?」


そんな会話をしながら部屋に入るとダークスーツの男達が無言でモニターを見ている。
ここに初めて入った時にも異様な光景に気分が悪くなったが、今は前よりも計器類が増えているように感じた。

その中のあきら専用のデスクに座ると、すぐにモニターに映し出されたのは「看護師等免許保持者」に関するものだった。


「・・・これは?」
「保健師や助産師も含めて看護師、准看護師の免許を持っていながら仕事をしてない人のデータ。ここに『金子博美』ってのがあるだろ?」

「金子博美・・・まさか森田博美?」
「そう。結婚して金子になってるようだ。このデータには個人情報が含まれてるからな。そこから調べたら前勤務地が静岡になってて、看護師の登録番号から旧姓が森田って判ったんだ」


森田博美・・・現在金子博美は確かに東京に住んでいた。
職歴の最後が「山本産婦人科診療所」・・・本人に間違いなかった。それからは医療関係に従事してないようだ。


「看護師なんて引く手数多だ。それなのに仕事をしてないってのはその火事がショックだったのかな」
「でも森田博美のせいじゃない・・・いや、待って」

「どうした?」

「放火だって証拠はないんだけど、その時に社員旅行を計画しておきながら急用で行かなかったのは彼女だ・・・でも火事の時には病院に居たって事だよね。偶然・・・かな」
「放火が森田博美の仕業で、火を放ったものの罪の意識でなにかを取りに戻ったか・・・」

「何を持ち出したかったんだろう・・・本人じゃないと判らないか」
「ぶつけてみるか?」

「・・・ん、行ってみる」


佐藤由美子・・・彼女についても調べてみたが、この名前では何も情報はなかった。
20年以上も前のフリーの家政婦など登録制でもないし資格がある訳でもない。年も住所も判らない人間の調査は不可能に近い。
類にしてみれば一番探し出したいのは佐藤由美子だったが、美作のシステムでも探し出せないのだから仕方ない。


「松島について判ったら連絡する。取り敢えず警察に捕まったって記録はなかった。俺達と歳が変わらないみたいだから伊豆周辺の学校に探りを入れるけど時間が掛かるかもな」

「助かる・・・悪いね」


その松島誠二郎が思いの外近くまで来ていることは知る由もなかった。





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★看護師等免許保持者の届出制度
実際に行われているようですがお話しのように外部に漏れるものではありません。
あくまでも妄想のお話しです。念の為申し添えます。
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