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plumeria

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すぐに戻ると言ったつくしが戻って来ない事に嫌な予感がした類が車を降りた。
勿論そこは駐車禁止区間だから気にはなったが、それよりも・・・と、思った時につくしが後ろを振り向きながらこっちに向かって歩いて来るのが目に入った。

ホッとしたがその様子が普通ではない。
類は運転席に戻り、すぐに助手席のドアを中から開けた。


「遅かったね、何かあった?」
「・・・・・・う、うん・・・ちょっとね」

「なに?ちゃんと話して。まさかあいつを見掛けたとか?」
「ううん、そうじゃなくて・・・あのね・・・」


仙道に見つかったらヤバいとしか思っていなかったのに、つくしの口から出た言葉は類をもっと驚かせた。
自分に似た男とぶつかった・・・その時に「類」と言う名前に反応した、それだけで類の頭には1人の男しか浮かんでこない。


松島誠二郎・・・どうやって探そうかと思っていた男がこの付近に居るのだろうか。
今度はつくしを残したまま類が車から飛び出し、つくしが戻って来た道を走っていった!

「類、どうするの?!」

つくしの声が通りに響いたがそれにも応えずに人混みの中に入って行った。
が、どっちに消えたのかも聞いていないのだから追い掛けようがない。自分と似た背丈の男を見掛けては顔を確認したが似ているヤツなどいない。

暫く同じ場所で人の間を縫うように走ったが、結局つくしとぶつかった男を見つけることは出来なかった。自分の進行方向だけではなく後ろも横も、ビルの上まで見上げながら探したが無駄に終わった。



類が飛び出して数分間、幸いパトカーが取締には来なかったがつくしは助手席の横に立ちオロオロしていた。

つくしも伊豆で松島という男のことを聞いているから、名前こそ出せなかったが類と同じ事を考えていた。
万が一見つけて喧嘩になどならないだろうか・・・喧嘩する理由もないのだが、仙道との喧嘩を目の当たりにしているつくしはその時の光景が蘇ってきて恐ろしかった。

さっきの男は仙道よりも遥かに喧嘩慣れしている・・・そう感じたから。
それにあの時聞いた通り人を傷付けることに躊躇いが無さそうに見えた。掴み上げられた腕がまだ痛むのがその証拠だ。


そこを摩りながら待っていると、類が1人で戻って来た。
何も変わった様子はない・・・今度はつくしがそれを見てホッとした。


「・・・ごめん、待たせた」
「ううん。もう居なかったでしょ?」

「うん・・・判らなかった。牧野・・・その腕どうしたの?」
「え?あぁ・・・これね、その人が・・・」


半袖だから赤くなった腕は一目で判る。
類はつくしの身体に残った指の跡よりも、自分の気持ちを優先したことをこの時になって恥じた。そして小さく「ごめん」と・・・その言葉につくしは笑いながら首を横に振った。


「こんなのすぐに消えるよ。それよりも帰ろう?お巡りさん、来ちゃうよ?」
「・・・・・・ん、そうだね」


車に乗り込む時にもう1度奥の通りを見つめた。
つくしが一瞬でも間違うほどの容姿・・・一体どんな男なのだろうかと類の不安はますます高まった。






都内のある茶道教室、そこで今日は総二郎が特別講師をしていた。
本当なら総二郎の仕事ではなかったのだが、この教室には花沢に勤務して25年という池田昌代という女性がいるからだ。

極普通に稽古を進め、中々会えない若宗匠の指導に頬を染める御夫人達・・・今日もその1人に池田昌代も入っていた。


「そうですね、もう少し優しく茶筅を回していただきましょうか。泡立ちすぎては飲みにくいでしょう?」
「わ、判りました!」

「肩の力を抜いて下さい。気持ちを楽に・・・ね?」
「は、ははは、はいっ!!」

ニコリと笑い目を細めてさり気なく肩に手を置き、そこまで近づけなくても良いだろうと思うぐらいの距離で「今日も素敵ですね」のリップサービス。
いつもこうではないのだが、今日はこの後で池田の口を軽くさせなくてはいけない・・・だからいつにも増して総二郎の色香は強かった。


そして稽古も終盤に入ったところで総二郎は態と池田昌子の後ろで躓き、その着物に少しだけ湯を掛けた。軽く悲鳴をあげた彼女だが、見上げれば見目麗しい美青年・・・思わず口元を手で押さえ、総二郎をガン見した。


「申し訳ありません。私とした事が躓いて大事なお着物に・・・宜しかったら奥の部屋に来ていただけませんか?染みになってはいけませんので西門の着物で宜しければお召し替えを」
「いえ!とんでもありませんっ、このぐらい平気ですわ!」

「いえ、私が困るのです。皆様、申し訳ありません、少し席を外しますね?池田様、こちらに・・・」
「は、はい!」


総二郎は「態とらしかったか・・・」と半分舌を出しながら池田昌子を連れて講師控え室に向かった。



「本当に宜しいのですか?私で良ければ着付けも・・・」
「本当に勘弁して下さい!総二郎様の前でそんな事、出来ませんって!」

「そうですか?では・・・少しお話しでもしましょうか?」
「はい?」

「実は皆様にお配りするほど数がなかったのですが・・・極上の羊羹をいただいたのです。お好きですか?」
「はい!」

池田昌子の嗜好物も調査済み。
ここで彼女の大好物の羊羹を出して、総二郎が茶を点て池田に差し出した。これは生徒にしてみれば誰にも言えない激レアな体験・・・総二郎を前に羊羹とお茶を並べられ、気分はハイテンションだった。


「どうしましょう~~!こんな事になって皆様に申し訳ないわぁ!」
「ご内密にお願いしますね?あぁ、そう言えば池田様は花沢物産勤務でしたっけ?部署はどちらです?」

「私は総務ですの。もう若い子から嫌われてるぐらいの勤続年数ですわ。それがどうかしまして?」

「総務・・・もしかしたらご存じかな。母の知り合いで良子さんと言う方が花沢に居たようなんですよ。名字はなんだったかなぁ・・・もう20年とか22年とか前らしいんですが、連絡したいことがあるけど居場所が判らないって困っておりました。
良子さんと言う名前で思い出せませんか?」

「良子さん・・・?さて・・・なに良子さんかしら・・・22年前って言えば・・・」

「まだ私の友人が産まれる前ですね。もしかしたら妊娠してる時かな?母もその友人とは自分が妊娠中に会ってたって言ってた気がするなぁ・・・」


判っても判らなくてもいいと言うぐらいの軽さで、でも何気に誘導するような口調で話し掛ける。
特に池田にも目を向けずに茶を飲みながら世間話でもするように・・・でも、時々チラッと彼女を見ると、総二郎の期待に応えようとでも思うのか真剣に考え込んでいた。

「そう言えば静岡の人だったかな・・・」
「あっ、思い出したわ!それだったら佐藤良子さんじゃないかしら?」

「・・・佐藤?」


松島じゃないのか?

総二郎が驚いた顔をしたのを見て池田昌子も驚いた。
もう1度名字を確認したらやはり佐藤だと・・・。


「静岡の伊豆の人で、確か秘書室勤務の綺麗な方でしたよ?静岡出身で良子って名前でしょ?だったら彼女しか・・・」

「秘書室?へぇ、秘書だったんですね」
「彼女の事は詳しく知りませんけど、その時の専務、今の社長ですけどね、その方の専属だったと思います。
奥様も美人でしたけど秘書も美人だから羨ましいって当時の男性社員が皆言ってましたわ。でも丁度奥様の妊娠が判った時に会社を辞めたんですよ」

「よく覚えてますね。随分前でしょ?」
「えぇ、辞め方がね・・・ちょっと変だったから」

「変?」

「専務と出張に行って、そのまま出社せずに辞めた・・・と記憶してますわ。
総務は人事と同じフロアですし、突然出社も無しで辞められたので書類に困ったんです。だから総二郎様のお母様ももうお会いになれないかも・・・」

「は?あぁ、そうですね・・・今の話は聞かなかったことにします。どうしても調べてくれとは言われませんでしたしね・・・」


松島良子は佐藤良子・・・聖司の秘書だった事が判った。






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