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plumeria

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「・・・ありがとう、総二郎」
『また何か判ったら教えてやる。まぁ、それ以上の事は覚えてねぇらしいけど』


その電話はマンションから自宅に戻った時に掛かった。
総二郎からの連絡をガレージで聞き、そのまま話しながら屋敷の中に戻ると、目の前に立っていたのはたった今話の中に出ていた聖司だ。

まるで自分を待ち構えていたかのように真っ直ぐ顔を見られ、瞬間今の会話を聞かれたような気分がして焦った。すぐにスマホをジーンズのポケットにしまい、軽く頭だけ下げて横を通り過ぎようとする・・・当然聖司は類を引き止めた。


「・・・なんでしょう?また帰宅が遅いなんて言うんですか?」
「21にもなってそこまで五月蠅くは言わんよ。間違いを起こしてないならな」

「間違い・・・ね。そんなものはありませんよ」
「それならいいが、お前を花沢に似つかわしくない店で見掛けたと言う声もある。人違いだとは思うが、出入りする店ぐらい分別つけているな?」

「・・・・・・・・・人違い?」
「いや、何でもない。それより来週の土曜日、予定を入れるな」


来週の土曜日はつくしと旅行に行こうと話していた日だった。
勿論今はつくしもフリーだから変更は可能・・・でも、その変更が聖司の指示だというのは良い気がしない。

類がその返事をしない事に聖司は眉根を寄せたが、逆らうことなど許さないとばかりに土曜日の事を話し始めた。


「先日も話した鳴海商事の1人娘、春菜さんの誕生日がその日なのだ。お前との会食を希望しているらしいからお受けしておいた。そのつもりでいなさい」

「そのつもりとは?会食だけでいいのでしたら行きますが、それ以外の何も期待しないで下さい」

「言ってる意味が判らないとでも言うのか?まだ学生のうちに結婚などとは言わないが、婚約だけは早くてもいいと鳴海社長はお考えだ。私もそれでいいとお答えしている、そう言う事だ」

「お断りします。まだ婚約すら考えたこともありませんし、そうなる時には自分で選びます。押し付けられた相手などお互いに不幸になるだけでしょ?」


こんな会話は初めてではないから、類は気にもせず聖司に背中を向けた。
顔が見えなくなった途端に口から出るのは「馬鹿馬鹿しい」という独り言・・・愛想良くも出来ない自分との会食など、終わった後でガッカリするのは春菜という女性の方だろうに、と。

だが階段を数歩上がったところで、今度は聖司の声色が変わった。


「牧野つくし・・・この子の存在がお前にそんな態度を取らせているのか?」


その言葉で類の足は止まり、ポケットに突っ込んでいた手が拳を作った。

牧野つくしと言う名前は司の事で知っている人間は多い。
それに類はつくしが大学に在籍していた時に恋人宣言とも取れる行動をした。だから聖司に情報として伝わっていてもおかしくはない・・・それを覚悟して大学ではつくしをガードしていたのだから。

故に驚くと言うよりは思ったよりも早かった・・・と言う程度だ。


「私が何も知らないと思ったら大間違いだ。念の為に伝えておくが、その娘のことは遊びなら構わん。だが花沢に迎えようなどと思うな。あの道明寺を怒らせた女など問題外だからな。
それに司君が捨てた女をお前が拾うような真似を・・・」

「やめて下さい!」

「・・・・・・!!」


類が聖司に大声を出したことはこれまで1度も無かった。
反抗心は露わにしてもいつも無言・・・拒否の言葉を出すことはあったが最終的には聖司の命令の方が勝っていた。その類が階段から鋭い目で自分を見下ろし声を荒げたのだ。聖司はそれに驚いて次の言葉を呑み込んだ。


「牧野は品物じゃありません。司が捨てたのでも、俺が拾った訳でもない。
彼女と司は真剣に向き合った結果、同じ道を歩む決断が出来なかっただけです。しかもそれは本人達の気持ちを無視した話合いの上に成立した別れだ。
そして俺が今彼女と居るのは道明寺とは関係ないこと・・・それ以上牧野を侮辱するのは父さんであっても許しません」

「なんだと?本気だとでも言うのか?」

「本気です。俺には彼女以外の誰も考えられない・・・そして彼女に手を出そうというのならこっちにも覚悟があります」

「お前、私の言うことに逆らうのか!」

「俺の人生は俺のものだとこの歳で判ったんですよ。あなたの思い通りにはならない・・・今後は俺の事をたった1人の後継者だと思わないで下さい」

「・・・類!!」
「それでも良ければ会食ぐらいしますよ。でも、その結果は保証しません」


静かな屋敷に響き渡った類の言葉・・・それは聖司を黙らせた。
数秒間の沈黙の後、類はクルリと向きを変え自分の部屋に向かった。その後ろ姿を聖司は硬直したまま見ていたが、姿が見えなくなると大きく溜息をつき彼も自分の部屋に戻った。

そして1人きりの部屋の中で誰にも見せないようにと引き出しにしまっている写真を取り出した。


優しい笑顔の亜弓と、その横でスヤスヤと眠っている産まれたばかりの類・・・その写真を眺めながら、何故か表情は憂いに満ちていく。
彼もまた21年間、抱えている疑問があった。


もしかしたら・・・・・・でもその先は決して口に出してはならぬと、今日もそっと引き出しを閉めた。






部屋に入った類は聖司の話など頭から抜けて、総二郎から聞いた話を思い出していた。


松島良子ではなく佐藤良子・・・聖司の秘書で伊豆の産まれ。
そう考えると自分が探している人物に間違いないと思うのだが、何故名字が違うのか・・・そして佐藤という名前は偶然なのか。
頭には佐藤由美子が浮かんでいたが、佐藤という名字は全国的に多いものだ。そこが同じと言うだけで2人を結び付けるのは強引か、とも考えていた。

もっと不思議なのは亜弓の妊娠が判った頃に不思議な退職をしていること。

佐藤良子もいきなり姿を消すように居なくなるとはどういう事なのか・・・。
しかもこっちは花沢物産勤務で個人宅の家政婦ではない。それなりに事務処理が行われると知っていて失踪したかのように辞めるなんてあるだろうか・・・。


森田博美・・・金子博美にも会いに行かないといけない。

絡まった糸が解けないうちに持って来られた鳴海春菜との会食・・・ぶつけようのない苛立ちが類を謎に満ちた闇に縛り付けていた。





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