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「あなたという人は・・・どうしてそうなんでしょう。呆れて何も言えませんわ」
「確かに。堂本様とティータイムですか・・・聞いた事もありませんね」
「楽しかったんでしょうけどねぇ・・・」

「・・・はぁ、でもお爺ちゃんが・・・」
「お爺ちゃんではありませんっ!後援会長です!」


桜の大寄せが終わって、総二郎達は大広間で会合中。
私はと言うと、右に志乃さん、左に堤さん、正面に西村さんと言う位置関係で「取調室」状態・・・総二郎がティータイムの報告なんてしたもんだからお説教されていた。

しかも病院にお見舞いに行った時にお爺ちゃんを後援会長だと思わずに「意地悪な皮肉れ者」って言ったことまでバレちゃった。
もうこれで私の婚約者内定は完全消滅と言わんばかりに怒られ、家元夫人の着物を着たまま小さくなっていた。


「・・・はぁ・・・」

「溜息つきたいのはこちらです!牧野さんが西門に迎えられないのは自業自得ですけど、総二郎様のお言葉まで素直に伝えていただなんて!その方が一大事です!」

「でも私、西門って言ってないんですけどね~」
「茶道家なんてそんなにわんさか居る訳ではありません!そして茶道の後援会長なんて方も僅か数人、その人達が同じ病院に居たら関係者だって判るでしょうっ!!」

「志乃さん、そんなに興奮しないで下さい!血圧が・・・!」
「ACE阻害薬、またはカルシウム拮抗薬をお持ちですか?普段から血圧高いですか?」


堤さんの冷静なひと言で志乃さんも黙ってくれたけど、この場の空気が悪い事に変わりはない。
今、大広間はどうなってるのかな~とそっちに目を向けたら、1人のお弟子さんがやってきた。


「牧野さん、若宗匠がお呼びです。大広間に来て下さいって!」
「えっ!私が行くの?!」

「はい。皆様お待ちのようです。お急ぎ下さいね~」


ソンナニカルクイワナイデ・・・。

ニコッと笑ってお弟子さんは消えて行ったけど、私達は呆然・・・誰も呼吸してないみたいだった。


「「「・・・・・・・・・」」」
「どどどど、どうしよう~~~っ!」

「いや、牧野さん。これは少し様子が違うようですよ?」
「えっ!堤さん、どういう事ですか?」

「そうですわ・・・呼ばれたと言うことは承認していただけたのですわ」
「へっ?志乃さん、承認って・・・?」

「はい。牧野さんと総二郎様のことをお認めになったので、あなたを呼んで正式にご挨拶、つまりお披露目です。良かったですね、牧野さん。会長さんはあなたの事を好意的に思ってくれているのでしょうね、うんうん!」
「西村さん・・・顔貸して下さい」

「は?」

前に立っていた西村さんのほっぺたを思いっきり抓ったら「いだぁーーっ!!」と叫ばれ、今の言葉が夢じゃないって思った。「自分を抓ったらどうなの!」って志乃さんが言ったけど、自分で抓ったら痛いんだもん。
でもこれで目が覚めて、急に立ち上がったけど・・・・・・行ってどうしたらいいのかさっぱり判らない。


総二郎達はパニックになったまま会合に入ったから私は放置だったし、打ち合わせもしていない。
どうしたらいいのかと3人を見たら・・・志乃さんが私の着物の着崩れを治してくれて、西村さんが「西門流の作法に則って中に入り、その後は総二郎様の指示に従って下さい」・・・と。

堤さんは私の目の前に立って、フッと鼻で笑った。


「いつものあなたでいいのです。無理に気取らず、自然体で・・・忘れてはならないのは感謝の心と笑顔です。
さぁ、行ってらっしゃい。私達はここで待っていますから」





**





縁起担ぎの着物は本当だった。
私は家元夫人の着物を着て、今度はきちんと髪にも帯にも飾りをつけた。

そして大広間に向かう廊下を1人で歩いて、このお屋敷に初めて来た日を思い出していた。



失恋の腹癒せに酔っ払って車に傷付けて、お医者様まで呼んでもらった急性アルコール中毒の私。
総二郎の突然のキスに始まった秘書の仕事、堤さんって言う素敵な上司、そして意地悪してくる女性達・・・この廊下も何度転けたことか。
それが今日はこんなに綺麗な着物を着て、総二郎が待ってる部屋に向かう・・・人生とは不思議なものだ。



これから始まる挨拶は私がここで生きていく為の第一歩・・・秘書でも見習いでもなく、正式に認めてもらったんだ。
だから堂々と・・・堂々と前を向いて笑っていよう。


総二郎の隣で笑っていよう。


私の足が大広間の前で止まり、そこで正座をした。
沢山の人の気配がする・・・私の知らない新しい世界がここにある。
飛び込むのは勇気が要るけど、それでも逃げ出すわけにはいかない。教えてもらったようにやるだけだ。


「失礼致します。牧野でございます」

「お入りなさい」


聞こえたのは総二郎ではなく家元の声だった。
1度深呼吸してから作法に従って襖を開け、一礼・・・左足から部屋に入り、ここで座り直して襖を閉めてから向き直る。それから座礼による合手礼(ごうしゅれい)。

顔をあげたら正面には堂本会長が見えた。
そして上座には家元、家元夫人・・・その横で総二郎が微笑んでた。


「それでは皆様ご紹介しましょう。昨年まで総二郎の秘書を務めてくれました牧野つくしさん。
今後は総二郎の婚約者としてこの屋敷で稽古を続けます。どうぞ皆様、宜しくお願い致します。牧野さん、こちらに来て後援会の皆様にご挨拶を」

その時には総二郎が私の場所を指し示してくれたから、そこに向かい正座して一礼。
身体を起こしたら・・・総二郎の言葉と堤さんの言葉が同時に浮かんだ。


『つくしさんが彼女らしく生きていけるように、この私が全力でお守りします。それに彼女が居ないと私が私らしく生きていけないのです。ですから傍に居ないと困る・・・私の我儘でもあります。 その分、絶対に泣かせるような事もしないとお約束します。
正直、苦労はすると思います。でも、それ以上の幸せを感じてもらえるように努力します』

『いつものあなたでいいのです。無理に気取らず、自然体で・・・忘れてはならないのは感謝の心と笑顔です』



よし!!私らしく、有りの儘で・・・だ!


「只今ご紹介いただきました牧野つくしと申します。
正直に申し上げまして、まだまだこの世界のことを知らない未熟者でございます。持っているのは根性と元気、体力は2倍、そして若宗匠を想う気持ちだけでございます。
これから沢山の勉強をしていかなければなりませんが、若宗匠から稽古は一生だと教えていただきました。ですから時間は掛かるし微力だと思いますが、西門流の為に頑張る所存です。どうか皆様、宜しくお願い致します」


あれ?・・・どうしてみんな笑うの?
どうして総二郎が赤くなってんの?

だって、挨拶の仕方、教えてくれなかったじゃないのーーっ!!


後で総二郎に言われたのは「ヤる気満々って言ってるみたいなもんだ!」・・・だった。





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明日、最終話でございます♥
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2020/02/21 (Fri) 22:41 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

堤さん、素敵でしょ♥
でもつくしの「ありのまま」はかなりヤバいと思うんだけどね💦
この堤さん、志乃さん、西村さんの西門3セットは好きでしたね~。

何度か書いたけど、この婚約場面って難しいわ~(笑)
牧野家は簡単なんだけどね、西門家はいつもどう挨拶させようかと悩む・・・。


むふふ!体力と愛情・・・そりゃ総ちゃんも赤くなりますわね♥

2020/02/22 (Sat) 00:54 | EDIT | REPLY |   

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