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再び美作の屋敷で膝をつき合わせる3人・・・あきらの操作するパソコンのモニターにW大の卒業生が表示された。
そこにあったのは「佐藤良子」の名前・・・今から28年前の事だった。

それならば類が産まれた頃には花沢に入社して6年目、専務秘書としては早い方かもしれない。


「でも地元の人間は松島って呼んでるんだろ?昔から松島で大学と花沢が佐藤・・・で、生まれた子供は松島か?」
「親の離婚や再婚でそうなる場合もあるだろうしな・・・でもこれでほぼ間違いないんじゃないか?」

「・・・そうだね。花沢に入社するのに偽名は考えられない。それに大学だって佐藤なんだから名字はあきらの言うように再婚か離婚かって事だよね」

「でも尋常じゃねぇぞ?出張先からの退職なんて聞いた事がねぇ。そこで何かがあったとしか考えられないけどな・・・」
「たとえば?」

「・・・事故に遭ったとか、怪我で動けないとか・・・最悪は命を落としたか」
「いや、誠二郎が産まれてるんだからそれはないだろう」

「だよな~!」


そしてあきらは松島誠二郎が起こしたと言う傷害事件についての調査結果も出してきた。
それは市会議員の息子に大怪我をさせたものだったが、議員の息子もかなり素行が悪かったようで公表はされていなかった。だから松島誠二郎が補導されたという履歴はない。
喧嘩そのものも議員の息子の方が仕掛けていたと判り、逆に多少の口止め料を誠二郎側が手に入れたとの情報もあった。


「この時の名前は松島だ。その高校に人やって調べさせた。
怪我は全治2ヶ月の重症だったが松島も腕に相当な切り傷を負って跡が残ってるらしい。まぁ、相手はそんなもんじゃなかったらしいけどな。で、問題はこっちだ」

「なんだ?」

「松島誠二郎の写真が手に入った。驚くぞ?」


あきらがモニターに映しだした顔・・・それを見て総二郎も類も固まった。


そこに映ったのは目付きこそ違うが類によく似た男。
勿論あきらも総二郎も見間違うという程ではないが、遠目だったりそこまで面識がなければ間違っても不思議ではないぐらいだった。もしこの2人が兄弟だと言われればそれは誰もが納得する・・・そんな容姿だ。


「牧野が瞬間見間違えたのも無理はないな・・・すぐに気付くけど確かにぱっと見たらお前だと思うよな」
「・・・・・・自分では判らないけど、そうなんだろうね」

「でも類は無感情で何考えてるか判んねぇけど、此奴は敵意丸出しじゃん?まずそこで間違わねぇよ」
「俺達はな。でもよく知らない人間なら気付かないかも」

「・・・気に入らないけど俺のスマホに転送しといてくれる?あきら」
「あぁ、判った」



そして仙道の情報に話が移った。

仙道の務めていた会社は美作とも取引があり、そこの人事関係者を1人呼び出して美作に引き抜くことを条件に懐柔し、個人情報のデータを入手。
そのデータを求職情報のシステムで検索して得られたのは「総て応募せず」だった。


「って事は紹介してもらった企業には一切出向いてねぇ訳だ?」
「・・・プライドの塊だって牧野が言ってた。だから気に入らなかったんだろうな」

「それとも働くより先にやりたいことがあるって事か・・・」
「あきら、その言い方やめろ。お前が言うと怖いから」


データに残っている紹介企業の名前は大手から中小企業まで様々だった。
大手なら行きそうなものだが配属に不満があったのだろうか・・・でもモニターの文字からはその真意は伝わらない。そこに就職しなかったという事実だけが表示されているだけだ。
この男が生活費のためにバイトや日雇い等の仕事を選ぶとも考えにくい。無職の状態が長いのもプライドを傷付けると思うのに、その行動が理解出来なくて不安だけが増した。


「余程親の前で恥をかかされたことが気にくわなねぇんだな。そんなもん、いい歳してるんだから親から離れれば気にしなくても良さそうなのに」

「気に入られ過ぎても窮屈だしな。それに母親と似たような女を捜すなんて俺は考えられない・・・ゾッとする」
「心配するな、あきら。夢子おばさんと同じような女はいねぇよ・・・」

「・・・・・・・・・」


選んだ女性を母親に気に入られたい・・・。
既に母が居ない類にはそれも叶わない夢だが、その気持ちは判るような気がした。だからと言って仙道のように相手を「創り上げよう」などとは思わない。

つくしなら、その有りの儘の姿で亜弓はきっと気に入ってくれる・・・総二郎とあきらの巫山戯合いを聞きながら、つくしと亜弓が並んだ光景を想像していた。







マンションに戻るとつくしが夕食の支度でキッチンに居た。
今日もお気に入りのエプロンをつけて類がもう1度食べたいと言った焼きうどんの準備。帰ってきたらすぐに作れるようにしていたと楽しそうに笑った。

類はその笑顔が愛おしくて・・・でも旅行の中止も告げなくてはならない。


シンクの前でフライパンを取り出したつくしの後ろから抱き締め、それに驚いて手が止まった。肩越しに見上げると類が辛そうにしている。何かあったのだと悟ったつくしは、ここでも微笑んだ。
自分まで一緒になって辛い顔をする訳にはいかない・・・ここ最近の類の不安は総て承知しているから。


「どうしたの?私でいいならいくらでも聞くよ?」
「・・・・・・新しい何かが判ったわけじゃない。あんたとの旅行が・・・延期になったんだ」

「なんだ、そんな事?いいじゃん、また行けそうな時に行ったらいいんだよ。無理に来週だなんて思わなくてもさ」
「・・・でも俺が楽しみにしてたから」

「くすっ、私だって楽しみだったよ?でも仕方ないことだって沢山あるよ・・・・・・また家の用事?」


類はここで誤魔化すべきなのか正直に言うべきなのか少しだけ迷った。
でもやはりつくしに嘘はつけない・・・自分の気持ちは変わらないのだからと、聖司に言われたことを伝えた。つくしは抱き締められたままそれを聞き、表情は変えずに類の腕を掴んだ。


この人の温かさを疑うことはない・・・つくしはニコッと笑うとまたさっきと同じように見上げた。


「判った・・・うん、お父さんの言うことなら仕方ないね。でも約束して?食事をするのはいいけど、心まで奪われないって」

「そんな約束ならしなくても大丈夫。心の中にはあんたが住んでるから誰にも奪えない」



嬉しいはずの言葉なのにどうして涙が滲むのだろう・・・。
その涙が溢れ出さないようにと、つくしは笑いながら上を向いた。





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