Say Yes (7)
「あれ?専務、今日は残業無しですか?」
「ん、急ぐ仕事はないから」
「でも急いで行く所もないですよね?」
「・・・・・・・・・今年はあるんだよ」
ひと言余計な秘書・藤本を一睨み・・・午後7時になったらコートを片手に社を飛び出した。
牧野の行動なんて手に取るように判るから、多分あの日に俺が企画課に寄らなかったことを不思議に思って営業部に顔を出してるはず。そこでプレゼントの話を聞いて・・・今日、絶対にホテルに様子を探りに来る。
来なかったら・・・・・・・・・いや、必ず来る。
98%の確信がある。
残り2%は牧野の鈍感が俺の予想を遥かに上回ったとき・・・妄想ルイスと夢の中で遊んでるとしたらそれも有り得る。
いやいや、そうじゃなくて。
頼んでいたプレゼントを取りに行って、それからMホテルに着いたのは7時45分だった。
丁度その時に近くで止まったタクシーから降りてきた女性を見た時、もう噴き出しそうで我慢出来なかった。だから振り向かずに片手で口を覆って笑った。
どうしてそんなにお洒落してるの?
髪だってそんなに盛っちゃって・・・それに初めて見るようなヒールで蹌踉けながら俺の後ろをついてきてる。
ここで普通のエレベーターに乗ろうとしたけど・・・一緒に乗ったら面白くないよね?って事でやっぱり高層階専用のエレベーターに乗った。
そこまで来るのを待ってから考えようか。
さり気なく部屋番号を知らせる方法はっ・・・と。
先にスィートルームの階に着いたけど当然牧野はまだ来ない。
だから俺の部屋に入ってまずはプレゼントを用意・・・そしてルームサービスでディナーを頼んだ。
「さてと・・・もう来てるかな?今、何処に居るんだろ?」
少しだけドアを開けたら、丁度エレベーターが着いて数人の宿泊客に混じった牧野がコソコソと降りてきた。でも部屋が判らないからエレベーターホールをウロウロ・・・そして廊下の右側に消えて行った。
あそこには談話ルームがあるからそこで悩んでるな?と思ったからスマホを持って廊下に出た。
・・・でも、自慢じゃないけど独り演技なんて出来ない。
だから藤本に電話した。
『・・・もしもし?専務、どうしたんですか?』
「今何処?」
『は?まだ会社ですよっ!専務が早く帰るから!で、どうしたんですか?』
「あぁ、そうなんだ・・・」
『そうなんだ、じゃないでしょ?私だって今日は妻とデートの予定なんですから!』
「いいよ、待ってる。気にしないで?」
『いや、待ってるのは妻ですから!怒りますよ?専務』
「馬鹿だな、怒らないよ」
『だから!怒ってるのは私ですって!』
・・・声がデカいよ、藤本。そんなの牧野に聞こえたらどうすんの?
せっかくの計画が台無しじゃん。ってチラッと横を見たら誰も居なくてカーテンが動いてた。
ぶっ!!もう我慢出来ないっ・・・!あの歳で、あの格好でカーテンに包まってんの?!
『聞いてるんですか?!もうすぐ私も帰りますから電話、切りますよ?』
「・・・あぁ、判った。うん・・・部屋は3507だけど」
『は?そりゃ何処の部屋ですか?専務の部屋に来いって言うんですか?でも確かマンションの部屋はそんなんじゃないですよね?』
「ん、愛してるよ。じゃあ後でね」
『はぁ?!ばばばば、馬鹿言わないで下さいっ!私はノーマルですからっ!!』
大丈夫、俺もノーマルだから。
でもこうでもしないと上手く間が取れないから。絶対明日、凄い顔して怒鳴るんだろうな・・・・・・まぁ、いいや。
電話を切って部屋に戻り、それから暫く時間を置いてからもう一つの扉を開けた。
実は俺の予約した部屋はコネクティングルームで、隣の部屋と繋がっている。だから廊下に出るドアは2つ・・・そこから顔を出すと、牧野が俺には背中を向けた状態で3507号室の前に立ってた。
やっぱり鈍感だよね・・・全然気がついてない。
だからドアにへばりついてる牧野の後ろにそーーーっと近付いた。
「・・・でも何処かに隠れなきゃ彼女に見つかるよね・・・」
「じゃあ俺の部屋に隠れる?」
「隠れる部屋があるなら嬉しい・・・・・・・・・はっ?!」
「こんばんは、牧野。何してるの?」
凄い顔・・・可愛くしてるのに大口開けて目を見開いて、俺が顔を近づけたらズズッと後ろに下がったせいで足が蹌踉めいた!
慣れないハイヒールなんて履くから!って慌てて抱き留めたけど、それでも吃驚顔のまま。
アワアワしてる唇に瞬きも出来ない目・・・面白かったけど、そろそろお終いにしようかな?
「よくここが判ったね。それよりどうして此処に来たの?」
「・・・・・・あっ、あのっ・・・だからそのっ・・・」
「部屋に入ろうか。隠れたいんでしょ?でもどうして隠れるの?誰かに見られちゃ不味いの?」
「あっ、でもっ・・・もうすぐ来るから、だから・・・っ」
「誰が来るの?もしかして国宝級に鈍感な人の事?」
「そ、そうっ!!ごめん、花沢類っ!ちょっと、その・・・気になってと言うか・・・手・・・手を離して・・・!」
「離したら転けるよ?いいから・・・おいで、牧野」
グイッと引っ張り上げて隣の3506号室のドアを開けたらキョトン。
もう俺に逆らうことなくその部屋に入って呆然としてた。
そしてやっと動き始めた口と目・・・驚く程速い瞬きを繰り返して、ちょっと震え気味の唇でこの状況の説明を求められた。
どっちかって言うと侵入者はあんたなのに・・・って言葉は出さないけど。
「この部屋と3507号室は繋がってるだけ。で、俺はこの部屋を恋人の為に予約したんだけど?」
「そうなの?じゃあもうすぐ隣の部屋に来るんじゃないの?私が此処に居たら不味いじゃない!」
「もう来たからいいんじゃない?」
「えっ?いつの間に?!声なんて聞こえなかったけど?」
「うん、かなり驚いてたみたいだからね。でも今は良く喋ってるよ」
「うそっ!声が聞こえるの?何処?何処から?!」
「目の前から」
「・・・・・・はい?」
「俺の目の前で国宝級に鈍感な彼女が騒いでるでしょ?まだ気付かないの?」
「・・・・・・・・・へ?」
くすっ、やっと気が付いた?
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「でも急いで行く所もないですよね?」
「・・・・・・・・・今年はあるんだよ」
ひと言余計な秘書・藤本を一睨み・・・午後7時になったらコートを片手に社を飛び出した。
牧野の行動なんて手に取るように判るから、多分あの日に俺が企画課に寄らなかったことを不思議に思って営業部に顔を出してるはず。そこでプレゼントの話を聞いて・・・今日、絶対にホテルに様子を探りに来る。
来なかったら・・・・・・・・・いや、必ず来る。
98%の確信がある。
残り2%は牧野の鈍感が俺の予想を遥かに上回ったとき・・・妄想ルイスと夢の中で遊んでるとしたらそれも有り得る。
いやいや、そうじゃなくて。
頼んでいたプレゼントを取りに行って、それからMホテルに着いたのは7時45分だった。
丁度その時に近くで止まったタクシーから降りてきた女性を見た時、もう噴き出しそうで我慢出来なかった。だから振り向かずに片手で口を覆って笑った。
どうしてそんなにお洒落してるの?
髪だってそんなに盛っちゃって・・・それに初めて見るようなヒールで蹌踉けながら俺の後ろをついてきてる。
ここで普通のエレベーターに乗ろうとしたけど・・・一緒に乗ったら面白くないよね?って事でやっぱり高層階専用のエレベーターに乗った。
そこまで来るのを待ってから考えようか。
さり気なく部屋番号を知らせる方法はっ・・・と。
先にスィートルームの階に着いたけど当然牧野はまだ来ない。
だから俺の部屋に入ってまずはプレゼントを用意・・・そしてルームサービスでディナーを頼んだ。
「さてと・・・もう来てるかな?今、何処に居るんだろ?」
少しだけドアを開けたら、丁度エレベーターが着いて数人の宿泊客に混じった牧野がコソコソと降りてきた。でも部屋が判らないからエレベーターホールをウロウロ・・・そして廊下の右側に消えて行った。
あそこには談話ルームがあるからそこで悩んでるな?と思ったからスマホを持って廊下に出た。
・・・でも、自慢じゃないけど独り演技なんて出来ない。
だから藤本に電話した。
『・・・もしもし?専務、どうしたんですか?』
「今何処?」
『は?まだ会社ですよっ!専務が早く帰るから!で、どうしたんですか?』
「あぁ、そうなんだ・・・」
『そうなんだ、じゃないでしょ?私だって今日は妻とデートの予定なんですから!』
「いいよ、待ってる。気にしないで?」
『いや、待ってるのは妻ですから!怒りますよ?専務』
「馬鹿だな、怒らないよ」
『だから!怒ってるのは私ですって!』
・・・声がデカいよ、藤本。そんなの牧野に聞こえたらどうすんの?
せっかくの計画が台無しじゃん。ってチラッと横を見たら誰も居なくてカーテンが動いてた。
ぶっ!!もう我慢出来ないっ・・・!あの歳で、あの格好でカーテンに包まってんの?!
『聞いてるんですか?!もうすぐ私も帰りますから電話、切りますよ?』
「・・・あぁ、判った。うん・・・部屋は3507だけど」
『は?そりゃ何処の部屋ですか?専務の部屋に来いって言うんですか?でも確かマンションの部屋はそんなんじゃないですよね?』
「ん、愛してるよ。じゃあ後でね」
『はぁ?!ばばばば、馬鹿言わないで下さいっ!私はノーマルですからっ!!』
大丈夫、俺もノーマルだから。
でもこうでもしないと上手く間が取れないから。絶対明日、凄い顔して怒鳴るんだろうな・・・・・・まぁ、いいや。
電話を切って部屋に戻り、それから暫く時間を置いてからもう一つの扉を開けた。
実は俺の予約した部屋はコネクティングルームで、隣の部屋と繋がっている。だから廊下に出るドアは2つ・・・そこから顔を出すと、牧野が俺には背中を向けた状態で3507号室の前に立ってた。
やっぱり鈍感だよね・・・全然気がついてない。
だからドアにへばりついてる牧野の後ろにそーーーっと近付いた。
「・・・でも何処かに隠れなきゃ彼女に見つかるよね・・・」
「じゃあ俺の部屋に隠れる?」
「隠れる部屋があるなら嬉しい・・・・・・・・・はっ?!」
「こんばんは、牧野。何してるの?」
凄い顔・・・可愛くしてるのに大口開けて目を見開いて、俺が顔を近づけたらズズッと後ろに下がったせいで足が蹌踉めいた!
慣れないハイヒールなんて履くから!って慌てて抱き留めたけど、それでも吃驚顔のまま。
アワアワしてる唇に瞬きも出来ない目・・・面白かったけど、そろそろお終いにしようかな?
「よくここが判ったね。それよりどうして此処に来たの?」
「・・・・・・あっ、あのっ・・・だからそのっ・・・」
「部屋に入ろうか。隠れたいんでしょ?でもどうして隠れるの?誰かに見られちゃ不味いの?」
「あっ、でもっ・・・もうすぐ来るから、だから・・・っ」
「誰が来るの?もしかして国宝級に鈍感な人の事?」
「そ、そうっ!!ごめん、花沢類っ!ちょっと、その・・・気になってと言うか・・・手・・・手を離して・・・!」
「離したら転けるよ?いいから・・・おいで、牧野」
グイッと引っ張り上げて隣の3506号室のドアを開けたらキョトン。
もう俺に逆らうことなくその部屋に入って呆然としてた。
そしてやっと動き始めた口と目・・・驚く程速い瞬きを繰り返して、ちょっと震え気味の唇でこの状況の説明を求められた。
どっちかって言うと侵入者はあんたなのに・・・って言葉は出さないけど。
「この部屋と3507号室は繋がってるだけ。で、俺はこの部屋を恋人の為に予約したんだけど?」
「そうなの?じゃあもうすぐ隣の部屋に来るんじゃないの?私が此処に居たら不味いじゃない!」
「もう来たからいいんじゃない?」
「えっ?いつの間に?!声なんて聞こえなかったけど?」
「うん、かなり驚いてたみたいだからね。でも今は良く喋ってるよ」
「うそっ!声が聞こえるの?何処?何処から?!」
「目の前から」
「・・・・・・はい?」
「俺の目の前で国宝級に鈍感な彼女が騒いでるでしょ?まだ気付かないの?」
「・・・・・・・・・へ?」
くすっ、やっと気が付いた?
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