Sister Complex (5)

3月の終わり、俺の誕生日が近づくと家中が慌ただしくなった。
俺の事ではなく、初めて披露するつくしの支度で毎日母さんは忙しそうだった。

「ドレスはもう仕上がってるわよね?見せてちょうだい・・・後はアクセサリーだけどよく確認しておいて。
この日にご招待している方の名簿はどこなの?つくしにも見せておいて。お名前ぐらいは知っておかないと
いけないわ。それと・・・」


そう・・・俺のバースディパーティーとは名ばかり・・・この日には色々な企業のトップが招待されている。

もう俺は大学生でそこら辺の企業には顔も知られているのに、いつにも増して有名企業が呼ばれているのは
つくしにいい相手を見つけるため・・・年の近い息子がいる家はこの日つくしを見に来るのが目的だろう。


リビングにはつくしのために用意された特注のドレスがいくつか並べられた。
どれもオーダーメイドで一目で質の良さがわかるもの・・・同じように特注のアクセサリーも並べられた。

つくしはその煌びやかなドレスを嫌そうに眺めてる・・・思わずその顔に吹き出したら俺の方を睨んできた。

「類・・・!どうして笑うの?私には似合わないって思ったんでしょう?失礼しちゃう!」

「違うよ・・・こんなに綺麗なドレスなのにつくしがしかめっ面して見てるからさ。何でそんな顔すんの?
普通は嬉しいでしょ?・・・一応つくしも女の子なんだからさ」

「一応?・・・どこから見ても女の子よっ!もう・・・向こうに行ってよ!こう見えても悩んでるのよ?
どれが一番可愛く見えるかって・・・こんなもの着たことほとんどないんだからわかんないの!」


どう見てもつくしの年には早すぎる大人っぽいドレス・・・幼い顔のつくしには似合わないよ。
それでもどこかの御曹司につくしをアピールしたいのか、母さんは嬉しそうにつくしにそのドレスを合わせていった。
当の本人は言葉とは裏腹で面倒くさそうなのにね・・・。

母さんの一番のお気に入りはラベンダーのフォーマルドレス・・・オフショルダーで胸元にダイヤが輝いている。
そんな大胆なドレスを着るの?腰まで開いてる背中のデザインなんて・・・
つくしは商品じゃない・・・どこかの男に見せる為の選び方に少し腹が立った。


「お母様・・・本当にこんなの着るの?恥ずかしいんだけど・・・」

「何を言ってるの?これくらいは当たり前なのよ?大丈夫よ・・・この日は類の誕生日ですもの。
つくしは類の横にいたらいいわ。ちゃんとエスコートしてくれるから」

俺の横・・・そこが一番目立つって知ってるからね、母さんは・・・。
俺にエスコートをさせても、つくしにはつくしの、俺には俺の相手を見つけようとしてるんだ。


この世界では当たり前・・・子供達が家のため・・・つまり会社の為に使われてしまうなんて普通のことだ。


母さんとつくしがそうやって準備をするのを少し離れた場所から見ている。
急に後ろに現われた加代が跪いて俺に話しかけてきた。

「類様・・・お顔に出ていらっしゃいますよ?もう、そろそろそのお気持ちは封じてしまわないと・・・
悲しみが大きくなりますよ?」

小さい頃から俺たちの世話係だった加代は、随分前から俺の気持ちに気がついてる。
この気持ちを知っている唯一の人だった。

「わかってるよ。・・・でも、どうしても諦められないんだよね、つくしのことは・・・」

「類様が苦しまれるのは嫌なんですよ。加代はつくし様のこともとても大事なのですから・・・どうしたらいいのか
わからなくなります。あのようなつくし様のお姿も、類様は見るのが辛いのでは?」

苦しくも辛くもない・・・なんて言えたらいいけどね。
今はまだ何も決まってはいない。いつかそんな日が来るかもしれないって事だけだ。

「加代・・・俺はこうやってつくしを見ることが出来るうちは諦めたくないだけだよ。この先何が起きるか
なんてわかんないだろ?俺はまだ夢を見ていたいんだ。」

そしてその夢が現実になることを願っているんだ。


********


「ねぇ、類・・・やっぱり私にはあんなドレス、似合わないと思うんだけど。なんだかパーティーって憧れてたけど
息苦しそうで嫌になったわ。類はこんなパーティーって平気だったの?」

夜になったらつくしは俺の部屋に来る。さすがに今はもう一緒に寝ることはなくなったけど、
つくしが中学生になる頃まではこの部屋で一緒に寝ていた。
今日のつくしはさすがに疲れたのか、俺のベッドの横に座り込んで頭をシーツの上に乗せている。

「今までは平気だったよ。だって別に俺がメインでやる訳じゃなかったからね。父さんや母さんにくっついてた
だけだから。でも今回は面倒くさいから嫌だな・・・バースディパーティーなんてこの年で恥ずかしいよ」

「そうなんだ・・・ねぇ、私が花沢の娘だって知られていったら周りが変わっていくの?英徳では類の妹って
わかるわけでしょ?英徳って男子が多いってホント?私、友だち出来るかな・・・」

ベッドに寝転んでいる俺につくしはその不安な顔を見せた。

「友だちは出来るよ。つくしの性格なら心配しなくてもね・・・ただ、普通の学校じゃないから驚くことも多いよ」


俺はそんな事よりもあの3人につくしを会わせることの方が心配だった。
俺の幼馴染み・・・今まで絶対に会わせなかったつくしに会うのをあいつらは何故か楽しみにしてるんだ。
つくしはあいつらが英徳大学にいることを知っている。昔からつくしも会いたがっていたから。

「類のお友達には会える?紹介してくれるの?・・・それとも類は私のこと会わせたくないの?」

「なんでそう思うの?・・・何かと煩い連中だから会わせなかっただけだよ。どっちにしてもパーティーで会うよ。
招待されてるからね・・・だから絶対に一人にならないこと!」

「変な人たちってその人達なの?」

「・・・間違ってはないよ。あいつらは面倒くさいヤツらだから・・・」

つくしの事がなかったら来なかっただろうに・・・今年に限ってあいつらは来ると言ってきた。
ただ物珍しいだけかもしれないけど、これまで会わせてなかったから・・・つくしがこんなに綺麗になってから
会わせるなんて不安だった。
もしかしたら、つくしの方が・・・なんて事も少しは考えるよ。それだけ魅力的な幼馴染みだからね・・・。

静かになったと思ったらつくしはベッドに顔を伏せて眼を閉じていた。


「ねぇ、類・・・眠たくなっちゃった。今日はここで寝たらダメかな・・・」

「何言ってんの!そんなのダメに決まってるだろ・・・ほら、自分の部屋に戻りな。・・・立てないの?」

つくしはもう目を閉じて眠りかけてる・・・て言うよりすでに寝てるんじゃない?
俺はベッドから身体を起こしてつくしのすぐ側でその横顔を覗き込んだ。


つくしが良くても俺が困るよ・・・こんな姿を見せられたらドキドキするじゃん!

結局つくしはそのまま俺の部屋で座ったまま寝てしまった。
一度寝てしまうとなかなか起きないから、抱えてつくしの部屋まで運ばないと・・・。
つくしの背中と膝裏に腕を回して抱き上げると、その顔が俺の肩に当たった。
無防備なその寝顔を他の男には見せたくない・・・そんな事を考えながらしばらくそのままつくしを見ていた。


「もう・・・!俺の気持ちも知らないで・・・」

俺の向かい側、つくしの部屋に入ってベッドに寝かせて布団を掛けてやった。
その可愛らしい唇はそのうち誰かに盗られるんだろうか・・・。すっかり寝てしまったつくしにもう一度顔を寄せてみる。

部屋には月明かりだけ・・・つくしの白い肌が透き通るように浮かび上がる。

「おやすみ・・・つくし」


唇にはまだ出来ないけど、頬にキスをして静かにつくしの部屋を出た。


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