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plumeria

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花沢物産で広まった社員達の噂話が聖司の耳にも入った。

ー類がわざわざ社を訪ねて来て、そこで警備員と揉めた。その時の風貌はとても後継者には相応しくなかったー

そんな信じがたいものだった。
それについての説明を求められ、役員秘書室の村木が社長室に呼び出された。


「君がその場面を目撃したのかね?」
「はい。ちょうど社長がフランスに行かれている期間の出来事でした。私が諸用で外出し、帰社した時に入り口で警備員に止められている類様をお見掛けしました」

「・・・噂では情けない格好をしていたと聞いたが?」
「失礼ながら申し上げます。その日の類様は着古したようなTシャツにダメージジーンズというのでしょうか、穴の開いたままのジーンズ姿でしたね。正直申し上げて驚きました。あのようなお姿で社を訪問されるとは」

「・・・・・・・・・類が?本当に息子だったのかね?」

「私は直接お話ししたことはありませんが、お写真で何度もお顔を拝見しています。見間違えではございません」

「・・・そうか」


毎日顔を合わせる訳ではないが、会った時にはそれなりにきちんとした格好の息子しか見た事がない。
穴の開いたジーンズなどそもそも持っているのか・・・聖司にはやはり信じられなかった。大きく息を漏らして椅子に深く凭れ掛かると、クルリと回転させて窓の外に顔を向けた。

その窓には真剣な顔の村木が映っている。
だが、聖司は自分の困った顔など部下に見せたくはなかった。


「もしかしたら類様の周りに良くないお仲間が居るとかではございませんか?」
「いや、それはないだろう。元々社交的でもないし外出も少ない奴だ」

「しかしながらあのお姿は社に不安を覚える者が出てもおかしくない状態でした。本当に来年、入社されるのでしょうか?」
「勿論だ。それは本人にも伝えてあるし、間もなく研修にも入るはずだ」

「それにしては些かお覚悟が足りないのでは?少し行動を探られてみてはいかがかと・・・」
「先日美作の倅にも聞いてみたが、あの子達と一緒に居ることが多いようだ。それに類の行動を聞いてみたがこれまでと変化はないと言っていた。妙な店にも出入りはしていないと・・・美作が言うのだから本当だろう」

「左様ですか・・・失礼な事を申し上げました」


村木は一礼して社長室を出て行ったが、聖司はまだ外の光景を眺めていた。


どう考えても類とは思えない。

もしも人間違いだとしたら、類に似ている男は1人しか思い当たらない。
以前、類が見知らぬ老人から怒鳴られた時に出された「松島誠二郎」・・・その男だ。


「まさかな・・・」


聖司はあの産婦人科を退院した時に見た窓辺の女性の姿を思い出していた。
自分の前から姿を消した佐藤良子・・・その時の不気味な笑顔が頭から離れなかった。





その頃、総二郎はつくしが誠二郎とぶつかったという新宿周辺を毎晩のように彷徨いていた。
頻繁に来るわけでもない場所だがそこそこ知り合いは居る。その店で誠二郎の写真を見せて情報を集めていたが、いずれも「知らない」という返事だった。

やはり自分達が入り込まないような店か・・・と、眉を顰めてビルの壁に凭れ掛かり、スマホでこの周辺の飲み屋を検索。怪しげな奴等が出入りしそうな店を調べていた。

その時に近くの店から聞こえて来た言葉・・・


「申し訳ございません!ですが、花沢様・・・」
「・・・もういい。文句があるなら会社にでも言いに来い。金ならそこで払ってやるから」

「そんな!そのような事は出来ませんから、あのっ・・・」

「うるせぇな!もっと壊されたいのか?希望通りぶっ潰してやろうか!ねぇ、花沢さん」
「はははっ!誰に向かって話してんだか判ってんのか?ばーか!」
「おい!残った酒のボトル、貰っていこうぜ!」

「そんな無茶な!!」


総二郎がその声が聞こえた方に顔を向けると、そこには類に似た男が数人の仲間を引き連れて地下の店から出てきたところだった。しかも追ってきた店員と思われる男の顔が赤くなっていて、殴られた痕のようにも見える。
その店員は必死に何かを頼んでいたが、男達は無視して総二郎の前を通り過ぎた。


その時にチラッとみた横顔・・・松島誠二郎に間違いなかった。


写真で見るとそっくりだが、つくしの言った通り類をよく知る人間は見間違えない。
それほど誠二郎と類では持っている空気が違っていた。

誠二郎は自分を睨んでいる男の事など気にもせず高笑いしながら通りを歩いて行く・・・その後ろを総二郎はついて行った。
これだけ人が往来する場所では話す事も出来ない。もう少し外れた場所に行ったら声を掛けようと思っていたら、総二郎の気配に気付いた誠二郎の方が足を止めて振り向いた。


「なんだ、お前・・・さっきからついて来てるだろ。何か用か?」

「気がついてたのか。そんじゃ仕方ねぇ・・・悪いがあんたの連れをどっかにやってくれ」

「何だと?!こいつ、生意気な・・・!」
「バカじゃねぇの?喧嘩売ってんのかよ!」
「チャラチャラしてカッコつけてんじゃねぇよ!その綺麗な顔に傷付けてやろうか!」


連れの男達が口汚い言葉で総二郎に向かって行ったのを誠二郎が片手で止めた。
どうやら連れの男達は誠二郎には刃向かわないのだろう。大人しく引き下がり、誠二郎が「行け」と小さく言っただけでこの場から立ち去った。
それは誠二郎にかなりの力があると言う事・・・それが暴力なのか金なのかは判らないが。


誠二郎も総二郎の様子を見ただけで「力」を感じたのかもしれない。情報では喧嘩っ早くてすぐにでも飛び掛かって来るような人間だと聞いていたが、そんな雰囲気はなかった。
それでも眼光が鋭いのは間違いではない・・・話次第ではその拳が飛んで来そうだと総二郎も身構えた。



2人が対峙していた時、正面から歩いて来た1人の男・・・・・・誠二郎と待ち合わせていた仙道だ。
仙道は誠二郎が誰かと話しているのを見て、慌てたように近くのビルの入り口に隠れた。そして少しだけ顔を覗かせ相手を確認すると、それが「西門総二郎」だと判った。

英徳大学に営業で行っていた仙道だけに、いつも類と一緒に居る総二郎やあきらの顔は知っていた。


「どうしてあいつが誠二郎と・・・もしかして俺のしていることがバレてるのか?
いや、それよりもこいつがつくしの居場所を知ってるかもしれない・・・」


仙道は額に汗をかきながら、身を潜めて2人の会話に耳を澄ませた。



「で、俺に何の用だ?」
「お前、松島誠二郎だよな?」

「・・・あんた、誰だ?」
「俺は西門総二郎。花沢類のダチだ」

「花沢の?」
「そうだ。あんたが色々と類の名前を語って暴れてるって聞いたもんだから、その理由を聞こうかと思ってさ」



都会の熱帯夜・・・総二郎と誠二郎の間を蒸し暑い風が吹き抜けていった。






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