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plumeria

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新宿に着くとすぐに以前誠二郎が暴れたCatherineに向かった。
そこでバーテンダーの男から先ほど誠二郎が入ったと言う店を聞き、そこに入ると・・・既に惨事は起きた後だった。

ここもCatherine同様椅子は飛ばされグラスは割れ、狭い店内には客の姿はなかった。床に飛び散った料理の傍には酒のボトルも転がっている。
総二郎は最近見たばかりの光景だったが、類にとっては初めてだ。自分に成り済ました人間がした事がこれなのか、と真っ青になった。

2人が歩を進めると靴先に割れたガラス片があり、それを踏んでパリンと乾いた音が鳴った。
それに気が付いた店員がカウンターの中から顔を見せると、その頬が赤くなっている・・・どう見ても殴られた跡だ。


「なんでしょう、今日はもう営業が・・・・・・うわぁ!戻って来たんですか?!か、帰って下さい、お金は要らないから!」
「違う、俺達は来たばかりだ!」

「えっ?あっ・・・・・・でもこっちの人は・・・あれ?」
「別人だ。あんたが今、こいつと見間違えた男は出ていったのか?」


店員は誠二郎と類を見間違え、酷く怯えてカウンターの下に蹲った。
でも総二郎の言葉でもう1度顔を出し、類を確認・・・その風貌が違うと判るとヨロヨロと立ち上がった。そして力なくカウンター後ろのテーブルに縋ると、深い溜息を付いた。

他にも2人ほどが控え室で怯え、総二郎が「安心しろ」と声を掛けると恐る恐る出てきた。が、やはり類を見て瞬間ビクッとしている。それを見るにつけ、初対面の人間はこの2人を見間違えるのだという事が判る。


「もう1度聞く。この店を荒らした連中はどうした?なんでこんな事になったんだ?」

「・・・いや、どうしてって言うか・・・こっちが聞きたいぐらいですよ。
この店で1番高い酒を全部出せって言うからお客さんの名前を聞いただけです。初めて来た人だったからどんな人かも判らないし、その・・・あまり金があるようには見えなくてね・・・。タダ飲みされちゃこっちも困るし、でも失礼のないように聞いたんですよ?それなのに・・・」

「名前を聞いただけ?で、なんて答えたんだ?」

「俺の名前を知らないのかって言われて、当然知らないと答えたら急に連れの人が暴れ始めたんです。まだそんなにお客さんも入ってなかったけど、その人達は怖がってすぐに飛び出たし、この有様を見たら判るでしょうが手が付けられなかったんです。私も止めに入ったら殴られて・・・。
そして出ていく時に『店の損害は払ってやる。花沢物産まで取りに来い、俺はそこの跡取りだから』、そう言われました」


Catherineと手口は同じだ。
類は静かに目を閉じ・・・でもその手は固く握られ震えていた。

仙道に操られているだけかと思っていたが、もしかしたら花沢に対する自身の恨みかもしれない。誠二郎が何処まで真実を知っているのか判らないが、ただ頼まれただけとは思えない行動のような気がした。

類は暫く呆然と立ち尽くしていたが、そこで転がってる椅子を元に戻し、店員の前に進んだ。


「そいつ、俺の名前を語って暴れてるヤツなんです。本当にご迷惑をお掛けしました。申し訳ないんだけど今はあなたに払えるものを用意してきてないから、明日にでも人を寄越します。
気分悪いだろうけど花沢の人間に修理と弁償のこと、話してもらえますか?」

「じゃあ、あなたが本物?」

「本物・・・えぇ、そうです」


本物なんて言われると返事に戸惑うが、この店員は何も知らないのだから話を合わせておいた。
そして深く頭を下げ、店を出る時には「もしもまた来たら連絡を」と、類の電話番号を教えた。


「まだこの近くに居るかもな・・・探すか?」
「いや、今日は帰る」


あきらに電話を入れれば「飛行機には乗ってないようだ」の返事だけ。


類は賑やかな通りの真ん中に居るのに総てが幻影のように感じた。

何も考えられない。
何も聞こえない、何も見えない・・・心の中にはつくしの後ろ姿だけが浮かんでいた。





その頃仙道はアパートでパソコンを見ていた。
つくしは昨日と同じ場所で踞っている。

テーブルには買ってこられた弁当があるが殆ど食べてはいない。空腹すら感じず、僅かな飲み物を口にしていただけだからフラフラしていた。
思考能力も落ちている・・・それは判っていたが、目の前の仙道を見ていると身体が動かなかった。
ある意味洗脳された人間の行動のよう・・・動けば類に被害が及ぶと思い込み、息をするのでさえ緊張していた。



仙道が見ている画面は花沢物産のホームページだ。
そこに書いてある『メキシコ湾海底資源開発プロジェクト』と言うタイトルに、共同事業者として名前が出ているのは鳴海商事。社長である聖司の呟きのようなコメントなども載せられており、そこに興味深い文字を見つけた。

『鳴海社長の御令嬢が誕生日に息子との会食を・・・』

それを読んで花沢物産の「意向」が見えた。
花沢類とその娘を婚約させて関係強化に繋げたい・・・大企業ではよくある事だ。

それから鳴海商事を調べ、娘の春菜を突き止めた。
次に誕生日と名前から春菜のSNSのアカウントを探ると、意外と簡単にそれに辿り着いた。日付を遡って調べると、自分の誕生日に『将来の旦那様との食事♡』、と言う文字があり、そこには豪華なホテルが載っていた。
一応慎重になったのだろうか、類の顔も名前も載せてはいないがそれしか考えられない。

しかし、次の日には悲しげな文句・・・『ホテルのモーニング、食べ損ねた!』
つまり「将来の旦那様」との甘い夜はなかったと言う事だ。

それでも続きには・・・『絶対に諦めないから!』
執着心の強い女だと仙道は呆れたように笑った。


この女は使えそうだ・・・と、仙道はパソコンの中の春菜の顔を眺めていた。



「つくし、ちょっと出掛けてくるけどここから出るな。判ってるな?」
「・・・・・・・・・」

「お前が動けば花沢を潰す・・・出来ないと思うなよ」
「・・・・・・・・・」


仙道は部屋を出た後に鍵を掛け、外からもドアノブにチェーンを掛けた。
誰も訪ねてくることがない部屋だから、これを見られるとしてもせいぜい向かいの人間ぐらいだ。でもその部屋の住人は深夜まで帰って来ない。
食べるものを買いに行く時間程度なら誰も不審に思わない。


仙道が階段を降りて行く音を聞きながら、つくしは黙って目を閉じていた。







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