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パーティー会場が一気にざわついた。

会場のほぼ中央で睨み合っているのは司とつくし・・・その付近の連中は会話をやめて二人を見つめた。
少し視線を動かして両親を見たら・・・やはりこの二人は気がついてる。
だけど、何も言わないし動かない。

それはつくしと向き合っているのが道明寺司だからだ・・・これはある意味両親の思惑だから。
どんな形でもつくしとどこかの御曹司が近づくのは願ってもないことだろう。
それが、道明寺なら言うことはない・・・そんな気持ちなんだろうな。

ただ会場の隅に控えていた加代はつくしの性格を誰よりも知っているから狼狽えている。


俺はまた二人に視線を戻した。
真っ赤になって怒っているつくしと・・・それを面白そうにからかう司。
桜色のドレスを手で掴んで震えるつくしと・・・腕組みしたまま見下すように笑う司。
どうみても勝ち目のない勝負だ。


「道明寺司・・・?道明寺ってあの・・・道明寺HDの?」

「あぁ、そうだ。一応お前でも聞いたことぐらいあんだろ?この家の子供ならな!」

この家の子供・・・その一言に一瞬ドキッとしてしまう。

「えぇ!もちもん聞いたことはあるわよ!でも、だから何だって言うの?そうだとしたら人には何を言っても
いいわけじゃないわよ?!大体会社が大きくったってあなたが創った訳じゃないわよね!」

「なんだと?・・・花沢じゃこの俺に対する言葉遣いも教えてねぇようだな!」

「そんなもの家とは何の関係もないでしょう!あなたが失礼なことを言わなければ済むことなのよっ!」


つくしは司相手でも一歩も引く気はなさそうだったけど、これ以上言い争っても終わりそうになかったから
二人の間に入って止めようとした。総二郎とあきらも同じ・・・司をなだめようとして近づいて行く。

「つくし・・・今はそんな事を言い争う時間じゃないだろ?もうやめときなよ。もう母さん達の所に戻りな。
司の事なら気にしなくていいよ。いつもあんな言い方してるから慣れてるし・・・」
「嫌よ!類と一緒にいる!・・・お父様達といてもまた知らない人の所に連れて行かれるだけだもん!」


つくしはまた俺の袖を掴んで離さない・・・それを見た司がまたつくしに絡んできた。

「なんだ?お前、兄貴がいないとこんなパーティーで誰とも話せねぇのかよ!とんだ子供だな・・・。
そんなんじゃこの世界じゃ生きて行かれねぇぜ?」

せっかく止めさせようとしたのにまた突っかかってくる司にウンザリして、それを無視してつくしを連れて離れようとした。
でも、つくしの方が俺の腕を振り払ってまた司の前まで戻っていく。
まったく・・・昔っから一度怒り出したら相手が謝るまで絶対に許さないんだから・・・!

納得するまで言いたいのかもしれないけど相手はあの司だ。
何を話しても通じる相手じゃないから、慌ててつくしの腕をもう一度掴んだけどそれさえも振りほどこうとした。
片腕を俺に掴まれたままのつくしが、司に向かって声を荒げたから今度は両親の顔が変わった。

「やっぱり私はあなたのこと嫌いだわ!たとえ年下でも初対面の人に向かってその態度はないでしょう!・・・失礼だわ!
あなた本当に類の友だちなの?」

「あぁ、そうだぜ?ガキん時からの仲だ。類はおとなしすぎて人と話すことが出来ねーからずっと面倒見てやったよ!
まったく兄貴は何考えてんだかわかりにくくて、妹は生意気な女で・・・とんでもない兄妹だな!」


司の様子がいつもと違う。
確かに口は悪いんだけど、今までこんな言い方をしたことはなかった。
わざと悪態つくことはあったけど、うちの両親の前でもそこまでする司の意図がわからなかった。

もしかしたら・・・つくしが俺にだけ示すその行動が気に入らないのか?
そんな事を思わせるような司の態度・・・総二郎達にもわかったのかもしれない。

「司!いい加減にしとけよ!何今日はそんなに荒れてんだよ!」
「総二郎の言うとおりだ。女に子相手にそこまですることはないだろう!頭冷やせよ」

「・・・別に荒れてなんかねぇよ!この女がムカついただけだ!」


そして、次につくしがとった行動に会場中が唖然とした。
つくしは俺の手を再度振り払って、そのドレスを翻して司の前に立つと思いっきり司に平手打ちした!

それはホントに一瞬の出来事・・・!
乾いた音が会場に響いて、この部屋にいる全員が動きを止めた。

「類の悪口だけは我慢できないわ!あなたなんか大っ嫌いよっ!」

そう叫んだつくしの声はもちろん両親にも聞こえているだろう。
女に引っぱたかれた司は呆然としてその場に立ち尽くし、総二郎とあきらは固まっていた。
当のつくしは息を荒くしてまだ司の事を睨んでいる。・・・俺はこの後のことを考えて頭が痛くなった・・・。


総二郎はわざとそうしたのか、いきなり笑い出した。

「すげえな!類の妹!あの司を張り倒すなんて・・・そんな女見たことねぇな!」

「ほんとだよ!これは4月からの英徳も面白くなりそうだな・・・俺も大学から様子見に行こうかな」

二人はまだ呆然として我に帰れない司の両端に立ってからかっていた。
その間につくしをその場から離して会場の隅に連れてきた・・・この時にやっと状況がわかってきたつくしは
どんどん青ざめていったけど・・・遅いんだよね。気がつくのが!


「大丈夫?落ち着いた?・・・どうしてあんなに怒ったりしたのさ。ここが今どんな時間かわかんなかったの?
俺のバースディパーティーなんだけど・・・それより、そのせっかくのドレスが可哀想だよ」

「・・・ご、ごめんなさい!私も頭に血が上って訳がわかんなくなってしまって・・・」


一番驚いたのは多分うちの両親だろう。
俺が顔を向けると父さんが眼で合図をしてきた。

つくしを下げろ・・・そういう事だ。


「おいで・・・つくし。一度部屋に戻ろう。心配しないで・・・みんなすぐに忘れてしまうから」

すっかり下を向いて沈んでしまったつくしをの肩を抱いてそっと会場を出た。
俺のためにそんなに怒ってくれたつくし・・・

今この会場がどんなに冷たくつくしを見たとしても、俺だけは笑ってるかもしれない。
だってこの俺のために・・・だよ?

震えているつくしの肩をもう少しだけ自分に寄せるようにして部屋までの廊下を歩いた。



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