FC2ブログ

plumeria

plumeria

普通に食えと言ってもこの雰囲気でつくしが食えるはずもなく、俺の予想通り腹の虫は満足しそうになかった。
それは今日の晩飯で埋め合わせればいいか、なんて考えながら食事は進んでいき、最後のデザートに和風ケーキってヤツと珈琲が出て来た。

ここまででつくしは緊張を通り越して放心状態。
でもおかげでメイクも崩れず着物も無事・・・何とかやりきったって感じだ。
だから褒美ってことで俺のケーキをつくしの前に置くと、途端にその目が輝き出す。勿論そんなのはマナー違反だからお袋達はいい顔をしないが、さっき「普段通りに」なんて言ったんだから今更何も言うつもりは無さそうだ。

でもつくしはチラッとお袋の顔色を窺う。
その後で不安そうに俺を見てきたから「いいから食え」って言えば、ニコッと笑ってその皿を自分のケーキの横に並べた。


「美味いか?」
「うん!すっごく美味しい・・・!これ、何処のかしら。今度買いたいなぁ・・・」

「こいつはうちのシェフの手作りだろうよ」
「そうなの?じゃあ今度教えてもらおうかな・・・そういうこと頼める?」

「そうだな、時間が空いてりゃ教えてくれるだろ」
「嬉しい!もう少し甘さを抑えたら総二郎・・・さんも食べられるんじゃない?」


俺が態と恋人感出してるのに、つくしは何も疑わずに乗ってやがる。オマケに俺の名前の後に頑張ってつけてる「さん」にも笑える。
自分で言っておきながら真っ赤になって、これはこれですげぇ可愛らしさアップ。お袋は兎も角、たまに親父が赤い顔してつくしを見ているのも可笑しかった。


そしてやっぱり無表情なのは詩織。
それを気にしているのか、俺に対抗しようとしてるのか、孝三郎も彼女に話し掛けていた。


「詩織さん、私のデザート、差し上げましょうか?お好きですか?」
「・・・結構ですわ。そのようなはしたない事は出来ませんもの」

「そ、そうですか・・・失礼しました」
「いえ。お気遣いありがとうございます、孝三郎様」


はしたない事と言われたのに美味そうに頬張るつくし・・・ある意味大物だな、と思った。



**



デザートが終わったら、表面上は仲のいいフリしての歓談が始まった。

それも数分間・・・この連中で話が盛り上がる訳もなく、すぐに場はシラケる。仕方なく男は客間で酒の続き、女達は庭に出てみようという事になった。
でも話してるのはお袋と詩織で、つくしは少しだけ離れたところで棒立ち。どうしていいのかも判らないからだろうけど、ここから見ても判るぐらい変な顔してやがった。

そのうちお袋が庭の奥を指さして何かを詩織に教えている。
つくしはその会話に入らず、急にしゃがみ込んで池の中を見てる。
まさか、鯉を捕まえようとかしてないよな?なんて焦ったが、お袋に何か言われて慌てて立ち上がった。綺麗に結ってもらった髪を掻いて、その時に袖から白い腕が丸見え。

ほら、言わんこっちゃない・・・お袋が注意し始めた。
くくっ、後で俺が大文句言われるんだろうな。


・・・なんて眺めていたら、こっちでは厳めしい顔の親父と可愛くない弟が俺を睨む。
それも面倒臭いから何も言わずに知らん顔してた。


「あれが司さんの元カノ・・・別れて当然って感じだね」

何も知らない孝三郎の戯言なんてどうでもいいと、その言葉には返事もしなかった。
司とつくしの恋は確かに幼かったが本物だった。それは俺達が判ってりゃいいことだ。


「何処が良くて拾ったわけ?それとも同情?」
「・・・拾った?そんな訳ねぇだろ。同情でもねぇよ」

「全然判んないな。何処に魅力があるんだ?」

「・・・お前には判んねぇだろうな」


この家を捨ててでも手に入れたいと思わせるだけのパワーがあんだよ、つくしには。
俺の見てる世界が面白くなったのはこいつに出会ったからだ。こいつが居ればどんな事でも頑張れそうな気がした・・・こんな退屈な家でも笑って暮らせると思った。

でも、つくしの背中にある羽を「西門」は捥ぎ取るだろう・・・・・・だから・・・


「判りたくもないな。女性としての魅力の前に西門にとって魅力的でないとね。その点、詩織さんは完璧だよ。俺はこの婚約を有り難いと思ってる」

「そうか。お前が納得してるんなら良いんじゃね?
でもな、孝三郎。詩織と暮らすのは1~2年じゃねぇ・・・長けりゃ50年以上だ。有り難いって気持ちだけでそんな時間を過ごせるのか?俺には無理だな」

「父さんが隠居なさったら俺が家元だ。その時には色々な事を考える暇もないほど俺達は忙しいんだから大丈夫だ。講師だけの総兄は時間を持て余して変な事考えるんだろうけどね」

「・・・くくっ、そうかもな」


俺はその持て余した時間をあいつと過ごす方を選んだんだ。
言い返さない俺を物足りないとばかりにまた睨んでる孝三郎・・・そして親父は俺達の会話を聞いても何も言わなかった。




*************************




「お庭に出てみましょうか、詩織さん」
「はい、お義母様」

「・・・つくしさんもご一緒します?」
「は、はい!行きます!」


そう言われて「行きません」って言えないでしょーっ!
だから用意して貰った履き物を履いて、客間の縁側から広い庭に出てみた。落ち葉1つを探す方が難しいような綺麗な庭で、ドデカい池もあるし、色んな木が植えてあるけどその名前も判らない。

別世界ってこういう事を言うのよね・・・。
私の少し前を並んで歩く二人の背中を見ながら思った。


「あら、お義母様、あちらの木はソヨゴですかしら。立派ですわねぇ」
「よくご存じねぇ。落葉樹ですけれど向こうにはヒメシャラもありますの。見事な花が咲きましてよ?」

「お池の向こうには何がございますの?」
「あぁ、あそこにはギボウシを植えてますの。匂いが強いものもありますから、お茶室からは少し離してね・・・」

「・・・・・・・・・(あ!鯉がいる!)」


「素敵な石ですこと。わたくし、初めて見ましたわ」
「あぁ、あれは愛媛の伊予青石と言うのですよ。実際は緑色でね、薄い石ですけど珍しいでしょう?その向こうのはお判り?」

「勉強不足ですわ。なんと言う石ですの?」
「あれは紫雲石で、水によって作られた穴があちこちにあるのが特徴ですの。
西の庭には椎葉石と言うのがありますわ。薄い黒色と赤色が混じった色をしていましてね、シワのような模様があってとても美しいわよ?後で行きましょうか」

「・・・・・・(うわっ、黄金色の鯉!縁起良さそ~!売れば3500万円にならないかしら・・・)」


自分でも気が付かないうちにしゃがみ込んで池の中を覗き込んでた。
さすが西門家の鯉・・・お腹は空いてないみたいで、私か顔を覗かせても寄って来ない。鯉まで優雅に私の前を泳いで行って、私はその色とりどりの背中を見ていた。

その時・・・


「・・・つくしさん、お袖が地面についていますよ」
「はっ!申し訳ありません!!」

「いやだわ、つくし様、腕が丸見え・・・」
「えっ?!あっ、そうだった!ごめんなさいっ!」


誰も見ていませんように!って客間をチラッと見たら・・・総二郎がこっちを見てた。





にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村
応援、宜しくお願い致します♡
関連記事
Posted by

Comments 4

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2020/03/28 (Sat) 14:38 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2020/03/28 (Sat) 15:31 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

甘かった?♥
こんな甘い総ちゃん、気持ち悪いよね💦←私だけ?

私的には「持て余した時間をつくしと過ごす」がお気に入りよ♥
言われてみたい~~~♪(旦那じゃないわよ)

確かに鯉って高いヤツは数千万円するのよね?
うちの漁師、鯉釣ったらいいのに(笑)


そうそう!それでね!
パール様、前のコメントに「7㎏のブリ」って書いてるのよ!
だから驚いて(笑)

猟師って書いた上に7㎏にしたのかと思って慌てたわ~~!!
7㎏だったら結構大きいよね!てか、魚に興味が無いから全然判らないんだけど💦
60㎝の鯛も釣ってきたけど、それはイマイチ美味しくなかった(笑)
兄貴には言わないけどね・・・。

やっぱり有り難いのは20㎝ぐらいの鰺かな(笑)
(そう言ったら80匹釣ってきたことがあるから言わないけど←既に嫌がらせだよね)

2020/03/28 (Sat) 23:19 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

そうなんです、言いたい放題が続きます(笑)
でも総ちゃんが守ってくれるから、つくしちゃんが苛められることは無いかも?
そこがコメディのいい所ですよね~。

うふふ、池には落としませんよ~💦
つくしちゃん、相当お高い振袖着てますから(笑)
でも振袖でしゃがむって難しいですよね・・・椅子に座ってもキツい気がするけど・・・。


あら!それは残念ですね💦
もう本当に早く落ち着けばいいのに・・・って思います。
今は関東が大変ですよね?私の所は店が閉まるとか無いんですけど。

でも旦那の趣味のバレーボールは体育館が使えないのでお休みですし、関西の娘はバレエ教室がお休みになり失業状態。
これ以上長引くと沢山の人の生活に影響してくるんでしょうね。

やだやだ・・・ホントにコロナ鬱です・・・。
類誕中なのに(笑)

2020/03/28 (Sat) 23:27 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply