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plumeria

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聖司の話を聞き終えた後、これまでに起きた類に扮した誠二郎の愚行の話になった。
飲み屋で花沢の名前を語り暴れた上に無銭飲食、フラッとTシャツで社を訪れ警備員に取り押さえられ、そして今回は鳴海商事に乗り込み春菜を侮辱した。
類は総て「身に覚えがない」と言った後で、総二郎がその暴れた場面を目撃していることも話した。

類以外の人間が証言出来ると聞けば、聖司はそれを疑うことはしない。
しかもそれが西門であれば尚更だ。あきらからも聞いていただけに、この場で総二郎に事実確認をする事はしなかった。


「それで、何故鳴海を?誠二郎という男はお前と鳴海の娘の事を知ってるのか?」
「いえ、知らないでしょうし、調べる事も出来ないでしょうね。誠二郎を操っている人間が別に居るという事です」

「操る?誰だ、それは!」
「牧野に付き纏っている仙道という男が居ます。そいつが俺のスキャンダルを狙って誠二郎を動かしたんです。
勿論仙道は誠二郎の事は何も知らない・・・俺に似ていると言うだけで金で雇ってると思います。でも、その事で誠二郎が自分と花沢との関係を勘付いたかもしれない」

「なに?父親が私だと気が付いているのか?!」

「はっきりしませんが、総二郎にそれらしい表現で俺の事を話したようだから」


総二郎と誠二郎がぶつかった時に言った『温室で育てられた訳じゃねぇんだから』と言う台詞を聖司に聞かせた。


良子が話すとは思えない。
話してしまえば自分の子供が花沢を継ぐという計画が崩れるかもしれないからだ。

だから誠二郎は良子からではなく、仙道と出会ってから自分の生い立ちについての疑問を持ったと考えた方が自然・・・それは本人に聞くしか判らない事だったが。



「仙道と言う男と牧野さんの関係は・・・」

「・・・牧野が俺と付き合う前に恋人だった男です」

「お前が奪ったと言う事か?」

「結果的にはそうなりますが、元々牧野が花沢家を恐れて俺から遠離るために選んだんです。彼女の気持ちはそこまで深くならなかった・・・そういう事です。
でも仙道が強引に結婚を匂わせたために牧野が自分に正直になって、俺も抑えていた気持ちを打ち明けました」

「・・・抑えてきた?」

「牧野の事はずっと想っていました。それこそ司との事がある前からです。
2人が別れた後、何度か伝えようと思いましたが出来なかった・・・自分が本当にこの家を継ぐ人間なのかどうか、それを迷っていたからです。
彼女は俺が花沢の人間でなくても何とも思わないでしょう。でも自分が何者なのかと言う疑問を持っているのに、誰かを守る事なんて出来るのか不安だったんですよ」


類は自分の疑問を初めて話したのがつくしであることも話した。
その時につくしが自分から離れるどころか、名前はどうでもいいと言われた事・・・それで総てを調べる決心がついたことも。自分の出生の状況、本当の母親、すり替えられた時の説明も全部2人で聞いた事を話すと、聖司は驚いていた。


正直になる勇気・・・総てを受け入れる覚悟
そこまで知られても揺るがない愛情・・・自分の過去にはそれがあっただろうかと、ガックリと肩の力を落とした。


「・・・それで、今その男は・・・誠二郎は何処に居るのだ?」
「判りません。彼の住所も働いているのかも知りません。でも近いうちに会えるかもしれません。総二郎達が情報を集めてくれていますから」

「私は・・・会えるのか?」

「誠二郎をここに連れて来ます。父さんと彼は話し合わなくてはいけない・・・そうでしょ?」


項垂れている父を前に、類は自分が花沢を出る決心をしていることはまだ言えなかった。
総ては誠二郎と会ってから・・・彼の口から何が出てくるのかそれも恐怖だった。





その頃、つくしは仙道のアパートに閉じ込められたまま一歩も外に出なかった。
もう何日経ったのかも判らない・・・満足に睡眠も食事も出来ていないつくしは既に限界だった。意識が朦朧として何も考えられない・・・このままじゃいけないと言う言葉だけは出てくるが、身体も頭も動かない。
まるで人形のように同じ場所に踞っていた。

仙道が動いた時だけ自分の身を守り、その瞬間は緊張が走る。
だが言葉通り仙道もつくしには触れることはなかった。

既につくしに対する性欲などというものは無いのか、夜も1人だけベッドに潜り込んで寝てしまう。
その隙に逃げようと何度も立ち上がったが、すぐに浮かぶのは類の苦しそうな顔・・・自分は動いてはいけないと、洗脳されたかのようにまた踞る、その繰り返しだった。



仙道に動きがあったのは朝から雨が降っている日だった。

窓硝子に雨が当たる音を聞きながら膝を抱えていると、仙道のスマホが鳴り誰かと話し中・・・何を話しているかも聞きたくないと目を閉じ耳を塞いでいると、不意に肩に手を置かれた。
途端、ビクッと身体を固くするが、仙道は今日もそれを見て含み笑いをした。


「来ても良いってさ」
「・・・・・・え?」

「母さんが会ってもいいって言ってくれたんだ。だからここを出るぞ」
「・・・出る?」

「あぁ。飛行機だと彼奴らが見張ってるかもしれないから時間は掛かるがフェリーで行く。お前は寝てればいいから大丈夫だな?」
「・・・・・・・・・」


北海道までのフェリーは茨城の大洗港と北海道の苫小牧港を結ぶものがある。
時間にして約18時間・・・つくしはそれを聞いてもピンと来なかった。


本当に北海道まで連れて行かれたら自分はどうなるのだろう・・・それも全く見当がつかない。あの時に見た仙道の母親に自分が頭を下げて謝る姿など想像出来なかった。
でも逃げられない・・・これはなんの罰なんだろうと仙道に腕を掴まれ立ち上がった。


「大洗を出るのは19時45分だ。それまでに自分を綺麗にしろ。シャワーも浴びてないような不潔な女を連れて行けないからな。服は用意してるからそれに着替えろ」

「・・・・・・うん」

「判ってるな?言う事を聞かないと花沢が困るだけだ」

「判ってる・・・・・・判ってるよ」


アパートの狭いバスルームで頭から湯を被り、そこで湯に混じって熱いものが溢れ出した。
泣いても仙道が喜ぶだけ・・・そう思って我慢していたのを、温かい湯が緩ませてしまう。つくしはシャワーの音に紛れてそこで啜り泣いた。


一頻り泣いてからバスルームを出ると、そこに出されていたのは仙道が選んだ「母好み」のワンピース。
無感情で袖を通したが鏡でそれを確認することもなかった。


似合おうが似合うまいが関係ない・・・・・・つくしの為に選ばれた服ではないのだから。





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