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plumeria

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2人が黙り込んで数分・・・聖司がスッと立ち上がった。
気持ちは沈んでいるのだろうが企業人の顔付きに戻りつつある。類はそれを見て流石だと・・・父はこの世界で生きていける人間なのだと思った。


「どうされるんです?」
「社に戻る。すぐにこれまでの誤解を解かねばならん。それに鳴海にはお前に似た人物の仕業だと説明してくる。証人を求められた場合は美作と西門で良いのだな?」

「それは大丈夫ですが、似た人物を出すのでしたら誠二郎の事を話すのですか?」
「それはまだ誰にも言わん。彼に会って・・・誠二郎の考えを聞かねばな」

「あいつの考え・・・?」
「お前から話を聞いても私が後継者をお前だと思う気持ちに変わりはない。誠二郎という男はとても花沢を背負っていける器ではないのだろう。
たとえお前が亜弓の子供でなかったとしても、私はお前を後継者として育てたつもりだ。それに私の血を継いでいる事に変わりはないのだからな」


類はそれを聞いた瞬間、会った事もない母・良子の辛そうな顔を見た気がした。
母が聞いたら涙するのではないかと・・・思い詰めて罪を犯した良子を哀れに思った。


「そのつもりでいてくれ。いいな、類」
「・・・・・・嫌だ」

「何だと?」
「そう思うなら何故21年前に母に残酷な話を持ち掛けたのです?!俺は本当ならこの世に存在しない人間だ・・・それを命じたのは他ならぬ、あなただ!!」

「・・・・・・・・・類!」


これほど大きな声を聖司に向けて発したことはないだろう。
類の怒声に驚いたのは聖司も同じで、足を止めて類を見詰めた。
感情が乏しい男であるはずの類がこれほどまでに鋭い視線を向けるとは・・・と、言葉を呑み込んだ。

類もここで立ち上がり、聖司の横を通り先に部屋を出ようとドアに手を掛けた。そして聖司の方に顔を向けず、ドアに話し掛けるように呟いた。


「確かに昨日は1日中あきらと総二郎と居ました。美作のマンション・・・そこで牧野を仙道から隠し、俺も殆どそこで過ごしていました。でも今、牧野は仙道に見つかって行方不明です」

「行方不明?」

「えぇ。あなたは母が行方を消した時、必死にはならなかったのでしょう?もしかしたら好都合だと思ったんじゃないですか?
でも俺は違います・・・絶対に牧野を見つけて連れ戻します。その為にも誠二郎と花沢の事を早く解決したい・・・俺は牧野だけで充分なんです。他には何もいらない」

「どう言う意味だ?」

「言葉の通り・・・俺はあなたから自由になりたいんですよ、父さん」



振り向くことなく後ろ手で静かにドアを閉めた。

横を見ると亜弓の部屋がある。
そのドアを見る時には目元が緩む・・・「でも俺の母さんはあなただけだよ」と、それだけを心の中で呟き自宅を出ていった。





聖司との話を一旦終えてマンションに戻ると、丁度そこではあきらと総二郎が誰かと電話で話しているところだった。
その様子が穏やかではない・・・何かあったのかと急いでリビングに入ると総二郎が覗き込んでいたパソコンから離れて類の所にやってきた。

その顔は問題が起きたと言うよりは、思い掛けず何かが見つかったというようなニヤけ顔。
あきらはまだ電話中だったが、総二郎が真横で「弱点が見つかったぜ」と囁いた。


「弱点・・・誰の?」
「仙道のお袋さん、どうやら男が居るらしい」

「・・・浮気って事?」
「あぁ、今美作の情報部から聞いたばかりだ。もう何年にもなるらしいぞ」

「・・・・・・へぇ」


ここでも起きていた不貞に類は少々ウンザリしていた。
たった今まで聖司の昔話をしてきたばかりなのに・・・とは言え、こっちは仙道とつくしを引き離すチャンスかもしれない。あきらの電話が終わると2人は急いでその両側に座った。


「仙道の母親の父親、つまり仙道の爺さんが札幌で会社経営してるんだけど、そこの社員と10年以上関係持ってるらしい。先週も実家に戻るなんて言って札幌に行き、そいつのマンションに入り浸ってたようだ」

「そんなにすぐ判るほど大っぴらだったのか?アホだな!」
「・・・証拠は?」

「この調査を始めた時に母親が小樽の家を不在だったから聞き込みをしたら『よく実家の札幌に行ってるらしい』ってのを聞いたようだ。で、その実家に行ったら如何にも密会風な格好で出て来たからつけてみると・・・ってヤツだな」


美作の情報部が仙道の母親をつけていたが、彼女の方はそんな人間が自分の素行を調べているとは夢にも思わなかったのだろう。
サングラスや帽子などと言ったありがちな変装だけで男のマンションに向かい、その日はそこから出てくることはなかった。
次の日になってすっかり身なりを変えた母親が男と出て来たが、その時は流石に少し周囲を確認する様子が情報部によって録画されていた。

この生活を10年以上続けると警戒心も薄れるのかもしれない。
母親はその男と腕を組んでマンションから出て行き、タクシーで何処かに向かった。不貞の証拠としてはこれで充分だろうと情報部はその後の行動については追わなかった。


「じゃあまだお袋さんは札幌に居るのか?」
「そんな事をするなら仙道は北海道には戻ってないってこと?」

「いや、それが今判ったんだが、母親が小樽に戻ったらしいんだ。その理由が息子が帰ってくるからだってさ」

「えっ?!それを早く言えよ、あきら!」
「仙道が戻る・・・」


母親の実家を張り込んでいた情報部は念の為に自宅周辺に盗聴器を仕込んでいた。
当然玄関前と門柱にも取り付け、それを少し離れた車内で録音出来るようにしていた。そこに入り込んだ声が・・・


『篤に宜しくな。たまにはここにも顔を出すように言ってくれ』
『えぇ、伝えておくわ。今回彼女を連れて来るらしいの。でも私は反対なのよね~』

『なんだ、気に入らないのか?篤が選んだ人なんだろう?』
『そうだけど・・・まぁ、よく話し合ってみるわ』

『あまり厳しく言うと嫌な姑だと思われるぞ?温かく迎えておあげ』
『・・・そうね、広い心で接しないとね。それじゃあまた!』



「彼女」とはつくしの事に間違いない。
やはり両親の前で恥をかかされたことを恨み、それを消すためにはつくし本人に謝らせる気なのだという事はすぐに判った。そうじゃないと自分に非があるままになる。捨てられたのは自分だという事は仙道の中では許される事ではないのだ。

謝らせた後はどうするのか・・・仙道なら1度は自分のものにして、最終的にはつくしを傷つけ捨てるつもりではないのか。
類の考えに2人も同じように頷いた。


「・・・まだ東京に居るのかな」
「どうだろう。仙道がいつ小樽に現れるかは言葉にしてねぇし」

「取り敢えず空港に情報部を配置させる。牧野らしいヤツを見つけたら確保するか?」
「ん、頼む。俺もすぐに北海道へ・・・」


♪~♪~~~~~


その電話は総二郎にだった。

掛けてきたのはCatherineの店員・・・誠二郎が現れた事を示すものだった。





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