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plumeria

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仙道がつくしを連れて北海道に向かうことが判った途端に鳴った電話、総二郎が舌打ちをしながらそれに出た。
勿論有り難い電話なのだがタイミングが悪い・・・類もつくしを助けに行く気分に切り替わっていただけに眉を顰めた。


「もしもし?」
『あぁ、西門様ですか?Catherineの者ですが』

「あぁ、どうした?あいつが現れた?でもまだ開店じゃねぇよな?」
『えぇ、そうなんですが、さっきビル前の掃除をしていたらあの男に会ったんですよ!それで、今日の夜に行くから酒を用意しとけって言われまして』

「今日の夜か・・・判った、サンキュ!」
『あの、私達はどうすれば?機嫌取っておけばいいですか?』

「そうしておいてくれ、俺も顔を出すから」


電話を切り、動き出そうとした足を止めた3人・・・だが、会えると判っているのにここで誠二郎を無視するわけにはいかない。

今日を逃したら次はいつ現れるか判らない。
類は北海道に行き、2人が誠二郎に会うという案も出たが、それだと聖司との話し合いにならない。数分間あれこれ思案した結果、北海道の前に誠二郎の件を片付けることになった。
つくしのことは気になるが、仙道は母親の前では完璧な男でありたいのだから無茶はしないはず・・・不安なのは仙道が触れて来るかどうかだったが、そこはつくしの抵抗を信じることにした。


「ああ言うヤツは自分本位に抱きたいんだ。抵抗されることはムカつくだけだから手を出さねぇと思うな」
「そうだな。抱いてやってる感を出したいから無理矢理ってのは性に合わないんだよな」

「止めてくれ、そんな会話・・・」

「ははっ、気にすんなって事だよ!」
「そうそう、先にこっちを終わらせようぜ」


冗談なのか本気なのか、巫山戯た笑いを出す2人を後ろに従えて類はマンションを出ていった。



開店前のCatherineに着くと、今度は総二郎を先頭に店内に入った。
当然ながら客はおらず、スタッフが1人いるだけ・・・そのスタッフが奥に入ると交代で電話を掛けてきたバーテンダーが現れた。

「えっ、もう来られたんですか?」
「あぁ、悪いけど何処かで待たせてもらってもいいか?」

「えぇと・・・狭いですが奥に従業員用の休憩室がありますけど、そんな所でいいんですか?」
「問題ねぇよ。で、来るとしたらあいつは何時頃だ?」

「今までですと8時くらいですかね。あまり遅い時間には来ないんですよ」
「あと1時間半か・・・」


その狭い部屋からあきらは美作の情報部員に連絡を取った。
あの時間以降、羽田にも成田にもつくしの姿は見られなかったと言う期待外れの返事・・・この先も張り込むように命令して、次には北海道の仙道家を張っている人間にも連絡した。
仙道の母親は自宅に戻ったが仙道本人は現れていない。この時間からだと北海道に2人が現れるのは早くても明日だという事だ。

総二郎とあきらはあらゆる可能性について話していたが、類は黙って腕を組み俯いたまま何も言わなかった。


祈るように目を閉じているだけ・・・どうかつくしが無事でありますようにと。




そのうち開店した店には馴染み客が数人来たようだ。
明るい笑い声が休憩室にも聞こえて来て、スタッフの動きも速くなった。
時々部屋を覗くスタッフは窮屈そうな3人に少々怯えながら逃げるように店内に向かう。そんな時間を繰り返すこと1時間・・・カランと音がした瞬間に、店全体の空気が変わったような気がして3人は顔を上げた。

予想通りバーテンダーが「来ました!」と小声で告げて来た。


「・・・今日は何人?」
「それが、今日に限って1人です。おかしいですよね、いつも3~4人だったのに」

「俺達には都合がいい。今はカウンター?」
「はい。いつものように1番高い酒を出せと・・・」

「判った、俺が出す」
「えっ?!花沢様が?!」

「類、いきなり酒をぶっかけるなよ?」
「無愛想なホストに酒出されても不味いだろうな・・・」


店の男がグラスに氷を入れて酒を注ぐと、類がそれを持って店内へと向かった。
総二郎とあきらもそれに続き、店員には他の客を守れと指示を出す。それに頷いて、店員は何も知らない客達の傍に向かった。


誠二郎は裏で起きていることも知らず、スマホの画面を眺めながらカウンターで酒が出てくるのを待っていた。
そこに無言で置かれたグラス・・・それを見て誠二郎が顔を上げた。


「・・・・・・・・・」
「・・・飲めば?あんたが頼んだ酒だ」


何1つ表情を変えないまま、誠二郎の目は類を見ている。類もまた同じく無感情で誠二郎を見下ろしていた。実に異様な光景に、後ろのボックス席の客達の会話も止まった。
スッと誠二郎の後ろに回ったのは総二郎とあきら・・・それを目だけで確認したが、誠二郎が動くことはなかった。

今、この場で喧嘩を始めても3対1では勝ち目がない・・・そう判断したのか、薄笑いを浮かべて類の出した酒を飲んだ。


「へぇ・・・愛想の無いバーテンダーだな・・・お坊ちゃまがバイトでもしてんのか?」
「・・・松島誠二郎、だよね?」

「あぁ、そうだけど?俺に何か用か?花沢類・・・だっけ?」


荒んだ生活をしてると判る服装に鋭い目付き・・・でも腹違いの兄弟と言われれば納得出来る容姿。

この男が亜弓の産んだ子供・・・類はそれに嫉妬さえ覚えた。


でも誠二郎も身勝手な大人によって運命を狂わされたのだ。
もしかしたら自分がこの立場だったのかもしれない・・・誠二郎が花沢で育っていればこんな目で人を見る事も無かっただろう。今頃は花沢物産に入るための準備で誠二郎の方が忙しかったはず。
聖司とも違和感無く親子で居られただろう。
そして実の母親の最期を看取ることも出来ただろうに・・・と、様々な思いがこの数秒の間に駆け巡った。


「・・・ここでは話せない。俺と一緒に来てもらおうか」
「嫌だと言ったら?」

「そんな選択、あんたに出来ないと思うけど」


類の言葉が終わらないうちに誠二郎の背中には何かが押し当てられた。
流石にそれにはビクッとして顔を後ろに向けると、あきらが真後ろに立っていた。そして右手に握った物をグイッと背中に押し当てる・・・勿論他の客には見せないようにしてあるが、総二郎があきらの後ろに回って完全に隠した。


「はっ!冗談はよせよ。お坊ちゃまはそんなもの持ってねぇだろ?バカじゃねぇのか?」

「悪いな。確かに俺達はお坊ちゃまだけど危ないものも好きな訳よ」
「あきらを怒らすなよ?頭、吹っ飛んで無くなっても知らねぇぞ」

「・・・本気か?」

「本物か確かめたいなら他の客を出してからにするか?その代わり標的はお前だから無傷じゃすまないけど」
「お坊ちゃまってのが全員ヤワだと思うなよ?今日は大人しく言う事を聞いとくんだな」


決して喧嘩腰ではなく、2人とも穏やかな口調、しかも薄笑いさえ浮かべて他の客には気付かせないようにしている。類もまた穏やかな表情で、誠二郎はこの段階で自分の予想とは違う事を感じていた。
花沢を脅すだけのネタを持っているのは自分のはずなのに、どうして相手の方が落ち着いているのだろう・・・目の前の類を見る誠二郎の眉が歪んだ。


「・・・これまでにあんたがした事を今更咎める気も無い。ただ会わせたい人が居るだけだ」


類の言葉に誠二郎は「好きにしろ!」と吐き捨てるとスッと立ち上がった。
そしてあきらの手の中のものを見てより深く眉を寄せ、数日前殴り合った総二郎に腕を掴まれた。Catherineの店員に目配せで帰ることを告げ、そのまま地上に出る階段を上がって行く。


1番後ろを歩く類は、異母兄の背中に哀憐の情を感じていた。






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