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「えっ!今日もなの?」
「あぁ、馴染みの企業社長の接待だ。11時に赤坂の店に頼む」

「・・・・・・はいはい、行ってらっしゃい!」
「宜しく!」


家元達と顔合わせしてから数日後・・・にこやかに出ていく婚約者を腕組み&仁王立ちで見送る私。
今日も飲みの迎えを頼まれたからだった。


あれからは穏やかな毎日だったけど、私には作法の教本と西門流の歴史書のようなものが手渡され、家に居る時に読んでおけと言われた。総二郎のお茶の稽古も始まったし、それも自主練しとけと・・・ってまだ1人で出来るほど覚えてないから、帛紗捌きとか茶筅拭きとかの練習をしてるだけ。

そして始まったのが・・・「お迎え」だ。


茶道教室に行く時には西門から迎えの車がマンションまで来るけど、最後の教室が終わった時の迎えは私だと言われた。
しかも教室だけじゃなくて今日みたいに飲みに行くときのお迎えも私・・・ムカついて言い返したら「3500万円の支払いだと思え」。

卑怯な!って睨んでも笑うだけ・・・だから買ってもらった車にも乗らなきゃいけないから慣れてしまったわよ!


総二郎が食べたお昼ご飯のお皿を片付けながら口がひん曲がる。
それが終わったら1人で珈琲淹れて、茶道の本を広げたけど・・・書いてある言葉の意味が判らない。まずは茶道用語からか、と気を取り直してそっちを調べながら読んだけど、やっぱり総二郎がいないと頭に入らない。


「よし、考えるより動いてみる!お茶、点ててみようっと!」

その茶道具はマンションの和室に置かれているから、そこに取りに行くと・・・全部が綺麗に並べられている。
丁寧に置いたと判る道具類の間隔と向き、それに埃がひとつも無い。新しい物じゃないはずなのに汚れも古さも感じない・・・手入れが行き届いてるんだなってのが素人でも判るほどだった。

それなのにマンションの和室にあるなんて・・・ってチクンと胸が痛む。


お稽古用のお茶碗を持って来て、お湯を沸かして本の通りにお茶を点ててみた。
でも、そもそも美味しいのか不味いのかさえ判らない。ひと言で言えば「苦い」・・・つまり失敗したんだな、と道具を洗って終わり。茶道に関しては総二郎が居ないとダメだなって痛感・・・仕方なく洗った道具を再び和室に持って行った。


3時のおやつの後、洗ってたシーツを持って総二郎の部屋に入った。
1人なのにキングサイズだからベッドメイキングもひと苦労!毎回四苦八苦しながらシーツの交換をして、最後に枕をポン!と置いた。
その時目に入ったのは机の隅に置かれてる1枚の紙・・・西門の茶会のスケジュールだった。


「あっ、これ・・・いつも話してた月見の茶会?あぁ、孝三郎君が亭主なんだ・・・」

こんなもの初めて見たけど、きっとこれまでは総二郎の名前が多かったんだろう。
それ以外にも年末までの行事がびっしり・・・難しい言葉で書かれていたから何の事か判らないけど、その全てに総二郎の名前はなかった。

それがまるで「要らない」と言われてるみたいで嫌だ・・・。


これを本当に「気が楽だ」って思ってるのかどうか・・・それを考えていたらぼんやりして、気が付いたら日が暮れていた。
慌てて洗濯物を取り込んでたたみ、それから1人分の晩ご飯を作って食べた。

「味気ない・・・ってか、美味しくない!」

総二郎が飲みに行ってる日の晩ご飯は超簡単だった。
その後はテレビも見ずにテラスに寄り掛かって暗くなった景色を見てた。
あの日は飛びたくなったけど、今は・・・・・・まぁ、そんな事は考えてない。お先真っ暗に変わりはなかったけど、気分はそこまで暗くはない。

これがいつまで続くのか・・・それを考えてるだけ。



「はっ!もうこんな時間?迎えに行かなくちゃ!」

いつの間にか10時半になってて、急いで車のキーを持った。



赤坂のとあるビルの前のパーキングスペースに停めて、そこで時計を確認・・・10時55分、丁度いい時間だった。
自分が少しぐらい遅れても「悪い!」で済ませるのに、私が遅れるとご機嫌ナナメなんだから。

「よく考えたら迎えに来させて怒るっておかしくない?そこら辺で待っとけばいいんだし、それが嫌ならタクシー使えっての!」

と、言いながらソワソワしてビルの入り口を見てばかりの自分にも首を傾げるんだけど。


そして11時少し回ったら出て来た数人の女性・・・その中心にはチャラい笑顔の総二郎?!
また今日もそれか!と睨んだけど効果無し。両腕を掴まれたニヤけ男が私の車のすぐ傍までやってきた。


「お待たせ、つくし」
「・・・そこまで待っちゃいないわよ。早く乗ったら?」

「サンキュ!じゃ、お前等はここまで。またな!」
「・・・(またとか言うな!)」


「え~!総二郎ったらホントにもう帰るの?!つまんな~い!」
「やだぁ、ホントに彼女が居たの?ってか、本気~?」


そんな声が聞こえてきて、運転席が左だから私の顔を覗き込んでる・・・そして何故か大笑いするのよ、この人達。
えぇ、どうせ総二郎には似合わないわよ!って思いながらハンドルを持つ手に力が入る。出来るものなら降りて張り倒したいぐらいだわ!
・・・って唇噛んでたら総二郎がひと言・・・


「悪いけど俺が帰るのはこいつのところだけ、お前等が俺に触れられるのも腕だけって事だ。判ったらさっさと店に帰れ。じゃないとこの店には2度と来ない」

「えーっ?!そんなぁ~!」
「・・・もうっ、最近全然遊ばないんだから!」
「仕方ないなぁ~、顔見られないのはヤだしね」


・・・最近、遊んでないんだ?って思ったけど、この状況を簡単には許さないんだから!
助手席に乗ってきた総二郎の顔なんて見ないで、さっさとこの場から出ようと思ったら「ただいま、つくし」って急にほっぺたにキスされた!
それを窓越しにみた女性達が「バカみたい!」って呆れて帰ってく・・・私は逆に熱が上がって真横の酔っ払いを突き飛ばした!


「・・・ってぇ!何すんだよ・・・狭い車なんだから頭打つじゃねぇか!」
「総二郎がい、いきなり近寄るからでしょ!社長さんはどうしたのよ」

「あ?あぁ、ヤツは1時間前にさっさと帰った」
「はぁ?あんた1人でそれから飲んでたの?!」

「ははぁ、ヤキモチか?可愛いな、お前!」
「馬鹿言わないで!お酒臭いっての!」

「いいじゃん、別に。俺達婚約者だし?」
「何言ってんのよ!召使いみたいなもんじゃないの!」

「召使いにはキスしねぇし」
「五月蠅いっ!!」


態と怒らせてるのか、それともただ遊んでるのか・・・どーでも良いけどご機嫌で鼻歌歌うの止めてよね!


調子が狂う・・・怒ってるのに心臓は別のバクバクを抱えてる。
右隣で転た寝する男の綺麗な横顔をチラ見しながら、眩しい都会の夜をチンタラ走っていた。




**



「えっ!今日もなの?」
「あぁ、でも今日の迎えは茶道教室じゃねぇんだけど」

「へ?何処なの?」
「羽田空港」

「は?・・・羽田?!」


酔っ払いを迎えに行った次の日の朝、総二郎が面白くなさそうに言った。
今日のお迎えは羽田空港?でも今日最後の茶道教室は江戸川区・・・方向が随分違うんじゃないの?
玄関でキョトンとしていたら総二郎がブスッとした顔のまま背中を向けて、ドアを開けた後で呟いた。


「類とあきらが揃って帰って来るんだとよ。で、どっから聞いたのか知らねぇけど俺達の事で怒ってんだ。自分達の家に帰ればいいものを、お前に迎えに来させろって五月蠅いからさ」

「花沢類と美作さんが?」

「あぁ。仕方ねぇから彼奴らを迎えに行ってここに連れて来てくれ。でもムカつく男の話も金の事も・・・つまり、こうなった経緯はペラペラ喋るなよ」
「えっ!じゃあなんて言うの?4年前に私から別れ話出したことなんて知ってるでしょ?!」

「・・・俺を忘れられなくて戻って来た事にしとけ」
「はぁ?!どーしてそうなるのよ!」

「行ってくる」


それじゃあ私が総二郎にベタ惚れ状態って事じゃないの!
どうして自分に都合よく事実をすり替えるかなっ💢

でも確かにあの二人に真実を話したらややこしくなりそう・・・これも3500万円の利息だと思って諦めた。


「よーし!じゃあ何かおつまみ作ろーっと!」


今日も総二郎のパンツを干しながら、眩しい太陽を見上げた。





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Comments 2

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2020/03/30 (Mon) 16:58 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

あはは!最後のパンツがインパクト大ですかね?💦
自分でも想像して笑いが出ました。

そうそう、態と迎えに来させて見せびらかしてるんですよ(笑)
エッチ無しだからこのぐらいはしないとねっ!


ふふふ、類君とあきら君搭乗~~~!
なんかこの2人を出さないと気が済まないというか💦
忘れ物した気分になるので出ていただきました。


あっそうそう!
今日は向こうが楽しかったでしょ?(笑)良かったですね~♥♥


世間では悲しいニュースがあって私も1日何も手につかなかったです。
1日でも早く終息して、みんな安全で楽しく過ごせる日が来ますように・・・。

2020/03/30 (Mon) 20:35 | EDIT | REPLY |   

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