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plumeria

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聖司の部屋から出て階下に行くと、そこには応接間から出て来た総二郎とあきらが立っていた。

でも誠二郎の姿は無い。
類が玄関に目をやると、総二郎が真横にやってきて「あいつなら出ていったぜ」と呟いた。あきらもすぐに総二郎の向こう側に並び、3人で同じ方向を見詰めていた。


「お袋の手渡した弁当だけ奪い取ってさ、なんかすっきりした顔だったな」
「おじさんと話が出来たのか?さっきすげぇ声が聞こえたけど」

「・・・花沢と自分は関係ないってさ。たとえ真実が判っても父親は必要ないらしい。これまで通り暮らしていく、そう言ってた」

「あいつ、驚かなかったのか?何も要求はしないって?」
「まぁ、確かにあいつにここでの暮らしが出来るとも思えねぇけどな」

「少しは勘付いてたみたいだけどね。でも誠二郎にとって母親は松島良子しか居ないんだと思う・・・それは俺も同じだから」


この後、何かあったら夢子を頼ると言ったことをあきらに伝えた。
それには2人も笑うしかなかったが、「来なくてもいいけどな~」と言うあきらの目は穏やかだった。



「それで、お前は?自分の気持ちをちゃんと伝えたのか?」

今度は総二郎が類に向き直って尋ねた。
2人にとっては誠二郎の事よりも、幼馴染みが懊悩としているのを解決する方が大事だ。
成り行き次第では西門も美作も花沢を援護するかもしれないし、逆に対立するかもしれない。そのどちらになっても類の味方であることに変わりはない・・・あきらも同じように類の目を見ていた。


「・・・家を出るって言ってきた。父さんの返事は聞かなかったけどね」

「そりゃ一発で許すとは思えねぇけど、話合いになってないんじゃ・・・」
「そうだな。本気で類が出ていくと思ってないかもしれないぞ?」

「そうかもね・・・でももう迷わないって決めたから」

「そっか・・・じゃ、今度は俺達が類の世話しなくちゃな!心配すんな、どうにかして食えるぐらいの仕事はやるよ」


今更親友に肩を抱かれるとも思わず、でも2人の手は温かかった。
きっと海の向こうに居るもう1人も同じ事を言うのだろう・・・不思議と類は悲しくも淋しくもなかった。



「それで牧野の事だけど」

ここからはつくしの救出に気持ちを切り替えた。
類達が話し合ってる時間、あきらは北海道に居る連中から情報を得ている。
3人は並んで屋敷を出ると類の車に乗り込み、直ぐさま向かったのは羽田空港。その車中で内容を聞いた。


「仙道の車は13時30分着のフェリーから下船したのを見つけて、助手席に座ってる牧野も確認済みだ。追跡はさせてるけどどうやら札幌で降りたらしいんだ」
「小樽じゃなくて?」

「あぁ。情報部の話だと札幌手前のパーキングエリアで仙道だけが飲み物を買いに車から出てるが牧野は全然動いてない。そこで暫く停車してたけど、次のインターで降りてる」
「・・・・・・何があったんだろう」

「判んねぇけど行くしかないだろ。小樽に行く前に追い付きゃその方がいい・・・もう親子のゴタゴタは見たくねぇだろ?」
「・・・まぁね」

「さっき誠二郎が出て来た時、お前もすぐに降りてくると思ったから1番早く行ける便を予約してるから」


空港ロビーに着き、時計を見ると15時少し前。
予約したのが羽田発15時35分、新千歳空港は17時05分着・・・もう搭乗手続きギリギリの時間だ。3人は急いで自動チェックイン機に向かった。


着いてすぐに札幌に向かっても夜になる。
たとえ一晩でも仙道の元で過ごさせたくない・・・類の表情が険しくなった。





「あぁ、母さん?今、高速なんだけど・・・うん、そう。それでね、悪いんだけど家に戻るのは明日になるから」

窓に頭をくっつけて目を閉じているつくしは、熱に魘されながら仙道の声を聞いていた。
そんな優しい声が何処から出てくるのか・・・自分に吐き出される声とは全然違うトーンで、口調も穏やかだ。こっちの方が恋人と話しているかのように思えて気持ちが悪かった。

スマホの通話口からはあの日聞いた声が少しだけ漏れ聞こえる。
でも熱が幸いして何を言ってるのかは判らない。それよりも・・・と、窓の外を再度確認すれば、シルバーの車は同じ場所に停まったままだった。


「つくしがね、北海道初めてだから少し観光したいんだってさ。
うん、そう思ったけどね・・・あぁ、俺はいいんだよ、つくしが楽しければさ。あの後結構落ち込んでたからいい気分転換だろ?うん、そう・・・うん・・・・・・判ってるって」

その言い方だと悪者はつくしだと言っているようなものだ。
謝りに来たといいながら観光に連れて行けと強請ったように聞こえる仙道の説明は、母親の「ある言葉」を聞きたいだけのように思えた。
スムーズに事を進めたいなら自分が強引に誘ったと言えばいいのに・・・でも訂正を求める気にもならない。

微かに聞こえたのは『篤、優しすぎるんじゃないの?』・・・仙道が欲しかった母親の言葉だ。


「だから札幌で1泊するから・・・ははっ、いいじゃん、そのぐらい。母さんの手料理もいいけど、それはいつでも食えるし。うん、そうする・・・また連絡するから。ごめんね、母さん」


電話は終わったようだ。
でもつくしは目を閉じたまま・・・ニヤけた仙道の顔など見たくなかった。


「そういう事だから札幌に向かう。ホテルは・・・まぁ、何処か空いてるだろ」

一気に冷たい声に変わったことを逆に安心するぐらいだ。
車のエンジンをかけ、静かに走り出す・・・つくしは薄目を開けて例の車を確認した。

・・・同じように動き出した。
やはりそうかと小さく息を漏らしたのを仙道に気取られないかとヒヤリとした。



暫くすると高速道路を降りて、車は札幌市内に入った。
何処かに馴染みのホテルでもあるのか、迷わず賑やかな場所にあるホテルに向かい、そこの駐車場に入った。車を降りて火照った顔を上に向けたがホテルの名前すらぼやけて判らない。

でも外観からするとビジネスホテルではなさそうだ。
ランク的に上級クラス・・・エントランスの向こうに煌びやかなロビーが見えた。


「妙な真似はするなよ。何かを疑われるような態度をとるな」
「・・・・・・判ってるよ」

「それならいい」


仙道はフラフラのつくしを連れてフロントに行くと空室を確認。
「ツインでしたら」の声に「それで頼む」と言う返事・・・やはり同室かと考えた瞬間、つくしの足が蹌踉めいた。


「大丈夫か?・・・ったく、世話の焼けるヤツだな」
「・・・ごめん、あっちゃん」

「背負わなきゃいけないのか?」
「ううん!大丈夫・・・自分で歩けるから」

「じゃ行くぞ。熱があっても少しは食えよ?一晩で熱下げてくれなきゃ困るんだからな」
「・・・・・・・・・」


もう何度同じ言葉を聞いたのだろう・・・心の中でつくしは何故か笑ってしまった。
手も足も自分の物ではないような気がするほど平衡感覚もなくなっている。それでも仙道が余所見をしている時に自分の後ろを確認するとサングラスの男が遠くに見えた。

それならきっと助けが来る・・・。


あと少し頑張れば、類に会える・・・・・・歩き出した仙道の背中を睨みながらつくしも部屋に向かった。





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