FC2ブログ

plumeria

plumeria

-
新千歳に着いた類達は待機していた美作の車に乗り込んだ。
そして向かったのは札幌市内で、高速に上がった時には既に18時。ここから市内までは約1時間、この間に情報部の報告を受けた。


「仙道の車は札幌のRホテルに入りました。そこで部屋をとり、牧野様と宿泊するようです」

「ホテル?実家じゃなくてそんな所に?」
「何か変わったことでもあったのか?」

あきらと総二郎が同時に質問したが、類は2人がホテルに入ったと聞いただけで腸が煮えくりかえった。右手の爪を重ねた左手の甲に押し付け、そこが赤くなるほど力を込める。それを見たあきらが腕を引き離したほどだ。
会話はちゃんと聞いているが視線は窓の外・・・遠くに見える灯りを睨んでいた。


「2人には接近出来なかったようですが、現在ホテルに張り付いている者からの報告では牧野様の具合が悪いのではないかと思われます」

「どうして判るんだ?」
「遠くからでも判るって・・・それほど酷いのか?」

「・・・・・・・・・牧野・・・」


その男の報告は続いた。
途中で入ったパーキングエリアでもつくしが出てこなかったこと、仙道が持っていたのが数本の飲み物だけだったことを考えるとトイレ休憩ではない。しかも食事もしていない。
停車時間は20分程度で、遠くからでもつくしが窓硝子に凭れ掛かっているのが確認出来たと言われた。

そして札幌では何処にも寄らずにホテルに入り、そこで車から降りたつくしはフラフラだった。時々仙道に腕を掴まれて歩き、フロントで手続きした後は仙道の後ろを歩いて行った。


「何度か仙道が手を貸そうとするのを断わっているような素振りも見せておいでです。ただ、気になることがあります」

「気になること?」

「牧野様はもしかしたら我々の尾行に気が付いているかもしれません。
苫小牧港でも我々の車に目を向けられたそうですが、パーキングエリアでも同じように確認しています。何度か牧野様が窓の外に顔を向け、我々の車を見ていたようだと運転手が証言しているんです。
ホテルでもフロントでの手続き中、振り向いてこちらの姿を捜しておられたようですが」

「でも目立つようなことはしてないんだろ?」
「勿論です。我々は観光客のような格好ではありませんのでホテル到着時以外は車外に出ておりません」


それが美作の・・・だとは思っていないかもしれないが、確かにその話だとつくしは何かを勘付いているようだ。
この世界では警護の車が付くことは珍しくない・・・それをつくしは知っている。ただし、仙道はそんな事を思いはしないだろうから気付いていないはず。

つくしが気がついたのなら無茶をせず救出を待つだろう。



「それとあきら様、これを」
「なんだ?」

「お聞きになれば判ります」

それはボイスレコーダー。
母親の実家で録音されたものだと言われ、あきらがそれをイヤホンで聞いて・・・・・・ニヤリと笑った。



「そのホテルに向かう。場所は判るか?」
「はい。既にホテルに待機している者が警察を装って部屋番号を聞き出しています」

「今でも外出はしてないんだな?」
「はい。ルームサービスで夕食を手配していますのでレストランにも行っていません」

「類、乗り込むぞ、いいな?」
「ん、勿論」


この話が終わる頃、類達を乗せた車も札幌市内に入った。






ホテルの一室ではつくしが意識朦朧としてベッドに横たわっていた。
少しだけ目を開けると仙道がテーブルで食事をしながらスマホを見ている。そしてニヤリと笑ったのを見てゾッとした。

仙道が見ていたのは春菜のSNSだ。
そこには意味不明な暗いイメージ画像が乗せてあり「酷すぎる・・・あんまりだ!」の言葉があった。
その後にも「最低!」とか「こっちから願い下げ!」などと令嬢らしからぬ言葉が続き、割れた硝子や火山の噴火を思わせるようなイメージの画像が貼り付けられている。
それを見て誠二郎が役目を果たしたのだと確信して笑みが溢れたのだ。

裏で揉めたとは言え企業のホームページに変化はない。
でも内部では大騒ぎで、プロジェクト白紙のシナリオも出て来ているのだろう・・・それが類のせいだとなれば花沢が揺らぐのも想像出来て愉快だった。


「・・・なんだ、起きたのか?」

つくしが目を開けているの見て、仙道がスマホを置いた。
そしてベッドの横まで来て手を差し出し、「食事をしろ」と命令する。つくしはさっきよりも上がった熱で起き上がることも出来ないのに、それでも食べろという仙道を憎らしく思った。

「・・・今は無理。もう少し気分が良くなったら・・・」
「そう言って食べずに倒れようって魂胆か?バカだなぁ、まだ判らないのか?つくしに選択肢はないって言ったのに」

「・・・誰も倒れようなんて思ってない。でも本当に・・・ゴホッ!」
「やれやれ、俺にまで風邪をうつす気か?止めてくれよ、迷惑だ」

「・・・・・・・・・ゴホッ・・・コホ」


バッ!と布団を剥がされ、つくしは驚いて服を握り締めた。
仙道はそれを見て呆れたように笑ったが、次の瞬間にはつくしの腕を持ってベッドから降ろし、引き摺るようにしてテーブルの前に座らせた。

そこにあるのはルームサービスのフレンチで、見ただけで気持ちが悪くなった。
それでも「少しでもいいから食べろ」の命令口調に仕方なくフォークを持った。
とてもマナー通りに動かすことなど出来ない・・・然程豪華でもない見た目と量だったが、その中でも食べられそうな野菜だけを口に運んだ。

味などしない・・・逆にドレッシングが喉を刺すようだった。
スープならと飲んでみたが、すぐさま吐き気がしてトイレに駆け込んだ。


「そんなに具合が悪いのか?」
「はぁはぁ・・・だから寝かせてくれればいいのに!・・もう無理だってば・・・」

「着替えてから寝ろよ。折角用意した服が台無しだ」
「・・・・・・・・・」


目の前の病人より母親のために選んだ服の方が大事・・・それも仙道らしいと思えば腹も立たない。つくしはヨロヨロと立ち上がると部屋に戻り、僅かに持って来た部屋着に着替えてベッドに潜り込んだ。

再び襲ってくる寒気と背中の痛み・・・それなのに吹き出るような汗。
それを仙道に見られないようにと背中を向けたまま目を閉じた。





美作の車がRホテルに着いたのは19時30分。
エントランス前で車を降りると、1人の男が近寄って来た。仙道の車を尾行していた車の運転手だ。

あきら達に一礼するとホテルの中まで同行し、ロビーの隅で現在の状況説明をした。


「仙道が滞在しているのは815号室です。牧野様もご一緒です。1度も外には出ていません」
「誰か見張ってるのか」

「はい。8階のエレベーターホールに1名張り付いてます。2人が部屋に入った時間から監視しています」
「判った、すぐに8階に行く」

「エレベーターはこちらです」



類はつくしのすぐ近くまで辿り着いた。





にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村
応援、宜しくお願い致します♡
関連記事
Posted by