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「よし、腕をあげろ。そのまま背中を真っ直ぐ・・・力入れて立っとけよ」
「はい・・・」

総二郎が背中側に回って帯を締めてくれている。
さっきあれだけ怒鳴ったから喧嘩腰になるかと思ったのに、その反対で超ご機嫌・・・っぽい?
いつもは怒ったように命令するのに今日はすごく優しく着付けてくれる。しかも途中で言われる「苦しくないか?」には鳥肌が立つほどだった。

今までは着物着る時には「根性出せ」とか「気合い入れろ」とか「我慢しろ」だったのに。
鏡に映る顔を見ても眉に緊張感もないし、口元はニコッと上がってるし、とても今から詫びを入れに行く人の表情じゃない・・・。


「よし、これでいい。結った髪に簪挿すから後ろ向いてみ?」
「簪?」

「あぁ、この着物作った時に良いのがあったから」
「うわぁ、綺麗」


秋の夕焼けみたいな簪・・・。
赤からオレンジに暈かしてある花が寄せ集まってて、真ん中には大きなパールが1つ。花の縁がゴールドで出来てて雄しべなんかも細かく作ってある。
そこにはダイヤなのか小さいけど光る石が入ってて、チェーンでぶら下がってるところは蕾だ。

私が後ろを向くと、総二郎が鏡を見ながら丁度いいところに挿してくれた。
着物は大人っぽいし、この簪で一層上品に見える。和装の鞄も用意してくれていて、それとお揃いの草履も玄関にあって、それを履く時には彼の手が私を支えてくれた。

・・・・・・なんか、すごく気持ち悪いんだけど。


歩くのに時間が掛かるからって、やっぱり総二郎も歩幅を合せてくれるし、エレベーターに乗る時も帯に手を添えてくれる。勿論車に乗る時は私がちゃんと座るまで傍に居るし、車を動かし始めても超安全運転。
信号が変わる時にはわざわざ「赤信号だぞ」って・・・見たら判るっつーの!

あの発言からヤケに優しい・・・いや不気味。


そんな事言ってるうちに、1番初めの後援会会長さんのお屋敷に着いた。
そこも日本家屋の大豪邸・・・いくら総二郎が優しいからって、今日はズッコケませんようにと神様に祈った・・・。




**********************




信じられないひと言・・・これがつくしじゃなかったら疑うところだけど、嘘なんてつけない奴だから本当なんだろう。
まさか竜司とはヤッてなかっただなんて!

先日の『竜司さんとのはすごく良かったよ』発言はきっと何かを勘違いしたんだな、と都合よく思う事にして、俺の機嫌は急上昇だった。気が付かないうちにニヤけてるし、眉が下がってるし口角は上がってる。自分でも情けないと思うが顔筋が緩んで緩んで元に戻せなかった。
だからなのか着付けの仕方が優しい・・・こんなに180度変わるとはって自分の事なのに可笑しかった。



でも、今から行くのは詫びの挨拶とこいつの紹介。
浮かれまくって行くような状態じゃなかった・・・それに気が付いたのは荘厳な日本家屋を目の前にした時。

1番初めの後援会会長・・・永峯邸に着いた時には気分が元に戻っていた。


「永峯会長はお優しい方だから問題は無いと思うが、何か言われても返答は俺がする。お前が答えを求められたら正直に・・・いや、よく考えて間違えないように答えろ」
「・・・その間違えないってのが判らないんだけど」

「兎に角西門流に馴染む努力と茶道に対する愛情と俺に対する信頼、これだな」
「どれも持ってないかも」

「今すぐ持て。もう玄関だぞ」
「・・・だよね~」


永峯邸の使用人に俺が来たことを告げると、至極上品に出迎えられて客間に通された。
つくしもここで教えたとおりに挨拶をして、2回目だからなのか躓かずに内股で廊下を歩き、何とか無事にその部屋に辿り着いた。残念だったのは和室だったこと・・・話の長い永峯の爺さんに耐えられるのか、ちょっと不安・・・。

つくしも椅子じゃなかった事でガックリしていたが仕方ない。覚悟を決めてそこに正座した。


「いいな?俺が紹介したら自分で自己紹介だ。それまでは黙ってていいからな」
「はーい・・・」

「ちゃんと持ったか?」
「何を?」

「西門流に馴染む努力と茶道に対する信頼と俺に対する愛情だ!」
「微妙にすり替えてない?」

「・・・・・・あれ?」


ぷぷっ!と笑う余裕があるならいいか・・・と、思っていたらスッと障子が開いて永峯の爺さんが現れた。
小柄で今にも倒れそうな爺さんだが、数年前まで永峯ホールディングスの会長だった企業家だ。身体は少し歳を取ったようだが頭の方は衰え知らず・・・引退したとは言え今でも経済界に影響力を持つ人だった。

見た目は温厚で人当たりが良い。
でも決して敵に回すなと言われている。
この人が俺達の交代劇をどう見ているのか・・・それは少々心配だった。


「おぉ、よくいらっしゃいましたな。若宗匠」
「・・・はは、手厳しいですね、永峯様。ご無沙汰しております」

「ほんとにのぉ。この前宗家にお邪魔した時には弟君しか来て下さらなくて淋しかったですわい」
「私はもうそのような席には顔を出しませんので」


こんのクソジジィ!判ってて言ってやがる。
わざわざ「前」なんて付けやがってこの俺を怒らせる気満々だな?ってか、今日はこのお小言を聞きに来たようなもの。
それなのに腹を立てる訳にもいかないから只管顔に出さず、理性掻き集めて我慢していた。


「おや?随分厳しい顔付きですが、なにかお気を悪くされたのかな?」

「・・・(はっ!顔に出てた?)いえ、なんでもございません。本日はわたくしのことでお騒がせしたことのお詫びにお伺い致しました。数年前、会長の前で次期家元として修行に励みますとお約束致しましたのに、それを全う出来ずに申し訳ございませんでした。今後は講師として西門に尽くす所存でございますので、どうか宜しくお願い致します」

「・・・あぁ、そのような約束もいたしましたねぇ。でもその時の総二郎様はイマイチ真剣ではなかったですから、こうなることも予測はしていましたけどね」

「・・・・・・そうですか?」

「抹茶なのか粉茶なのか判らない日もございましたし」
「・・・は?!」


・・・お、俺の茶が粉茶?!


抹茶の原料は「碾茶」。
覆い下栽培で育てられた茶の葉を手摘みし、揉まないで乾燥させたものだ。これを茶臼で丁寧にひいたものが茶道で使われる抹茶。
抹茶味の菓子などに使われるものは茶臼ではなく、粉砕機などの機械でひかれたもの・・・それだけでも味はすげぇ違ってくる。

それに比べて粉茶というのは所謂寿司屋の「あがり」だ。
煎茶の製茶工程で揉んだり乾燥させたりしている時に茶葉が砕けたり、風力選別機で飛ばされた物・・・つまり「出物」と言って初めっから粉状のものなんだ!
確かに新茶の時の粉茶には美味いものがあるが、あくまでも「出物」だっての!


「永峯様、それは少し言い過ぎではないですか?」
「おや?そうかな・・・何度か途中で帰ろうかと思った茶席もありましたよ?」

「はっ?!途中退席?!」
「えぇ、あまりに息苦しくて」

「この私の茶席が息苦しい?!いつの事ですか?!」
「そうだのぅ・・・3~4年前ですか?皆で西門流を心配しましたねぇ」

「そっ・・・確かにその頃は色々と乱れておりましたが、いくら何でも粉茶とは・・・」
「おぉ!青山の寿司屋で”曙”と言う店がありますが、そこのあがりは美味いですよ?」

「ですから!粉茶の話ではございませんと言うのに!」
「ほほほ、若宗匠、そんなに怒らなくても良いではないですか。昔の事だし、しかも事実ですのでな」


「・・・・・・・・・・・痛ぁ・・・」



ヤバい・・・つくしの足が痺れ始めたようだ。
早くこの会話を終わらさなくては・・・。




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Comments 4

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2020/04/10 (Fri) 12:39 | EDIT | REPLY |   
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2020/04/10 (Fri) 13:33 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんにちは

コメントありがとうございます。

デレデレ総ちゃんでございます♡
それを気持ち悪がるつくしちゃん💦

確かに鏡見て総ちゃんがニタニタしてたら怖いかも(笑)
よくここで押し倒さなかったよね💦
詫びなんて後回しで、1回ヤッちゃいそう・・・いやいや💦
(そんな事言ったら書くのは私だった!!)

でも、この後援会長さん、悪い人じゃないんです(笑)
今回の会長さんも可愛いお爺ちゃん設定です♡


ホント、毎日数字聞くのが嫌ですね~。
私、今は自宅が仕事場だから変わらないけど、前は販売業で事務所半分店頭半分だったんですよ。
だから毎年インフルの時でさえヒヤヒヤだったのに、今だったらスタッフのみんな、大変だろうなって思います。

どうしても仕事に行かなきゃいけない人も居るだろうから心配です。
そういう娘が毎日出掛けていますけど💦


どうやら長い闘いになりそうな予感・・・1人1人の意識から変えないといけませんね。

2020/04/10 (Fri) 16:54 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、こんにちは。

コメントありがとうございます。

お出掛け好きなまりぽん様、引き籠もりは辛いでしょうね💦
私は元々お家大好きなので苦しくはないですが、旦那がお出掛け好きなのでイライラしています。

だから喧嘩や離婚が多いらしいですね?
う~~~~ん、それもどうなんだろう?


あはは!総ちゃんの変わりよう💦
これから少しずつLOVE度が上がって行くと思います♡
でもほんの少しの事件もあるかも?うふふ、それはお約束ですね!


私も実を言うと続けるのは大変です(笑)
それどころじゃない心配ごとが多いので、妄想出来ないんですよ💦
考える時間と心に余裕がないです。だから類君のお話がラスト前ですが、思うように書けないんです💦

何とかパソコンに向かうのですが、すぐに気が散ってしまってね(笑)


連載だけは何とか続けたいと思ってますよ。
そうやって普段と変わらない時間を作るのも大切だと思うから。

だから誤字が多いかも💦変な展開になるかも💦その時は許してくださいね~~~~!!

2020/04/10 (Fri) 17:56 | EDIT | REPLY |   

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