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plumeria

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昔から元気がよくて声がデカい人だったが、まさか玄関でいきなり出くわすと思わなかったから油断した・・・。
おそらく俺が驚く事を期待して使用人にも出迎えに行かせず、こんな事をして遊んだんだろう。遠くから心配そうに覗いてる使用人の顔を見れば一目瞭然。
そして相変わらず説教好き・・・名前ぐらい褒められたんだから素直に「ありがとう」って言えば丸く収るのに、どうしても波風立てなきゃ気が済まないのか?

変わってねぇな、と思いながらつくしを連れて婆様の後をついて行った。


相変わらずと言えばこの庭もそうだ。
手入れが行き届いていて、寒椿も綺麗に咲いているし早めに咲いた蝋梅に終わりかけの柊・・・今でもここで茶会をするらしいから育ててるんだろう。
婆様がズンズン歩いて行くのに、その光景に見惚れて足が止まった。


「総二郎?」
「・・・ん?あぁ、見事だと思ってな」

「お庭?うん、綺麗にされてるねぇ・・・あの白い花なに?小さくて目立たないけど」
「あれが柊の花だ。金木犀が咲き終わった後に咲くヤツだからもう終わりだな。葉が尖ってて触ると痛いから止めとけよ?」

「京都まで来て触りませんよーだ!」
「昔はヒリヒリ痛いってのを疼くって表現していたから、この漢字を使って疼木(ひいらぎき)って呼んでいたんだってさ。
今の漢字を使うようになったのは老木になるとそのギザギザした葉が丸くなるから人生にたとえることもある、だから木の冬って書くんだ」

「へぇ、木にも意味があるのねぇ。じゃあ椿は?木の春だよ?」
「椿はもともと葉に光沢のあることを示す古語『ツバ』から来てるんだ。そういう木だからツバキ。それで冬から春にかけて咲く花だからその漢字を当てて椿になったんだ。
中国でも椿(チン)って読んで初夏に白く小さな花を咲かせるヤツがあるけど全く別物だな」

「じゃあ・・・」
「ははっ!木に夏と、木に秋だろ?
木に夏は『えのき』で夏に大きく枝を伸ばして葉を茂らせ日陰をつくる木のことだ。幹が丈夫で農機具の柄に使われたから『柄の木』とか、秋にできる実が鳥や動物の餌になったから『餌の木』からいろんな説がある。
木に秋は『ひさぎ』と言ってアカメガシワの事だけど、小さいうちに雑草と間違えられてよく刈り取られるからあんまり見掛けねぇな」

「あるんだ!知らなかった・・・・・・あっ!」
「ん?」


つくしが驚いた顔したからふと横を見ると・・・婆様が恐ろしい顔して立っていた。
あぁ、この人の存在を忘れてた!と思ったが、謝る前にまた大きな声を出しやがった。

「総二郎、お前は相変わらずそうやって自分の雑学をひけらかしてるのね?それならばその無駄に色気のある目でよくご覧!
あの向こうに楸が育っておりますよ!」

「お婆様・・・別にひけらかしている訳ではなく、説明していただけですよ。あぁ、ホントだ・・・随分大きなアカメガシワですね」
「今頃気付くとは情けない。それでよく他人様に話せるものだわ」

「・・・住んでないのですから忘れるでしょう」


ついでに榎も門の近くにあったから、この屋敷では椿・榎・楸・柊が揃ってんだな。
こんなのも茶席のいい話だ・・・と、怒ってる婆様を放ったらかして、まだのんびり庭を眺めていたら思いっきりケツを叩かれた!


「何するんですかっ!」
「そこから動かないからです!昔っから植物のことになるとすぐこれだ・・・全然成長してないわね!」

「・・・・・・くすっ」


マジでこの人だけだ・・・💢この俺にそんな事するのは!



*****************



話に聞いた通り元気がよくて豪快な人・・・でも怖いとは思わなかった。
むしろ仲良くなって色んな話がしたいぐらい。

総二郎はブツブツ言いながらお婆様の後ろを歩いていたけど、私はこの2人を眺めながら顔がニヤけるのを止められなかった。

そして結構奥に来たと思えば一段と豪華な設えの部屋・・・ここが先代って言うお爺様の部屋かと思うとちょっと緊張。ちゃんと作法に則った挨拶が出来るかと、今更ながら心配だ。でも、それを考える暇もなく襖が開けられた。


「あなた、やっと総二郎が来ましたよ」
「おぉ、そうか。入るように言いなさい」

流石、お婆様の所作は美しかった。
ただ襖を開けて入るだけの動きなのに正確にやろうとしたら難しい西門家の作法。
私はまだ辿々しくて途中で考えてしまうのに、この人の動きは流れるようで呼吸してるみたいにスムーズ・・・思わず見惚れてポカンとしてしまった。
その間に総二郎が挨拶して入室したのに、私はまだ廊下・・・身体が金縛りにあったみたいに動けなかった。


「つくし、どうした?入れよ」
「・・・・・・・・・はっ!」

「まさか具合悪いとか?おい・・・なんだよ、固まって」
「・・・・・・あ、あの」

中を見れば家元を少し小さくした感じの品の良いお爺様と、その隣にお婆様が座って、2人共が私を見てキョトンとしていた。
早く動かないといけないのに、言葉を出さないといけないのに、身体の何処かが震えて・・・その時間が長引いて、とうとう目が潤んできた。

総二郎は呆然・・・・・・早くなんとかしなくちゃって目元を拭って、ゴクリと唾を飲み込んだ。


「お婆様の所作を見たら自分の勉強不足を感じて、うご・・・動けなくなりました。まだお稽古を初めて4ヶ月の未熟者ですのでお見苦しいと思いますが・・・失礼致します!」

「は?」
「・・・・・・まぁ」
「・・・・・・ほぉ?」

座礼の敬礼・・・その後に部屋に入り、超スローだったけど作法通り襖を閉めて、それから向き直ってもう1度お辞儀をした。そこで目を閉じたまま大きく深呼吸して、バチッと開けたら・・・訝しげに私を見てる3人と同時に目が合った。


「あれ?何処か間違えました?」

「・・・いや、そうじゃねぇけどいきなり泣くから驚くだろ」
「そうですよ。うちの旦那の顔に驚いたのかと」
「なんで儂の顔に驚くんじゃ!総二郎と大して変わらんじゃろう」

「は?歳を考えて下さいよ。50歳離れてたら別人でしょう」
「総二郎の将来の顔はこんなものですよ」
「こんなものとはなんじゃ!50年以上見ておるクセに!」

「私は老けてもお爺様ほど皺は作りませんよ」
「そうは言っても総二郎も25歳でしょ?ピチピチ時代は終わっておりますよ」
「男は歳を取ってからが勝負!儂は今でも現役じゃからな」

「なにも見栄をはらなくても。無茶な事をしてはお婆様の心臓が止まりますよ」
「この人が今更誰に相手をしてもらえると言うの?止まるならこの人の心臓でしょ」
「勝手に人の心臓を止めるな!」


「ぷっ!・・・あはははは!」


3人のやり取りが可笑しくて、それまでの緊張も吹っ飛んで大笑いしたら総二郎に「お前が笑うな!」って怒られた。
でもお爺様も面白そうな人・・・なんだ、こんな会話が出来るんだって思ったら安心して、そこからは笑顔が復活!今私が出来ることを見てもらおうと、改めてお辞儀をした後、自己紹介をした。


「お爺様、お婆様、初めまして。牧野つくしと申します。
現在宗家で総二郎さんに西門のことを教えていただきながら、茶道のお稽古もしております。でもご覧の通り、まだ総てにおいて不安だらけでご迷惑ばかり掛けてます。
この度は勉強も兼ねて同行させていただきましたので、短い間ですがご指導の程、お願い申し上げます」

「・・・それ、俺が言う言葉じゃね?」
「うわっ、ホントに?」

「お前が全部言ったら俺が言うことがなくなるじゃん」


総二郎の言葉でそれまで1度も笑わなかったお婆様が笑って、お爺様も笑って、総二郎は頭を搔いて・・・私は冷や汗をかいた。


それでも何とか顔合わせは終了し、お爺様には「よく来たね」と優しく声を掛けてもらえた。
すぐに出された話題は「宴会」・・・お婆様はスッと立ち上がると総二郎ではなく、私に手招きをした。

「ここは宗家とは違って私も厨房に入りますの。つくしさん、お手伝いして下さる?」
「はい、喜んで!」

「あら、その様子だと料理はお得意?」
「子供の時からしていますから」

「ほほほ、頼もしいわね。では行きますよ」
「はい!お婆様」


総二郎とお爺様は茶道談議。
面倒臭そうに顰めっ面して私を見送る彼に、ブンブンと手を振って部屋を出た。

うん・・・なんだか楽しく過ごせそう♡




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2020/05/27 (Wed) 14:10 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

あはは!面白かった?
この老夫婦はこんな設定なんです~。
ちょっと結月さんが色々言うけど、基本愛情がある人なので安心してね♥

榎・・・(笑)
それはエノキダケでしょっ!!
エノキダケと言いながら頭には白アスパラが浮かんだけど(笑)

あのホワイトアスパラ・・・隣の部屋の彼だったっけ?
今頃になって、すごい画像ぶち込んだなって思うのよね・・・その時にはギャグのつもりでスルーしたけど。
ヤバいよね・・・マジで。


楸・・・因みにうちにあります(笑)
そして小さいうちに毎年切ります。だって放っといたら大きくなるんだもん。

あっ、そうそう!
漁師の釣った魚、本日我が家にどっさり来ました。
もう冷凍庫が魚だらけ・・・

「はやく食べないと次が来るよっ!」って母が言ってました(笑)

あの野郎・・・💢💢

2020/05/27 (Wed) 22:12 | EDIT | REPLY |   

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