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午後からは京都支部主催の講演会が行われるホテルに出向き、そこでつくしはお袋の着物を着て俺の横に立った。
確かに豪華な着物だったが最近のつくしはそれに負けない雰囲気を出せるようになり、黙っていれば何処かの令嬢のよう・・・だが、好奇心旺盛だから気が緩むと素に戻ってあどけない笑顔を見せる。

その不安定さが逆に男ウケするから、俺の方が落ち着かない。


・・・ほら、今もすぐそこの男がつくしを見た。
だから俺はそっと肩に触れたり顔を寄せたりと「虫退治」に余念がない。


そんなんで講演、大丈夫か?と思うが、そんなものはあっさりと、しかも完璧に終わらせた。
つくしはそれを客席ではなく俺の控え室のモニターで見ていて、終わったらそこの入り口で「お疲れ様です」と・・・武張った弟子が出迎えるよりも一気にテンションが上がる。
今度から地方講演には絶対に同行させようと決めた。


「いや~、どちらのお嬢様ですかな?綺麗な立ち居振る舞いをなさる方ですねぇ」
「まだまだ勉強中ですが、どうぞこれからも宜しくお願い致します」

「総二郎様がお選びになったんですって?お家元ご夫妻とはどうなのでしょう?」
「はい。初めのうちは慣れずに大変でしたが、今では仲良くしております。彼女は人を惹き付ける才がありますので」


俺がそんな会話をしている間もつくしは他の客の相手をしている。
あれは以前見た事がある、京都でも気難しいので有名なおばさんじゃないのか?その女性をニコニコさせてるぐらいだから、回りの連中は驚いたような表情でつくしを見ていた。

「俺の女はすげぇだろ!」と内心ほくそ笑む・・・つくしの成長は俺の自信にもなった。



そのうち俺の横に戻って来たが、これから会うのは先代が紹介してくれた池田という男。
つくしは何も知らないが、傍から離すのも気になる・・・だから「説明は上で」とだけ言って個人的に取っていた部屋に向かった。
池田にもそこに来るように話は付けていたから。


「お仕事の話なの?」

部屋に入ると荷物を片付けながらつくしが聞いてきた。
勿論これからする話が胡散臭いものだとは知らないから表情は変わらず・・・でも知らせずに聞けば驚くかもしれないから、池田を待つ間に大雑把な説明をした。


「仕事じゃなくて宗家に関わる話かな。前に茶碗の写真を見つけただろ?あの件だ」

「茶碗の写真・・・・・あぁ、引っ越しの時ね?」
「そう。実はあの茶碗でヤバい事してるヤツが居るかもしれなくてさ」

「西門に?」
「・・・まだ誰にも言うなよ。詩織の両親だ」

「えっ?!」
「証拠はない。ただそうじゃねぇかって話だ」


この後極々簡単にあきら達から聞いた話をつくしにも教えた。
当然キョトンとして頭の上には???が飛ぶ。「取り敢えず黙って聞いとくね」なんて言って苦笑いしていたから、安心させるためにも笑って「そうしとけ」と答えた。


暫くしたらノック音がして、俺がドアを開けに行くと1人の男が立っていた。
青年部というが40才ぐらいに見えて、体格も良くどっちかと言うと無骨な感じの男だ。如何にも真面目そうで、その固い表情から緊張も感じられた。


「池田さん、ですか?」
「はい。お待たせしましたか?総二郎様」

「いや、私もついさっき戻ったばかりです。どうぞお入り下さい」
「失礼致します」


部屋に入ると真ん中にあるソファーに案内し、つくしを紹介した。
俺以外の人間が居ることに驚いたようだったが、つくしの立場を説明し、ここで話す事を躊躇う必要はないと言えば納得してくれた。
つくしも丁寧にお辞儀をし、差し障りのない挨拶を交わすと、備え付けのコーヒーメーカーで珈琲を淹れて俺の横に座った。


「先代から聞かれたかと思うのですが、ここで池田さんから情報を得たという事を決して誰にも言わないとお約束致します。ですからご存じの事をお話しいただけますか?」

「・・・はい。それが総二郎様の知りたい事かどうかは判り兼ねますが」

「構いません。私も調査を始めたばかりですし、友人からの話だけで動いていますから。でもこれが西門に不利益をもたらすようなものであれば早急に手を打たなくてはいけませんので」

「もう次期家元から離れられたと聞きましたが?」

「そうです。でも私は西門宗家の人間である事に変わりはありませんし、今回の事で西門流に傷が付くようなことがあってはならないと考えます。そして確たる証拠もありませんので独断で動いております。
それで何かご不審に思われるのでしたらお帰りいただいても結構・・・話す話さないは池田さんの判断でお決め下さい」


毅然とした態度で臨まなければこの男は口を開かない、そう思った。
だから真っ直ぐ目を見て言葉に迷いも感じさせないように振る舞った。そして判断は俺じゃなくそっちだと言えば、フッと口元を緩め、身体からも緊張は解かれた。

どうやら話をする決心をしてくれたようだ。
目の前の珈琲をひと口飲んだ後で「何から話しましょうか?」と逆に尋ねられた。


「丸山後援会長の親戚で齋藤という後援会の会員を知ってますよね?」
「えぇ、勿論。齋藤さんは古くからの会員さんですし、私の父もその家の事は知っていますよ。でも、総二郎様・・・齋藤家から宗家にお嬢様がお輿入れでは?」

「えぇ。弟の婚約者として東京に来ています。ですからむやみに宗家で話せないんですよ」
「・・・一体何を?」

眉を顰めて身を乗り出すが、俺が詩織の事を聞くのだと勘違いしたのかつくしを見て「宜しいのですか?」と。だから「詩織さんの事ではありませんよ」と言うと姿勢を戻して照れ臭そうに頭を搔いていた。


「実はその齋藤さんが骨董品に興味を持たれているかどうか、それを知りたいのです。それに主な家業の他に美術品を扱うような事業をしてますか?その辺りをご存じでしたら懇意にしている人物を含めてお話しいただきたい。
京都支部所有の茶碗がヨーロッパで売買されているのではないかと言う噂を耳にしたのですが、その関係者に齋藤という人物が上がっています。同一人物でないことを願っているのですが」

「いや、たしか事業は不動産関係や京都の観光業界だけやと思います。その観光部門で外国人向けのサービスをしてはるようですけどねぇ。それに骨董品・・・ですか?」

「主に茶碗を取引商品にしているようです。しかもかなりの高額ですが、茶碗そのものにその価値があったかどうかも定かではありません。つまり本物か偽物かが判らないのです。何か思い当たることはありませんか?」

「・・・それ、最近の事ですかね?」

「えぇ。何かご存じなのですね?」


池田はもう1度珈琲を口に運んでから、スーツのポケットから小さな手帳を取り出した。
それをパラパラ捲りながら何かを確認し、ブツブツ独り言を呟きながら腕組み・・・なんとも思わせ振りな態度を取るクセに喋らない。
だが急かしても仕方ないので俺も苛つきながら我慢・・・そうしたら首を傾げながらだが、漸く重い口を開いた。

そこまで焦らしたのだから良いネタを出すんだろうな?と目を向けたが気付いちゃいない。
それは自信がねぇのか、あるいは話すのを躊躇うほど重要な事なのか・・・次の言葉を催促するように俺も身を乗り出した。


「齋藤さんが骨董品に手を出し始めたのは2年ぐらい前やないかと思います。
元々はうちの櫻井副支部長が骨董好きですが、遠藤支部長はそういう話に疎い人なので話し相手を探していたようで・・・それに乗ってきたのが齋藤さんでしょう。何故急に親しくなったのかは知りませんけどねぇ。
私の考えでは会計をしている堀部さんが丸山後援会長の後押しで役員に入ってから、そんな話題で4人がよく会うようになったんやないかな・・・」

「4人?櫻井副支部長と会計と・・・後援会会長と齋藤さんですか?」

「えぇ。でも、その前からおかしなことが色々あったんですよ」

「おかしなこと?」

「私も支部にはよく顔を出してますけど、たまたま4人が会話している部屋に入った事がありまして、その時に茶碗の写真を手に持ってて『Mからの指示待ちや』って言葉を聞いたんです。
でも私が来たもんだからすぐに会話をやめましたけどね。それからですよ、3人だったり2人だったりで倉庫や資料室にいる姿を目撃するようになったのは。
おかしいのは茶碗や花器の保管記録に『破損により処分』と言うものが増えたことですかねぇ。騒ぎにならんのはそれがレプリカだからかもしれないのですが、私は不思議でならんのですよ」


支部保管の展示茶碗が割れたからと言って、レプリカなら宗家に報告はない。
ただ、滅多に割れることもない。それだけ慎重に扱われているからだ。

それなのに幾つも割れて保管倉庫から消えた・・・?
「Mからの指示」ってなんだ?






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2020/05/31 (Sun) 13:00 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

あら!M・・・Mですよ(笑)
でもすぐに判ると思うけど💦

そしてそんな名前の人、居るの?!
居たら恥ずかしくて呼べないじゃん!!もぉ~~~~💦

KB・・・京都ブラックってこと?(笑)
一瞬何かと思ったわ💦
もっとややこしくなるから頭の中がゴチャゴチャになるかもしれないけど、頑張ってついて来て下さい!

ちょっとサスペンス劇場に入りそう・・・そう言うつもり無かったんだけど、何故か事件が起きちゃうのよね💦

2020/06/01 (Mon) 00:06 | EDIT | REPLY |   

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