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池田の話は続いた。

「前会計の前崎さんにしても不思議な事がありましてね・・・」
「前崎さん?確か体調不良で堀部さんに代わったんでしたよね?」

「そうなんですが・・・今は前崎さん、とてもお元気なんですよ?でも、もう支部には2度と戻らないと仰ってますけど」
「2度と戻らない?」


堀部は支部員としては比較的最近の人間だが、数年前から遠藤支部長ではなく櫻井副支部長と親しくしていたようだ。
それが人目にも判るようになった頃、元気だった前崎さんが体調を崩し始めて顔色の悪い日が続いた。そして会計にはあってはならない計算ミスをしてしまい、支部長から交代を打診されたらしい。

その時に丸山後援会長が推してきたのが堀部で、支部長はある意味後援会長に流される感じで会計に堀部を起用。
前崎さんは腹痛、頭痛と症状が悪化したために自宅で伏せるようになり、そのまま脱会した。


「堀部さんと言う人は長いこと外国に住んではったってことで、ヨーロッパの食料品を輸入販売する会社を経営してるんです。でもその会社は5年ぐらい前に倒産しかけて大変だったようですよ。
それが今では羽振りが良くて、私達もどんな手を使って会社を建て直したのか聞きたいぐらいでした。でも詳しい事は何も教えてくれはらへん。
商売なんてその時の運ですわ、なんて笑ってるだけでしてね。私はあまり良い印象がないんです」

「負債の額にもよりますが、倒産寸前から復活するには早いように感じますね」

「そうでしょう?まぁ・・・これを言っていいのかどうか・・・」
「初めに話した通りです。ここでの話は支部にも宗家にもまだ言いませんし、話すとしても池田さんの名前は出しません」

「そこは宜しゅうお願い致します。
その・・・堀部さんが言うMという人間は東京の男やないかと思うんです。半年ぐらい前に京都駅で偶然堀部さんを見ましてね、その時に背の高い男と会ってたんです。私服だったせいか私の事には気付かなかったみたいで、すぐ傍を通った時に『280万は用意出来た。今度はこいつだ』、そう言って派手な京焼の茶碗の写真を見せてまして・・・」


その時、つくしが急にガチャ!と珈琲カップを倒した。
慌てて立ち上がり着物をカバーしていたが、その時の顔色が真っ青で、目を見開き震えていた。その後で「すみません、片付けますからお話しの続きをどうぞ」と言ったが、その声も詰まりながらだし掠れてる。

どうしたのかと目で合図してみたが、チラッと俺を見ただけで「何でもない」と・・・恥ずかしそうに背中を向けたから、池田にはそのまま話を続けるように促した。


「その京焼の写真は通り過ぎる時に横目で見た程度ですが、支部にあるレプリカによく似ていました。そしてやっぱりそのレプリカも破損処分されてるんです、この夏に。
でも破損は支部長も確認してるはずですから勝手に捨てることはないし、そもそも立ち聞きだけで何も判らんのです。支部の金におかしなところがあれば支部長が気づくでしょうし、何かやってるようですがさっぱりで」

「金の流れ・・・それは収支報告が宗家にもありますから問題ないのでしょう。資金を出しているのも、利益を得ているのも個人、そういう事だと思いますよ」


問題は西門所有のものに手を出してるかどうかだ。
今はレプリカかもしれないが、そのうち本物を持ち出されたら・・・そうなると動く金は「億」になるケースも出てくる。

池田にはまた思い出した事があれば連絡して欲しいと頼み、そこで別れたが、部屋を出る前に前崎氏の住所と電話番号を聞いた。
この人も何か知っているかもしれない。
明日、東京に戻る前に会ってみようと、それをスマホの中にメモした。


それよりも・・・つくし、何があった?




*******************




「それでは総二郎様、これで失礼します。折角お嬢さん連れて京都に来はったんですから、少しぐらいは楽しんでお帰り下さいね」

「はい、ありがとうございます。でも明日戻るので時間が無いのですよ」
「・・・お気遣いいただきまして。本日はお世話になりました」


池田さんが帰る時、それまで震えていたのを必死に隠して挨拶した。
でも目が泳いじゃうし、手も気が付けば拳を握ってる・・・家元夫人の着物を着てるから粗相なんてしちゃいけないのに珈琲まで溢してホントに焦る。
もっと笑顔を作らなきゃって思うのに引き攣ってばかり・・・絶対におかしく思われてる。


「最近は空気がガラリと変わったから先代も顔を出して下さらんのですが、是非今度お立ち寄り下さいとお伝え下さい。面白い話を待っておりますからと」

「伝えておきますよ。暇を持て余してるようですからね」
「・・・・・・・・・」


自然と総二郎の背中に寄ってしまう。
池田さんが悪いわけじゃ無いのに、この人の顔も真っ直ぐ見ることが出来ない。僅かな愛想笑いだけで池田さんを見送り、ドアが閉まると今度は総二郎を見ることが出来ない。

こんな態度を取ったんだもん、怒られても仕方が無い。
でも私はそれよりも「あの人」に対する恐怖の方が大きかった。


「つくし?」

総二郎の声にすらビクッとして顔を上げると、心配そうに私を見てる彼・・・優しい声で「どうした?」って言われると、ポスッと胸の中に倒れ込んで「着物、脱ぎたい」って言ってしまった。
当然総二郎は「は?!」と驚く・・・私も慌てて彼を突き飛ばして「意味が違うから!」って叫んだ。


「なんだよ・・・震えながら言われたら誰でも勘違いするだろ」
「ば、馬鹿っ!何時だと思ってんの!」

「俺に時間は関係ねぇし。ついでに場所も関係ねぇけど」
「そんなんじゃなくて、楽になりたいのよっ!」

「ははっ!判ってるって。ほら、来い。帯緩めてやるから」


総二郎は私の帯を緩めると、自分も着物を脱いで洋服に着替えると言った。
だから背中合わせに着物を脱いで、私はセーターにジーンズ、総二郎も同じような格好になった。やっとこれで楽になれる・・・って思ったけど、総二郎には私の変化はバレバレ。
今から説明を求められるのだと思うと気が重たかった。

総二郎は黙ったまま脱いだ着物をたたんで着物専用の衣装ケースに詰めてる。
私の着物や小物も綺麗にしまって、それからやっと手招きされてさっきの椅子に座らされた。


「さっき、話の途中で何故驚いたんだ?つくしは何も判らなかったはずだ。何処に反応した?」
「・・・・・・280万円と・・・東京のMって男の人の事」

「280万?なんだ、それ」
「覚えてない?総二郎に再会した時に話したはずだよ」

「・・・・・・あ、あれか!」
「そう。半年前私が騙し取られたのは280万円・・・勿論1度にじゃないけど、全部合わせればその金額なの。そして相手は宮本竜司。イニシャル・・・Mだよ」


総二郎の驚いた顔・・・まさか私を騙した男がこの件に絡んでるとは思わなかった。
でも彼は「金額がそうでもMなんて男は何処にでもいるだろう!」と信じられない感じだ。でも、私には彼のような気がしてならなかった。

その理由は2つあると言えば、また総二郎は顔色を変えた。


「なんだ、2つって・・・」

「前に話したよね・・・萩焼のお茶碗だっけ、私が何処かで見たことがあるって言ったの。
あれ・・・竜司さんの書類の中に紛れてたヤツだったって、話を聞いてる最中に思い出したの。マンションを買うからって沢山のパンフレットや書類があってね、その間から落ちたの。
でもすぐに竜司さんが奪い取って『客に渡すものだ』って言ったのかな・・・そこはよく覚えてないんだけど」

「・・・もうひとつは?」


「・・・昨日京都に着いて車に乗る前に彼を・・・竜司さんを見たの」


もう記憶の片隅でしかなかった人・・・私を裏切って逃げた人。
思い出すこともなくて、でも後ろ姿だけで判ってしまった。






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2020/06/01 (Mon) 14:26 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

そう言う意味だったの?!そうかぁ!!爆笑!
ブラックかと思った(笑)まぁ、どっちでもいいんだけど💦

そうそう、ここで宮本君が登場・・・あのまま行方不明で終わらせるつもりはなかったのです♥
総ちゃんにガツンとやってもらわないとね!
って、つくしが自ら成敗するかもしれないけど💦

今からドロドロした部分が繫がって来ますからね~!(ってモレがあったらどうしよう💦)


実家の工事が全部終わって元に戻りました♥
母は最新のお風呂でシャワーを満喫している様子(今まで古かったからシャワーがなかったの)
これで一安心♡

お気遣いいただき、ありがとうございました。

2020/06/01 (Mon) 22:18 | EDIT | REPLY |   

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