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plumeria

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漸く俺は気がついた。
今の俺は・・・俺の「魂」そのもの・・・だから誰にも見えていない。

すれ違うヤツは俺の事なんて無視して通り過ぎ、俺は壁もドアも気にせず歩いていた。
そして探した・・・1番大事な女。


俺の命よりも大事な女・・・牧野つくし。

やっと思い出した・・・。
何処に居るのか判らなくても、俺の足は静かに「そこ」へと向かっていた。


やがて聞こえたのはつくしの声じゃなく、お袋の声だった。
集中治療室から少し離れた場所に用意された家族のための部屋・・・そこの廊下だ。

「あなたのせいよ!あなたが唆すから総二郎さんがこんなところに・・・どうしてくれるの!」
「申し訳ありません、家元夫人!申し訳・・・」

「謝ったって許しませんよ!あの子にもしもの事があったら私はどうしたらいいの・・・西門がどうなると思うの!!」
「ごめんなさい・・・私が悪いんです、ごめんなさい!」

「あなたは怪我もなくここに居るのにあの子はどうして意識不明なのよ!あなたを庇ったからなんでしょ!」
「・・・・・・そ、それは・・・」


いつもは物静かなお袋が状況説明する時間すら与えずつくしを罵倒し、着物が着崩れるのも構わずにその手を上げて彼女を叩く。それを止めたくても止められず、ただ横で「そうじゃない!」と叫んだが此奴らには聞こえないようだ。

あの子供達とは会話出来たのに、それ以外の人間は無理なんだ・・・。


「総二郎・・・・・・ううっ、総二郎さん・・・!」
「家元夫人、大丈夫ですか?」

「触らないで!あなたになど触れられたくもないわ!」

壁に寄り掛かったお袋をつくしが助けようとしてもそれを撥ね付け、つくしは叩かれた手を引っ込めた。
そして部屋の中に入ろうとしたのを凝りもせず支えようとしたら・・・


「ここは被害者の家族のために用意された部屋です。あなたには入る資格などありませんよ・・・!」
「判ってます、私は廊下でも構いません。でも1度でいいので総二郎さんの顔を見てもいいですか?」

「ダメに決まってるでしょう!何を今更・・・厚かましい!」
「お願いします、お願いします!1回でいいから会わせてください!」

「・・・許しません。あなたは勝手にここからお帰りなさい。総二郎さんは意識が戻ったら私達で東京に転院させて治療を受けさせます。あなたには2度と会わせません・・・判ったわね!」

「・・・家元夫人・・・」


お袋の怒りがこんなにも激しくて、つくしも被害者なのにここまで罵られて・・・それなのに俺はお袋に真実を告げることも、つくしを抱き締めることも出来なかった。
真横に居るんだけど気付かない・・・廊下の隅に座ってわんわん泣いて、俺の手が背中を摩ってるのすら感じてない。



ー俺はここに居るんだけどな・・・少しぐらい気付かねぇのか?-

「神様、お願いします・・・私の命と交換でもいいので彼を助けてください・・・お願いします・・・」

ー馬鹿言うなって。俺だけ生き延びでも面白くも何ともねぇ人生だろ。そんなの要らねぇしー

「あっ・・・でも1年間だけ私の命、待ってもらえませんか?そうしたら・・・私、あの人に贈り物が出来るんです。1年だけ・・・お願いします、神様」

ーくくっ、面白い頼み事だな。贈り物か・・・そう言う事ね・・・ー

「ちゃんと言おうと思ってたんです。でもどうしていいのか判らなくて・・・神様、これは西門を裏切った罰ですか?それなら総二郎じゃなくて私に罰を与えてください・・・お願いします、彼を助けて・・・」

ー馬鹿じゃねぇの?裏切りであるはずがねぇじゃん。お宝の間違いだってー

「総二郎・・・頑張って・・・・・・頑張って・・・お願いだからもう1度笑ってよ・・・」

ー今、笑ってんだけどな・・・でもこの姿じゃお前には判んないんだなー



怪我もなくってお袋に言われていたけどつくしの顔や手には沢山傷があった。
髪だってぐしゃぐしゃで靴だって汚れてて、ジーンズにも誰かの血が付いてる。そんなボロボロの姿で1人廊下の隅で泣いて、ここまで引っ張ってきたのは俺の方なのにな・・・。

ごめんな、つくし・・・もう少し待ってろ。
ちゃんと感じられる手になったらお前を1番に抱き締めるから・・・



その時、控え室にブルーの術衣を着た看護師が駆け込んで来た。


「西門さんのご家族の方!すぐに集中治療室に来て下さい!」


お袋と付き添いの数人が血相変えて部屋を飛び出し看護師の後について行った。
つくしはガタガタ震えながら、立ち上がろうとしてもそれすら出来ない。小さな声で俺の名前を呼んでいるみたいだけどそれすら聞き取れない。
でも、その直後にすげぇ勢いで立ち上がると、信じられない早さで集中治療室に向かった。


ー大丈夫だって・・・俺はまだ踏ん張ってるからー




俺が寝ている部屋に戻ったら、そこでは治療している医者とは別の医者がお袋に説明をしていた。


「全力を尽くしていますが状態がよくありません・・・万が一を覚悟して下さい」

「・・・そんな!助けて下さい!あの子を助けて!」
「お母様、後は息子さんの生命力です、我々も出来る限りの事はしています!」

「・・・・・・!!」


医者が懸命の蘇生術を行っている。
俺に繋がれたモニターを睨む。
心臓の電気状態を確認し、それが感じられなくなった・・・同時に誰かが「アドレナリン!」と叫び強心薬を投与して心室細動を起こさせる。

2度行って、細動の波が確認出来てカウンターショックが行われた。



でも、その数秒後・・・医者の動きは止まった。


あぁ・・・・・・・・・これが「その瞬間」か?




その時、「自分」を見ていた俺の横でつくしが叫んだ。


「だめぇ!!戻って来ないと許さないから!
そうじゃないと私もあんたの後を追うからね!


絶対に負けるな、総二郎ーーっ!!」




そっか・・・そいつはダメだよな。
じゃあやっぱ自分の中に戻らねぇとな・・・。


『カッコつけてないで早く行ったら?』
『そうだよ、私達もこんなの嫌なんだからね?ほら、もう声だけで何も見えなくなったわ』
『うふふ、お名前も付けてくれなきゃ』

『私にはピアニストの夢があるの。それを忘れてないでしょうね?』
『私はお医者様になるの。優秀な外科医になるんだから総ちゃんがもう1回怪我したら必ず助けるわ』
『私は総ちゃんみたいにお家のために頑張るの。楽しみにしててね』



そっちの願いも聞かなきゃいけなかったな。

それに・・・またお前等の顔も見たいしな・・・



顔を上げたら俺の目の前には白い扉が現れた・・・もうこれが最後だ。





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2020/07/01 (Wed) 21:52 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

あっはは!やっぱり止まりそうになった?(笑)

うんうん、家元夫人は結構酷い人になってますね💦
今まで酷くても叩くとか無かったけど、ここは息子の命が掛かってますのでね・・・興奮した家元夫人でございます。

そして総ちゃんも今まで何度も怪我させたけど、今度はそれどころじゃ無い(笑)


マジで怖い話ですね~~~~!
自分でも書いててどーしようかと思いましたよ。

でも死んでないから幽霊じゃないのよ?
え?そんな問題じゃない?(笑)

では3日に、最後の扉が開きます・・・そしてもう1回倒れて下さいね(笑)



2020/07/01 (Wed) 23:16 | EDIT | REPLY |   

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