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自宅に戻ったつくしはしょんぼりしたまま自分の部屋に戻った。
いつもならその日のことを話すつくしが何も言わないことを加代は随分と心配している。


「類様・・・つくし様に何かあったのですか?あのように沈んで帰られるなんて・・・今までにはないことですけど」

「何でもないよ。ちょっとね・・・静が大学に顔を出したから、俺が静と話したことが何か嫌だったみたいだね。
おかしいよね・・・昔から静とは会ってたのに今更そんなふうに言うなんて」

「まぁ・・・藤堂様がお帰りになっていたのですね?それで・・・それならわかりますわ。類様はご存じないでしょうけど
つくし様は昔から藤堂様が苦手ですからね・・・」


つくしが静を苦手?昔からって子供の時から?
加代の表情がここで変わった。俺の方を真っ直ぐに見て少し厳しい目を向けた。

「類様・・・やはりここはつくし様と距離を置かれるべきですわ。これ以上はいけません・・・引き返せなくなります」

「加代?いきなりどうしたのさ・・・心配ないって。つくしにそんな気はないだろ?何も知らないんだから」

「いいえ・・・知るとか知らないとかではないんです。つくし様も実のお兄様とわかっていながら・・・
それでも類様に本気で恋をしていらっしゃるんです。加代にはつくし様のお気持ちはわかりますよ。
小さいときからお育てしておりますから・・・どんなときに正直な態度をとられるか、どんなときに嘘をついて
おられるか全部わかります。ですから・・・これ以上は危険でございます!
類様は何もかもご存じなのですから・・・どうか類様から離れて下さいませ!お願いいたします・・・」

終わる頃は加代に眼に涙が光った。


加代は俺のこともつくしの事も育てた人・・・多分母さんよりも俺たちのことを知っている人だ。
そんな加代がこうまでして頼んでるのに俺はそれを聞くことは出来ない・・・。

「加代・・・本当にごめん・・・心痛かけてるんだね。でも、もう少しだけ知らん顔しといてよ。
今はまだどうしていいかわかんないんだけど、俺はつくし以外は考えられないんだ・・・
もし、この想いが届けられないならその時は俺の方が誰も選ばない。そう決めてるから・・・」

そう・・・もうこれは決めてることだった。
万が一、両親が動いてつくしが身動き取れなくなったとしても、その時に助けることが出来なくても
俺が他の誰かの手を取ることだけはしない・・・。


「ねぇ、加代・・・父さんと母さんは何か言ってるの?俺の事でもつくしの事でも動きがあるの?」

「私は何も聞いてはおりませんわ。類様はこれから大学を卒業されて会社にお入りになるでしょう。
まずはそちらを優先されるでしょうね。つくし様は・・・少し早めにお考えになるかもしれません」

そうだろうな・・・俺の事はまだ何も考えてないだろう。会社経営を教えることの方が先だと思うだろうし。
司のようにすでに外国に送り出しているのを見てるから、あるとすれば本当に海外研修とかに出される・・・
その可能性の方が高いだろう。


「ありがとう、加代。また何か動きがあったら教えてくれる?無茶なことはしないから・・・」

「私は本当にお二人が大好きですわ。出来たらこの願いを叶えて差し上げたいくらいです・・・」



その後、もう加代は何も言わなかった。
つくしの部屋・・・そのドアの前で黙って立っていた。物音がしないその部屋の中を心配しているんだ。


*********


今日の静お姉様・・・本当に綺麗だった。
あんな人が類に抱きついているのを見たら、自分の子供っぽさが嫌っていうほどわかるわ。
すごく似合ってるんだもの。類と静お姉様・・・何かの映画のワンシーンみたいだったじゃない?

いつも類が私の側にいて他の人といなかったから想像したことなかったのよね。
あんな事をする類なんて・・・でも、類だって随分慣れてたじゃない?
あんなふうに美人に抱きつかれてたら、ちょっとは気持ちが傾くんじゃないのかしら・・・。


まさか静お姉様の方が類のことを好きだったりして・・・!
小さい頃からいつも私の前で類、類って呼んでて、私の前から類を連れて行ったもの・・・。

男のお友達の時には私は加代に捕まっていたけど、何故か静お姉様が来たときには一緒に遊んだのよ。
それなのに女の私は放ったらかしで、いつも類だけをどこかに連れて行ったもの・・・

だから・・・私は静お姉様のことは好きじゃなかった。眼の前に行くと笑顔にはなるんだけど・・・。
いつも私から類を奪っていくお姉様を心の中では嫌っていたんだと思う。


「大体、道明寺が私をあんなとこにまで引っ張って連れて行くからこんな事になるのよ!
私は別に行きたいわけじゃなかったのに!類が静お姉様と抱き合ってるとこなんかもっと見たくなかったわ!」

私はだんだん腹が立って枕を壁に向かって投げつけた!
それと同時に今まで類のことを考えていたのに、急に頭の中に道明寺の顔が浮かんできたから・・・!
もっとイライラして、つい大きな独り言を叫んでしまう。


「なんなのよ・・・急に現われて急に腕を掴んで・・・なんでいつもそうなのよ!」

優しくて穏やかな類とは違う、どこか荒々しくて危険な感じの人。
今まで会ったことのない・・・綺麗な獣のような人・・・!


「やだっ!なんであんな人のことを考えてるの!あんな人は大っ嫌いなのよ!」

言葉に出してもっと叫んでみたけど、やっぱり道明寺のあの冷たい笑顔が浮かんでくる。
強烈過ぎる印象が・・・あの低い声が・・・鋭い刃物のような瞳が頭から離れない・・・。


でも、どうしてだろう・・・考えているとドキドキしてるのは何故?


*******


次の日、類はいつものように私より少し早くにダイニングに来てコーヒーを飲んでいた。
昨日のことがあるから顔を合わせにくい・・・いつも座る場所に置いているパンのお皿とジュースを持って
窓際のソファーにわざと移った。

「どうしたのさ・・・今日はそんなところで食べるの?」

「うん。気分転換よ・・・意味なんてないの。類は・・・今日もお昼は静お姉様と?」

「どうして?昨日は校長に用があって来ただけだからもう来ないと思うよ。それに静から連絡なんてこないし。
そんな仲じゃないからね。ただの幼馴染み・・・そんなもんでしょ?」

ただの幼馴染み?・・・類は何とも思ってないのね?
その言葉になんとなく気分が良くなってきて・・・今度はお皿を持って類の隣に移動した。
そしてチラッを横を見たら・・・類も私の方を見ながら「変なの」って笑っていた。

昨日の道明寺の事なんて類には言えない。
でも・・・類の笑顔を見ていたらあいつの顔も薄れていくような気がした。


「類・・・今日はお昼、一緒に食べようね!」

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