Sister Complex (19)

しばらくは何事もなく平和に過ぎていった。
静お姉様は類が言うとおり、あの時だけ大学に来ていたみたいでその後は会わなかった。

相変わらず類と一緒に登校して毎朝の騒動も同じ・・・私は類に定期テストの話をしていた。
ホントはそんな話はどうでもいいんだけど、どんなことでもいいから類と話していたかった。

「今度の数学の先生がね、類と私の頭を比べるのよ?どう思う?いくら兄妹でもそこは同じじゃないんだから
比べないで欲しいのよね!類は数学得意だったの?理系だっけ?」

「ん~どうだろう。自慢じゃないけど各教科で5番から下をとったことないからね。どっちかって言うと理系なのかな。
総二郎は完全な文系だったよ。あいつにはそこだけ負けてたかもね」

「私は数学嫌いなのよ!あんなもの絶対に将来役には立たないと思うんだけど!」

「いいんじゃない?数学なんて出来なくても・・・つくしが将来自分の役に立つと思うものを頑張ればいいんだから。
俺みたいに全部出来ても・・・その全部が使い物になるかわかんないよ?」

「嫌な言い方!自分がなんでも出来るって自慢してるでしょ?!」


そんな事を車で話しながら学校へ向かった。
この時間が一番好き・・・他には誰もいなくて類を独り占めできるから・・・。

隣で笑ってる類を他の誰にも見られなくて済むから。



学校に行ったらそうはいかなかった。
大学生達が通る廊下が高等部からも見える場所があって、そこは女子生徒が毎日占領していた。
類達・・・つまりF4と呼ばれる4人組が通るときがあるから。

今日もそこを歩いていたら急に同級生達が声を上げはじめた。

「見て!道明寺様が今日は大学にいらっしゃるわ!・・・本当に素敵よね!道明寺様のところってまたアメリカの
企業を傘下に入れられたんでしょう?凄いわよね!」

「あら・・・でも、色っぽいのはやっぱり西門様でしょう?今度うちのお母様が西門のお茶会に招待されたんですって!
だから私もついていこうと思って、今着物を作ってる最中なの!」

「私は美作様が好みだわ!あの方、すごくお優しいのよ?この前もちょっと躓いたときにすぐに手を差しだして
助けて下さったのよ?紳士なのよね・・・感動したわ!」


ここまではいいのよ・・・。
この3人の話しまでは!この後を聞きたくないから少し歩く速度を速めたんだけど会話の方が先だった!

「やっぱり花沢様じゃない?あの方あんまりお話しにはならないけど見るだけで幸せな気分になるわ!
絶対に家でも物静かで穏やかで怒らないんでしょうね・・・あんな方に包まれたいわぁ!」

「あの控えめなところがいいのよね。でも実はもの凄く情熱的で激しい一面も持ってたりして!
恋人にだけそんな特別なところを見せる方だったりしてね!」


いや・・・そうでもないわよ?
半分ぐらいは当たってるけど意外と言葉には毒があったり、さりげなく嫌味言ったり、突然笑ったりするわよ?
穏やか・・・っていうかいつも寝てるわ。声かけても起きないくらい爆睡しているのを見られるのは私だけ。
情熱的で激しい一面?・・・17年間見たことはないわね・・・でも怒ると怖いわよ?

そして、私以外は包まないわよーだ!
そんな事を思いながらその集団の横を通り過ぎた。


でも・・・その通路が終わる場所で類達が歩いている方向を見てしまった。
先頭に道明寺が歩いている・・・その後ろに美作さんと西門さん。類は少し後ろを歩いていた。

いつもそういう立ち位置なのね・・・。
類は必ず後ろにいる。前には出てこないのね。

私が何となくその4人を見ていたら、一番先頭・・・道明寺が私の視線に気がついた!
その強烈な眼を離れた所から見てしまった・・・すぐに慌ててその場から走り去った。


「なんで?・・・なんであの人が私に気がつくのよ!」

また理由のわからないドキドキが始まってしまう・・・教科書を握りしめてひたすらその場所から遠くへ逃げた。


*******


「最近あいつは来ないんだな・・・」

大学の講堂に向かう途中の通路を歩いていたときに司が突然そう言った。
横を見たら高等部の女子達がこっちを見て騒いでいる。
俺はその女子生徒達の後ろを歩いているつくしにすぐ気付いたけど見ていない振りをした。
おそらくつくしも同じ気持ちだろう。俺たちの噂話をする同級生を嫌がっていたから早く逃げたいんだろうな。

「あいつ?・・・あいつって誰だ?」
「つくしちゃんじゃないか?俺が類にくっつきすぎだって言ったから警戒されたかな」

あきらが少し気まずそうにそう話した。
そして総二郎は後ろを歩いていた俺の方を向いて冗談交じりに言った。

「まぁ、それも無理ないさ!確かに異常だろ?お前達のくっつきようは!類・・・頑張っても無駄だぞ?
いくら実の妹に恋したって・・・あれ?もしかしてマジ?」

「ホントに総二郎は煩いよね。そんなわけないだろ!つくしは小さいときから俺が側についてたんだから
今でも心配なだけだよ!それ以上でも以下でもないよ」

そう言いながらさっきの女子達の方をもう一度見たけど・・・もうそこにつくしの姿はなかった。


急に先頭にいた司が動きを止めたから、俺たち全員が止まった。
振り向いた司が俺の方を見てニヤッと笑う・・・その勝ち誇ったような顔は何を意味するんだ?
総二郎もあきらも俺と司を交互に見る。


「なに?言いたいことあるなら言いなよ」

「いや・・・噂をすればつくしが俺の方を見ていたからよ・・・眼が合ったら逃げて行きやがった・・・」


つくしが司を見ていた?
さっきまでは下を向いてこっちを見てなかったのに?

「それがどうかしたの?俺には関係ないよ」

わざわざそんな事を俺に告げる司が気に入らなかった。
そんな3人を置いて俺はこの通路を1人で進んだ。後ろから来る司の視線にイラつきながら・・・!


*******

<side司>
「なんだよ・・・司。類に喧嘩売ってんじゃねぇよ!また気まずくなるだろ?お前、わざとやってるだろ?」

「別に・・・ただ類が反応するのが面白ぇだけだよ・・・あいつはあんまり感情出さないからな」

別に深い意味はねぇがあの妹に対する類の反応が面白かっただけ・・・。
滅多に怒らない類があの女に関してだけ異常に感情を出すからからかったんだ・・・それだけだ。
この間も俺が腕を掴んだだけで、次は許さないだと?


「そういや、またお前んとこアメリカのウィルソン社を傘下に入れたんだって?そんなに規模をデカくしてどうすんだ?
お前の代になってから纏めていけんのか?ますます母ちゃんが煩くなるんじゃねぇの?」

「あぁ?・・・まぁ、ババァは毎日煩せぇよ。そんなのいつもの事だ・・・気にしちゃいねぇよ。
それよりもまたそのせいで日本に新会社を起ち上げるとかで面倒なパーティーするらしい・・・迷惑な話だ!
そんなものには全く興味はねぇがババァが毎回そういう席で誰かをエスコートしろって煩いんだよ!
女なんかもっと面倒くさいのに・・・冗談じゃねぇよ!」

また3人で歩き出した。
類はもう先に行ってその姿は見えなくなった・・・ふん!ちょっとからかっただけでおかしなヤツだ!


「んじゃさ!つくしちゃんエスコートすりゃいいじゃん!花沢なら問題ねぇだろ?」

「・・・総二郎・・・今、何て言った?」


類の妹を?この俺が類の妹をエスコートするのか?

「つくしちゃんをエスコートしろって言ったんだよ!」

「いいんじゃないか?どうせ誰かをエスコートすんだろ?知らない女よりいいんじゃないか?
そろそろ類にも眼を覚まさせないといけないだろ?司が協力してやれば?」

俺を引っぱたいた女を今度は俺がエスコートする?
そりゃ・・・周りの連中は驚くだろうな。


「面白い・・・かもな」

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花より男子

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