Sister Complex (21)

両親が帰ってきて久しぶりの家族揃っての食事・・・父さんの前には俺が、母さんの前にはつくしが座った。
今まではつくしがムードメーカーだったのに今日は一言も話さない。
二人は静かにフランスでの出来事を話すだけでそれについて俺たちが言葉を出すことはなかった。

食事も終わる頃・・・父さんがその話を始めた。


「今度の道明寺HDのパーティーのことだが・・・」

つくしがビクッと身体を硬直させた。俺は飲んでいたワイングラスをテーブルに戻した。

「類・・・お前は藤堂家の静さんをエスコートしなさい。藤堂家には母さんから話をしてあるから。
そして、つくしは道明寺家から迎えがあるからその日は司君にエスコートしていただきなさい」

「え?・・・あのっ!・・・どうしてですか?」

つくしがこの食事中初めて出した言葉がこれだった。

「どうして?とは・・・どういうことだね?以前から話してあっただろう?つくしもこういう世界の方との
付き合い方をはじめると・・・そういう事だよ?それにこれは道明寺家からの申し入れだからお断り
などという選択肢はないんだよ」

つくしは父さんと母さんを交互に見ながらその手が震えるほど動揺していた。

「類はお父様から言われたように静ちゃんを迎えに行ってね?静ちゃんはたまたま今帰国してるだけだから
エスコートする男性がいないそうなの。可哀想でしょ?」

「・・・わかりました」


司が・・・道明寺が動き出した!
さっき母さんが言った言葉・・・「他の方にお譲りしましょうか」・・・やっぱり司か。
俺が一番警戒していたことだ・・・よりによってつくしの気持ちが揺らいでいるときに司が申し入れするなんて・・・。
そんな素振りは見せないようにしていたけど、明らかに司はつくしを他の女とは区別していた。

つくしも・・・今まで感じたことのない「性」を意識した男だっただろう。
だから最近はすごく揺れ動いていたはず・・・俺といても司を感じていたことがあるはずだから。


「少し聞いてもいいですか?」

「なんだ?」

「今回は静をエスコートするように言われましたが、藤堂家と何かお話しでもされているのですか?
申し訳ないが俺には今のところそんな気は一切ありません。もし、そのようなお話しを進めているのなら
お断りいたしますが」

父さんも母さんも俺の方を見た。
昔から藤堂家と花沢家はよく行き来をしていた。母さんはつくしがくるまでは本当に静を可愛がった。
今でも内心は静と俺の婚約なんてものを期待していると・・・いつもそれを感じていた。

「別に何の話しも進めてはおらんよ。ただ、本当に静さんが1人で行くと聞いた母さんが藤堂家に伝えただけだ。
類にも特別な女性はいないと聞いているから問題はないだろうと・・・それとも誰か決めた人がいるのか?」

「いえ・・・そういう訳ではありませんよ。まだ、相手を選ぶような気持ちにさえなっていないと言うことです」

「類はまずは学生のうちにしっかりと経営学を学びなさい。そんな相手はお前が会社経営に携わるようになって
からでも遅くはない・・・そんなに急かす気などはないよ」

俺の話を聞いている間もつくしは下を向いて震えていた。
後ろに控える加代はすごく心配して声をかけようかどうしようかを迷っている。
それを探るように見ている両親が昔と違って冷たく感じる・・・もうつくしは利用できる道具となったんだろうかと。


「つくしは?道明寺家から何かお話しがあるのですか?」

そう聞くとつくしはハッとして顔を上げて俺を見た。
泣きそうな顔なんてしないで・・・こんな事ぐらいで司につくしを渡したりはしないよ?

「わたしもよくは知らないんだよ。類の方が知ってるんじゃないのか?友だちなんだから・・・。
楓社長は司君があんな性格だから少々気の強いぐらいの娘を探しているとは聞いたけどな。
だからといってこの度そんな話があったわけではない。ただ、今後はわからんけどな・・・
道明寺が本気なら花沢としては断る理由などないのだから」

「つくしの気持ちも考えてやっていただけますか?まだ17なんですから・・・」

「もちろん考えてるさ。どうしても嫌だというものを押しつけるなど・・・いくら私たちでもそんな事はしない。
だが、つくしもこの家の娘なのだから色んな意味での覚悟はしてもらう・・・これで答えになったか?類・・・」

つくしの前であえて「覚悟」という言葉を使った。
それはさりげなくつくし本人に伝えたんだろう・・・さすがに父さんは抜かりがない。
この言い方だといかにもつくしの意思は尊重するが、この話は仕方がないんだと言っているようなもの。

聞くだけ無駄だった・・・。


「はい・・・ありがとうございました」


********


「加代・・・少しの間、見逃してくれる?父さん達に何か言われたら話をあわせておいて?」

つくしはショックを受けていたから、両親が自室に戻った後につくしを俺の部屋に連れて行こうとした。
つくしを心配していた加代はさすがに許してくれた。

さっきの話がよほどいやだったのか俺の部屋に入ってもつくしは一言は話さなかった。


「つくし・・・泣きたいなら泣いてもいいよ?今ここには俺しかいないから」

そう言うとつくしは俺に抱きついたまま泣き出した。声も出さずに・・・。
背中のシャツを握りしめるその強さにつくしの不安を感じて、俺もつくしを抱き締めた。
どのくらいこうしていただろう・・・俺の服がつくしの涙で濡れてしまうぐらい長い時間だった。

「ごめんなさい・・・服が・・・」
「そんなものどうでもいいよ。もう泣くの終わったの?」

「そんなに優しくしないでよ・・・また涙が出ちゃうじゃない・・・!」
「いいよ。まだこうしててあげるから・・・何も考えずに泣いていいよ」

つくしをまだ離したくなかった・・・だからわざとそう言ったんだ。
泣いていいよって・・・。


「小さい頃からつくしはホントに泣き虫だよね。覚えてる?よくこうやって子供の時も抱き締めてあげたんだよ?
俺がこうするとつくしは泣き止むから・・・加代でも母さんでもダメだったんだよ?」

「覚えてるよ・・・類がこうしてくれたら嬉しかったから・・・わざと泣いたこともあるもん」

「そうなの?それは知らなかったな・・・俺はつくしといつもこうしてたかったから・・・」



この時の俺はもう何も考えられなかったんだと思う。
ただつくしがどこにも行かないように・・・俺から離れないようにそれだけしか考えなかったんだ。

まして司になんて絶対に渡したくなかった。

だから・・・とうとう心の中に閉じ込めていた想いが言葉になって出てしまったんだ。
何年も・・・何年も言葉を飲み込んできたのに・・・!


「ごめんね・・・俺の方がつくしの事を愛してるんだ」

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花より男子

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