Sister Complex (22)

「ごめんね・・・俺の方がつくしを愛してるんだ」

そう言ったときにつくしの手がビクッとしたのを感じた。瞬間・・・しまった!と、すごく動揺した。
その頭を抱え込んだまま、泣くのさえ止めたつくしが今どんな気持ちで俺に抱かれているのかと思うと・・・。
ゆっくりとつくしの身体を離そうとしたけど・・・つくしの方が動かない。


「ごめん・・・変な事言って。忘れて・・・」
「忘れないよ!・・・忘れたくないよ、類・・・」

顔を俺の胸に埋めたままつくしはそう答えた。
逆に俺はその答えをどう受け止めたらいいのかわからなくなってしまった。
今度は少し力を入れて自分からつくしを離して・・・つくしの頬の涙を拭いてやる。

ソファーにつくしを座らせてその前に跪くようにしてつくしの手を取った。
真っ赤になった眼で俺をジッと見つめる・・・
この瞳は少女から大人に変わったように見えたのは気のせいだろうか。


「さっき言った言葉は・・・本当?」

何て質問するんだろうね・・・つくしから見たら俺は実の兄なのに。
それでも出てしまった言葉をもう隠したくも誤魔化したくもなかった。

「本当だよ。でも・・・兄妹だから言葉にするべきじゃなかったのかもね。・・・ずっと前から愛してたよ」

そう言うとつくしの眼からは明らかにさっきと違う涙がこぼれた。


「兄妹なんかじゃなかったら良かったのにね・・・そうしたら、類のところにずっといられたのに」

「そうだね・・・でも、これが現実だから・・・」

つくしは俺の言葉を素直に受け止めてくれた。
それはつくしも同じ想いでいてくれるということ・・・ただ違っているのは真実は知らないという事だけ。


「でも・・・絶対に守ってあげるよ。つくしを泣かすもの総てからね・・・」

これが今の精一杯の言葉。
今はまだ兄妹が愛し合ってるって思ってくれてていいよ。
いつか本当の事を話せる日が来るって信じてるから・・・その日までは行き過ぎた兄妹愛でいいから。


キスをするのもつくしの額・・・これ以上は今は出来ない。


********


道明寺家でパーティーが行われる・・・その当日。

お母様はまたドレスをリビングに並べはじめた。
道明寺のパーティーに着ていくものを、今度は私の意見など何も聞かずに決めていった。
前のように可愛らしいものではなくて、大人の女性のようなドレスばかり。

鏡の中の私は全然そんなドレスは似合ってなくて、綺麗だとも思わなかった。
言われるがまま支度をして、まるで人形のようにそこに座っていた。

頭の中にはこの前の類の言葉だけが残ってる・・・ずっと前から愛してるって・・・。
それだけで胸が熱くなった。


「つくし様・・・そろそろ道明寺家からお迎えの車が来ますから。お支度はお済みですか?
まぁ・・・今日は随分と大人っぽくおなりですこと・・・つくし様もこのようなドレスを着るお年になったのですねぇ」

「えぇ・・・。加代さん、類はどうしたの?どこにいるの?・・・会えないかしら」

「類様はもう藤堂家へ静様をお迎えに行かれましたよ。つい30分ぐらい前でしょうか・・・」

あぁ・・・そうか。そうだったわね・・・類は静お姉様をエスコートするからお迎えに行くんだった。
加代さんから視線を外して、もう一度鏡の中の自分を見た。

「そう・・・わかったわ」

ここに映っている私を・・・類はどう見るかしら。


道明寺の車が到着したと連絡が来て、私もこの重たいドレスを引きずりながらその車まで行った。
お母様はソワソワしながら私に付き添って玄関まで来て、私が車に乗り込むのを確認している。
そんなに見なくてもここから逃げたりはしないのに・・・。

「お母様・・・先に行って参ります」

「えぇ・・・私たちも後から行くわ。道明寺家ではいつもどおりご挨拶は忘れないでね」


静かに車は走り出して花沢の家を後にした。

この時間も類は静お姉様のところにいるんだ・・・静お姉様はきっと今日も綺麗なんだろうな。
そんな事を考えながら道明寺家へ向かう。
いっそこのまま事故にでも遭って、パーティーになんか出られなければいいのに・・・!
でもとてもスムーズに車は走るのよ・・・こんな時に限ってね。

私の希望も空しく車は道明寺家へと着いた。


初めて見る道明寺家は花沢の家をはるかに上回る豪邸だった。
ものすごい威圧感・・・この家に育ったあいつがあれだけのオーラを放つのも無理はない・・・
そんな気がした。

お屋敷の中はまだ準備中なのか、私以外の来客は来てないようだった。
不思議に思って道明寺の車のドアを開けてくれた男性に声をかけた。

「あの・・・他の方は?・・・どうして私だけこんなに早くに来たんですか?」

「司様のご命令ですから・・・それ以上はわかりかねます」

その男性はそれだけ言うと余計な言葉は出さずに私を応接室のようなところに連れて行って、
ここで待つようにとそれだけ告げてまたどこかへ行ってしまった。
初めて来たうえに1人にされて・・・たまらなく不安になった。
派手すぎる調度品もなんだか冷たく感じる部屋・・・大きすぎるソファーに座って誰かが来るのを待った。

「何て人なの・・・!無理矢理連れてこられたのにこんな事って・・・」


もうどのくらい待たされたんだろう。だんだんと外が騒がしくなってきた。
もしかしたら招待客が入ってきたのかもしれない。そしたら類に会えるかもしれない・・・!

そう思うとそのドアを開けて自分から出て行こうとした。

その瞬間!・・・ゆっくりとドアが開いて彼が入って来た。
長身の彼は私の顔をその高い位置から見下ろしてる・・・鋭く光るその眼で。


「時間になったな・・・そろそろ行こうか」

「何ですって?・・・散々人を待たせておいて一言ぐらい謝りなさいよ!」

「なんで俺がお前に謝らないといけないんだ?この俺がエスコートしてやるんだ・・・有り難く思うのが普通だ!」

私がいくら怒った顔をしてもこの人には何も通じなかった。
むしろ楽しそうにニヤッと笑うだけ・・・。

「私があなたの横にいるのはお父様に言われたからよ。私の意思でもなければ希望でもないわ。
仕方がないからこうしてきただけよ。そこのところは覚えておいて!」

「何だと!俺を誰だと思ってるんだ!しかもここは道明寺家だぞ!」
「関係ないわ!前にも言ったはずよ・・・。あなたみたいな人は大っ嫌いよ!」


そう・・・大っ嫌いなのよ!
なのに、その眼を見たらドキドキしてしまうの・・・。


何でなの?何で私はこの人から眼が離せないんだろう・・・。

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花より男子

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