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庭から会場に戻るとつくしがこっちを見ているのに気がついた。
つくしはずっと司の側にいる・・・このまますぐにでも何かの発表をしそうなほど司の顔は明るかった。

逆に怒ったような顔を俺に向けているのはつくし。
もしかしたら長いこと静と庭にいたのを見て怒ってるのかな・・・後で謝らないと許してくれないかもね。

「静・・・つくしが随分怒ってるみたい。すごい顔で睨んでない?後で説明しといてよ、何でもないって」

「あら!ヤキモチなのかしら?それはそれで嬉しいでしょう?・・・嫌だわ!もしかして私の方が嫌われてない?」

「嫌われてはないだろうけど、要注意人物にはなってるかもね」

「そうなの?・・・類、人生なんてどうなるかわかんないわよ?この私が藤堂を捨てる日が来るかもしれないんですもの。
でも、もしかしたら藤堂が彼の後援をしてくれるかもしれないじゃない?・・・まぁ、夢だけどね。
だから、いいこと?自分を捨ててはダメよ?しっかりと現状分析と情報収集すること!わかったわね?」

もうすっかり俺の姉になった気分の静は腕組みをして説教をした。

「静は随分と強くなったんだね」

「女は恋をすると強くなるのよ!つくしちゃんも真実がわかれば強くなるわ」

「・・・じゃあ、つくしのところに行って来るよ」


俺は総二郎とあきらに静を頼んで、真っ直ぐに司の側にいるつくしの所に向かった。
近づいてくる俺の姿にホッとした表情を見せるつくしとは対照的に司はその顔を歪ませた。
司がつくしの背中を支えているのが眼に入るけど・・・その苛立ちを見せないようにしてつくしの横に立った。

「ごめんね・・・今日は何も言わずに家を出て・・・つくしが忙しそうだったから声をかけなかったんだ」

「いいわよ。類も藤堂のお屋敷に行ったんでしょ?・・・お姉様はいいの?側にいなくて・・・」

「いいんだよ。静とは何でもないんだから・・・今は総二郎達と話してるよ。向こうに行く?」

「うん・・・!美作さん達とも今日はまだ話してないのよ」

つくしが俺の方に来ようとしたけど、その腕を司がいきなり掴んでつくしの動きを止めた。
司の目はつくしではなく俺の方を睨んでいる。その眼に負けないくらいの視線を俺も司に送った。


「ちょっと・・・離してよ!いいじゃない・・・今まであなたに付き合ったのよ?この先類といたっていいでしょう!」

「何言ってんだ!お前は今日は俺のパートナーだ!・・・俺の許可なく離れるんじゃねーよっ!」

またこの前のようにつくしと司は周りから注目をされ始めた。
二度も同じ事をさせるわけにもいかない・・・俺は仕方なく司から視線を外した。

「いいよ。じゃあ・・・ここに総二郎達を呼んでもいい?構わないよね?司はつくしと離れなくてもいいんだから・・・」

「何だと?・・・類!どういうつもりだ!」

「なにが?この会場で親友同士が集まるだけでしょ?問題あるの?・・・それが嫌ならつくしを連れて行くよ?」

ザワザワとする会場・・・その気配を感じたのか総二郎達の方がこっちに向かって来た。
その後ろを穏やかな笑顔の静も続いて・・・静の笑顔はこの騒動を沈めていくかのようだった。


「・・・勝手にしろ!」

司はつくしの腕から手を離した。
そして俺たちに背中を向けたから、そのままつくしを総二郎達の所へ連れて行った。
少し司を気にしながら・・・それでも嬉しそうに俺の手を取ってつくしは笑顔を向けた。

「やっと笑ったじゃん!つくしちゃん、今日は暗い顔してたからな!・・・やっぱり司は怖いか?
類しか見てないつくしちゃんにはハードル高いよなー!」

「笑いたくても笑えないか!兄貴ってのはホッとするもんなんだよ。うちの妹たちも俺の横では安心してるから!」

総二郎とあきらが交互につくしに話しかけて笑わせていた。
ずっと司の横で緊張していたのか俺たちの所に来たら途端にお腹がすいたというつくしに静がそっと皿を渡した。

「つくしちゃん、これとっても美味しかったわよ?一緒に食べない?向こうの椅子に座りましょうよ!」

「はい・・・お姉様もお腹すいたの?そんな事あるの?」

「まぁ!つくしちゃんったら!私だって人間ですもの!食べるわよ!・・・こういう時は殿方に持ってきてもらいましょうか。
総二郎、あきら・・・類もよ!つくしちゃんがお腹すいたんですって!適当に持ってきて?・・・お願いね!」

静はわざとつくしを笑わせようとしてそんな話題に持っていったのかもしれない。
そしてつくしを連れて室内のソファーに座った。

会場の中でも一際目立つ静・・・その振る舞いをつくしは少し羨ましそうに見ていた。
同じようにゴージャスな大人っぽいドレスを着ていてもやはりつくしにはまだ似合っていない・・・。
つくしがそれを気にしているのにもすぐに静は気がついた。

「花沢のおば様は随分とつくしちゃんに大人っぽいものを選ばれたのね・・・でも、こういう時は自分の意見を
はっきり言うことも大事なのよ?もし、ダメって言われてもまずは自分の意見を一度は言わなくちゃ!
こんな家に生まれてしまったんだから仕方ないけど、それでもいいなりになってはダメよ?
つくしちゃんにはつくしちゃんの意思があるんだから!・・・そうしたら少しずつ変わってくるわよ?」

つくしの豪華なイヤリングに手をかけながら話していた。
「でも、綺麗よ・・・」最後に優しい一言を添えて・・・。

「静!今日は弁護士の先生じゃないはずだぜ?どうしたんだよ、説教なんて!」

総二郎が笑って言うけど静はつくしの眼を見て言葉を続けた。

「運命ってね・・・自分でも切り開ける時ってあると思うの。・・・負けないでね!」

「は・・・はい!」


多分つくしは何で静がそんな事を言うのかわかんないだろう。
すべてを知った静が励まそうとしてるんだけど・・・
もしかしたらつくしに言うフリをして俺に言ってるのかもしれないけどね。




「類・・・もう疲れちゃった。いつ帰れるの?まだいなきゃダメなの?」

しばらくみんなで話し込んでいたけど結構遅い時間になっていて招待客も減り始めた。
よく見たらうちの両親もすでに会場を出たようだ。

「そうだね・・・もう帰ろうか。司に挨拶はしないとね」

つくしを連れて仕方なく司のいる場所に向かう。
そこにいる司の母親・・・道明寺社長はうちの母さんとは比べられないほどの高慢で気位が高い人間だ。
つくしと並んで目の前に立つと司とよく似たその人は、美しく・・・挑戦的な笑顔を向けた。


「今日はつくしがお世話になりました。まだ世間知らずですからご迷惑ではありませんでしたか?」

「お久しぶりね・・・類君も随分と大人っぽくなったこと。・・・つくしさん、司のお相手をしていただいて疲れたでしょうね。
今日はゆっくりとお休みになってね。そのうちに花沢家ともお食事いたしましょう?お父様にそうお伝えしてね・・・」

「・・・ありがとうございます。それでは今日はこれで失礼します」


司は一言も話さなかった。ただ・・・俺ではなくつくしを見ていた。


******


「類・・・私はあきらに送ってもらうわ!だから、気にしなくていいわよ?おば様にも適当に言っといてね!」

「あぁ・・・静、ありがとう」

「いいわよ!お休みなさい・・・類。またね!つくしちゃん」


静達と別れて、つくしを連れてやっと花沢の車に乗った。
すごく疲れたんだろう・・・つくしは車に乗ってすぐに俺の肩に頭を乗せて眠ってしまった。
その手はしっかりと俺に繋がれていて・・・寝ているのにそこには力が入っているみたいに強かった。

普段見ない化粧をしたつくしの寝顔・・・少し巻いた髪が車の震動で揺れている。

この時俺は静にすべて話したことで少し大胆になっていたのかもしれない。
今までずっと押さえてきたのに・・・もう押さえていられなくなった。

寝ているつくしの顎に手を掛けて・・・顔を俺に向けさせる。


そして・・・初めて俺はつくしの唇にキスをした。

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