plumeria

plumeria

「紫陽花の青とピンク・・・何で色が変わるか知ってるか?」

「ううん。土のせいって言うぐらいかな・・・詳しくは知らない」

「土の酸度によるものなんだ。酸性にすれば青、アルカリ性にすればピンクになるんだ。日本に青が多いのは
酸性の土が多いからで、ヨーロッパに行くと断然ピンクが多い。土の中のアルミニウムと紫陽花のアントシアニンが
結合して綺麗な青になるんだ。アルミニウムは酸性土で解けやすいからな。
その色は花が終わりかけると酸が溜まりすぎて青が濁った紫色に変化する。色が変化するから、移り気の花ってわけ」

青い紫陽花の花を「移り気」だという西門さん・・・。

「じゃあ、西門さんにぴったりの花だね!色んな女の人とばっかりいるから・・・きっと明日になったらピンクの
紫陽花でもみるんでしょうね・・・!」


どうしてだろう・・・
せっかく綺麗だと思って眺めていた紫陽花の花を冷たい花言葉で説明した西門さんが憎たらしくなった!
だから向きを変えて・・・急いでお屋敷をでようと歩き出した。

そしたら急に西門さんは私の腕を掴んで引き留めた。

「なっ・・・なによ!痛いじゃない!」


「さっきの言葉は何だよ!いつ俺が色んな女といたって?お前はどこを見てるんだよ!・・・まぁ、いいけど。
その着物が雨で濡れるからやっぱり車を出すよ。こっちから出るから・・・来いよ」

そのまま手を引っ張られて裏口にある駐車場の方に向かった。
そしていつもの西門の車じゃなくて・・・西門さん所有のお気に入りの車のエンジンをかけた。
傘を差しだしてくれて着物が濡れないようにと、肩を抱き寄せるようにして急いで車まで行く・・・。
その肩にある彼の手が熱くて・・・それにこんなに近くだと私の息づかいまで聞かれそうで何となく息を止めた。

車に乗っても何を話したらいいのかわからなくなった。
さっきあんな変なこと言ったから・・・謝った方がいいのはわかるんだけど、上手く言葉に出来なかった。
そしたら急に西門さんの方が話しかけてきた。


「お前、茶は好きか?もう何年やってるんだっけ・・・3年、4年か?」

「3年だよ!いやんなっちゃう・・・結構長い付き合いなのにそんな事も覚えてもらえないんだね!」

「今日はなんでそんなに突っかかるんだ?何か嫌なことでも俺が言ったのかよ!」

「別に・・・突っかかってるわけじゃないよ。・・・それで?なんでそんな事を聞くの?」

私が何年お稽古してるかもわからないなんてひどくない?高校からの付き合いでしょう?
もう少し覚えてくれてもいいんじゃないの?いくら私がお嬢様でないからって忘れなくてもいいのにね。
そんな事を1人で思っていた。


「そろそろ俺の手伝いしないかって・・・そう思ったんだよ!さっき話した秋の野点もその一つなんだ。
気心知れたヤツの方が助かるし牧野も上達してきたし・・・なんと言っても家元が了解してくれてるから」

お手伝い?・・・そうなのよね。
私は昔からそんな立場にいるんだと思っていたのよ。あのお嬢様達はお客様で私はお手伝い・・・
だからあの人達の時は極上の笑顔の大サービス、私の時は無言かお説教・・・笑わないんだもの!

「うん。いいよ・・・お手伝いね。友達使うのがホント荒いよね!私だってもしかしたらその頃には彼氏がいて
そんな事出来ないかもしれないのに!自分勝手に予定入れちゃって!」


あれ?西門さんが凄く変な顔してる・・・?
自分で手伝いを頼んでおきながらそんな顔しないで欲しいわ!
私がこう見えてどれだけショック受けてるか・・・きっと考えてもくれないんでしょうね。

アパートに着いたらまた傘を差して玄関の前まで送ってくれた。
・・・ここはお茶でもどうぞっていうべきなのかしら・・・送ってもらったし?でも、西門さんにお茶・・・この私が?
玄関を開けて後ろを振り向いたら少し困ったように笑う西門さんがいる・・・。


「あのな・・・そこで迷うくらいなら何も言うな!俺はここで帰るから。だけどこれを他の男でやるなよ?
夜になったら宅配でもドアは開けるな。わかったな!」

「は?どういう意味?」


私には何も答えずに西門さんはドアを閉めてしまった。
部屋の中から彼の足音を聞いて、そのあと車のエンジン音を聞いていた。
エンジン音が聞こえなくなってからその場にペタンと座り込んだ。

まだ・・・抱かれていた肩が熱かった。


*******


梅雨時・・・雨が多くて、庭の紫陽花は今日もその青い色を鮮やかに見せつけていた。


「あら・・・つくしちゃん、今日もお稽古なの?熱心ね」

「家元夫人・・・お久しぶりです」

「その着物、ホントに大事にしてくれてるのね・・・嬉しいわ。
あっ・・・そう言えば、総二郎さんから聞いてたんだったわ。ちょっと来て下さる?こちらに・・・」

家元夫人は私の手を取って母屋のその奥の方へ入って行った。
そして着物ばかりを置いていある桐箪笥の並んだ部屋に入るとお弟子さんの志乃さんを呼んでいくつかの着物を
そこに並べ始めた。

「ねぇ・・・これは全部夏物なのよ?今の季節に丁度いいわ。もらっていただけるかしら?もう私は着ないし・・・。
総二郎さんのお着物のところに移しておくわ。・・・ここから出して着て下さる?ね・・・そうしてちょうだい」

「あの・・・申し訳ないですから、これ以上は私になどお譲りにならないで西門さんのお相手の方に差し上げて
下さいませんか?あ・・・その方達は新しいものでないといけないんですか?」

家元夫人はその手を止めた。
せっかく譲ってくださるといったものを私が断ったから・・・気分を害されたんだろうか。
そして、志乃さんに何枚かの着物を渡して・・・私の正面に座り直た。
でも、その顔はとても優しかった・・・まったく怒っているようには見えない。


「男の人ってね・・・何かと言葉が足りなかったり素直じゃなかったりするのよ?わかりにくかったりね・・・。
お家元だったそうだったわ。私も今のあなたみたいに家元の気持ちがわからなくて突っかかっていたわね。
やっぱり親子なのねぇ・・・。でも、この着物はやっぱりあなたにお譲りするわ。多分・・・それが一番いいのよ」

「家元夫人?」

志乃さんがクスクス笑いながらさっきの着物を西門さん専用の箪笥に移していった。


また廊下でお嬢様をお見送りする西門さんを見つけた。
いつもと同じ・・・お嬢様達を虜にする彼の笑顔を悲しそうに見ている私に家元夫人が声をかけた。


「さぁ・・・次はあなた・・・お一人のお稽古よ?」


ajisai5.jpg

後編は明日の11;00です
関連記事

Comments 4

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/07/15 (Sat) 18:20 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

みわちゃん様、今晩は!

そうなんですよ~!
鈍感なつくしちゃんと照れ屋の総二郎という設定です。似合わない~!
昨日までツッコミの激しかったお話しだったのでこんな総二郎は笑えますね!
いや、本当の総二郎ならとっくにモノにしているだろうっ!って自分でも思います。

つくしちゃんはね・・・いいんですよ。鈍感だから。

紫陽花が大好きなものですからつい・・・書いてみました。
私の家も酸性土なので青い紫陽花が凄く綺麗です。ピンクは変色しますね。

でも・・・紫陽花が可哀想なほど暑いです。梅雨明けかなぁ・・・。

2017/07/15 (Sat) 19:57 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/07/16 (Sun) 18:13 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様!今晩は!

本当に綾乃ちゃんの時の家元夫人が許せないんですね?
私はもう忘れかけていましたっ!

そうかぁ・・・。この家元夫人は今までで一番優しい気がする~。
まぁ、お話しがしっとり系だから当然?
これで恐ろしいおばさんが出てきたらSSじゃなくなりますよね?

でも・・・いつもこんな設定じゃないかもですよ?ふふふ・・・。

楓さん並の家元夫人ってのも楽しそう・・・。

2017/07/16 (Sun) 20:48 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply