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「おば様・・・色々とありがとうございました。それと、我儘を言ってすみませんでした」

この施設で願いを叶えた私はおば様にお部屋をお返しして自分の場所に帰ることにした。
もちろんなにも持って来てないから荷物なんてないんだけど、ここにいた記念にとおば様から花の種と
ハートホヤの苗をもらった。とても可愛いハート型の葉が今の私には嬉しかったな・・・。

「いいのよ。どうだった?バラの花が開く瞬間・・・あれはいい香りがしたでしょう?」

「はい・・・すごく綺麗でした。初めてです・・・つぼみが開くところなんて見たことなかったから・・・」

「そうでしょう?でもすべての花にはつぼみの時期があるわ。誰も見ていないときに静かに開いていくの・・・
人も同じよ!つぼみの時期は色がなくても開いたら素敵な色が着いてるの・・・つくしちゃんもこれからよ?」

「はい!・・・また、来てもいいですか?」

「もちろんよ!あきら君を使っていつでもいらっしゃいね!」


おば様に手を振って美作さんが待ってくれている駐車場に向かった。
車の横で腕組みして立っている彼を見つけたときに・・・何故かあの日の夜を思い出していた。

覚えてるよ・・・抱き締めてくれたこと、お水を飲ませてくれたこと・・・手にキスしてくれたこと。
本当は意識があったけど熱のせいで眼が開かなかっただけ・・・。

「お待たせ・・・。美作さん、ごめんね!昨日は寝てないんでしょ?」

「いや・・・少しは寝たかな。心配ないよ・・・牧野は?もう熱はないんだろ?」

「うん!もう元気!・・・ちゃんと学校にも戻るよ。遅れを取り戻さないと!」


立ち直るきっかけなんて本当に小さな事でよかったんだ。
自分でクローバーを見つけることでも、花の咲く瞬間に立ち会うことでも。
大事な人を見つけること・・・それに気がつくことが一番だったのかもしれないけど。

「さぁ、どうぞ!お姫様を現実世界へ戻して差し上げましょう?」

美作さんがふざけて笑いながらドアを開けてくれるから、私もつられて笑いながら助手席へ座った。
来たときには景色なんて見なかったな・・・こんなに緑が多い場所にあったんだね。
走る車の後ろを振り向いたら研究施設が小さく見えている・・・そして消えていった。


「美作さん・・・いい旅をしたような気分だわ。・・・本当にありがとう」

「どういたしまして。その旅のお供にこの俺が選ばれたのは光栄だよ。迷子にならなくて良かったな」


アパートで車を降りて・・・美作さんは帰っていった。
車が見えなくなるまで手を振ってから、長いこと帰らなかった部屋に入る。
郵便ポストには入りきれないほどのDMがあって、いかに自分が長いこと研究施設にいたのかを思い知った。
部屋の窓を開けて風を通して・・・大きく深呼吸をした。

「さてと!明日からはバイトも探さなくっちゃ!勉強も・・・1から始めなきゃね!」


******


久しぶりに大学に戻った。
私の姿を見るなり飛びついて抱き締めたのは言うまでもなく花沢類だった。

「ちょっと!もう・・・そんなに喜ぶことでもないでしょう!少しは離れてくれない?花沢類・・・相変わらずだなぁ!
もう私は大丈夫だからそんなに心配しないでくれる?」

「よく言うよ!今までこんなに心配させといて・・・どうしてあきらにだけ教えてたの?俺だって牧野の役に立ちたかったよ!
いくらだって助けたし、どこにだって連れて行ったのに・・・牧野が好きなこと何だって叶えてあげたのに・・・」

花沢類は拗ねたような笑顔を向ける。
私はそんな花沢類に同じように笑顔で返した。

「花沢類の気持ちは嬉しかったよ。でも・・・それが辛いと思うこともあったのよ。だから、もう私を自由にして欲しいの。
友だちはやめないよ?花沢類も西門さんも大好きな友だちに変わりはないの。
でも、自分で決めた道を進みたいから必要以上に手を出さないで欲しい・・・我儘かもしれないけど」

「俺たちは牧野の邪魔なんてしたつもりはねぇぞ?なにがいけなかったんだ?」

「・・・決定権が私になかったってことかな。それだけだよ」

二人とも顔を見合わせて不思議な顔してる・・・この意味がわかるまで時間がかかるかもね。
とにかく私はこの二人ともいい友だちでいたいから・・・少しだけ距離感を変えてこれからは過ごそう。


それからは類の誘いも西門さんの誘いもほどほどになって、私も無理なことは断れるようになった。
新しくバイトも初めて少しずつ前と同じように暮らせるようになり、下を向いて歩くようなことはなくなった。
大学とも交渉して理数系の学部に変えた。これは私が決めた新しい夢のためだ。

美作さんとはこれまでどおり・・・彼は私の好きなようにさせてくれて、頼んだときだけその手を貸してくれる。
隣にいても離れていても・・・何故か安心できる、そんな存在になっていった。


ある日・・・美作さんは彼のお気に入りの中庭のベンチで何かの雑誌を読んでいた。
この最近あまり会ってなかった私はそれを見つけて・・・嬉しくなってその場へ走って行った。

でも、その隣に行くときには偶然を装うの。だから息を整えてから側に行く・・・そんな変な私がいる。



「美作さん・・・なに読んでるの?」

「これ?・・・もうすぐ家の仕事でイギリスへ行くからね。向こうの経済誌だよ。結構難しくてね・・・」

「・・・そうなの?いつ・・・行くの?すぐなの?いつまで・・・いつ帰ってくるの?」

美作さんがイギリスに行くなんて・・・それまで聞いたことがなかったからびっくりして質問攻めになってしまった。
気がついたら・・・美作さんが座っているベンチの隣で思いっきり近くに寄ってしまっていた!

「あっ!ごめんねさい!・・・邪魔だったよね!つい・・・びっくりして」


「まだ行ってないのに帰りを聞くのか?変なヤツ・・・それに今までだって何回か海外へ行ってるだろう?
今回は向こうで研修を受けたりするから長そうだけど・・・気になる?」

「・・・気になるよ。またあそこへ行きたかったし・・・おば様にも会いに行くっていったし・・・お花も育て方が
わからないし・・・あのバラがもっと咲いてるか見たいし・・・それから、それから・・・」

「全部俺以外のことなんだな・・・結構ショックかも!」

そう言って雑誌を閉じて美作さんは笑っていた。
本当は違うよ・・・言いたいことは違うんだよ?・・・でも、なんでだろう。
涙は素直に出るけど・・・言葉だけが素直に出てこなかった。

「牧野?・・・どうした?もう元気になったんだろ?そんな顔すんなよ。・・・施設への行き方、教えとくよ」
「ううん、いいよ!1人でなんて行かないから!」

今度は美作さんにそんな言葉を投げつけてその場を走り去った!

「牧野!おい・・・牧野!」

美作さんが私の名前を叫んでるけど、突然のことで心臓が爆発しそうで・・・後ろなんて振り向けなかった!

イギリスに行くんだって・・・今回は長いんだって!
今始まったばかりの私の新しい夢はあなたがいないと叶えられないのに!
美作さんの話をなにも聞かずに私はただ走って彼から逃げてしまった。



夜になって・・・アパートの窓から月を眺めていた。
そう言えば施設で見た月はここよりも綺麗だったな・・・山に近かったから夜に電気があまりなかったから・・・。
月明かりのなかで四つ葉のクローバーを見つけたときは本当に嬉しかったなぁ・・・。
自分の手で見つけたかったから、草をかき分けて見つけたときは宝石のように見えた。

牧野が決めていい・・・その言葉が始まりだったんだっけ。


「そうだよね・・・美作さんの人生だもん。美作さんが決めて当たり前なのに・・・バカだなぁ、私」

月に向かって大きな独り言を言ってしまった。


「牧野が決めてもいいよ!」


いきなり下から声が聞こえた!
びっくりして下を見たら・・・アパートの入り口に美作さんが立ってる・・・私の部屋を見上げて笑っていた。

どうして?・・・どうして、こんな時に現われるの?


次の瞬間、もう私はアパートから飛び出していた。

bara4.jpg
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Comments 4

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2017/06/26 (Mon) 12:30 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

わんこ様、こんにちは🎵

大丈夫です❗(笑)😁
誰もでてこないから。SSですもの。
お嬢さまとか、爆弾は本編じゃないと!

あくまでも優しく穏やかに纏めてまいります。

いや、難しい❗
やっぱり私にはあきつくは似合わないかも!( *´艸`)
すごく照れますね。

あと2話の予定です。

今日もありがとうございました🎵

2017/06/26 (Mon) 12:40 | EDIT | REPLY |   
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2017/06/29 (Thu) 16:06 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様!今晩は!(8)

そうですか?あはは!
総二郎なら部屋のドアを開けて飛びつきますかね?
類ならピンポン鳴らしまくり?

あきらっぽかった?

何よりの一言です・・・嬉しいです!

ホントにありがとうございます!

2017/06/29 (Thu) 22:28 | EDIT | REPLY |   

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