西門家の秘宝・71
「牧野、ここに来い。お前に確認したいことがある」
「・・・・・・・・・」
「聞こえなかったのか?」
「・・・・・・!」
凜々しい黒の紋付き袴から一変して緩めなトレーナーにジーンズ姿の総二郎様・・・そして顔は能面の如く無表情で超怖い。
「近寄らなくてもここでも充分聞こえますから」って言ったけどチョイチョイって手招きされた時にはニヤリと笑われて、それはそれで余計に怖い。
結局何をしても怖いことに変わりはなく、仕方なく2メートル近寄ってまた正座。
それでも自分の目の前を指さして「ここに来い」・・・殴られそうな至近距離に気を失いそうになったけど、何度目かの覚悟を決めて近寄った。
「・・・何でしょうか」
「この前の事だ」
「この前?少し前じゃなくて?」
「少し前?いや摩耶と飲みに行った時の事だが?」
「・・・・・・・・・はい?」
私が二日酔いした西麻布の・・・あの時の事?!
ほぼ記憶が無いんですけど?!
総二郎様の前で目をまん丸くさせてキョトンとしたら、「覚えてねぇだろうな」って鼻で笑われた。知ってるなら聞かなきゃいいのに?って眉を顰めると、また総二郎様はド真剣な顔で私の目を見詰めてる。
一体何を喋ったのか・・・あの後も教えてくれなかったから違う意味で震えがきた。
「俺の質問に答えたんだけどはっきり言わなかったからな。もう1度聞こうかと思って」
「総二郎様の質問?」
「そう・・・お前、誰に惚れてるんだ?」
「・・・・・・・・・・・・」
「そう聞いたら『ろう』しか言わなかった。さて、その『ろう』の上を聞かせてもらおうか」
「・・・・・・・・・・・・ろう?」
外郎、桃太郎、金太郎、浦島太郎・・・・・・・・・えっ?!
そんな事言ったの?!
いつ、誰の前で?どのタイミングでどう言う風に聞かれてそんなヤバい事答えたの?!そんな馬鹿な・・・全然覚えてないってどういう事なの?そんなに酔っ払ってたの?
いや、酔ってたから忘れてるんだけど・・・それにしても今言う?!
それなら次の日に聞きなさいよっ!・・・と、口はパクパク開くけど言葉にならない。
「・・・う、う・・・」
「外郎とか浦島太郎とか言うなよ?」
「あ、あのっ・・・それは・・・えっと・・・」
「美人を見たらすぐに目の色変える総二郎なんか大っ嫌い、その意味は?」
「そんな事言いました?」
「言った。何回お前に呼び捨てされと思ってんだ?」
「・・・・・・・・・」
あ・・・総二郎様が笑った。
私が真っ赤になって泣きそうになったらクスクス笑い出した。
もうどう答えたらいいのか判らない・・・そこまでバレバレな態度をとってたなんて、しかも全部見られて聞かれてるし。
それでも自分からは言えなくて、口を尖らせて黙っていたら、ソファーから降りて私の真ん前に胡座かいて座った。
「祥一郎に一目惚れか?」
「・・・・・・違うし」
「考三郎なら残念だがさっき婚約したぞ?悲しいか?」
「・・・・・・別に」
「んじゃ残りは1人しかいねぇけど?」
************************
顔だけメイクしたままなのに着てるものは名前入りのジャージ上下・・・見た瞬間吹き出しそうになったが必死に堪えた。
何と言ってもこいつの本心を聞くんだから巫山戯た空気に持っていく訳にはいかない。それなのに入ってすぐの所に正座してしょんぼりしてるからまた笑いが・・・!
どうにかしてこっちに近づかせようと色々言うのに焦れったいほど来ない。
それならば俺が行けば・・・とも思うが、近寄ったら返事を聞く前に抱き締めそうで怖かった。また殴られたらシャレにならないし。
やっと来たと思えば・・・「何でしょうか」 と消え入りそうな声で言い、「この前の事だけど」 と言えばキョトン。飲みに行った時の事もさっぱり覚えてないようで、俺の問い掛けに口を開けたままだ。
「祥一郎に一目惚れか?」と言えば「・・・・・・違うし」。
「考三郎なら残念だがさっき婚約したぞ?悲しいか?」と言えば「・・・・・・別に」。
「んじゃ残りは1人しかいねぇけど?」
そう言った時には自然と牧野の真ん前に行って、真正面からこいつの顔を覗きこんでいた。そうしたら真っ赤になったまま動かない。目は上を向いてるし口は尖ってるし、指先は足の横で意味不明な動きをしてる。
今までは面白い女だと思って見ていたけど、こうしてみるとすげぇ可愛いヤツ・・・もう俺の方が我慢出来なくなって、変な動きをしてる腕を引っ捕まえて引き寄せた。
そうしたらポスッ!と俺の胸に体当たりして、そこで「ぎゃあぁっ!」なんて女とは思えない声出して。
そこでジタバタするこいつを抱き締めて、髪の中でもう1度聞いてみた。
「お前が惚れてる『ろう』って誰だよ」
「・・・・・・えと・・・」
「ちゃんと言ってみ?呼び捨てても怒らねぇから」
「・・・・・・そう・・・ですかい?」
「お前、まだ巫山戯るのか?次に言ったら怒るぞ💢」
「・・・やだ、怒ったら言わない」
「怒らねぇから言えって💢!!」
「怒ってるじゃん!もうっ・・・そ、総二郎・・・・・・の事です・・・」
なんかガクッとくる言い方・・・でもやっと出た俺の名前に顔が緩んで、それを見せられねぇから力を込めて抱き締めた!そうしたら「苦しいっ・・・!」って声が聞こえて、慌てて離すと今日も思いっきり突き飛ばされた!
てか、これまでで最高の飛ばされっぷり。元々座っていたソファーで後ろ頭を打ち付け、もう少しでムチウチになるかと思った・・・。
「何すんだよっ💢!」
「ゴホッ!ゲホっ・・・自分が男だって忘れてる?!そんなに力入れられたら骨が折れるっての!」
「あ、いや・・・やっと聞けたから・・・」
「言わせたんじゃないのっ💢!」
そう言う牧野は真っ赤な顔のまま真横を向いて、言わせた俺は後ろ頭を掻きながら・・・暫くしたら可笑しくなって、2人同時に笑い出した。
そして俺が両手を出すと、今度はそれに手を重ねて目の前に来て、そのままゆっくり額を合せたら「ばか・・・」って言われた。
「なんで馬鹿だよ・・・」
「・・・どうして今なのよ・・・その時に言ってよ」
「言えば野点で失敗するかもしれねぇだろ?俺に見惚れてさ」
「・・・自惚れ屋だよね・・・総二郎様って」
「まだ様をつけんの?」
「だって使用人だもん。本邸ではそう言わないといけないから」
「んじゃ、今はこの部屋の中では様無しで、俺もここではつくしって呼ぶわ。そのうち・・・・・・まぁ、先の話はまだしない方が良いか?もう一つ問題が残ってるし」
その言葉で急に眉が寄ったつくしが、身体を起こして俺の目をジッと見る。
もう一つの問題とは?って顔してるけど、俺としてはこっちの方が実は気になっている。
「判らねぇか?」
「何だっけ?」
「お前、何者だ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「忘れてるみたいだから言うけど、今日高柳家が急病で来なかったんだけど気にしてねぇだろ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「宝探し、順調か?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「さ、今度はこの話だ、つくし。納得出来るまで帰さねぇからな」
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「・・・・・・・・・」
「聞こえなかったのか?」
「・・・・・・!」
凜々しい黒の紋付き袴から一変して緩めなトレーナーにジーンズ姿の総二郎様・・・そして顔は能面の如く無表情で超怖い。
「近寄らなくてもここでも充分聞こえますから」って言ったけどチョイチョイって手招きされた時にはニヤリと笑われて、それはそれで余計に怖い。
結局何をしても怖いことに変わりはなく、仕方なく2メートル近寄ってまた正座。
それでも自分の目の前を指さして「ここに来い」・・・殴られそうな至近距離に気を失いそうになったけど、何度目かの覚悟を決めて近寄った。
「・・・何でしょうか」
「この前の事だ」
「この前?少し前じゃなくて?」
「少し前?いや摩耶と飲みに行った時の事だが?」
「・・・・・・・・・はい?」
私が二日酔いした西麻布の・・・あの時の事?!
ほぼ記憶が無いんですけど?!
総二郎様の前で目をまん丸くさせてキョトンとしたら、「覚えてねぇだろうな」って鼻で笑われた。知ってるなら聞かなきゃいいのに?って眉を顰めると、また総二郎様はド真剣な顔で私の目を見詰めてる。
一体何を喋ったのか・・・あの後も教えてくれなかったから違う意味で震えがきた。
「俺の質問に答えたんだけどはっきり言わなかったからな。もう1度聞こうかと思って」
「総二郎様の質問?」
「そう・・・お前、誰に惚れてるんだ?」
「・・・・・・・・・・・・」
「そう聞いたら『ろう』しか言わなかった。さて、その『ろう』の上を聞かせてもらおうか」
「・・・・・・・・・・・・ろう?」
外郎、桃太郎、金太郎、浦島太郎・・・・・・・・・えっ?!
そんな事言ったの?!
いつ、誰の前で?どのタイミングでどう言う風に聞かれてそんなヤバい事答えたの?!そんな馬鹿な・・・全然覚えてないってどういう事なの?そんなに酔っ払ってたの?
いや、酔ってたから忘れてるんだけど・・・それにしても今言う?!
それなら次の日に聞きなさいよっ!・・・と、口はパクパク開くけど言葉にならない。
「・・・う、う・・・」
「外郎とか浦島太郎とか言うなよ?」
「あ、あのっ・・・それは・・・えっと・・・」
「美人を見たらすぐに目の色変える総二郎なんか大っ嫌い、その意味は?」
「そんな事言いました?」
「言った。何回お前に呼び捨てされと思ってんだ?」
「・・・・・・・・・」
あ・・・総二郎様が笑った。
私が真っ赤になって泣きそうになったらクスクス笑い出した。
もうどう答えたらいいのか判らない・・・そこまでバレバレな態度をとってたなんて、しかも全部見られて聞かれてるし。
それでも自分からは言えなくて、口を尖らせて黙っていたら、ソファーから降りて私の真ん前に胡座かいて座った。
「祥一郎に一目惚れか?」
「・・・・・・違うし」
「考三郎なら残念だがさっき婚約したぞ?悲しいか?」
「・・・・・・別に」
「んじゃ残りは1人しかいねぇけど?」
************************
顔だけメイクしたままなのに着てるものは名前入りのジャージ上下・・・見た瞬間吹き出しそうになったが必死に堪えた。
何と言ってもこいつの本心を聞くんだから巫山戯た空気に持っていく訳にはいかない。それなのに入ってすぐの所に正座してしょんぼりしてるからまた笑いが・・・!
どうにかしてこっちに近づかせようと色々言うのに焦れったいほど来ない。
それならば俺が行けば・・・とも思うが、近寄ったら返事を聞く前に抱き締めそうで怖かった。また殴られたらシャレにならないし。
やっと来たと思えば・・・「何でしょうか」 と消え入りそうな声で言い、「この前の事だけど」 と言えばキョトン。飲みに行った時の事もさっぱり覚えてないようで、俺の問い掛けに口を開けたままだ。
「祥一郎に一目惚れか?」と言えば「・・・・・・違うし」。
「考三郎なら残念だがさっき婚約したぞ?悲しいか?」と言えば「・・・・・・別に」。
「んじゃ残りは1人しかいねぇけど?」
そう言った時には自然と牧野の真ん前に行って、真正面からこいつの顔を覗きこんでいた。そうしたら真っ赤になったまま動かない。目は上を向いてるし口は尖ってるし、指先は足の横で意味不明な動きをしてる。
今までは面白い女だと思って見ていたけど、こうしてみるとすげぇ可愛いヤツ・・・もう俺の方が我慢出来なくなって、変な動きをしてる腕を引っ捕まえて引き寄せた。
そうしたらポスッ!と俺の胸に体当たりして、そこで「ぎゃあぁっ!」なんて女とは思えない声出して。
そこでジタバタするこいつを抱き締めて、髪の中でもう1度聞いてみた。
「お前が惚れてる『ろう』って誰だよ」
「・・・・・・えと・・・」
「ちゃんと言ってみ?呼び捨てても怒らねぇから」
「・・・・・・そう・・・ですかい?」
「お前、まだ巫山戯るのか?次に言ったら怒るぞ💢」
「・・・やだ、怒ったら言わない」
「怒らねぇから言えって💢!!」
「怒ってるじゃん!もうっ・・・そ、総二郎・・・・・・の事です・・・」
なんかガクッとくる言い方・・・でもやっと出た俺の名前に顔が緩んで、それを見せられねぇから力を込めて抱き締めた!そうしたら「苦しいっ・・・!」って声が聞こえて、慌てて離すと今日も思いっきり突き飛ばされた!
てか、これまでで最高の飛ばされっぷり。元々座っていたソファーで後ろ頭を打ち付け、もう少しでムチウチになるかと思った・・・。
「何すんだよっ💢!」
「ゴホッ!ゲホっ・・・自分が男だって忘れてる?!そんなに力入れられたら骨が折れるっての!」
「あ、いや・・・やっと聞けたから・・・」
「言わせたんじゃないのっ💢!」
そう言う牧野は真っ赤な顔のまま真横を向いて、言わせた俺は後ろ頭を掻きながら・・・暫くしたら可笑しくなって、2人同時に笑い出した。
そして俺が両手を出すと、今度はそれに手を重ねて目の前に来て、そのままゆっくり額を合せたら「ばか・・・」って言われた。
「なんで馬鹿だよ・・・」
「・・・どうして今なのよ・・・その時に言ってよ」
「言えば野点で失敗するかもしれねぇだろ?俺に見惚れてさ」
「・・・自惚れ屋だよね・・・総二郎様って」
「まだ様をつけんの?」
「だって使用人だもん。本邸ではそう言わないといけないから」
「んじゃ、今はこの部屋の中では様無しで、俺もここではつくしって呼ぶわ。そのうち・・・・・・まぁ、先の話はまだしない方が良いか?もう一つ問題が残ってるし」
その言葉で急に眉が寄ったつくしが、身体を起こして俺の目をジッと見る。
もう一つの問題とは?って顔してるけど、俺としてはこっちの方が実は気になっている。
「判らねぇか?」
「何だっけ?」
「お前、何者だ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「忘れてるみたいだから言うけど、今日高柳家が急病で来なかったんだけど気にしてねぇだろ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「宝探し、順調か?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
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