plumeria

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アパートの階段を急いで駆け降りて美作さんの所へ走って行った。
あと少し・・・あと少しって所で思いっきり駐車ブロックに躓いて・・・
転けるって思った瞬間、私の身体はふわっと宙に浮いた。
私の身体を支えてくれているのは・・・美作さんの腕だった。

見た目はこんなにも優しそうで中性的な美しい人なのに・・・意外と力強いその腕に心臓が高鳴る・・・。
抱き上げられた私の目線は彼と同じ高さにあった。


「ほら!走ったりするから・・・転けて怪我でもしたらまた俺が付き添わないといけなくなるだろ?」

小さい子供のように抱きかかえられたまま・・・お礼も言わずに聞いてしまった。

「美作さん・・・本当にイギリスに行くの?」

この私の質問に少しだけ悲しそうな笑顔をした美作さんは私を下に降ろしてくれてちゃんと眼を見て話してくれた。

「行くよ。これは仕事だからね・・・俺は与えられた仕事は責任もってやりたいんだ。この先家族ってのを持った時に
ちゃんと守っていきたいからさ。適当には済ませたくないって思ってる」

「さっきの言葉は?・・・私に決めさせてくれるって・・・そう言ったよ?」

「決めてもいいよ。俺がイギリスに行くこと以外なら・・・」

「え?・・・どういうこと?わからないよ・・・」

「今から教えてやるから、今夜の牧野の時間を俺にくれよ」


そう言うと美作さんは車のドアを開けて今度はこの前と反対の言葉を言った。

「どうぞ、お姫様・・・今日は時間を遡ってやるよ。現実世界から夢の世界へ・・・あのバラをもう一度見に行かないか?」

私は部屋着のまま・・・また、なにも持たずに美作さんの車の助手席に座った。
これからなにが起きるのかをドキドキしながら・・・。


そして車は静かに走り出して賑やかな都内から、だんだんと光の少ない山の方へと向かった。
美作さんは特に何も話さないけど、チラッと横を見たら少し笑顔を見せていた。

どうしてなのかしら・・・日本をしばらく留守にするんでしょう?あの日の事は私の思い過ごし?
私を残したまま外国へ行ってもあなたは平気なの?

そんな事を自分の中で呟きながらハンドルを握る美作さんの綺麗な手を見ていた。
この手は・・・あの日あんなに私を抱き締めてくれたのに。


研究施設に着いたら夜間だから特別に守衛さんを呼んで開けてもらった。
その守衛さんにお礼を言いながらゲートを通過した。

そしてこの前と同じ場所に車を止めて、また二人で月の下を歩く。
目の前には四つ葉のクローバーを見つけた場所・・・草が前よりも伸びているのがわかる。
そう言えばあのクローバーはどうなったのかしら・・・美作さんはちゃんと持ってくれてるのかな・・・。

温室に着いたら、その扉を開けてあのバラがある場所まで進んだ。
そのバラはあの日一輪だけだったのに今は沢山の花をつけていた。その香りがとても強くて酔いそうなほど・・・。


「もうこんなに沢山の花が咲いたんだね・・・すごいね」
「そうだな・・・」

美作さんはそのバラを一本だけ切り取った。
そして私にその花を差しだした。

「牧野・・・これを受け取ってくれるか?何も言わずに・・・受け取って欲しいんだ」
「美作さん!・・・私・・・」

言葉を出そうと思った瞬間、美作さんは私の唇にその指を当てて言葉を止めた。
その後に・・・私が待ち望んでいた一言をくれた。


「何も言わなくていいって言っただろ?・・・牧野、愛してるよ」


*******


バラの花を一本だけ贈る。
その意味は後で教えてあげるから・・・俺は牧野を抱き寄せてその唇を今度は俺の唇で塞いだ。
牧野の顔を俺の手で包むようにして、もう片方の手は牧野の身体をもっと俺に寄せるように力を込めた。
少しだけ唇を離してももう止めることは出来ない・・・何度も牧野にキスをしていた。


「牧野・・・部屋に行かないか?もう、離したくないんだけど・・・」

小さく頷いた牧野を抱き上げてこの前まで牧野が使っていた部屋に向かった。
明かりなんてつける必要もない・・・今日も月明かりで部屋の中は照らされていたから。

牧野をゆっくりとベッドに降ろして・・・その赤くなってる顔を両手で包んでやった。
こんな事・・・もしかしたら牧野は初めてかもしれない。
少しだけ震えているんだろう・・・その大きな眼が潤んでいるから、もしかしたら泣きたいほど怖いのかもな。

「・・・ここでも牧野に決めさせてあげたいけど、どうしよう・・・今日だけ俺が決めてもいいか?」

「なにを?・・・美作さんがなにを決めるの?」

「牧野の未来・・・かな。俺の未来と同じ場所にいて欲しいんだ・・・お前に」


牧野の眼から涙が1つ落ちたのを見て、もう俺は止められなくなって・・・その夜に牧野を抱いた。
やはり初めてだった牧野は怖がって必死だったけど・・・
牧野の身体が月の光で白く浮かぶのを、甘い声が小さく部屋に響くのを・・・まるで俺までが初めての時のように
新鮮で神秘的で・・・なにもかもが生まれ変わっていくようなそんな気分になった。


「美作さん・・・!みま・・」
「ダメだ・・・これからはあきらって呼んでくれよ」

こんな最中に牧野に無茶な頼み事・・・それでも小さな声で俺の名前を呼ぶ牧野が愛おしかった。


その声がそのうち掠れていって・・・疲れきって聞こえなくなるまで・・・俺は夢中で牧野を抱いていた。
その白い肌に赤いバラの花を咲かせて・・・。



朝になって・・・今度は部屋が日の光で明るくなった頃、牧野と俺は同時に眼が覚めた。
ベッドの中で恥ずかしそうに牧野がシーツにくるまっている。

「コーヒー・・・入れてやるよ。今日は大学休まないとな」

「うん・・・・・・み・・・あきら・・・」

「あれ?ちゃんと覚えてたんだ・・・可愛いな、牧野」

今度はすっぽりとシーツの中に潜っていった。耳まで赤くして・・・。
それを見ながら俺はコーヒーを入れるためにキッチンへ向かう・・・牧野は慌てて着替えていた。


テーブルにはコーヒーと昨日のバラが一本・・・一輪挿しに挿して置いていた。


「バラが一本っていう贈り物の意味・・・教えてやろうか?」

「昨日言ってくれなかったね・・・どういう意味なの?」

「一目惚れ・・・だよ。受け取ってくれたらそっちもOKってこと!」

「・・・何も言わせなかったじゃない!」

少しだけ拗ねた表情をしたけどすぐに二人で笑ってしまう・・・だからもう一つの話しの続きをした。


「牧野・・・昨日の夜、お前に決めさせてやるって言っただろ?・・・だから、決めてくれないか?
俺についてイギリスに行くか、日本で俺が帰るのを待つか・・・今すぐここで結婚しても良い。
俺はイギリスに行くけどお前の時間はお前が決めてくれ。俺はそれにあわせるから・・・」

牧野は急に真剣な顔をした。
しばらく考えた後に牧野は答えを出した。


「私は・・・」

bara6.jpg
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2017/06/29 (Thu) 16:23 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様!今晩は! (9)

でた!さとぴょん様の大好物、キスシーンですね?
いいでしょう?指で言葉を止めるの・・・実は書いてて
「さとぴょん様がこういうのすきなんだろうなぁ・・・」
って思ってましたよ!(*^▽^*)

その時のあきらの妖しい笑顔も想像できました?

口が半開き・・・爆笑!!

お顔はわからないけど私が想像してしまうわ!

いつも楽しいコメントありがとうございます!!癒やされます!

でも、SSですからRシーンはございませんで・・・ごめんなさいね!
(書く気もなかったけど( ̄∇ ̄))

2017/06/29 (Thu) 22:34 | EDIT | REPLY |   

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