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「1人で行きなさい・・・わかるでしょう?」

おば様にそう言われて私は温室の中に眼を向けた・・・もちろん全部は見えないんだけど。
おば様はもう背中を向けて部屋の方に戻っていった・・・私はこの時、もう心臓が飛び出そうなくらいドキドキして
しばらくこの前にある温室の扉を開ける勇気が出なかった。

でも、思い切ってその扉を開けてみた。


ゆっくりと中を歩いていく・・・もうすぐベンチが見えるはず。
沢山の試験品種のバラの株を通り抜けて・・・少しずつあの場所に近づいた。


そして、やっぱり彼はそこに座っていた。

私に気がつくと彼は立ち上がって、何一つ変わらないその笑顔を向けてくれた・・・!
私の眼はその姿に釘付けになって、もう他のものはなにも映らない・・・気がついたら足が動き出した。
ゆっくりだったのがだんだん早く・・・彼のところへ私は近づいた!


「牧野・・・ただいま。就職おめでとう・・・よく頑張ったな!」

「あきら・・・あきらっ・・・!」


あきらがその両手を広げてくれたから、私はもの凄い勢いでその中に飛び込んでしまった!
あきらの香りがする・・・あきらの柔らかい髪の毛が私の顔をくすぐる・・・!
背中にはあの力強い腕が・・・私を抱き締めている。

「牧野、相変わらす泣き虫なんだな。せっかく綺麗に化粧してるのに・・・」
「泣いてないよ!嬉しいだけだよ・・・こんなのズルいよ・・・!」

「お帰りって・・・言ってくれないのか?」


「・・・じゃあ、もう一度私にも言ってよ・・・」

あきらから身体を離してすぐ目の前に立った。
前と変わらない優しい笑顔であきらは私の耳元に顔を近づけて囁いた・・・。


「牧野・・・愛してるよ」

「うん・・・あきら、お帰りなさい・・・」

あきらはそっと私にキスをくれた・・・。


「俺が決めた牧野の未来・・・その約束を叶えるために迎えに来たんだ」
「そうなの?・・・わたしの初出勤を退職日にする気なの?」

私の言葉に吹き出してしまったあきら・・・だって迎えに来たって言うんだもの・・・。

「そんなわけないだろ?3ヶ月間だけここで研修受けて、その後はイギリスの研究施設でバラの品種改良の仕事をしないか?
ここは美作が協同で設立した施設でね・・・同じ施設がイギリスにもあるんだ。牧野の夢を聞いてから向こうの施設も
見てきたんだけど、同じような研究が出来そうだし・・・悪くないだろ?」

「そんな事を調べてくれたの?・・・でも、また何も言ってくれなかったのね!」

「牧野が自分で掴みたい夢を、例え相手が俺でも手を差しだしたら嫌だっただろ?でも、もう俺の方が限界なんだ。
だから迎えに来た。3ヶ月後は向こうに行くぞ」


おば様はあきらの気持ちを聞いていて、それで私をこの品質管理部に一人だけ採用したらしい。
ここなら移動しても目立たない・・・特別待遇だと非難されずに済むと考えたのだと。
いいえ、本当はお母様として息子の願いを叶えたかっただけね?・・・おば様。

それから3ヶ月間、おば様に付いて勉強と研修をみっちりと朝から夜遅くまで受けた。
あきらはその間は日本で美作商事の仕事をしていて、日曜日だけのデートが続いた。
でもそれは今までで一番楽しくて幸せな時間・・・私の部屋にはあきらのものが少しずつ増えていく。


そして3ヶ月後、今度はおじ様、おば様そして双子ちゃんに見送られて出国ゲートをくぐる・・・。

「行ってらっしゃい!あきら君、つくしちゃん!素敵な花を咲かせるのよ?あなただけの花をね!」

「はい!おば様・・・向こうで必ず咲かせます。見ていて下さいね!」


2年前と同じく真っ青な空に向かって私たちが乗った飛行機は日本を飛び立った。
飛行機の窓から小さくなる日本を眺める・・・その私の左手はあきらの右手にしっかりと握られていた。


*******


イギリスに着いてすぐに、私たちが住む家にあきらが連れて行ってくれた。
マンションではなくロンドン郊外の一軒家・・・すでにバラが植えられている小さくて可愛い家だった。
もしかしたら家よりも庭の方が広いんじゃないかしら・・・これは私のため?

「素敵なお庭ね、あきら!・・・あれ・・・あきら?」

今までそこにいたあきらがいない・・・窓辺に近い部屋に戻ってあきらを探した。
まだ片付けられていない荷物があるだけで物音がなにもしない。でも、懐かしい香りがする・・・。
そして一番奥のリビングに入ったら・・・そこには大きなバラの花を抱えたあきらが立っていた。

「あきら・・・急にいなくなるからびっくりするじゃない。それって・・・」

「つくし・・・これを受け取ってくれる?何も言わなくていいから・・・」

そう言って差し出されたのはあの日二人で見たおば様の作ったバラ・・・月夜のバラだ。
それを両手で受け取ってあきらの方を見たら・・・きょうも悪戯っぽく笑っている。

「今度は・・・どういう意味なの?あきら・・・」
「108本のバラの意味はプロポーズ・・・受け取ってくれたらOKって事だよ!」

今回も何も言わなかったくせに・・・!そう言いながら私が笑うとあきらはバラの花束ごと後ろから私を抱き締めた。

「このバラはあの後品評会で賞を取ったんだ・・・このバラの名前は「Luna」・・・お袋がつけたんだ。
月夜のバラ・・・あの日の月から取ったんだって。牧野が次に新しいバラを作ったときには俺が名前をつけてやるよ。
もうその名前も決めてるから、必ず完成させてくれよ?」

私の耳元で優しくあきらが囁く・・・そしてあきらは私を振り向かせてもっと優しいキスをくれた。
私はしばらくあきらに身体を預けていた・・・背中が温かくて安心する。
すべてを守ってくれる・・・包んでくれるその優しさに幸せすぎて涙が出た。




何年かが過ぎてイギリスでの生活も仕事も慣れてきた頃・・・。
私はやっと初めて自分のバラを咲かせる段階にまで研究を進めることが出来た。

今日あたりその花を咲かせるかもしれない。

その夜に研究施設の温室でその瞬間を待っていた。もちろん隣にはあきらがいてくれる。
あの時のように・・・二人で寄り添ってその花の株の前に座っている。


「思い出すわね・・・あきら」

「あぁ・・・ホントだな。あの時はつくしが高熱だったよな・・・ホントはすぐにでもやめさせたかったよ」

「ふふっ・・・そう言えば無茶をしたわね。この花が思うとおりに咲いたら名前をつけてくれるんでしょう?」

「用意してるよ・・・ちゃんと」


そんな会話を月夜の温室で繰り返す。
あきらの肩に頭を乗せて・・・あきらの手は私の身体を支えてくれて。


そうして、朝日が昇って温室が明るくなった頃にその花のつぼみはゆっくりと開いていった。
鮮やかなピンク色で・・・でも花弁の縁にはクリーム色が入る2色咲きのバラ・・・。
そのバラが開ききったとき、私は嬉しさのあまりあきらに抱きついて大泣きしていた。

「思った通りに咲いたか?じゃあ、これはこの世界に初めて咲いたバラの花で・・・また、俺たちは世界で初めて
この花を見た二人って事だな・・・おめでとう、つくし。今日の夜はお祝いだな!」

「うん・・・ありがとう!あきら・・・」


そのバラにあきらがつけてくれた名前は「ヴィーナスの涙」・・・神話から取った名前だった。
私は咲いたばかりのその枝を切り取ってあきらに一本だけ渡した。

「あの日のバラのお礼・・・何も言わずに受け取ってね」

「一目惚れのバラか?・・・もういつの話だよ。でも、ありがとう。嬉しいよ」


あきらは「ヴィーナスの涙」を受け取ってそのバラにキスをした。もちろん、私にも・・・。



「疲れたな・・・今日は家でゆっくり休もうか」

「あら・・・会社はいいの?」

「つくしの側がいいに決まってるだろ?もう・・・すごく眠たい」



私たちの家には大切な思い出が置かれている。
Lunaのブリザードフラワーの横には四つ葉のクローバーが入ったフォトフレーム・・・
その中には私たちの写真・・・来年にはこの横に「ヴィーナスの涙」のブリザードフラワーを飾ろう。
そしてまた家族の写真を並べよう・・・。


つぼみに色は着いていなくても、花として咲いたら綺麗な色が着いてるわ・・・
おば様の言葉を思い出した。


「あきら・・・私はあきらを愛して良かった・・・今、すごく幸せだわ」

「俺はつくしに会えた瞬間から幸せだったけど?」



fin.


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駆け足で終わらせてしまった・・・やっぱり難しい・・・。
あきらってやっぱり援護射撃が似合うかも・・・!
また、盗聴器作ってライフル持って出てもらうことにします!
反省しました・・・。えへへ・・・!
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Comments 12

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2017/06/29 (Thu) 12:39 | EDIT | REPLY |   
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2017/06/29 (Thu) 15:40 | EDIT | REPLY |   
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2017/06/29 (Thu) 17:28 | EDIT | REPLY |   
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2017/06/29 (Thu) 18:39 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

わんこ様、こんばんは!

ん?裏?・・・そこはよくわかんないんですが?
今回は初めて挑戦したので、どうしても一番印象に残っている原作の番外編のイメージですかね?
そんな感じで書いてしまった。総二郎書きさん・・・どなたかしら?私も読んでみたいですね!

でも、やっぱり難しいですね~!
他の誰かと絡ませないと上手くいかなくて・・・。
また気分が乗りましたら・・・それまではいつもの二人で遊んでおきます!

あきつくへの挑戦の機会を与えていただきありがとうございました。


2017/06/29 (Thu) 21:12 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

はな様・・・挑戦してみて?

意外と困ると思うよ?ホントに!
類に似てるようで似てないから、私も何回か書こうとして
挫折したから!(類でさえ書けてないけど・・・)

そう!いい男なのよっ!それは当たりっ!誰もが認めるところよね。
主で書けるかが問題よっ。(と、言うことは書き手の技量不足か?)

バラで誤魔化した感、満載!えへへ!

解放されました~!

2017/06/29 (Thu) 22:01 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

みわちゃん様、今晩は!

白いカーテン・・・そこ?
何でですかねぇ・・・。細かく言うとバラは薄いピンク系。月は三日月じゃなくて満月、
カーテンは白いレース・・・着ているものはセーターじゃなくてシャツ系。ジーンズではないイメージ。

あきらと言えばこんな感じ?
セリフはとにかく相手の気持ち優先で、お話しは聞くタイプ。

上手くいったんだかどうだか・・・。
また、機会があれば・・・腕が上がればって感じですかね。

初挑戦・・・応援いただきありがとうございました!

2017/06/29 (Thu) 22:47 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、今晩は! (11)

いやいや、思うとおりにはいかなかったですが何とか終わりました。

やっぱりあきらにはお話しの中でスパイスとして頑張っていただきましょう!
甘いお話しは苦手なのかも~!
書いてて照れるんですよね!

総二郎のお話に戻るとホッとする自分がいます!

でも、応援コメント沢山いただいて嬉しかったです!
いつもありがとうございます!

2017/06/29 (Thu) 22:52 | EDIT | REPLY |   
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2017/06/30 (Fri) 02:28 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

Kyoro様、おはようございます🎵

いや、意外と難しいということがわかりましたよ。
私も頭の中は常に、二人がおりますので彼らだと
想像しやすいんだけど…あきらがどう動くのかがよく
わからなくてですね。

リクエストいただいたあきつくだけど、ちゃんと書けたんだかどうなんだかわからないんです。(笑)

坊っちゃん?
大丈夫!書けないから‼っていうか無理ですよ。
多分、今類のお話にでてるけど、キャラを掴めてないから
坊っちゃんらしくないはず。違和感満載‼( *´艸`)

次があるかどうかはわかりませんが
思い付いたら頑張ります‼

いつも、応援コメントありがとうございます❤

2017/06/30 (Fri) 07:03 | EDIT | REPLY |   
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2017/06/30 (Fri) 21:53 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

Ringo様、今晩は!

うふふ・・・!
嬉しいです!ありがとうございます!
で、総二郎がお好きなんですか?それはそれは・・・!
我が家は色っぽくない総二郎で申し訳ございませんが楽しんでいただけてたら
嬉しく思います!

あきらは・・・意外と難しかったんで自信なかったんですけど。良かったかしら?
柔らかいイメージですよね~!いい男で私も好きなんですよ!
でも、まさか書くとは思わなかったけど。

どうしましょう・・・意外と喜んでもらったのでお調子者の私はすぐに乗ってしまうんですよ。

考えておきますね!

応援コメント、ホントにありがたいです!励みになります・・・(*^▽^*)
これからもよろしくお願いいたします!

2017/06/30 (Fri) 22:39 | EDIT | REPLY |   

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