続・茶と華と (21)

「で?・・・私は何を助けたらいいのかしら?」

動揺しているコンシェルジュにつくしはいかにも先生ぶって話している。
偉そうに・・・なんて思いながら俺も横で話を聞いていた。
そのコンシェルジュが言うには、今日ここで結婚式があるのにフラワーコンサルタントが急病で来ることが出来ず
会場と式場入り口のアレンジが出来ないらしい。

コンシェルジュ自身が華道経験者だということからその代役でアレンジするように言われたがとてもそんな事は
出来なくて困っていると・・・段取り悪すぎるんじゃねぇか?


「昨日から準備は出来なかったの?あと何時間後に始まるのかしら・・・他の方は手配できなかったの?」

「ちょうど使う予定のお花が産地から届くのが今朝だったんです。他の業者さんに頼もうと思ったけど当日の依頼は
どなたも聞いていただけなくて・・・お式までは後3時間なんです!でも数が多すぎて・・・」

つくしは困った顔で俺の方を見てきた。
でも、その目は助けてやりたいんだろう?


「いいよ。お前がそうしたいんなら助けてやれよ。どうせここは元々俺1人で行くんだったから問題はねぇよ。
早く行ってやれ!これも俺たちのような人間には大事な仕事だから・・・」

こういう時に止められないのも文化芸能の家に生まれた者の血によるものだろう。
俺が常に茶と共にあるように・・・つくしの中には花が咲いてんだろうから・・・。

「総二郎さん、ありがとう!じゃあ、手伝ってくるわ!終わったらすぐに行くわね!」

「そんな事は終わってから考えろ!弟子を1人残しておくから絶対に1人で行動すんなよ?」

俺の言葉が終わらないうちにつくしはコンシェルジュと一緒に走って行った。
着物に着替える前で良かったな・・・あいつの生け花は「作業着」じゃないと出来ないから。
・・・きっと全然知らない2人のために一生懸命花を生けてくるんだろうな。

つくしの着物を抱えて1人で部屋に戻る・・・昨日はほとんど寝てないのに何故か気分は良かった!
つくしが後ろから叫んでくるまでは・・・


「総二郎さーん!私の作業着取ってきてーっ!急いでねーっ!」


・・・俺は召使いかっ!


******


「後はここにホワイトカラーとブプレウルムを持ってきて・・・その後ろにはスノーボールを置いて仕上げて?
次はメインテーブルに行くわ・・・ここは主役席だから豪華に行きましょうか。白いバラと・・・アクセントに
ピンクのバラを・・・それとアイビーを少し持ってきてね・・・」

手伝ってくれるコンシェルジュさんが焦りながら花を生けていく・・・手が震えているから上手くいかないみたい。

「大丈夫よ?時間はあるわ・・・もっと花そのものを見てあげて?ほら、ここの花は少し向きがズレてるでしょう?
これだとお客様からはよそ見されてるみたいになるから・・・それにこの大きな花が小さい花を隠さないように。
高さを変えて・・・でも隙間は作らないで?私がこの後正面入り口をやるからあなたはテーブルフラワーを
修正していってね!頑張りましょう・・・あと1時間以上あるわ!」

「はいっ!・・・頑張りますっ!」

私は本来、こんな会場アレンジが好きだった。
着物を着て剣山に花を生けていくよりは、こうやって大きく大胆に・・・空間を飾るようなアレンジが大好き!

今日ここで新しい生活をスタートさせる2人に・・・それを華やかに飾って思い出の一つに残るように手助けが
出来たら最高に幸せだわ。

これからは西門でお茶の世界にも入っていくわけだけど、総二郎さんはこんな私の仕事がこれからも続けて
いけるようにと家元達にお話ししてくれたらしい。
だからこれからも時々はこんなお仕事が出来るって・・・そう言ってくれたわ。

今日も家元夫人から挨拶回りをするように言われたのに、私の気持ちの方を優先してくれたのね。



「牧野先生!テーブルフラワーの確認とサイドのスタンドフラワーの修正お願いできますか?」

「はーい!いいですよ。・・・でも、私・・・もう牧野じゃないんです。今は西門なんですよ・・・」

うわっ!凄く照れちゃうっ!自分からそんな事言うなんてっ!
でも・・・もうね、ホントに総二郎さんの妻だからっ!なんてったって昨日・・・いや、今朝だけど!


「・・・では、西門先生?赤くなってますけど、もしかして新婚さんですか?」

「えっ!あ・・・えぇ、まぁそうなんです。3日前にね・・・さっきの人が主人です・・・」

きゃーっ!!照れちゃう!これは照れるわっ!しゅ・・・主人って言っちゃった!ホントのことだけどっ!
7時間ぐらい前に正真正銘の旦那様に・・・っ!
私は手にホワイトカラーを持ったまま・・・昨日のことを思い出してしまった!ああなって・・・こうなって・・・。
もしかして何となくだけど・・・総二郎さんが一瞬下にいたような気もするんだけど。
それに・・・なんだか私ったらすっ・・・凄い声出してなかった?途中からは全然記憶が・・・ないわけじゃないんだけどっ!


「あの・・・西門先生、時間ないですから手を動かしていただけますか?」


******


何とか結婚式場のアレンジが終わった。
コンシェルジュさんと握手して現場を後にする。彼女も半泣きで・・・でも間に合ってよかったわ!
この会場で幸せになる人達を見ることが出来なくて残念だけど彼の所に急いで行きたくて部屋で支度をしていた。
部屋にはさっき選んでもらった着物が綺麗に置かれている。


自分で着ようかと思ったけど・・・やっぱりやめた。
その着物一式を持って、お弟子さんの頼んで総二郎さんのところに連れて行ってもらおう。
だって、さっき総二郎さんは言ったもの・・・「妻の支度は自分でします」って・・・

だからこのまま総二郎さんのところに行こうと思った。



フロントまで降りたら式場入り口のアレンジを見ている女の子がいる。
近くには誰もいないのにたった1人で・・・真っ直ぐに私のアレンジを見つめているから何となく気になった。

お弟子さんに待ってもらってその女の子の側に行った。


「どうしたの?なんでそんなにこのお花を見てるの?」

「このお花たちから幸せを感じるからだよ。きっとこれを作った人はとっても幸せな気分で作ったんだと思うの。
だからね、見ている私も凄く幸せになれそうって・・・お姉ちゃんもそう思わない?」


その女の子の言葉は最高のプレゼント!
作品を作る者にとっては一番嬉しい言葉だわ!

「そうね・・・私もすごく幸せだわ!どうもありがとう!」


女の子に手を振って・・・私は総二郎さんのところに急ごう!なんだかとってもいい気分!
早く会いたくて・・・今度はお弟子さんよりも早く走ってしまった!

着物姿のお弟子さんが死にものぐるいでついてくるのに
お構いなしに作業着で全力疾走する私!



「すぐに行くからねっ!総二郎さん・・・待っててねーっ!」
「つくし様ーっ!方向が反対ですぅ!」


11sadou.jpg

花より男子

4 Comments

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2017/07/11 (Tue) 12:41 | EDIT | REPLY |   

plumeria  

Re: タイトルなし

わんこ様、こんにちは‼

そうかもしれませんねぇ。
私も読んでた時は、総二郎の場合色っぽいかシリアスか、でしたね。コメディは少なかったかも。

でも、もう終わるんですよ~❗
楽しかったなぁ、これ書いてるときは。

いや、カッコいい総二郎を書きたいんですよ?
本当は!でも、私には無理みたいですわ!

ちょっと和テイストなお話も考えておりますが、どうだろうなぁ。強烈なお話のあとはなかなか切り替えがむずかしいですね。

今日もありがとうございました❗

また、雨が酷い…。

2017/07/11 (Tue) 13:24 | EDIT | REPLY |   

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2017/07/15 (Sat) 17:16 | EDIT | REPLY |   

plumeria  

Re: タイトルなし

さとぴょん様!今晩は♥

花は私が好きだからつい書いてしまうんですよね。
華道をしようとは思わなかったですが、小さい頃からお花屋さんで働きたかったです。
夢は多かったですけど覚えてる限り最初の将来の夢はお花屋さんでした。

走るまくるつくしですが・・・初めての後って痛くないのかな・・・。
あんまり走らないような気もしません?
よく言うじゃないですか?すごい筋肉痛だって・・・ねぇ!

2017/07/15 (Sat) 20:43 | EDIT | REPLY |   

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