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報道発表からしばらくして自宅の周りも静かになって、つくしはまた学校に行けるようになった。
今は両親がここにいるから朝の騒動はない。つくしは自分の部屋で朝食を済ませるようになった。


「行って参ります。今日はお兄様と帰りますから」

「そうなの?司君ではなくて?」

「はい。私は・・・まだそこまで道明寺さんとはお話しできませんから」

母さんはさりげなくつくしを追い詰める・・・いや、そんなつもりはないんだろうけど結果的には同じだ。
少しでも司とつくしの距離を縮めようと必死なんだろうけど。

「つくし・・・少しずつでもお話ししないと相手のこともわからくてよ?お母様だってお父様とは親が決めた
結婚だったけど、お父様を理解しようと頑張ったのよ?類のお友達だから気になるでしょうけど・・・
ちゃんとお話しが出来るようにはならないとね・・・せっかくあなたを見初めてくれたのだから」

「・・・わかっています。お母様」

精一杯の笑顔を母さんに見せるけど、俺と一緒に車に乗ると途端に表情を曇らせる。
そんなつくしにかける言葉が見つからない代わりに・・・その手はいつも俺に繋がれていた。


そんな日が何日か繰り返された頃、とうとう道明寺家と花沢家が一緒に2人の婚約披露をすることが決まった。
再びつくしは学校に行けなくなって、自宅でその日のための準備をしている。
またどこから来たのかわからないような祝いの花や贈り物で家中が大騒ぎだった。


「会場はMホテルを予定しているからな。この日は世界中から主な企業の関係者が出席するから
類もそのつもりで対応しなさい。特にフランスを中心にヨーロッパからは花沢の関連会社が多数来るからな。
お前の顔を知らないヤツもいるだろうからしっかりとアピールしておけ。・・・わかったな!」

「はい・・・わかりました。出席者のリストがあれば後で見せてください」

心にもない言葉を出している。本当はそんなものに興味なんてなかった。
奥で母さんとまたドレス選びをしているつくしに気が向いていた。


いつの間にか覚えたんだね・・・そうやって無理に笑顔を作って幸せそうなフリをすることを・・・。



*******


そして迎えた婚約披露パーティーの日・・・
Mホテルのホール総てを埋め尽くすほどの招待客に囲まれて司とつくしはその中心にいた。
両端には道明寺と花沢の両親が付き添い、後ろには両企業の重役が並んでいる。

世界的に有名な企業が手を組む訳だから招待客の顔ぶれも相当なもの・・・。
俺は両親の隣に立たずに会場の方にいた。総二郎、あきらと共にまるで他人のように自分の家族を見ていた。

「いいのかよ!類は普通向こうじゃねぇの?親父さん、絶対に怒ってるぞ?」
「いいんだよ。別に・・・俺はあんな目立つところに立ちたくないし」

「そんな問題か?お前も一応花沢の跡取りだし・・・こんな時は顔を出しとくべきだろう?」
「関係ないよ・・・そのうち嫌でも知り合うんだからさ」

会場からは司の隣に立つつくしが見える。
つくしの今日のドレスは真っ白なカクテルスタイル・・・ふんわりとしたドレスはまるで小さな花嫁のようだった。
タキシードの司の横で、今にも泣きそうな作りものの笑顔で立っていた。

巻いた黒髪を白い花のヘッドドレスで纏めたつくしはうちに来た時を思い出させる。
白い毛布に大事に包まれて門の前に置かれていたつくし・・・その中ですやすやと寝ていた姿を思い出していた。
僅か2歳で一瞬で恋に落ちたんだろうな。俺のあとを付いて回る小さなつくしの面影を重ねていた。


すっ・・・と俺の横に来たのは静・・・今日は藤堂家も揃って招待されていたんだっけ。

「きょうのつくしちゃん・・・本当に綺麗ね。あなたは・・・大丈夫なの?類・・・」

「そんなわけないでしょ。でも・・・どうなるかなんてわかんないよ。つくしが司を愛さなければね」

「まだ・・・諦めてないのね?ふふっ・・・類って意外と根性があるのね!」

そう言って笑ってくれる・・・静に話していて良かった。
1人でもこうして理解してくれるんなら、それがどんなに嬉しいことか!
それを言うなら総二郎も同じ・・・真実は知らないけど気持ちだけは知っているから何かと煩く言うあきらを
俺から遠ざけてくれた。ほんの少し苦笑いして・・・。


「つくしの方が辛いと思うから・・・俺は大丈夫だよ。静の言うとおり情報収集と現状分析だったよね?
この話を覆す材料を探すよ・・・あまり時間がないけどね」

つくしはこの後司について会場の中を歩き、世界中の経営者群に囲まれて祝福を受けていた。
司の腕を指先だけで掴んで・・・そこには愛情なんて感じられない。
時々俺の方に顔を向けてその唇が動かした・・・「助けて」・・・そう呟いているのかもしれない。


「類・・・こんな時だけど道明寺のアメリカでの動きを見ていて。少し気になることがあるわ。
この婚約は司の希望かもしれないけど、おば様・・・道明寺社長の本当の気持ちは違うかもしれないわよ」

「え?・・・どういうこと?どこからの情報?」

「ふふ・・・こう見えても藤堂だって少しは名前が知られた企業ですもの。お父様にも噂話は入るわよ。
そして何かと私にはお話しになるから・・・偶然知っただけよ。でもチャンスはあるかもしれないわ」

道明寺は確かに今はアメリカを中心に活動しているけど、しばらく司の母親は日本いたからアメリカでの
細かい動きなんて気にしていなかったけど・・・今はどんな情報でも有り難かった。


考え事をしていたら静が横に立って俺の腕に手を絡ませた。
そしてピッタリとくっついてきたから驚いてその顔を見たら・・・唇に指を当てて声を出すなとサインした。

静の後ろにはどこかの国の企業経営者だろうか、若い女性を連れた男性が俺の所に来ようとしていた。
ふと眼を向けたけど静のこの行動でその連中は首を振って向きを変え、俺からは遠ざかった。
今まで気にもしなかったけどこの会場内には俺と同じくらいの女性は結構来ている。

そういう事か・・・よく見たら総二郎やあきらの回りにはすでに何人かの女性がいる。
特にあきらと話す女性にはそれを監視するかのような親の目があるわけだ。


「類はいつもこういうところでは無頓着なんだから・・・!さっきから狙われているのよ?
気がつかなかったの?・・・この前約束したんだから、この私が類をガードしてあげるわね」

「全然気にしてなかったよ。何の興味もないし・・・言われないと見なかったかも」

「困った人!・・・花沢のおじ様達が何をいってるかは知らないけど、良縁があったら類にもすぐこんな
話を持ってくるに決まってるでしょう?つくしちゃんの事ばかり見てないで自分の事も見なさいよ?」

凄く優しい表情のままだけど、しっかりしろと叱られたようなもの・・・。
その後も何人かが近づいたけど俺よりも静の方が演技力を発揮してそれを阻止していった。
その一生懸命なのに思わず笑いが出て・・・一刻も早く立ち去りたいこの会場の隅で何とかやり過ごしていた。


離れた所で違う男といるつくしを見ながら・・・
横にいる静とこれから先の話をしていた。


「いつか・・・あなたも私も、隣に愛する人を置いて暮らしたいわね」
「そうだね・・・静の恋人にも会ってみたいよ。弟としては姉の将来も心配だから・・・」

軽く笑ってシャンパンのグラスを傾ける。


「いつかね・・・素敵な人よ?紹介するわね!」

静はその時だけ恋する女性になっていた。
こんな顔をするつくしを早く見たい・・・あんな悲しそうな笑顔じゃなくて。

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