Sister Complex  (36)
道明寺にキスされたまま・・・この部屋のベッドの上に押さえ込まれて倒されていた。
意外にも優しいキス・・・しばらくして離された唇が震えてしまっていた。

「そんな顔すんな!俺にもプライドはあるんだ・・・そんなセリフを聞いた後に抱くほど飢えちゃいねぇよ・・・」

そう言うと私の上から降りてスーツの上着を脱いでその辺に投げて・・・お酒を飲み始めた。
私はゆっくりと身体を起こして乱れてしまったドレスを直した。ヘッドドレスはもう無理だ・・・
セットしてもらった髪も戻せない。でもこんな部屋でシャワーなんてとても出来ない。
ベッドから降りてドレッサーの前に行き、ヘッドドレスを取り外した。
そんな私を道明寺はグラスに入れたお酒を飲みながら黙って見ていた。


結局・・・朝までこの部屋で道明寺と2人・・・これ以上は何も起きなかった。


朝になってカーテン越しの日の光を浴びながらルームサービスで持ってきてもらったコーヒーを飲む。
見た目には素敵な朝の光景・・・なのに私の頭の中には一つの恐怖しかなかった。


これを類が知ったらどうしよう・・・この部屋にいることはもう知られている。
何もなかったと信じてもらえるんだろうか・・・それとも、このことで嫌われてしまうんだろうか。
もしそうなったら・・・そう思うと涙がこぼれてコーヒーカップにその涙が落ちてしまった。

「そこまで泣くか?俺はなにもしてねぇのに・・・でも、それを類には説明なんてしねぇからな!
今日はもう帰れ・・・車を用意させるから。次にこんな事があったらその時は待たねぇからそう思っとけ」

「・・・誰にも言わないの?昨日の話・・・」

「言えると思うか?・・・婚約者が兄貴を好きだって?でもそのことで類に何かが起きても・・・責任は取れねぇな」

「どういう意味よ・・・類に何かしたら許さないわよ・・・!」

「別に何もする気はない。お前次第だ・・・」


私次第・・・つまりは道明寺の言うことを聞けということ?

ふっと笑った道明寺・・・昨日のキスを思い出して顔が熱くなる。
どうしてあの時の道明寺は優しかったんだろう。私は凄く怒らせたはずなのに・・・。


*******


道明寺がその後シャワーを浴びたいと言ったのでその間に部屋を出た。
なんて声をかけてでたらいいのかわからないんだもの・・・じゃあね、なんて言わないでしょう?
こんな朝から白いドレスで恥ずかしいけど1人でロビーまで降りた。

車を用意していると言ってくれたけど、どこに道明寺の車があるのかさえわからない。
仕方がないからフロントから花沢へ電話して迎えに来てもらおうと思ってそっちに足を向けたときだった。

ロビーの一番端・・・入り口に近い壁際に立っている人・・・私の大切な人がそこにいた。


「類・・・?どうして?」


昨日最上階の部屋から出された類が朝になってもこのホテルにいたなんて!
私もだけど、類もまた昨日と同じタキシードのまま・・・つまりは帰ってないってこと?
類は私を見ている・・・多分私よりも早くに気が付いていたんだろう。

でも類は私の方に寄ってくるわけでもなく、壁にもたれかかってジッと私を見ていた。
同じように私の足もその場から動かない。

一番怖かった・・・今日類と会うことが何よりも怖くてさっきまで震えていたのに!
そして、私がどうやって類に説明したらいいのか・・・考える前に出会ってしまったんだ!

動かない私にとうとう類の方が動いてくれた・・・でも、いつもなら嬉しいはずの類の顔が今日は見られない。
何もなかったって信じてくれる?いや、それよりも朝まで一緒だったことがすでに裏切り行為だよね・・・。


類は疲れた顔で私の目の前まで来た。


「随分ゆっくりだったね・・・待ちくたびれたよ。・・・今までどこにいたの?」

「・・・どこって・・・言いたくない」


「司の部屋?・・・朝まで2人で部屋にいたの?」

類の声はとても悲しそうだった。自分勝手かもしれないけど・・・悲しそうに聞こえた。
自分の乱れた髪を手で直しながら、顔を背けてしまった。

「確かにそうだけど、何もなかったわ。道明寺が急に部屋に閉じ込めただけよ!本当に何もなかったのよ・・・」

「そうなんだ。それにしては俺の顔を見ないんだね」


その言葉にびっくりして類の顔を見てしまった。
寝ないで待っていてくれたのか、心配しすぎたのか顔色も悪くていつもより悲しそうな瞳の色・・・
その顔を見ていたらやっぱり涙が出てしまうじゃない・・・!

「類・・・ごめんなさい!心配かけて・・・怖かったよ・・・!」

「もういいよ。つくしが何もないって言うなら信じるから。どうしても帰ることが出来なかったんだ。
今でもこのホテルの中にいるのかもって思ったらね・・・先に帰ったら怒るだろ?つくし・・・」

そう言って類が差しだしてくれた手に思いっきり飛びついてしまった。
周りの人がびっくりしてるんじゃないかしら・・・こんな姿で2人がロビーで抱き合ってるなんて・・・!


******


つくしは何もなかったと・・・ホテルから帰る途中の車の中でもそう言って泣いていた。
怖かった・・・確かにそう言った。それは司がつくしに何かをしたという事だろうけどあえて聞かなかった。
多少の想像はつくけどそれを考えたくもないから・・・。

ほんの少しだけ俺以外で初めて意識した男だろうから戸惑っているだけ・・・。
それでもこんな事が続いたらつくしの中の感情がだんだん恋になるんじゃないかと・・・それが怖かった。


静に聞いた道明寺の動きをもう一度確かめることと、少しだけ花沢と道明寺に亀裂を作ること・・・
つくしを待っている間に考えていたことを実行するために急いで準備しなくてはならなかった。


つくしの中でこれ以上の変化を起こさせないために。



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