正しい恋の進め方 Lesson 2
私の一言で怒るのかと思ったけど西門さんは飄々としていて緊張感もない。
そのクールな表情はなんなの?眼だけはもの凄く鋭く光ってるみたいだけど・・・茶筅しか持てないとか言わないでよ?
本当に助けてくれる気があるのかしら・・・その気もないのに声だけかけたんならマジでサイテー男だけど!


「助けてもらうのに態度がでかいんだな!そんなんだから振られるんだよっ!」

「はぁ?!ちょっと!なんでそんな事知ってるのよっ!・・・見てたの?」

もしかしてさっきの一部始終を西門さんが見てたって言うの?
山川さんが女の人連れてきて、私の前で頭下げて・・・そして二人が仲良く帰ってそのあと取り残された私を?
私が呆然と立ち竦んでいたところを女連れの西門さんが全部見たって言うの?!・・・冗談じゃないわ!


「バッカだねぇ、お前!すぐに引っ掛かるんだから!」
「えぇっ!ちょっと・・・どっちなのよ!!」

私は現在大男に捕まっていたのにすっかり忘れて西門さんとそんな事を言い争っていた。


「やかましいぞ!お前らっ・・・なに訳わかんないこと言ってんだっ!」

頭にきたその大男は私を突き飛ばして西門さんのほうに向かって殴りかかっていった!
私は突き飛ばされた反動で歩道に倒れ込んでしまった。

「きゃぁあっ!!」
「牧野っ・・・!大丈夫か?」

倒れ込んだときにそう聞こえたけど、危ないのはそっちなのに!
大男はものすごい勢いで西門さんに向かって右手の拳を振り上げて正面から殴りかかった!
それが当たる直前・・・西門さんはひょいっと首だけ動かしてその拳を交わして、逆にその男の脚を祓った。
思いっきり前のめりでコケてしまった男はすぐに立ち上がって今度は西門さんの後ろから殴りかかった。
それも後ろを見ずにまた避けたときに肘でその男の脇腹を刺すように打ち付けた!
反動で西門さんはその男に背中を見せてしまった・・・脇腹を押さえた男はまた後ろから飛びかかろうとしたけど・・・!

その時・・・西門さんは振り向きざまにその長い脚を回したかと思うと大男の顔面を蹴り倒した!

「うそっ・・・!格好いいっ・・・」

顔面をモロに蹴られた男はその場に倒れて動けなくなった。
西門さんが連れていた女性は2人で抱き合ってその光景を喜んでる・・・。

「総二郎~!きゃぁっ!格好いいっ!」
「西門く~ん!もう終わったんでしょ?早く行こうよっ!」

西門さんは彼女たちに笑顔を送ると、そこに倒れていた私のほうに寄ってきた。


「ごめん!きょうはここまでで終わりにするよ。今からはこいつと行くからさ。・・・早くここから移動しな!
もうすぐ警察が来ると思うから面倒だぜ?」

え~ってブツブツ言ってる女性達だけど素直に2人で消えていった。


「立てるか?牧野。俺たちも早く移動しようぜ!立てないなら担いでやろうか?」
「立てるわよ!このくらいなんでもないわ」

西門さんはコケていた私にその綺麗な手を差しだしてくれた。
少し・・・緊張したけどその手を取って立ち上がった。
少し向こう側が騒がしい・・・やっぱりお巡りさんが来たみたいだった。


「牧野・・・走るぞ!来いっ!」
「はっ?・・・ちょ、・・・ちょっと!なんで?」

西門さんに手を握られたまま青になった横断歩道を走って反対側に向かった!


なんだろう・・・この感じ。すごくドキドキしてるんだけど!
西門さんの後ろ姿・・・揺れる黒い髪、繋がれたこの手・・・なんで私の心臓がこんなに?!
って思ってたら横断歩道が終わって西門さんが走るのを急にやめたから思いっきり背中にぶつかった!

「なにすんだよっ!相変わらず目の前しか見てねぇな・・・俺に恨みでもあんのか?!」

「急に止まるからよっ!こっちがびっくりしたわ!」


「・・・早く言えよ!」

「は?・・・なにを?」

よく見たら手を繋いだまま・・・慌てて振りほどいたら西門さんが嫌な顔をした。
いや・・・だって恥ずかしいじゃないの!こんな道路のド真ん中でこんなイケメンと手を繋ぐなんてっ!

「お前・・・俺に言うことあるだろう?・・・社会人の常識だぜ?」

「・・・お礼の強要ね?・・・どうもありがとうございました!」

可愛くねぇなって笑ってる西門さん・・・今になって考えたけどこの人と会うのは3年ぶりかしら?
全然変わってないのね・・・その掴み所がわからないところ。なにを考えてるのか昔から読めなかったわ。
わかりやすい他の3人と比べると・・・この人が一番わかんなくて遠くに感じたっけ。
すごく近くにいたんだけど、心の距離を縮められなかったわね・・・。


「なにを真剣に考えてんだよ!お前、その様子だとメシ食ってないだろ?仕方ないから俺が付き合ってやるよ。
どこか予約してたのか?そこでもいいけど・・・」

「予約はしてたけど・・・もういいわ。時間も過ぎたし!振られた男と行く予定だったお店になんか今更行きたくないわよ・・・
西門さんも無理しなくていいよ。・・・本当にありがとう。助かったわ」

「・・・そっか。じゃあ、俺が選んだ店でいいか?行こうぜ?久しぶりなんだから!」


あれ?・・・いたって普通の見た目の山川さんに振られて今度は超美形の西門さんと一緒にご飯?
この1時間の間に私に何が起こったんだろう・・・。


「ほら!早く行こうぜ!」

「あぁ!はいはい」

手は繋いでないけど、また西門さんの後を走ってついていく。
再び心臓がドキドキし始めて苦しいんだけど・・・微かに香る彼の変わらない香りに酔ってしまいそう!
本当は・・・その手に連れて行ってもらいたいんだけど!


「牧野!和食でもいいか?」
「うわっ!だから急に止まらないでよっ!」

もう一度同じ事をして西門さんの背中に体当たりした!
ぶつかった鼻を押さえていたら・・・すっと差し出されたその手。

「繋いでてやろうか?そうしないとお前何回でも俺に体当たりする気だろ?」
「い・・・いいわよ!子供じゃないんだから。」

どうして素直じゃないんだろう。だから・・・今まで振られてるのに!
それでも西門さんは笑いながら自分から私の手を取ってくれて・・・チョコンと指だけを持って彼の横を歩いていた。


振られてから僅か数分で・・・もう私の中で何かが変わろうとしていたのかもしれない。

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