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plumeria

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京都から帰った翌日の金曜日、今日も御園生の連中が見張る中を出勤した。
そして午前中にはこの出張の間に溜まった仕事を片付け、急ぎの書類に目を通す・・・それは藤本も同じで、無駄話1つしなかった。ランチだって部屋まで運ばせるぐらいで部屋からも出ず、休む時間など作らない。

それは夕方には絢子のところに行くから・・・残業することが出来ないからだ。
その為に必死だったけど、メールを読みながら頭の隅では今夜のことを考えている。
田川の証言をぶつけた後で、絢子は・・・母さんは何を語るのだろう?それが自分の想像する最悪の事でなければいいんだけど・・・と。


その時、ノック音がして藤本が対応に出ると、ドアの外に立っていたのは母さんだった。
それを見て藤本は一礼して出て行き、執務室には2人きり・・・でも俺は母さんに目を向けず、冷静なフリをしてキーを打ち続けた。


「仕事、捗ってる?」
「・・・見たら判るだろ。邪魔しないで・・・3日間留守したからメールが溜まってるんだ」

「そう・・・」
「なに?急ぎの用ならそこで話して」

「・・・プライベートで申し訳ないけど、絢子さんに連絡もしてないの?」
「しなきゃいけない?どうせ仕事帰りには行かなきゃいけないんだろ?」

「そうね・・・予定通り処置したみたいだから言葉ぐらい掛けないとね」
「今夜、母さんも来てくれる?」

「・・・えっ、私が?」


一瞬母さんは驚いた顔をした。

俺がこんな言い方をすることがなかったからだろうけど、本音を言えば俺達と一緒の空間に居るのは苦痛・・・そう感じた。でもこれから話すことは絢子だけでは解決しない。
母さんの証言も必要だし、御園生社長にも同席してもらわないといけない。そっちはまた後で呼び出すとして、ここを出る時には一緒に、そう言うと1度は断わられた。
でも「それなら俺もまた今度にする」なんて言い方をしたら「仕方ないわね・・・」、そう言って同行を承諾した。


「6時には仕事を終わらせる。副社長室に向かうから支度して待ってて」
「・・・判ったわ」

「用件はそれだけ?じゃあもう出て行って、忙しいから」
「はいはい。西門にお礼の電話、入れておいたわよ」

「そう・・・判った」


母さんが出て行ってからすぐに入れ替わりに藤本が戻ってきて、特に詮索することもなく業務開始。

そして俺は御園生社長に電話をした。
当然娘のしている事は承知だろうから、花沢総合医療センターの特別室に7時に来てくれと言えば少々機嫌悪く「判った」と答えた。そしてこの電話を誰にも言わないで欲しいと言えば『絢子にもか?』と。


「えぇ、絢子にも言わないでいただきたいのです。社長おひとりで、秘書もつけず極秘にお越し下さい」
『何故だ?』

「それだけ重要な話があります。もしも誰かにお話になれば、この話は2度とお伝えしません」
『・・・随分な言い方だな。娘に辛い想いをさせておきながら・・・』

「その件も関係しています。宜しいですね?御園生社長」
『ふんっ!こうなってもまだ社長呼びか・・・可愛くない息子だな!』

「申し訳ありませんね、お義父さん」
『・・・ふっ、まぁいい。判った』


こう呼ぶのもこれが最後・・・そう思えばなんて事は無い。
鼻で笑った藤本に「珈琲淹れて」と言えば、黙って美味いヤツを淹れてくれた。「来週もこうやってお仕事出来ますかね?」なんて嫌味を付け加えて。



**



「じゃあ途中だけど先に帰る。藤本、ごめんね」
「いえ、私でも片付けられる仕事しかしませんからお気になさらず。どうぞ無茶はなさいませんように」

「・・・あぁ、出来るだけ静かに話し合うよ」


約束通り6時になったら仕事を終え、鞄とコートを手に持った。
少しだけ残業すると言った藤本を執務室に残してドアを閉め、足は副社長室に向かう。そこでノックをすると静かにドアが開き、コートを羽織って帰る支度を済ませた母さんが出て来た。
既に秘書も秘書室に戻していてこの人1人・・・随分険しい顔のまま部屋に鍵を掛けた。


「副社長、専務、本日もお疲れ様でした」

役員フロアの受付にそう言われても母さんは返事もしない。
「お先に」と俺が言えば、その子は不思議そうに一礼して、俺達はエレベーターに乗り込んだ。



「・・・どうして私もなの?こんなの夫婦で話し合えばいいじゃない。姑が居たら嫌がるでしょ」
「そう?俺よりもよく話し合ってるんじゃないの?」

「嫌な子・・・それは花沢家の為だからよ」
「家の前に息子としての俺の事は?」

「・・・子供を持つのはあなたにとっても幸せだと思うわ。これは副社長としてじゃなく母親としての言葉よ」
「その子のことを考えた?」

「・・・え?」
「もしも妊娠して子供が産まれても、父親と母親は愛し合ってないんだよ?何のためにこの世に生まれてきたかを考える歳になったらどう教える?親のエゴで計画的、人工的に生を与えられた・・・そんな事を言える?
愛情があったかどうかは別として、俺も子供の時には寂しい想いばかりだった。孫に同じ想いをさせたかった?」


この問いには答えない・・・俯いてるから表情は見えなかったけど、その唇が歪んでるのは判った。

エレベーターが1階に着くと、もう副社長の顔に戻って颯爽とロビーを歩いてる。その後ろを付いて歩き、エントランスを出て駐車場に向かったら俺の車で医療センターに向かった。



**


病院に着いたのは渋滞のせいもあって6時45分。
すぐに専用口から特別室に向かうと、機嫌の良い絢子が出迎えた。
しっかり化粧もして、病衣ではなくまるでドレスのような服にガウンを羽織り、母さんまで来たことにも驚いてはいたが余裕の表情・・・これから話す内容で、この顔がどれだけ変わるのかを想像したら恐ろしいぐらいだ。


「絢子さん、寝てなくて大丈夫なの?」
「えぇ、平気ですわ。受精卵が着床するまで動かない方が良いと言う方もいますけど、データによると胚移植後の安静の効果は否定されてるんですって。つまり無理をしなければ通常通りでいいって事ですわね」

「そう?でも気をつけてね」
「えぇ、着床判定は来週だそうですから楽しみですわ。類様もお疲れ様でした。京都は寒かったでしょう?」

「・・・まぁね」


時計を見れば6時55分・・・そろそろ来るだろうと思っていたら、看護師がドアをノックした。


「失礼致します、花沢様。お客様がお見えですけどどうしましょう?」

「・・・お客様?」
「誰なの?こんな時間にわざわざここに?」

「はい。御園生様と仰るご年配の男性ですけど?」


これでメンバーが揃った。
驚く絢子と母さんの前にやって来たのは御園生社長・・・そして彼も母さんを見て驚いていた。





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