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plumeria

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「御園生様と仰るご年配の男性ですけど?」、看護師のその声でビクッとしたのは母さんだった。
絢子は不思議そうな顔をしただけで、急いで入り口まで父親を迎えに出た。そして看護師がドアを全開すると、そこに立っていたのはスーツ姿の御園生社長。

絢子と俺だけと思っていたんだろうから、母さんまで来ていたことで少し驚いた目を見せたけど、それはすぐに愛想笑いに変わった。


「おやおや、これは・・・花沢副社長までおいででしたか」
「・・・こんばんは。御園生さん。類、社長もお呼びだったの?」

「まぁね・・・お義父さん、忙しいのに来ていただいてありがとうございます」
「お父様、わざわざお見舞いありがとうございます。来週には結果が判りますのよ?」

「可愛い娘の身体のことだ、構わないよ。まぁこれが普通の妊娠だったらもっと嬉しいのだがねぇ」
「・・・申し訳ありません、類が不甲斐なくて」


絢子に体外受精をさせたことで立場が逆転したかのように見える2人だ。
御園生社長は俺を許すことで優越感に浸ってるみたいだし、母さんはその真逆・・・悔しそうに頭を下げて今回の事を詫びていた。

それも数分したら変わるだろう・・・と、母さんの詫びに同調するつもりはなかった。

俺はこの3人を特別室の中央にある応接用のソファーに座るよう促した。
ここでも座るのは俺と母さんが並んで対面に絢子と御園生社長。これには絢子が不満そうな表情を見せたが、無視して本題に入る事にした。


「・・・・・・今日ここに来ていただいた理由ですが」

そこで1回言葉を止めた。
躊躇ったのは隣に居る母さんの事・・・でも、今も1人で淋しくしてる牧野の顔を思い浮かべることで不安を勇気に変えた。


「なんなの?類。忙しいと判っているなら早く話しなさい、ご迷惑よ」
「・・・あぁ、ごめん。集まっていただいた理由ですが・・・絢子との離婚を考えています」

「・・・・・・類様?!」
「何だと!」


驚いて立ち上がった御園生社長の隣で愕然とする絢子。
目を見開き俺を睨みつけ、母さんもそれは同じ。今回の処置をした直後の事だから尚更訳が判らないだろう。
絢子が自分のガウンを握り締める手を見ても怒りが伝わる・・・そしてワナワナと唇を震わせ、何かを言おうとしたから自分から先に牧野との事を話した。


「実は俺には何年も前から愛している人がいて、その人と昨年の秋に再会しました。お互いに既婚者でしたが彼女の家庭にも愛情はなかった、それを聞いてお互いの気持ちを打ち明けました。
不貞行為であると承知の上で、その後何度か彼女と会っています。そして先日、彼女は離婚が成立しました」

「類!あなた、何と言うことを!嘘よね・・・嘘なんでしょ?!」
「類様、その話をするために来たのですか?!あんまりだわ!」
「どういう事だね、花沢さん!これは大問題ですぞ!」

「嘘じゃない。そして絢子はもう知ってる・・・だから体外受精を迫ったんだ」

「そんな!まだ結婚して半年なのよ?!」
「裏切ったのは類様だわ、私は何度も愛してるって伝えてるのに!」
「虫が良すぎる!浮気したから離婚だと?馬鹿馬鹿しい!」


母さんに御園生社長までもが俺を罵り、怒りを爆発させた。
それを聞いても焦ることなく落ち着いた俺を、なによりも恐怖に感じたのは絢子かもしれない。親たちが興奮しまくってる中で、「何をお調べになったの?」と聞いてきた。

その言葉で2人も急に静かになり、お互いの目を見合わせた。
それもそのはず・・・調べられて困るのはこの人達だから。この後自分のスマホをポケットから出してテーブルに置き、田川の証言を再生する前に3年前の事を尋ねた。


「何故俺が離婚の話を切り出したかの前にあなた達に聞きたい事がある。
3年前の8月・・・何故絢子と御園生社長は花沢に来たんですか?その後に銀座にまで出向いて何を相談しました?」

「・・・え?」
「・・・・・・・・・!」
「3年前の8月・・・し、知らんな!」


3人同時に顔色を変えた。
その中でも1番吃驚していたのは母さんだった。俺から遠離るように身体を捻り、青褪めた表情に真っ赤なルージュがアンバランスに見える程・・・今から追求しなくてはいけないと思うと心が締め付けられた。


「母さん・・・その話を俺にしなかったのは何故?」

「・・・忘れてただけよ。いちいち初対面の時の事なんて覚えてないわ」

「この2人が来たことは認めるんだね?じゃあ絢子、母さんと出会ったのは御園生の仕事を手伝うようになってからだと嘘をついたのは何故?」

「・・・それは・・・」
「それは絢子じゃない!儂の秘書が同行したんだ!」

「御園生社長の秘書は男性ですよね?それに母は認めていますよ?しかも受付が学生のような若いお嬢さんだったと覚えてましたけど、そんな若い女性の秘書がいらっしゃるのですか?」

「い、居てもおかしくはなかろうが!」
「・・・まぁ、いいでしょう。では、それよりも前の話をしましょうか。絢子・・・君は永林の同級生、田川浩介を覚えてるね?」

「・・・・・・・・・どうしてそれを・・・」


次々に出てくるワードに3人共が別々の反応を見せる。
絢子は小さく震えながら「どうして」と言うのが精一杯だった。
勿論御園生社長もこの名前には聞き覚えがあるから俺から視線を外し、母さんも真っ青・・・これには俺の方が母親を真面に見られなかったから、目の前の絢子に集中した。


「君が俺に執着する理由・・・その原因が判らなくてずっと調べていた。そうしたらあきら達が君と出会ったのが高校時代だと思い出し、初めは初恋の延長かと思ったけどいきなり婚約を前提に話を持って来られたことで考えが変わった。
君の想いもあったんだろうけど、結局御園生と花沢を結び付けたい為だと思ったから両社が取引を始めた頃に遡って関係性を探ったんだ」


この後、数々の出来事を調べていくうちに子会社であるH&Kケミカルの社長交代、その代表者の家族に永林に通う田川浩介と言う絢子の同級生を見つけたと説明した。
この不思議な結びつきに違和感を覚えて調べを進めると、田川浩介と絢子の情報を得た・・・そう言うと唇を噛んで眉根を寄せた。
そしてこの亡くなった前社長が花沢の副社長室に駆け込んだのが8月30日、しかもこれは記録さえ残されていない。
・・・そこまで話すと御園生社長は腕組みをしたまま目を閉じた。


「巧みに隠蔽しようとしてるけど、なかなか全部を消すことは出来ない。
8月30日の事は社内でも覚えてる人が居て、俺の秘書が聞いている・・・でも記録は残されていない。社内規定を揉消せるのは限られた役員の脅ししかない・・・そうだよね?母さん」

「脅しなんて人聞きが悪いわ。私はそんな人、知りません!」

「知らないわけないだろ?うちのGROUP企業の代表者だ」
「知らない!こんな話なら聞かないわ、馬鹿馬鹿しい!」


感情的になったら負け・・・いつもそう言って冷静だった母さんが取り乱して席を立った。
そしてコートと鞄を手に抱え、この部屋から出ようとするのを腕を掴んで引き止めた!


「一生そうやって真実から目を逸らすの?
何処かで間違えたのならやり直す勇気を持てばいいだけのことだ。母さん・・・あなたはそんなに弱い人じゃないだろ?」

「生意気言わないで!」
「俺はいつまでも子供じゃない。もしも今から明らかになる事柄で花沢が揺らぐというなら俺が立て直す・・・だから全部話してほしいんだ」

「・・・・・・類・・・」


そう・・・一から出直せと言われても、隣に牧野が居れば俺は頑張れる。
真実が明らかになれば、そこから先に恐怖はない。


それが生涯唯一のパートナーだと信じてるから・・・。




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