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plumeria

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鞄とコートをすぐ近くの椅子に置き、また母さんはソファーに戻って来た。
そこで片手を額に当てて俯き、俺からは遠離ってる・・・その状態で話を進めることにした。
絢子も恐ろしい目つきのままだし、御園生社長も腕組みの姿勢を崩さない。誰も喋ろうとしないからボイスレコーダーで録音した音声を流すことにした。

その操作中も3人は黙ったまま・・・何度も唇を震わせる絢子は真っ青だった。


『・・・永林のサマーキャンプ、あんた、そこで絢子に何をした?別に聞いたからってあんたをどうにかするつもりはない。真実を知りたいだけなんだけど』
『痛い目に遭わせるつもりもねぇけど、言わないなら仕方ねぇ・・・腕がいいか、足がいいか・・・それとも目か?』

『煩ぇ、やめろ!!それより、俺が御園生に何かしたって証拠があるのかよ!』

『証拠はない。でもあんたの親父さんが亡くなったのも彼女に関係してるんじゃないのか?』

『親父の・・・どうしてだ?』

「いや!やめて!!」


急に大声を出した絢子はソファーから立ち上がって、今まで見たことがないぐらいの素早さでボイスレコーダーを奪おうとした。でもすぐにそれを阻止して俺が掴むと、テーブルを飛び越えようとするぐらいの勢いだった。
流石にそれには驚いて御園生社長が絢子を止めてソファーに座らせたが興奮は収まらない。荒い息のまま「やめて!」と言うが、俺は首を横に振った。

母さんも御園生社長も俺が田川と接触したとは思わなかっただろうから驚きは半端なかった。


「これは今回の京都出張を利用して名古屋にいる田川に会いに行った時のものだ。同行したのは総二郎・・・あきらも総二郎もこの件で協力してもらってる。
この後の音声を聞きたくないというのなら自分の口で説明する?」
「・・・・・・だからあっさり私の入院を認めたんですか?」

「このチャンスを逃したくなかったからね」
「・・・おかしいと思いましたわ、随分素直に同意してくれたから」


父親が支えていた腕を自ら退かし、今度は悔しそうに目を閉じてソファーの背凭れに身を沈めた。そんな態度は出会ってからはじめて見るが、この方が素直に感じて不思議だった。
今まで人形のように感情を殺し、創られた世界の中で生きてるように感じていたから。


「もしかして西門に依頼したのはこのため?」
「そう・・・1日目の夜に俺が体調不良ってことにして総二郎にオクレール氏の接待を頼んだ。
でもその日の夜には会えなかったから2日目に2人で名古屋に乗り込んだんだ。オクレール氏は総二郎が態と長時間の茶会をしてダウンするように仕向けたってこと」

「・・・信じられないわ、類がそんな行動をするなんて。じゃあ藤本も共犯なのね?」
「藤本には何も話してない。でもこれが花沢物産のためだと言えば協力してくれただけ・・・共犯なんて言わないでくれる?」


母さんは俺が与えられた事以外で動くとは思っていなかっただろうし、自分を騙すような行動をとる勇気はないと信じてただろう。
確かに今まではそうだったかもしれない・・・守るべきものに手が届かなかったから。
チラッと横目で母さんを見ると、この人は少しだけ笑ってるようにも見えた。

その後、絢子への質問へと話を戻した。


「先に教えるけど田川は全部喋ってる。御園生社長、これが彼の口座に入金されている月額100万円の報酬を証明するものです。迂闊ですね、社名で振り込むなんて」

「・・・・・・!!」
「類、どういう事なの?」


ここは母さんの知らない部分・・・そうだろうとは思っていた。
母さんはTホテルであの事件が起きるまでのことは何も知らない。
絢子に自分の口で話すように言ったけど、それには応じない・・・だから極簡単にサマーキャンプで起きた事から伝えた。そうしたら社長が慌てて絢子の肩を掴んで「本当か!」と。
それに絢子は目を合わせず頷いた。


「田川は君が誘ったと言った・・・それは何故?」
「・・・あの人の父親の会社が花沢の系列だって聞いたからよ。もしかしてその会社に入れば花沢物産に出入りする事が可能かって・・・初めはそれだけを確認するつもりで、それを友達の前で聞けなかっただけよ」

「だから誰もいない場所に?危険だと思わなかった?」
「私はその頃人見知りで、学校でも大人しい方だったし田川の趣味じゃないって思っていたから怖くなかったわ。それよりも花沢と近付く方法ばかり考えていたもの。どうにかして類様に会いたかったから」

「でもあいつは君を襲って意識を失わせた・・・そこまでだよね?」
「・・・・・・あの時・・・」


絢子が話したのは田川の説明とほぼ一致していた。
襲わないと思って居たのに急に覆い被さってきて、驚いた彼女は草むらの中に逃げてそこで転倒。運が良かったのか悪かったのか、転けたところにあった岩に頭をぶつけて瞬間意識を失った。
目が覚めた時には回りに誰もいなくて、勿論田川の姿もない。ただ自分の衣服が少しだけ乱れていたけど身体に違和感はなかった。

ぶつけた頭が痛かっただけで、「何もされてない」とは確信した。
でも汚れた姿を誰にも見せる訳にはいかず、こっそり施設に戻ったら担任に具合が悪いと言って帰宅。その後、気分が優れない日が続き、結局学校に行く事が出来ずに3ヶ月が過ぎたのだと。


「そのわりには登校する前に田川を訪ねてるよね?それは何故?」
「・・・聞いたんじゃないんですか?」

「聞いたけど納得出来ない事がある。君は襲われてもないのに何故田川を告訴しようとした?その証拠、偽物だった訳?」
「・・・くすっ、あれは本物だけど、相手が違うんです」

「相手が違う・・・どう言うこと?」
「もう隠し事しても無駄ってことよね・・・いいわ、教えてあげます」


絢子が田川に見せた証拠・・・それは被害者、つまり病院で検査をしたのが絢子だという事になっていたが、実際は別の女性だと言った。
夏休みが終わってからすぐに田川が好きそうな女性を金で雇い、田川が入り浸っていた店で会わせ、そのまま意気投合してホテルで関係を持つのがバイト。そして翌日に病院に行き、田川の体液をその女性から採取してデータに残した。
その病院は御園生の主治医で、半ば強引にその書類を作らせたと言った。

作らなければ病院を潰すことぐらい簡単だ、そう言えば絢子の言う事に逆らえなかったんだろう。


「だから自信あったんだ?」
「だって田川のものですもの、事件化したら調べるでしょう?一致するに決まってます」

「・・・なるほどね。そのためにわざわざ自分も痩せたってこと?」
「痩せたわけじゃありませんわ。窶れた雰囲気を出しただけで、回りが色々想像するからそう見えただけでしょ?休学したのはホントにそんな気分にならなかっただけです」

「絢子、本当にそんな事をしたのか!」
「お父様に言わなかったのは大騒ぎするからですわ。私は田川を利用できたらいいと思っただけですもの」


次に考えた田川の利用方法は母さんを罠に嵌めること。
それを聞くのは辛いけど避けては通れない。だから今度はその話に切り替わったけど、絢子に自分で話すかと聞けば顔を背ける・・・だから俺の口から説明する事になった。

田川に要求したのはH&Kケミカルへの入社で、自分から連絡するまで辞めずに働けと言うもの。そして1年後に再会して依頼したのは・・・


「え?私の事を探れって・・・絢子さんが命令したの?」
「・・・だから田川は花沢物産の回りを彷徨いて母さんに関する情報を集めていた。弱みでもスキャンダルでもいい、母さんを呼び出せるきっかけになるものを探せと命じた。さっきの証拠はその脅しのために利用したんだ。
そして母さんがロビーで漏らしてしまったアメリカのテイラー社の女性社長の名前を使って呼び出した・・・そうだね?」

「・・・えぇ」


ここでまた驚いたのが母さんと御園生社長だった。
つまりあのTホテル以前の事をこの2人は知らない。そして田川はTホテル以降の事を知らない。

全部を知ってるのは絢子だけ・・・これだけの人間を1人で動かしたと言う事だ。






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