花沢専務の悩み事・ミルキーウェイに願いを込めて

花沢物産には屋上に都市緑化計画への取り組みとして緑地庭園があり、毎年七夕の日には社長の計らいで笹が置かれている。
これは社員に願い事を書いてもらいストレス満載の現代社会で少しでも夢を持ってもらおうという社長の思いから
始まったことで、毎年この日には女子社員を中心に短冊が飾られていた。

ほとんどが恋人募集の公告か、給料アップの切実な願い・・・それでも年々増加中の短冊であった。

本日七夕の7月7日・・・牧野つくしはその社長命令で出張していた。
跡取り息子で婚約者の花沢類氏の許可もなく・・・当然専務は大激怒!とばっちりはこれまた当然だが第一秘書藤本に向かった。


*******


「藤本・・・何で父さんの命令で専務秘書が動くわけ?腐るほどいるじゃない?社長秘書が!
どうしてこんな事になったのさ!誰が許可したの?・・・いくんなら藤本が行けば良かったのに!」

「専務・・・出張といっても夕方には戻ってきますから・・・それに社長命令ですからいちいち専務には許可とらない
でしょう?・・・どっちが上かなんて言わなくてもわかるじゃないですか」

「・・・そうかもしれないけど、ホイホイ言うこと聞かなくてもいいんじゃないの?これだけ機嫌を悪くしたら
俺がどうなるか・・・わかってるよね?サインとかすると思う?もう絶対に指が動かない!」

「・・・無茶苦茶子供じゃないですか!専務がサインしなくてもいいですけど、私は書類を回していきますからねっ!
溜まっていって帰られないのは専務ですよ?いいんですか?・・・今日は七夕でしょ?牧野さんが帰ってきたら
星でも見にいけばいいじゃないですか?死ぬほどお願い事を聞いてもらったらどうです?」


なんだって?・・・七夕?
そう言えばそうだっけ?お願い事の日?・・・藤本の言葉に何となく気分が浮上してきた。
牧野は夕方には帰ってくるし・・・星は夜しか見えないし。夜と言えば・・・。

専務の椅子でクルクル回りながら、今晩の予定を組立て直していた。

「専務・・・そんなに回ってなくていいですから!見てる方が気分悪いんですけど・・・!
ご機嫌が直ったらこの上の方から順番にサインしといてくださいよ?わかりましたか?!」

「わかってるよ!・・・すればいいんでしょ!」

椅子を止めて机に向かった・・・おえ・・・!やっぱり回りすぎた。・・・気分が悪い。


******


昼になっても牧野がいないんじゃ食事に行く気分にもならない。
藤本のコーヒーも飲みたくないし・・・何となく社内のカフェにでも行こうかと廊下を歩いていた。
そして途中の廊下ですれ違う女子社員の話が聞こえた。

「ねぇ・・・今年も屋上に飾りに行く?さっき総務課の人が短冊持ってきたわよ?」

「そうね・・・子供っぽいけどこういうのも楽しいものね!それにさ、他の人の願い事って面白いわよ!」

「そう言えばさっき、茶道部の西門先生も書いていらっしゃったわ。受付の一条さんと屋上に行かれたもの。
2人で楽しそうに短冊持ってたわ。さすがねぇ、一条さん、ミス花沢だけのことはあるわ!」

なんだって?・・・総二郎が来てるの?・・・顧問の俺が知らないのに。
それに今日は茶道部なんてないのに!もしかしたら牧野目当て?またお持ち帰りしようと思ってんの?
俺は急に行き先変更して屋上に上がった!専務室から屋上はすぐだから非常用階段を使えば3分もかからない!

屋上に上がると・・・毎年のごとく何故かここは縁日のようになっている。
父さんの趣味だかなんだかわかんないけど笹の他にもやたらベンチやかき氷屋とかアイスクリームやら・・・。
仕事中なんじゃないの?・・・俺が言うのも変だけど、この会社大丈夫なんだろうね?

そして中心にドンッと飾られた笹の前で、着物姿の総二郎がミス花沢と楽しそうに短冊をつけている最中だった。
なんなの?・・・妙に色気2倍増し・・・いや、3倍増し?
隣のミス花沢、受付嬢の一条さんも制服のボタンが一つ余分に空いてない?
総二郎の立ち位置からしたら絶妙な角度・・・絶対に見てるよね?・・・総二郎のことだから透視してるかもしれない。


「総二郎・・・何してんの?今日、茶道部の日じゃないよね?」

「よっ!類・・・何で怖い顔してんの?・・・俺はこの前の茶道部初日に牧野と帰ることばっか考えて忘れ物してさ!
それをやっと取りに来たんだ。そうしたらこの前の美人が受け付けにいたから話してたらこの屋上のこと聞いたんだ。
ここは楽しい行事があるんだな!・・・俺の願い事、見るか?」

「誰が総二郎の願い事なんて見るのさ!好きなこと書いてぶら下げとけばいいだろっ!総二郎の書く事なんて
見え見えだよっ!隣の美人のことでも書いてるんだろ?・・・書き終わったらとっとと帰ったら?」

総二郎は苦笑いしながら一条さんと腕を組んで帰って行った。
なんなんだっ!意外と暇なんじゃないの?

「類・・・そう言えば、牧野が帰るの遅くなるらしいぞ?類に伝えといてって言われたのすっかり忘れてたよ」

「は?・・・何で総二郎にそんな伝言があるのさ!」

「あいつ、親父さんの頼み事で外出してんだろ?今日、忘れ物取りに行くって電話したら自分がいないから
勝手に入って取ってもいいって言われてさ!その時に時間がかかってるから遅くなるって伝言されたんだ!
思い出して良かったよ。ほら・・・こんな美人といると他のこと忘れるだろ?」

「あら・・・西門先生ったら!恥ずかしいわ!」


今日のお持ち帰りは一条さんで決まり・・・絶対に早退願いだな。


総二郎がいなくなってから何となく振り向いて、短冊がかかった笹を見上げた。
牧野がいない・・・なんでそんな事でこんなにも落ち込むんだろ。
ド派手な笹を見てると帰って気分が暗くなる・・・去年は牧野とこの笹に願い事を飾ったよね。


そんな事を考えてたら藤本が呼びに来た。

「専務っ、お昼は済みましたか?お仕事が溜まってますから早くしないと今日が終わりませんよ!」
「まだ食べてないよ・・・1人だから食べたくなくて」

「じゃあ、藤本が一緒に食べてあげますから・・・早くして下さいよっ!」
「・・・・・・」

なんで七夕の日に俺が藤本と一緒に食事するのさっ!
何て言いながら結局専務室で藤本にお茶を入れてもらって社員食堂から運んでもらった弁当を食べた。


******


「藤本・・・牧野遅くない?もう就業時間も過ぎてるしもう少ししたら暗くなるじゃん!」

「牧野さんならもう帰ってきて社長と一緒にいますよ?」

「えっ!なんで俺のところじゃなくて父さんのところに戻るのさ!いくら未来の義父でもそれはないんじゃないの?
どうして言わなかったのさ!」

「話したら専務がそこで仕事を辞めるからですよ。全部サインしていただいたんなら終わってもいいですよ?
後は藤本が片付けておきますから・・・まだ社長と屋上かもしれませんねぇ・・・」

「屋上っ?!・・・あんな暗いところで?・・・とんでもないじゃん!何するかわかったもんじゃないよっ!
もう全部サインしたから後はよろしくっ!」


ホントはあと50枚くらいサインが残ってたけど、藤本も俺のサインが上手だから・・・ま、いいかっ!
再び非常用階段を駆け上がって屋上に行った。


そこにはもう誰もいなくて話し声もしない。
あれ?・・・父さんと牧野は?

暗い中を笹の方へ向かったら・・・その笹に牧野が1人で短冊をつけていた。


「牧野?・・・1人なの?」

「あら!類・・・今日はごめんね。急に外出しちゃって・・・ちゃんとお仕事したの?お父様ならもうお帰りになったわ」

「もちろんしたよ。牧野は・・・何してるの?今年の短冊つけてたの?」

ふふって笑いながら笹から手を離して俺の隣に立った。
凄く嬉しそうに・・・その顔を見てたら今日の事なんてどうでも良くなって牧野を抱き締めた。


「父さんの依頼事って何だったの?・・・俺には何も言わなかったけど」

「お父様の?・・・ふふっ。それはね、お母様へ送る指輪を取りに行ったのよ。凄く綺麗なブルーダイヤの指輪・・・
それをフランスへ贈る手続きをしてたの。思ったより時間がかかってね」

「そんなの!牧野にさせなくてもいいじゃない?・・・それだけ?」

「それとね・・・そのお店に行ったら、私にも用意して下さってて・・・サイズ直ししていただいたの」

牧野の指にはピンクダイヤの指輪・・・父さんが牧野に七夕の贈り物?
そんな話聞いたこともないけど?ちょっとムカつく・・・俺がしてないのになんで父さんがするんだよっ!

「そしてね・・・類にもあるんだよ?ほら・・・このダイヤと同じピンクダイヤが入った腕時計・・・
これもいただいたの。お父様が類には自分から渡すのが恥ずかしいからって!可愛らしわね。お父様!」

牧野から渡されたのは箱に入れられた腕時計・・・確かに文字盤に埋め込まれているのはピンクダイヤ・・・。
七夕って・・・もともと贈り物する日じゃないよね?
でも、母さんに会えないから贈りたかったのかも・・・俺たちのはついでって事かな?

父さんの行動に笑ってしまう。
そしたら牧野が俺の手を引っ張って笹の前に連れて行った。

「ここ見た?・・・これって西門さんの字じゃない?達筆だし!見つけたとき笑っちゃったわ!」

どこ?・・・って牧野が指さした短冊を見たら・・・


『2人が幸せになりますように』


明らかに総二郎の字・・・あいつ、一条さんといたくせに!
思わず親友の字に苦笑いして・・・でもほんの少し感謝した。

そして牧野の願い事は

『類がいつも笑っていられますように』


だから俺はその隣に書き足した。


『類が「牧野と」いつも笑っていられますように』


今日は七夕・・・
一日も会わない日はないんだけど・・・それでも一緒に星を眺めて同じ願い事をした。
なんて幸せな一日の終わりなんだろうね!満天の星の下で牧野とキスしてた・・・藤本がいるなんて知らずに。


******


専務・・・いちゃいちゃするのはいいんですけどよく見ましたか?
西門先生の短冊・・・実は裏面があるんですよ?そこに何が書かれてるか見てませんね?

『次のお持ち帰りも牧野がいいな』・・・って書いてあるんですよ?もの凄い達筆でっ!

そして見つけてはいただけませんでしたが藤本も書いてます。
えぇ・・・見えても無視するんでしょうけどね!だって西門先生の真横につけてるんですもん。



『花沢専務の悩み事が少しでも減りますように』

そしたらこのシリーズは終わりますけどね!

yjimageGUM70372.jpg
毎年七夕って雨のような気がします・・・。
今年は特に・・・私の所は「大雨警報」出てますし。
天の川なんて何年も見てないような気がします。

皆さんのところは見えるのかしら?
私今年も無理みたいなので・・・専務達に見ていただきました!

そう言えば知り合いの遠距離恋愛の人が今月結婚したなぁ。

6 Comments

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/07/07 (Fri) 13:18 | EDIT | REPLY |   

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/07/07 (Fri) 14:07 | EDIT | REPLY |   

plumeria  

Re: こんにちは

えみりん様、こんにちは‼

そうなんです~❗
今回はほっこりさせました!たまにはね。

椅子のくるくる…
うちの娘が小さいときに病院の椅子に座ったらくるくる回って遊ぶのでよく怒られました。
一度、39℃の熱でもそれをやって椅子から落ちて頭を打ちまして、大変なことになりましたよ。

雨はまだ降っております。

帰り道が崩れてたらどうしよう。

えみりん様も気をつけてくださいませ!

2017/07/07 (Fri) 16:39 | EDIT | REPLY |   

plumeria  

Re: タイトルなし

みわちゃん様、こんにちは🎵

七夕って総二郎のイメージでしたけど、いまは連載のほうがコメディなので専務にしました!

ちょっとラブ❤度を上げて可愛くしてみました!

私の所はまだ雨ですよ。
警報が出たり消えたりしてます。
土砂崩れが心配です。毎年水害があります…。

2017/07/07 (Fri) 16:54 | EDIT | REPLY |   

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/07/10 (Mon) 11:56 | EDIT | REPLY |   

plumeria  

Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは🎵

七夕なので可愛くしてみましたよ。
ほんとは総二郎の若宗匠で書きたかったんですが、連載のほうがあまりにもコメディなので専務にしました。
専務が最近少ないから寂しいんですよ。

仕事が忙しいからなかなか。
そういいながらやたら書いてるけど。

総二郎が、やっぱりいいでしょ?
ウフフ🎵( *´艸`)お持ち帰り❤だなんて!

私もお持ち帰りされたいわ!

今日も沢山ありがとうございます🎵

2017/07/10 (Mon) 16:55 | EDIT | REPLY |   

Leave a comment