素直になれなくて・8
「何奴の仕業か知らねぇが、折角のバレンタインディナーだ。楽しまなきゃ損・・・だよな?」
西門さんがそう言ってアペリティフのグラスを持った。
そして私も同じように・・・でも、言ってる意味が判らなくてキョトンとしたまま。
すぐに持って来られたアミューズの後のオードブル、それを「食おうぜ」なんて言いながらこの状況を説明してくれた。
「えっ?これって・・・態と?!」
「じゃねぇのか?因みに俺にはお袋が『牧野さん、お客さんにモテるから、近々お嫁入りが決まるかも。ご指名の男性が居るからバレンタインはその人かもね~』、って言ったぞ?」
「嘘だよ!森山さんから言われたのはあの日が初めてだよ?それにお店の奥さんが『美咲様なら確かもうすぐ良いお話があるらしいわ。家元夫人が美咲様に似合う着物ってどんなのかしら~』って言ったもん!」
「あいつが誰と良い話になるかは知らねぇけど相手は俺じゃねぇな。着物は単に祝いじゃね?」
マジで?って2人で話してたら馬鹿馬鹿しくなって、そのうちお料理に夢中になった。
うん、彼の言う通り折角のディナーだもの、楽しまなきゃ損だ!クラシックコンサートで爆睡した分頭が冴えてるし、西門さんは「もう、いいか!」なんて言ってお酒を飲み始めた。
聞けば美咲さんとは気が乗らなかったから、早く帰るために車で来たって・・・それヤバいんじゃないの?って言えばニヤリ・・・
その笑顔にちょっとドキッとした。
「それにしてもお前、そんな鞄持ってた?」
「あぁ、これは美作さんからの贈り物」
「・・・あきらから?もしかしてそのドレスは・・・」
「これは道明寺から。そしてコートは花沢類から・・・・・・だって送ってくるんだもん、強請ったわけじゃないわよ?!」
「・・・・・・ふぅ~~ん」
「い・・・1番身近に居る人は何もくれないもん!」
この時にもニヤリ・・・・・・やだっ、またゾクゾクするんだけど///!!
この後に出て来たオマール海老と鮑の鉄板焼きに黒毛和牛のサーロインステーキ♡それにローストオニオンスープにその他諸々・・・可愛いお皿に豪華な飾り付け、しかもすっごく美味しくて手が止まらない!
西門さんも「落ち着いて食え!」って言うけど、落ち着けるわけないじゃん?
だから口を動かすことで必死に誤魔化してた。
「本日はバレンタインですから当店からのプレゼントでございます」
そう言って最後に出されたのは生クリームの小さなホールケーキ・・・しかもピンク色のクリームで薔薇の花が作られてて、それが1番上にドーン!と乗っかってた。
その回りにもピンク色のクリームでハートが描かれてて超ラブリー・・・どう見ても私の抹茶ロールケーキは見劣りする。
・・・って言うか、目の前には抹茶をこよなく愛する茶人だし?
それを入れた袋をチラっと見ると、西門さんはすぐに気がついたらしい。
テーブルの上と袋の中を交互に覗き込む私に「何隠してるんだ?」って声を掛けて来た!
「あっ!いや、別に・・・」
「まさか森山に?」
「・・・・・・そうだけど、だって、こんな日だし、義理でも、一応は・・・・・・ねぇ?」
「見せてみ?」
「えっ、なんで?!嫌だよ!」
「義理なんだろ?いいじゃん、見せてみ?」
「西門さん、食べないじゃん!抹茶のケーキなんて・・・・・・あ・・・」
「・・・お前、抹茶をケーキにしたのか?」
ほらぁ!!もう怒ってるじゃん!
せっかく楽しく食べてたのに~~~~っ!
それでも出せって言うから仕方無く・・・こんなレストランで自分の作ったケーキなんて出していいの?って思ったけど、何度も催促するからヤケクソで袋から出した。
そして凄く綺麗なケーキの横に置いて、自分でラッピングした箱を開けたら・・・イチゴでハート作ってる抹茶のロールケーキが姿を現した。
「なんでハート模様?」
「それは・・・たまたま切り口のイチゴがそうだっただけだよ」
「実に分かり易くカットされてるみたいだけど?」
「気のせいだよ、気のせい」
「これを森山に渡すつもりだったのか?」
「・・・チョコじゃないからいいじゃん!もういいでしょ、持って帰るから!」
「阿呆、俺が食う!」
「・・・えっ?」
甘いものなんて食べない人で、
抹茶をお菓子に混ぜたら怒る人で、
バレンタインの贈り物なんて絶対に受け取らないくせに・・・そんな西門さんが私の作ったケーキを目の前で食べてる。しかも見事に全部・・・その間、私は全然ケーキが食べられなくて唖然としてた。
「食わねぇのか?」って言われて、慌ててめっちゃ綺麗な薔薇のケーキにフォークを入れたけど、何故だか味が判んない。
そのぐらいカラになった箱の中身に驚いてた。
その間彼はスマホで何かを操作中・・・でもそれは数秒間ですぐに終わり、珈琲カップに手を伸ばしてた。
「・・・美味しかった?」
「ケーキとしては美味いんだろうが、抹茶は許せねぇな」
「だから食べなかったら良かったのに・・・」
「そのピンク色のケーキよりはマシだと思っただけだ」
「うわ・・・なに、その言い方!頑張って作ったんだよ?!」
「・・・いいから食い終わったんなら行くぞ!」
「えっ?あっ、はい!」
彼が席を立つと奥から出て来た素敵な男性が、「こちらでございます」と言って小さな封筒を手渡してる。
それが何かは判らなかったけど、デザートが終わったんだからもう帰るんだと思って、急いでコートを手に持って西門さんの背中を追った。
この人が歩くと他のテーブルの女性たちが一斉に見る・・・彼氏が目の前に居てもそうなるのね?と、後ろをついて行く私は何処を見ていいやら判んない。
とにかくレストランを出たらエレベーターホールに向かって、そこで西門さんが昇降ボタンの▲を押した。
・・・ん?何故▲?・・・▼じゃなくて?
このレストランの上にあるのは・・・・・・
「ほら、早く乗れって」
「あぁ、はいはい!」
「部屋取ったから」
「あぁ、そうなんだ・・・・・・・・・えっ?!!」

にほんブログ村
応援、宜しくお願い致します♡
明日、ValentineStoryはお休みです。
西門さんがそう言ってアペリティフのグラスを持った。
そして私も同じように・・・でも、言ってる意味が判らなくてキョトンとしたまま。
すぐに持って来られたアミューズの後のオードブル、それを「食おうぜ」なんて言いながらこの状況を説明してくれた。
「えっ?これって・・・態と?!」
「じゃねぇのか?因みに俺にはお袋が『牧野さん、お客さんにモテるから、近々お嫁入りが決まるかも。ご指名の男性が居るからバレンタインはその人かもね~』、って言ったぞ?」
「嘘だよ!森山さんから言われたのはあの日が初めてだよ?それにお店の奥さんが『美咲様なら確かもうすぐ良いお話があるらしいわ。家元夫人が美咲様に似合う着物ってどんなのかしら~』って言ったもん!」
「あいつが誰と良い話になるかは知らねぇけど相手は俺じゃねぇな。着物は単に祝いじゃね?」
マジで?って2人で話してたら馬鹿馬鹿しくなって、そのうちお料理に夢中になった。
うん、彼の言う通り折角のディナーだもの、楽しまなきゃ損だ!クラシックコンサートで爆睡した分頭が冴えてるし、西門さんは「もう、いいか!」なんて言ってお酒を飲み始めた。
聞けば美咲さんとは気が乗らなかったから、早く帰るために車で来たって・・・それヤバいんじゃないの?って言えばニヤリ・・・
その笑顔にちょっとドキッとした。
「それにしてもお前、そんな鞄持ってた?」
「あぁ、これは美作さんからの贈り物」
「・・・あきらから?もしかしてそのドレスは・・・」
「これは道明寺から。そしてコートは花沢類から・・・・・・だって送ってくるんだもん、強請ったわけじゃないわよ?!」
「・・・・・・ふぅ~~ん」
「い・・・1番身近に居る人は何もくれないもん!」
この時にもニヤリ・・・・・・やだっ、またゾクゾクするんだけど///!!
この後に出て来たオマール海老と鮑の鉄板焼きに黒毛和牛のサーロインステーキ♡それにローストオニオンスープにその他諸々・・・可愛いお皿に豪華な飾り付け、しかもすっごく美味しくて手が止まらない!
西門さんも「落ち着いて食え!」って言うけど、落ち着けるわけないじゃん?
だから口を動かすことで必死に誤魔化してた。
「本日はバレンタインですから当店からのプレゼントでございます」
そう言って最後に出されたのは生クリームの小さなホールケーキ・・・しかもピンク色のクリームで薔薇の花が作られてて、それが1番上にドーン!と乗っかってた。
その回りにもピンク色のクリームでハートが描かれてて超ラブリー・・・どう見ても私の抹茶ロールケーキは見劣りする。
・・・って言うか、目の前には抹茶をこよなく愛する茶人だし?
それを入れた袋をチラっと見ると、西門さんはすぐに気がついたらしい。
テーブルの上と袋の中を交互に覗き込む私に「何隠してるんだ?」って声を掛けて来た!
「あっ!いや、別に・・・」
「まさか森山に?」
「・・・・・・そうだけど、だって、こんな日だし、義理でも、一応は・・・・・・ねぇ?」
「見せてみ?」
「えっ、なんで?!嫌だよ!」
「義理なんだろ?いいじゃん、見せてみ?」
「西門さん、食べないじゃん!抹茶のケーキなんて・・・・・・あ・・・」
「・・・お前、抹茶をケーキにしたのか?」
ほらぁ!!もう怒ってるじゃん!
せっかく楽しく食べてたのに~~~~っ!
それでも出せって言うから仕方無く・・・こんなレストランで自分の作ったケーキなんて出していいの?って思ったけど、何度も催促するからヤケクソで袋から出した。
そして凄く綺麗なケーキの横に置いて、自分でラッピングした箱を開けたら・・・イチゴでハート作ってる抹茶のロールケーキが姿を現した。
「なんでハート模様?」
「それは・・・たまたま切り口のイチゴがそうだっただけだよ」
「実に分かり易くカットされてるみたいだけど?」
「気のせいだよ、気のせい」
「これを森山に渡すつもりだったのか?」
「・・・チョコじゃないからいいじゃん!もういいでしょ、持って帰るから!」
「阿呆、俺が食う!」
「・・・えっ?」
甘いものなんて食べない人で、
抹茶をお菓子に混ぜたら怒る人で、
バレンタインの贈り物なんて絶対に受け取らないくせに・・・そんな西門さんが私の作ったケーキを目の前で食べてる。しかも見事に全部・・・その間、私は全然ケーキが食べられなくて唖然としてた。
「食わねぇのか?」って言われて、慌ててめっちゃ綺麗な薔薇のケーキにフォークを入れたけど、何故だか味が判んない。
そのぐらいカラになった箱の中身に驚いてた。
その間彼はスマホで何かを操作中・・・でもそれは数秒間ですぐに終わり、珈琲カップに手を伸ばしてた。
「・・・美味しかった?」
「ケーキとしては美味いんだろうが、抹茶は許せねぇな」
「だから食べなかったら良かったのに・・・」
「そのピンク色のケーキよりはマシだと思っただけだ」
「うわ・・・なに、その言い方!頑張って作ったんだよ?!」
「・・・いいから食い終わったんなら行くぞ!」
「えっ?あっ、はい!」
彼が席を立つと奥から出て来た素敵な男性が、「こちらでございます」と言って小さな封筒を手渡してる。
それが何かは判らなかったけど、デザートが終わったんだからもう帰るんだと思って、急いでコートを手に持って西門さんの背中を追った。
この人が歩くと他のテーブルの女性たちが一斉に見る・・・彼氏が目の前に居てもそうなるのね?と、後ろをついて行く私は何処を見ていいやら判んない。
とにかくレストランを出たらエレベーターホールに向かって、そこで西門さんが昇降ボタンの▲を押した。
・・・ん?何故▲?・・・▼じゃなくて?
このレストランの上にあるのは・・・・・・
「ほら、早く乗れって」
「あぁ、はいはい!」
「部屋取ったから」
「あぁ、そうなんだ・・・・・・・・・えっ?!!」

にほんブログ村
応援、宜しくお願い致します♡
明日、ValentineStoryはお休みです。