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plumeria

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絢子から返してもらった書類を封筒に入れて内ポケットにしまい、そこで最後の話合いが行われた。

俺は気持ちの無い婚姻を承諾したことを詫び、牧野に対する想いを話した。
牧野がどう言う立場の女性であるかということ、ニースで再会したが彼女にも愛情のない婚約者が居たこと、そのすれ違いを確認せずに結婚し、牧野はもう婚姻解消したことも話した。
勿論城戸についての説明は省いたけど。

薄々牧野の存在に気が付いていた母さんはもう何度目かの溜息・・・そして司の騒動を思い出して驚いていた。


「あなたが誰かを想ってて、それが普通の家庭のお嬢さんだとは思ってたわ。まさか道明寺の・・・あの時の子だなんて」
「・・・絢子にはそれを話した上での結婚だったと言うのか・・・」

「彼女の話はしませんでしたが、恋愛感情は持てない・・・それでもいいのかと言う話はしました。酷い男だ思われても結構ですが、それほど強引に話を進めていったのはあなた達です」

「・・・確かに絢子さんには気長に待てって私も言ったわね」
「私もそう言う感情は後から生まれても構わないと絢子が言うから・・・なんせ夢が叶うと嬉しそうだったから、それだけで満足だったが・・・」

「時間さえかければ愛情が生まれるという保証などありません。そして俺には牧野以外は考えられなかったんです」


絢子はもう何も言わずに放心状態・・・自分の意思で感情を押し殺していると言うより、本当に心を閉ざしたかのようにも見えた。両手を腹の上に置いて・・・そのポーズだけは流石に胸が痛んだ。
絢子は本当に俺の子供が欲しかったのかもしれないと思うから・・・でもそれは悲しみを生むのと同じような気がするから、これで良かったのだと自分に言い聞かせた。


新しい1歩を踏み出すのにもこの方がいい・・・それはいずれ絢子にも判ってもらえると思うしかない。


そして花沢物産と御園生ホールディングスとの関係は維持していくことになった。
あくまでもビジネスパートナーとして、お互いの成長のために強力はする。完全に手を切るのはリスクが高いと言う判断で、それに母さんと御園生社長は合意した。
現時点で共同事業を継続中なのは幾つもあるし、関わっている企業も数多い。俺もこの結論には賛成した。


離婚の発表はわざわざ行わない。
絢子のした事も俺のした事も総て極秘事項とし、今後一切この件を持ち出さない。
俺は不貞行為によるスキャンダルだけで終わるが、絢子のした事は法に触れる・・・だから御園生としては頷くしかなかった。


「じゃあ、あのマンションはどうするの?」
「あそこは売却する。もう住むつもりはないから」

「では絢子はこのまま御園生に連れて帰ろう。荷物なんかは追々でいいだろうからな・・・」
「・・・・・・・・・・・・」

「御園生さん・・・これからは企業人としてだけのお付き合いですわね。主人にもそう伝えておきますわ」
「花沢さん、大変ご迷惑お掛けしましたな。
儂もまだ全部が理解できておらんが、絢子のした事は許されないこと・・・親としてお恥ずかしいことばかりです。会社を大きくしたいが為に足元が何も見えておらんかった・・・」

「絢子・・・そう言う事だから君も俺の事は忘れて、今度は君自身を愛してくれる人を・・・」

「くすっ・・・暢気な方ね・・・類様って」


もうこれが最後だからと手を差し出した瞬間に絢子が笑った。
それを見て母さんの動きが止まり、御園生社長が驚いた。そして俺は・・・瞬間その意味を考えてゾッとした。



*************************



「愛ちゃん、大丈夫かなぁ・・・お薬もらったからいいのかな?ま、実家に戻れば楽ちんだしね~」

類に買ってもらったスカイブルーのポルシェでマンションに戻る途中、そんな事を呟きながら運転していた。
もう暗くなったのに何も食べてない・・・お腹空いたなぁって愛ちゃんにもらったお菓子を摘まみ食いしながらのドライブ。もう少しで到着だけど、晩ご飯も作ってなかったからコンビニに立ち寄ってパスタを買ってしまった。
そして再び車に乗り込みエンジンをかけて、鼻歌交じりで駐車場を出た。


「進には愛ちゃんが連絡してるよね・・・あの子、ご両親に嫌われてるって言ってたけど、ちゃんと顔出すかしら・・・・・・あれ?」


交差点を曲がって美作さんのマンションが見えてきた時、その少し手前で何かが転がってるのが見えた。道の端っこだけどかなり大きな・・・・・・そして車のライトがそこに当たった瞬間、人だと判った!
誰かが倒れてる、それに驚いて車を端に寄せ、急いで駆け寄った。

「大丈夫ですか?!何処か痛いの?!」
「・・・・・・・・・」

返事をしないその人は中年の男性で、私じゃ抱えられないぐらいの体格だ。少し揺さ振ったけど反応がなく、これ以上動かさない方がいいとは思ったけど、どうしたらいいのか判らない。
辺りを見回したけど誰もいないし、この辺は元々人通りが少ない場所・・・生憎車も通らなくて1人で焦った。
とにかく病院に運ばなきゃ・・・と、思った時にこの人が少しだけ動いた!

「気が付いた?おじさん、家は何処?」
「・・・・・・うっ・・・」

「立てますか?私、送りましょうか・・・・・・・・・っ!!」


咄嗟のことで何が起きたのか全然判らなかった。
急に起き上がったこの人にお腹を殴られ、驚いて頭が真っ白になった。気を失うことはなかったけどショックで身体が動かない・・・何処かが痺れて抵抗すら出来なかった。
そのまま担がれて自分の車の横を通り過ぎたのは判る・・・でも声も出せなくて、すぐに車の後部座席に放り込まれた。その車に籠もる煙草の匂い・・・でも目が開けられなくて中の様子は判らない。

そして急に頭に被せられた毛布で窒息させられるのかと思った!

でも両手を後ろで縛られただけで息は出来る・・・ただ完全に視界は遮られたみたい。


バタンとドアが閉まったけどその男はエンジンをかけず、少しだけ間があった。
でもまだ身体が痺れている私は何も出来ず、言葉も出せない・・・そしてグラッと身体が揺れた後で振動が伝わり、車は何処かに向かって発進した。


どうして私がこんな目に・・・これは誰の仕業なの?!
雅紀さんじゃない気がする・・・こんな事をする理由が彼にはない。
私があそこに住んでることを知ってるのは極僅か・・・じゃあもしかして無差別な犯行?!

それとも・・・・・・・・もしかして・・・絢子さん?!



***********************



「くすっ・・・暢気な方ね・・・類様って」
「どう言う意味?」


絢子が急にクスクス笑い出して、自分のスマホで何かを確認した。
その行動は母さん達も驚かせ、この場が一瞬シーンとした。

凄く嫌な予感がする。
まさかと思うけど、さっき弄くっていたスマホで誰かに何かの指示をした?
でもあのマンションは知られていないはず・・・そう思ったのに、次に絢子の口から出た言葉は・・・


「代官山で誘拐事件発生・・・かもしれなくてよ、類様」


「・・・・・・なんだって?」


「うふふ、知らないとでも思いました?念の為、ここまで突き止めていることをあなたには言わなかったんです。牧野つくしが美作様のマンションに移ったこと・・・私、とっくに調べてましたの」
「牧野をどうした!!」

「まぁ、そんなにお怒りになることもあるんですのね?その姿を見ることが出来て嬉しいわ」
「どうでもいい話はするな!彼女を連れ去ったのか!」

「・・・さぁ・・・もう私は何もお話しませんわ。ご自分の目で確かめたら?」

「絢子!!」
「絢子さん!あなた、これ以上何をするの?!」


この後病室には狂ったように笑う絢子の声が響いた。
それを見て母さんと御園生社長は絶句・・・・・・俺はその部屋を飛び出した!





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