片恋の行方(152)
病院の廊下を走りながら牧野に電話したけど、コールは鳴るのに電話に出ない!
それに焦ってあきらに電話を入れたら、すぐにマンションのコンシェルジュに連絡すると言われた。
迂闊だった・・・絢子ならそこまですると想像していたのに牧野に注意をしなかった。
ずっと塞いでた牧野には余計な心配を与えたくなかったから・・・それにあのセキュリティーなら大丈夫だと思ったのに、どうやって牧野に接触したんだ?
そんな事を考えても無意味だけど、どんな奴が牧野に接触したかも判らない。
とにかく急いで代官山に行かなければと、車に飛び乗って病院を出たところであきらから連絡が来た!
『類!今何処だ?!』
「花沢総合医療センターを出たところ。あきら、どうだった?」
『すぐにマンションに行け!多分さっきの話は本当だ、牧野の車が路駐されたままで誰も乗ってない!』
「路駐?どういう事?」
『判らない。コンシェルジュが部屋に内線しても出ないから外に出てみたら、エンジンが掛かったままの車が乗り捨てられてたらしいんだ。その車種を聞いたらスカイブルーのポルシェだって言うから間違いない!』
「・・・・・・・・・」
『俺もすぐに行くからお前も向かえ!』
牧野の車が乗り捨てられて・・・それを聞いて一気に血の気が引いた。
出掛けないようにと話していたわけじゃないから責められないけど、どうしてそんな時間に出掛けたんだ?!そしてマンションの目の前で車から降りなきゃいけない事態を作られたってこと?
強引に接触したなら悲鳴をあげるか俺に連絡するかだろうし、ドライブレコーダーがあるからそれを見れば判るかもしれない。
冷たくなった指先でハンドルを握りしめ、マンションについたのはそれから20分後だった。
「花沢様!こちらですが、警察にはまだ知らせていませんけどどうしましょう?」
コンシェルジュがそう言って車から降りた俺に走り寄って来た。
確かに路上に放置されたのは牧野の車で、中には鞄やスマホがそのままだ。ライトも点けっぱなしだしキーも助手席に置かれたままで、当然ドアはロックされていなかった。
路駐と言っても端に寄せているにしては間隔があり、不自然・・・そしてこの場所はマンションの防犯カメラには映ってないと言われた。
「いつからなのか知ってる?」
「いえ、美作様からお電話いただいて見ただけですし、ここはマンションの真ん前じゃないので・・・取り敢えずエンジンだけ切ったんですけど」
「事故があったとかは・・・いや、あれば騒ぎになってるか」
「はい。エンジンもライトもついたままなので不審に思った人は居るかもしれませんが」
この話の最中にあきらが到着して、今の話をもう1度聞かせた。
コンシェルジュには後の処理を自分達で行うからと言って帰し、車をマンションの中に移動させた。そしてドライブレコーダーからSDカードを抜き取り、合鍵で牧野の部屋に入った。
部屋に異常は無い。
きちんと片付けられていたけど、植木の本とファッション誌がテーブルに出たままだった。
洗濯物はサンルームに干したままで、料理を作った様子がなかったから出掛けたのは比較的早い時間なのか・・・それだけをコンシェルジュに確認すると、夕方小走りで駐車場に向かう牧野が確認された。
「晩飯作る前か・・・急用でも起きたのかな」
「買い物じゃなさそうだね・・・洗濯物も取り込まずに焦って出て行くようなら何かがあったんだろうけど」
あきらとそんな話をしながらパソコンを取りだし、それでドライブレコーダーの映像を見ようとした時、牧野のスマホが鳴った。慌ててそれを見ると、かけて来たのは進だ。
牧野の事を話すと心配するだろうから、今は適当に誤魔化そうと俺がその電話に出た。
話の内容は進の嫁さんの熱が下がったって連絡だった。つまり慌てて出掛けたのは彼女の病院に付き添う為で、そこから帰宅した時に事件に巻き込まれた事が判った。
『姉ちゃんはどうしたんですか?』
「あぁ、牧野・・・は買い忘れがあったからってコンビニに言ったんだよね。戻って来たら伝えとくよ」
『そうなんだ!じゃあ、明日は俺が会社休んで歩夢の面倒見るから安心してって言っといて下さい』
「ん、判った。お大事にね」
その電話を切ってから大きな溜息が漏れた。
多分進のアパートまで尾行したんだ・・・いつから見張られていたのかと思うとゾッとした。そしてあきらもセキュリティーに安心してボディガードをつけなかったことを悔やんでいた。
「不味いな・・・」
「どうした?あきら」
「このドライブレコーダー、360度全方向撮影タイプじゃないみたいだな」
「・・・これは何処だろう」
「もうすぐこのマンションに着くんじゃないか?このビルはすぐそこの・・・・・・」
その映像を息を止めるように見ていると、牧野の声が聞えた。
『進には愛ちゃんが連絡してるよね・・・あの子、ご両親に嫌われてるって言ってたけど、ちゃんと顔出すかしら・・・・・・あれ?』
それと同時に車の前方に転がってる人を発見、こっちに背中を向けているから男のようだけど顔は見えない。そして牧野はすぐに車を道端に寄せて停め、車を降りた。
そして車の前を走って倒れていた人の所に向かったんだろう、でもそこは映されていなかった。
でも僅か数秒後、不自然な牧野の手と、見覚えのないコートが映った。
牧野はさっき見えた男に連れ去られた・・・。
絢子に全部を話した後で行われた誘拐は何を意味するのか・・・考えただけで身が竦んだ。
***********************
どのくらい走っただろう・・・。
身体の痺れは取れたけど、手首を縛られてるから動けなかった。
私に当てられたのは多分スタンガン・・・それを思い出したら身体が震えた。
それにこの車は雅紀さんのマンションで見掛けた白い車なのかもしれない・・・それなら指示したのは絢子さんだ。
どうして美作さんのマンションまでバレたのかは判らないけど、花沢類への執着を考えたら有り得るのかもしれない。
そして私の事が邪魔で憎いのかも・・・それなら今から私をどうするつもりなのか、考えられることが1つしかなくてゾッとした。
掛けられた毛布の隙間から見えた運転手の男は、誰とも連絡を取らずに街中を走ってる。景色は見えなかったけど随分明るいから田舎じゃないみたい・・・でも一体何処に行くつもりなんだろう?
その時、後ろを振り向きそうな気配があったから慌てて目を閉じて意識のないフリをした。そうしたらブツブツ何か言い始めた。
小さい声だから聞き取りにくいけど、「どうしろってんだ?」って、苛立ってるみたい。
「気紛れな娘だ・・・・・・ムカつくことばっかり言いやがって!」
「くそ~、いつまでこうしてるんだ?連絡ぐらいしろってんだ」
「一晩中走るわけにはいかねぇだろうによ~!」
・・・どうやら絢子さんの指示待ちみたい。
だから都内をグルグル回ってるのかもしれない。
でもこんな事をしたのなら、花沢類との会話で何かがあったと言う事・・・そっちの方も凄く気になる。
調べると言っていたことが上手くいかなかったのかしら。それとも上手くいったから絢子さんが切羽詰まったの?
いや、そんな事より逃げる方法を考えなきゃ・・・!
私に出来ることはどうにかして自分の力で動くこと・・・その為には縛られてる手を自由にする事だ。
だからバレないように何度も手首を動かして、縛ってあるロープのようなものを緩めていった。
慌てていたからなのかそんなにキツくはないのかも?それは少しずつ広がっていき、もう少しで片方が外れそう・・・薄目を開けて運転手の様子を確認しながら、出来るだけ身体を動かさずに手首を回し続けた。
「・・・・・・!!(外れた!)」
片手が抜けるともう片方は自然と自由になる。
でもすぐにバレないように身体を動かさず、目を閉じて車の動きを感じていた。
食事かトイレで絶対に何処かで停まるはず・・・その時がチャンスだと!

にほんブログ村
応援、宜しくお願い致します♡
それに焦ってあきらに電話を入れたら、すぐにマンションのコンシェルジュに連絡すると言われた。
迂闊だった・・・絢子ならそこまですると想像していたのに牧野に注意をしなかった。
ずっと塞いでた牧野には余計な心配を与えたくなかったから・・・それにあのセキュリティーなら大丈夫だと思ったのに、どうやって牧野に接触したんだ?
そんな事を考えても無意味だけど、どんな奴が牧野に接触したかも判らない。
とにかく急いで代官山に行かなければと、車に飛び乗って病院を出たところであきらから連絡が来た!
『類!今何処だ?!』
「花沢総合医療センターを出たところ。あきら、どうだった?」
『すぐにマンションに行け!多分さっきの話は本当だ、牧野の車が路駐されたままで誰も乗ってない!』
「路駐?どういう事?」
『判らない。コンシェルジュが部屋に内線しても出ないから外に出てみたら、エンジンが掛かったままの車が乗り捨てられてたらしいんだ。その車種を聞いたらスカイブルーのポルシェだって言うから間違いない!』
「・・・・・・・・・」
『俺もすぐに行くからお前も向かえ!』
牧野の車が乗り捨てられて・・・それを聞いて一気に血の気が引いた。
出掛けないようにと話していたわけじゃないから責められないけど、どうしてそんな時間に出掛けたんだ?!そしてマンションの目の前で車から降りなきゃいけない事態を作られたってこと?
強引に接触したなら悲鳴をあげるか俺に連絡するかだろうし、ドライブレコーダーがあるからそれを見れば判るかもしれない。
冷たくなった指先でハンドルを握りしめ、マンションについたのはそれから20分後だった。
「花沢様!こちらですが、警察にはまだ知らせていませんけどどうしましょう?」
コンシェルジュがそう言って車から降りた俺に走り寄って来た。
確かに路上に放置されたのは牧野の車で、中には鞄やスマホがそのままだ。ライトも点けっぱなしだしキーも助手席に置かれたままで、当然ドアはロックされていなかった。
路駐と言っても端に寄せているにしては間隔があり、不自然・・・そしてこの場所はマンションの防犯カメラには映ってないと言われた。
「いつからなのか知ってる?」
「いえ、美作様からお電話いただいて見ただけですし、ここはマンションの真ん前じゃないので・・・取り敢えずエンジンだけ切ったんですけど」
「事故があったとかは・・・いや、あれば騒ぎになってるか」
「はい。エンジンもライトもついたままなので不審に思った人は居るかもしれませんが」
この話の最中にあきらが到着して、今の話をもう1度聞かせた。
コンシェルジュには後の処理を自分達で行うからと言って帰し、車をマンションの中に移動させた。そしてドライブレコーダーからSDカードを抜き取り、合鍵で牧野の部屋に入った。
部屋に異常は無い。
きちんと片付けられていたけど、植木の本とファッション誌がテーブルに出たままだった。
洗濯物はサンルームに干したままで、料理を作った様子がなかったから出掛けたのは比較的早い時間なのか・・・それだけをコンシェルジュに確認すると、夕方小走りで駐車場に向かう牧野が確認された。
「晩飯作る前か・・・急用でも起きたのかな」
「買い物じゃなさそうだね・・・洗濯物も取り込まずに焦って出て行くようなら何かがあったんだろうけど」
あきらとそんな話をしながらパソコンを取りだし、それでドライブレコーダーの映像を見ようとした時、牧野のスマホが鳴った。慌ててそれを見ると、かけて来たのは進だ。
牧野の事を話すと心配するだろうから、今は適当に誤魔化そうと俺がその電話に出た。
話の内容は進の嫁さんの熱が下がったって連絡だった。つまり慌てて出掛けたのは彼女の病院に付き添う為で、そこから帰宅した時に事件に巻き込まれた事が判った。
『姉ちゃんはどうしたんですか?』
「あぁ、牧野・・・は買い忘れがあったからってコンビニに言ったんだよね。戻って来たら伝えとくよ」
『そうなんだ!じゃあ、明日は俺が会社休んで歩夢の面倒見るから安心してって言っといて下さい』
「ん、判った。お大事にね」
その電話を切ってから大きな溜息が漏れた。
多分進のアパートまで尾行したんだ・・・いつから見張られていたのかと思うとゾッとした。そしてあきらもセキュリティーに安心してボディガードをつけなかったことを悔やんでいた。
「不味いな・・・」
「どうした?あきら」
「このドライブレコーダー、360度全方向撮影タイプじゃないみたいだな」
「・・・これは何処だろう」
「もうすぐこのマンションに着くんじゃないか?このビルはすぐそこの・・・・・・」
その映像を息を止めるように見ていると、牧野の声が聞えた。
『進には愛ちゃんが連絡してるよね・・・あの子、ご両親に嫌われてるって言ってたけど、ちゃんと顔出すかしら・・・・・・あれ?』
それと同時に車の前方に転がってる人を発見、こっちに背中を向けているから男のようだけど顔は見えない。そして牧野はすぐに車を道端に寄せて停め、車を降りた。
そして車の前を走って倒れていた人の所に向かったんだろう、でもそこは映されていなかった。
でも僅か数秒後、不自然な牧野の手と、見覚えのないコートが映った。
牧野はさっき見えた男に連れ去られた・・・。
絢子に全部を話した後で行われた誘拐は何を意味するのか・・・考えただけで身が竦んだ。
***********************
どのくらい走っただろう・・・。
身体の痺れは取れたけど、手首を縛られてるから動けなかった。
私に当てられたのは多分スタンガン・・・それを思い出したら身体が震えた。
それにこの車は雅紀さんのマンションで見掛けた白い車なのかもしれない・・・それなら指示したのは絢子さんだ。
どうして美作さんのマンションまでバレたのかは判らないけど、花沢類への執着を考えたら有り得るのかもしれない。
そして私の事が邪魔で憎いのかも・・・それなら今から私をどうするつもりなのか、考えられることが1つしかなくてゾッとした。
掛けられた毛布の隙間から見えた運転手の男は、誰とも連絡を取らずに街中を走ってる。景色は見えなかったけど随分明るいから田舎じゃないみたい・・・でも一体何処に行くつもりなんだろう?
その時、後ろを振り向きそうな気配があったから慌てて目を閉じて意識のないフリをした。そうしたらブツブツ何か言い始めた。
小さい声だから聞き取りにくいけど、「どうしろってんだ?」って、苛立ってるみたい。
「気紛れな娘だ・・・・・・ムカつくことばっかり言いやがって!」
「くそ~、いつまでこうしてるんだ?連絡ぐらいしろってんだ」
「一晩中走るわけにはいかねぇだろうによ~!」
・・・どうやら絢子さんの指示待ちみたい。
だから都内をグルグル回ってるのかもしれない。
でもこんな事をしたのなら、花沢類との会話で何かがあったと言う事・・・そっちの方も凄く気になる。
調べると言っていたことが上手くいかなかったのかしら。それとも上手くいったから絢子さんが切羽詰まったの?
いや、そんな事より逃げる方法を考えなきゃ・・・!
私に出来ることはどうにかして自分の力で動くこと・・・その為には縛られてる手を自由にする事だ。
だからバレないように何度も手首を動かして、縛ってあるロープのようなものを緩めていった。
慌てていたからなのかそんなにキツくはないのかも?それは少しずつ広がっていき、もう少しで片方が外れそう・・・薄目を開けて運転手の様子を確認しながら、出来るだけ身体を動かさずに手首を回し続けた。
「・・・・・・!!(外れた!)」
片手が抜けるともう片方は自然と自由になる。
でもすぐにバレないように身体を動かさず、目を閉じて車の動きを感じていた。
食事かトイレで絶対に何処かで停まるはず・・・その時がチャンスだと!

にほんブログ村
応援、宜しくお願い致します♡